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Eternal Dream 「DAYDREAM」
鵜川はあずみの中にいた。
(とっさに逃げ込んではみたが、アンドロイドでも夢は見るんだろうか?)
だが確かにここはあずみの「夢の世界」のはずだ。ロープで縛られた鵜川が一番手近なあずみの夢の世界へ入るように念じたのだから。
(アンドロイドの夢・・・・か)
鵜川が降り立ったそこは、ごく普通の街角だった。
(僕の家の近くじゃないか)
そこはまさに、鵜川の住んでいる町そのものだった。普通に人が歩き、自転車が走っている。
(どこにあずみ君の夢があるんだ?)
鵜川は自分の部屋に行ってみることにした。この町であずみが行きそうな所といえば、一度だけ来たことがある自分の部屋しか思い当たらない。
角を曲る。近所の奥さん連中が井戸端会議をしていた。遠くでボールを蹴って遊んでいる子供の姿が見える。
何の変哲もない、ごく普通の町並み。
(ひょっとしてあずみ君は、普通の人間として生きたいと願っているのか? 人間になって、人間の生活をしてみたいと思っているのか?)
確かにあずみは、それと聞かされなければアンドロイドだとは気付かないほど人間そっくりに作られている。行動も言動も、ほぼ人間そのものと言っていい。そんなあずみが「人間らしく生きたい」と願うのは不思議なことではないだろう。
そこに、よく知っているもののあまり見たことがない後姿があった。鵜川自身である。
(僕がいる?)
その鵜川はアパートの階段を上がって行った。
(あずみ君の夢に、僕がいる)
隣の部屋のドアが開き、おばさんが出て来た。鵜川は慌てて身を隠そうとしたが、この世界では鵜川の姿は誰にも見えないはずだ。
「鵜川さん、お帰り」
「ただいま」
この世界の鵜川が挨拶を返す。
「夜勤明けかい、大変だね」
「いえ」
「良かったらこれ、食べる? ちょっと作りすぎちゃって」
おばさんはパックに詰めた五目御飯をこの世界の鵜川に差し出した。
「ありがとう、でもいいんですか? どこかに持って行く途中だったんじゃ・・・・」
「実はね、あんたの所に持って行こうと思ってたんだよ。そこに偶然あんたが返って来たのさ」
「なんだ、そうだったんですか」
笑顔だ。
(僕はここ数年、あんな風に笑ったことがあっただろうか。隣に住んでいる人はもちろん、同僚の警官や上司、道を尋ねに来た人にさえ。あずみ君の笑顔を見ていると、自分が心の狭いちっぽけな人間に思える)
おばさんと別れて自分の部屋の鍵を開けようとしたこの世界の鵜川の足に、ボールがぶつかった。
「ごめんなさ〜い」
廊下の向こうから少年が駆けて来る。
「こら、廊下でボールを蹴っちゃ駄目だろ」
「違うよ、ボールを持って公園に行こうとしたら手が滑ったんだ」
この世界の鵜川がボールを拾い上げ、少年に手渡す。
「ありがとう。お兄ちゃん、この前みたいに一緒にサッカーしようよ」
「ごめんな、徹夜明けなんだ。また今度な」
「仕事、大変だね。そうだ、お姉ちゃんがお礼を言いたいって。姉ちゃんの友達の落とした携帯、捜してくれたんだって?」
「僕が捜したんじゃないよ、拾ってくれた子が派出所に持って来てくれたんだ。君もこの前、千円を拾って持って来てくれたろ?」
「うん、いい子だろ? 今度何か奢ってよ」
「そんなことを言う奴は悪い子だ」
ははは、と2人で笑い合う。
(・・・・僕があんなに子供に好かれているなんて。あの事件以来、僕は子供に優しくしたことなどなかった。出来なかったんだ。子供を見ると、憎たらしい顔に見え、笑っていても心の中で何かを企んでいるように見えた。そう、所詮は他人の心の中なんて分かる訳がないんだ・・・・そう思ったら、誰も信じられなくなっていた)
(この夢は何だ? まるでそう、僕の夢のようだ。平和で、お互いに笑いあえる、そんな町。あずみ君がこんな町を夢見ているとは・・・・)
(夢とは、自分勝手なものだ。自分さえよければいい、自分本位の世界のはずだ。どこにいる? あずみ君はこの世界で、どんな願いを叶えていると言うんだ?)
