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タイトル


 30th Dream 「ココロのアンテナ」


「行け〜!」
 ドッギャァァァァァン!
 タカシのスタンド「カルロス・トシキ&オメガトライブ」が村木に向かって飛び出した。
「僕を守れ、ポルノグラフィティ!」
 村木の眼前に全裸の女性が現れる。
「相手がスタンドなら女の人じゃないんだ、俺だって!」
 と自分に言い聞かせるタカシだが・・・・。
「くっ・・・・!」
 寸での所でスタンドの攻撃が止まる。
「ど〜した生田ぁ!」
 カルロス・トシキ以下略がポルノグラフィティの蹴りを受け、タカシは後方に吹き飛んだ。
「はっはっは〜、生田! お前は硬派で通ってるらしいから、女の免疫がないようだな!」
 2対1では不利だと思った村木は、まずタカシを倒すことに決めた。倒れているタカシに村木のスタンドが襲いかかる。
「くそっ!」
 カルロス・トシキ以下略で撃墜を試みたタカシだったが・・・・。
「くらえ!」
 ズッキュゥゥゥゥゥーン!
「あぁぁっ!?」
「きゃ〜っ!」
 思わずこなみが真っ赤になった顔を手で覆った。それほど卑猥なポーズを村木のスタンドがタカシの目の前でやってのけたのだ。
「うわぁぁぁ〜!」
 タカシはその光景を見て、思わず目を閉じて座り込んでしまう。
「どうだ生田! 初めて見たのか、あ〜ん? だがまだまだ!」
 うずくまったタカシに、スタンドが襲いかかる。頭を掴んで無理矢理顔を上げさせ、タカシの顔をその豊満な胸に押し付けた。
「んう〜!!」
「どう〜? 気持ち良いだろう〜?」
 スタンドの声が乳房に埋もれたタカシの耳に届く。更にポルノグラフィティはグリグリとその胸を押し付けた。
「タ、タカシ君に何てことするのよ〜!」
 こなみのスタンド「ドリームズ・カム・トゥルー」が村木目掛けて飛んだ。
「おっと、いいのか? 生田の***がどうなってもいいのか!?」
「ええっ!?」
 慌ててこなみが振り向くと、タカシのズボンの中に、村木のスタンドの手が侵入していた。危険なことに、作者はこの作品が全年齢指定であることを忘れかけている。
「くっくっく、あまりの気持ち良さに勃っちまったかぁ、生田!」
 村木よ、あまり下品な発言はしないでくれ。
「さぁ生田はもう戦闘不能だぜぇ。芳井、大人しくして貰おうか」
「うう・・・・」
 こなみは観念してか、自分のスタンドを収納した。
「それでいいんだよ! さぁて芳井・・・・この間の夜はセミヌードだったよなぁ」
「!」
 村木が言っているのは、透子の家でこなみがタカシを庇って村木の魔法を受けてしまった時のことだ。
「ここで素っ裸になって貰おうかぁ、ぎゃははは!」
「い、いや・・・・」
「生田がどうなってもいいのか?」
「よ、芳井・・・・!」
 タカシは既にスタンドによってズボンも上着も剥ぎ取られていた。
(俺のせいで、芳井が・・・・!)
「どうしたの? ボーヤ。気持ちいいなら出しちゃっていいのよ・・・・」
 スタンドの囁きがタカシの耳に甘く侵入して来る。
(こんなの・・・・)
 胸がギュウギュウ押し付けられる。股間がまさぐられる。
 こなみは恥ずかしさから頬を赤く染め、俯いたまま黙っている。
「おねぇさんが色々教えてあ・げ・る」
(違う・・・・)
「舐めちゃおうかしら・・・・」
「違う!」
 ズギャアアアアアアン! メギャァァァァァァン!
 タカシのスタンド前略オメガトライブが、剣を振りかざす。
「君は1000%! ホラホラホラホラホラァ〜!」
「ぎぃやぁぁぁぁぁ!」
 目にも止まらぬスタンドの剣さばきで、ポルノグラフィティの全身に無数の穴が開いてゆく。それと同時に村木の身体からも血が噴出した。
「うわぁぁ、痛い、痛い、痛い〜!」
 たまらず倒れ込んだ村木は、全身の痛みに地面を転がり回った。
「な、何故だ生田! あの甘美な攻撃に屈しないとは!」
「馬鹿村木。あんなのは俺にとって女性じゃない。恥を知らない女性なんかに、俺は魅力を感じない。芳井のように、顔を赤らめて目を背けてしまう、そんな女の子にこそ俺は魅力を感じる!」
「タ・・・・タカシ君」
 こなみの視線に照れ笑いを浮かべるタカシだった。
「く、くそ・・・・」
 なおも反撃しようとする村木の後ろに、こなみのスタンドが立っていた。
「まだ許さないわ」
「ぼ・・・・僕が悪かったよ、もう抵抗しない。だから、許して!」
「さんざん女の子にエッチなことをして、タカシ君にもあんないやらしいことを・・・・」
「ね、許してよ。明日から下僕にでもなんでもなるからさぁ・・・・僕はただ、先生がテストの問題を教えてくれるっていうから手伝っただけなんだ」
「やれやれ、とんでもない情けない人ね。そんな人はエッチな読者が許しても私が許さない・・・・」
「許して下さい、芳井様!」
 だめだね。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!」
「ぎゃひ〜!!」
 オラオラ100発を喰らった村木は、そのまま亀や鯉のいる池まで飛んでゆき、水しぶきをあげた。こなみは亀と鯉に「ごめんなさい」と謝った。
 一方、スーパー是空ことユタカもレイゾーこと笠目をパワーで圧倒していた。
「おめぇの敗因は、ヒーローに憧れていたにも関わらず、悪者を演じる楽しみも知ってしまったところにある」
「な・・・・なに?」
「善なら善、悪なら悪。どちらか一方を信じて突き進めば、おめぇはもっと強くなれたはずだ。そんな中途半端な心では、魔法も手を貸してはくれないさ」
「くっ・・・・」
「終りだ、レイゾー! 超ダ〜メ〜ダ〜メ〜波〜!!」
「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」
 レイゾーに超ダメダメ波が炸裂し、はるか彼方の上空に消えていった。どうやらユタカの方も笠目を倒したようだ。
「ごめんな、芳井。守るって言っておいて、俺が守られちまった」
「ううん、私はあの言葉で充分」
「え、何だっけ?」
「ほらぁ、魅力を感じるとか何とか・・・・」
「そ、そんなこと言ったっけ? それより芳井、何で俺の方を見ないんだ?」
「だって、その・・・・」
「あっ!」
 言われてからタカシは自分の姿に気付いた。村木のスタンドによってズボンを脱がされたままだったのだ。