鵜川は部屋に入ってそのままベッドに倒れ込んだこの世界の自分を放って、アパートの外に出た。
どこかにあずみがいるはずだ。
アンドロイドの望むものとは何だ?
想像がつかない。恋愛、出世、食欲、金銭欲・・・・どれも縁のないものに思える。
人間になること? エネルギーを一杯補給すること? 新しいボディに取り替えて貰うこと?
(わかるはずがない。僕は他人であり、アンドロイドではなく人間なのだから)
なのになぜ、あずみはこの世界を夢の中に展開しているのだろう。世の中の悪を一掃することなどではない、鵜川の本当の望みを。
(それでいいのか、華代。僕だけがごく普通の、それでいて幸せな世界に住んでいいのか? それではあまりに君が・・・・僕だけが幸せになるなんて出来ない。出来るはずがない)
四つ角に差し掛かった時、ゆっくりとした歩みの高齢の女性の姿が目に入った。そして、その先の曲がり角の向こうからツカツカと歩いてくる体格の良い、サングラスを掛けて黒いスーツを着込んだ男の姿も視野に入って来た。
危ないな、と思った瞬間、曲がり角でその2人がぶつかった。男性は大柄なので驚いただけだが、女性の方は「ひゃぁ」と声を上げてスッ転んでしまった。
(うわぁ、あのおばあちゃん、悪い奴にぶつかったなぁ・・・・)
鵜川はその柄の悪い男が「どこ見て歩いてんじゃこのババア!」と関西弁で怒鳴り散らす光景を思い浮かべた。だが・・・・。
「ごめんなさい、おばあちゃん、大丈夫ですか?」
と、ターミネーターばりのサングラスを掛けたいかつい男性が、さっと手を伸ばして高齢の女性の手を取った。
「すみません、よく前を見てなかったので・・・・」
女性が元々曲っている腰を更に曲げて頭を下げる。
「いえ、僕の方こそ! 確認せず角を曲ったから・・・・本当にごめんなさい!」
大柄の男が90度近く体を曲げて頭を下げる。
(人を見掛けで判断してはいけない・・・・華代がよく言ってたっけな。でも、人の中身なんて話してみないと分からないものだ。町を歩いている他人がどういう人か判断する材料と言えば、見掛けしかないだろう? それを「見掛けで判断するな」なんて、難しいこと言うよなぁ)
「私だって見掛けは可愛いけど、中身は口うるさいでしょ?」
(・・・・なんて冗談混じりに言っていたっけ)
いつもの町。
だがやはりいつもとは違う。
狭い道で自転車がすれ違う時、片方が止まって待つ。待った方も待って貰った方も会釈をする。
信号のない横断歩道を人が渡ろうとしていたら、必ず車が止まる。
いつもはジュースの空き缶やタバコの吸殻が落ちている溝には、葉っぱだけが落ちていた。
(こんな町、あるはずがない。理想的だが不自然だ。やはりここは夢の世界・・・・華代の? それとも、僕の?)
歌が聞こえてきた。お遊戯のようだ。様々な音程の歌声が鵜川の耳に届いてくる。
そこに保育園があった。
中をそっと覗くと、園児が輪になって歌いながら踊っていた。
(華代の・・・・夢・・・・なのか?)
円舞の中心に人影が見える。おそらく保母さんだろう。だがその顔がよく見えない。春霞がかかっているように、ぼやけて見える。
鵜川が近付こうとすると円舞が終わっていた。
「やった、ちょうちょ、捕まえた!」
「だめだよ、放してあげなきゃ。ちょうちょさん、楽しそうに遊んでたのに」
「なんだよ、僕が捕まえたんだぞ」
「可哀想だよ、羽根が破れちゃうよ。ちょうちょさんだって、生きてるんだよ、たー君と一緒で、生きてるんだよ」
女の子に睨まれた男の子は、自分の指と指に挟まれてもがいている蝶を見詰めた。
「そうだな、ごめんな、悪かったよ」
解放された蝶が空に舞う。
鵜川がその蝶から目を放して視線を落とすと、ブランコに座ってその光景を微笑みながら見ている少女の姿があった。
「あずみ君!」
だが、あずみには鵜川の姿が見えていなかった。手を合わせ目を閉じ、あずみは何かに祈っているようだった。
(・・・・)
目を閉じているあずみだったが、その表情は「笑顔」に他ならなかった。幸せそうで、見ている人間も幸せになるような、穏やかな笑顔。その微笑んでいる唇が動いた。
「鵜川さんに、たくさんお友達が出来ますように・・・・」
「!」
「鵜川さんがいつも笑顔でいられますように」
「・・・・」
「鵜川さんがみんなのことを好きになって、みんなも鵜川さんのことが好きになりますように」
「・・・・あずみ・・・・君」
(君は・・・・)
(夢なんて、所詮は欲望だ。自分勝手な望みだ。なのに君は・・・・)
「どうして僕のためにそんなに一生懸命、お祈りしてくれるんだ!」
鵜川はその場に膝をついた。だがあずみは気が付かない。
「僕なんか・・・・放っておけばいいのに・・・・ここは君の夢なんだぞ、自分の望みを叶えればいいじゃないか!」
あずみは目の前で座り込んで泣いている鵜川に向かって微笑んだ。見えているはずはないのだが・・・・。
「私の願いは、みんなが幸せになることです。だから、鵜川さんにも幸せになって欲しいんです」
夢が叶わぬものであるのなら。
夢が儚いものであるのなら。
せめて自分のことだけではなく、みんなが幸せになれる、そんな夢を見よう。
そうすれば、自分も幸せになれるのだから。
他人を傷つけて、他人を不幸にして得た幸せなんて、幸せと言えるのだろうか?
不幸を生むことで生まれる幸せなど、本当の幸せではない・・・・。
そうなんだな、華代。
君のかたきを取ることは、君を絶望させることに他ならない。
不幸を不幸で返して、それが何になるのだろう。この世にまた1つ、不幸が増えるだけだ。
それはきっと、君の夢を踏みにじることになるんだ。
僕は結局、自分のことしか考えていなかった。僕が君に何もしてあげられなかったことを悔やんでいるこの気持ちを、かたきを取ることで晴らそうとしていたに過ぎない。
華代、今の僕は何点かな・・・・。
合格するまで、僕は答え続けるよ。
君の笑顔をもう一度見たいから。
「・・・・ゆかり」
「透子、気が付いた?」
「あれ、御飯は・・・・?」
半分寝ているような目で、透子は辺りを見回した。
「夢・・・・?」
(そうだよね、だからお父さんやお母さんが一緒に御飯を食べてたんだ。そんなこと現実に・・・・あるわけないのにね)
頭を振ると、眠気が少しだけ飛んだ。鵜川の魔法を受けて眠ってしまったことを思い出す。
「ゆかり、あの人は?」
「分かんない。いきなり消えちゃったの」
鵜川を捕らえていたマジカルロープだけが地面に落ちていた。
「消えたって?」
「うん・・・・」
自分の目の前から文字通り「消えた」鵜川。ゆかりには彼がどこへ行ったのか、見当が付かなかった。
「とにかく、この魔法を解かないと」
透子の言葉を聞き、ゆかりは「マジカル・リゾリューション」を発動した。
「フェアリー・ナイト・ムーン!」
孫の手から放出された光が辺りを包み、鵜川の作り出したドリームドームが魔力へと還元されて散ってゆく。
そんな光景を透子はじっと見詰めていた。
(ゆかりのフェアリーナイト・ムーンは、魔法で作り出されたものを全て魔力の粒子へと戻してしまう。魔法で作った物なんて所詮まやかしなんだよ、とでも言うように。あれだけ魔法少女になりたかったゆかり自身が、魔法を否定するみたいに。本当はゆかりも分かってる。魔法なんてまやかしで、現実と向き合わなきゃならないんだってこと。フェアリーナイト・ムーンは、ゆかりの魔法に対する答えなのかも・・・・)
「あ・・・・あれ? レコード大賞は?」
「ここは? あれぇ、確かあたし空を飛んで・・・・」
「ふにゅ・・・・」
1人、また1人と夢から醒めてゆく。
「ゆかり・・・・」
「ユタカ、目が醒めた?」
「あれ、ゆかりは俺と一緒に・・・・あれ?」
「・・・・どんな夢、見てたの?」
「夢・・・・? そうか、夢だったんだな」
ユタカは頭を何度か振った後、こめかみの辺りを拳で叩いた。少しだけぼんやりしていた頭が回復してくる。
「いい所だったのに・・・・」
「だから、どんな夢を見てたの?」
「い・・・・言えるか、そんなこと!」
「何で赤くなるのよ〜! ゆかりも夢に出てたんでしょ?」
「だから言えないんだっ!」
「ユタカのスケベ!」
「どうしてそうなる!?」
みんなが夢の世界から戻ってきて、魔法をかけた当人である鵜川を捜す。だが、どこにも彼の姿はなかった。魔法のノコギリだけがあずみの足元に落ちている。あずみはそれを拾い上げ、膝の上に乗せた。さっきまで「エネルギー切れ」で動かなかったあずみがこうして行動していることに、誰も疑問を感じなかった。
「どこへ逃げちゃったんだろうね、あの人」
莉夜はゴミ箱の蓋を開けながら言った。
「そ、そんな所に入らないよ・・・・」
みここが弱気なツッコミを入れた。それを見ていたあずみが微笑む。
「入るわけがない所・・・・」
「ん? 何か言った? あずみちゃん」
「ううん」
「でもさぁ、あいつを早く捜さないと、何をするか分からないよ」
莉夜の意見にみんなが頷く。そんな中で1人、あずみだけが落ち着いていた。
「だいじょうぶです。鵜川さんの使っていたマジカルアイテムはここにありますから」
「そうだよな・・・・魔法が使えなければ大丈夫だよな」とタカシ。
「鵜川さんにはまだ時間が必要です。自分の心に決着を付けることが出来たら、きっと私たちの前に現れます。その日は、きっと遠くありません。鵜川さんは本当は心の綺麗な人ですから」
ベンチに座り、ノコギリを膝に置いて、あずみは微笑んだ。
「いや・・・・あずみちゃん、だっけ? 心の清らかさでは君に勝てる人はいない気がするなぁ」
感心したようにユタカが言った。
「とてもアンドロイドとは思えない。作った人はさぞ頭がいいんだろうな」
「作ったのは莉夜ちゃんだよね?」
みここに問われた莉夜は頭をかきながら「ま、まぁね」と曖昧な返事をした。ここにいる半分以上の人が「嘘だろ?」と思ったが、口には出さなかった。人を見掛けで判断してはいけないが、どう見ても莉夜は科学や精密機械が得意な風には見えなかった。
(何だか・・・・あずみちゃん、少し大人になった気がする)
莉夜はベンチに座っているあずみを見て思った。そして、いつか成長の早いあずみが自分を放って、どんどん成長してしまうような気になって、淋しさを覚えた。
ようやくここに、トゥラビアから持ち出されたマジカルアイテムが5つ揃った。後はこれらをトゥラビアに持って行くだけだ。
あずみが持っている魔法のノコギリ、こなみが持っている魔法のねじ回し、倉崎が持っている魔法の塵取り、莉夜の持っている魔法の箒。それぞれがベンチの上に置かれた。
そしてみここが魔法のトンカチを置こうとした時、頭の中に誰かが話し掛けてきた。
(みここ)
「ふにゅ? だれ?」
(俺様だ。マジカルハンマー様だ)
「ふにゅ、ハンマーちゃんが喋ってる・・・・」
(今まで、その、悪かったな)
「え?」
(俺たちマジカルアイテムは本来、むやみに使うと秩序が乱れるのでそれぞれが「魔法承認機能」を持っている。つまりは使用者の欲望をそのまま満たすのではなく、常識の範囲でそれを叶えるという自我だ)
「自我・・・・なのにどうして?」
(俺たちは欠陥品だった。作り出された時に既に「欠陥品」というシールを貼られ、倉庫に放り込まれたのさ。自分が生まれた、作られた過程は分からない。気が付けば既に「欠陥品」だった。それから誰にも相手にされることなく、寒くて暗い倉庫に何ヶ月も置き去りにされた。本来なら正しいことに使って貰って、役に立つはずのマジカルアイテムがだ)
「可哀想・・・・」
(ありがとうよ。そんな欠陥品の俺たちだから、嬉しかったんだ。あんな奴らでも、俺たちを使ってくれた。喜んでくれた。必要としてくれたんだ。使い道は間違ってたかもしれないがな。自分を必要としてくれている奴がいるってのは、幸せなことなんだな)
「うん・・・・そうだね」
「・・・・みここちゃん、独り言を言って、泣いてる」
莉夜が不思議そうに覗き込んで来たので、みここは「何でもない」と言いながら涙を拭った。
「それにしても」
5つのマジカルアイテムを前に、透子がふぅっと息を吐いた。
「マジカルアイテムを手に入れたのがオタクさんで良かったわね。自分の好きなことにだけ魔法を使ったから。鵜川さんみたいな人ばかりが魔法の力を得ていたら、どうなってたか分からないよ」
「全くだ。魔法なんて、人が使っていいものじゃないってことだな。ゆかりも気を付けろよ」
「ゆかりは悪いことしないもん」
「魔法で胸を大きくしようとか思うなよ」
「なっ、何言ってるのよユタカ〜!」
カスーン、とユタカの後頭部に孫の手がクリーンヒットした。
「いてぇ、マジカルアイテムで物理攻撃かよ!」
笑う一同。透子もつられて笑った。
(今回は本当に疲れたなぁ、あの夢みたいにゆっくり暮らしたいよ。それにしてもあのオタ空間だっけ? あんな世界を作る力がマジカルアイテムにあるなんて。もしも、もっと凄い魔法を使えるマジカルアイテムがあるとしたら、この世界全体をオタ空間に変えることだって出来ちゃうかもね。もし今のこの世界が誰かの作った世界だとしたら・・・・あたしたちは、その人が魔法で作り出したものだとしたら、それがいわゆる「神様」ってこと・・・・?)
そこまで考えて、透子はぶんぶんと頭を振った。
(まさか、ね)
ゆかり、透子、巳弥がマジカルアイテムを持ってトゥラビアに向かうことになった。
「そう言えばミズタマ君は? 彼がいないとトゥラビアに通じる道が分からないわ」
そう透子に言われ、そう言えばミズタマが全然姿を見せないことにゆかりは気付いた。いればいたで色々と口うるさいし、いなくてもべつだん困ることもないので気にしていなかったのだ。ミズタマやチェックがどこにいるか分からない今は、彼らからの連絡を待つ以外になかった。
莉夜も「自分の責任だから」とゆかり達に同行を申し出たが、あずみのエネルギーチャージが必要なので、あずみとイニシエートに戻ることにした。兄を始めとした、あちらの様子も心配だった。
倉崎は大河原を初めとしたMOTのメンバーの無事を確認し、手当をするためこなみ、タカシに手伝ってもらって保健室に行った。ただ村木だけは重傷のため、病院送りとなった。自業自得なのだが、こなみは責任を感じていた。
岩原少年は夢から醒めた後も、ただぼんやりと座り込んでいるだけだった。頬には涙の後が見受けられた。
目の前に手が差し伸べられた。
「・・・・」
「帰ろう」
あずみの手だった。
「・・・・」
少年はあずみの手と顔を交互に見て、そしてゆっくりとあずみの手を握った。
Endless Dream End
to be continued 4th story
”THE INVISIBLE FUTURE”
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