「何だ、あれ?」
 莉夜もまた、汗を流そうと思い旧体育用具室であるマイルームへと戻ってシャワーを浴びている間に、大河原のオタ空間に取り込まれてしまった。
 汗を流してスッキリして外に出て見ると、何やらズシンズシンと音がする。音の主に興味を持って校庭に出てみると、巨大なロボットに遭遇した、というわけだ。
「さぁさぁ、逃げないと踏み潰すぞ!」
 大河原はジェノサイドグンダムのコクピットから、豆粒のようなゆかりんととこたんを見下ろし、逃げ回る様を見て楽しんでいた。2人はマジカルフェザーを使って飛び回ることも出来ずに、ひたすら走って逃げるしかない。
「校舎の中に逃げよう、追って来れないよ!」
「そうね、とにかく対策を考えましょ」
 とゆかりに続き、透子も校舎内へと逃げ込んだ。階段を登り、ジェノサイドから見えない教室へと駆け込み、息をひそめた。
(う〜、魔法が使えないなんて! こんな時・・・・)
 カーテンが引かれた薄暗い教室の中、外からは「逃げられると思っているのか、この軟弱者!」という拡声器を通した大河原の声が響いていた。
「ズルいなぁ、この世界。でも効果的なのよね。自分の最も得意とする世界に引き込むんだもん。自分の王国だよね・・・・と感心してる場合じゃないか。と言っても対抗策はないし、魔力切れを待つしかないのかな・・・・」
 策を考えている透子の側で、ゆかりは「対抗出来うる人物」を思い付いていた。
(こんな時、ユタカなら・・・・)
 公園でロボットに襲われた時、ユタカはグンダムに対して詳しそうな素振だった。今、ユタカがこの場にいればきっと何とかしてくれる、そんな気がした。
(ユタカ・・・・いつもケーキを買いに来て、鬱陶しいって思ってたのに、今は・・・・ここにいて欲しい)
(ユタカはゆかりとやり直したいって思ってる。でもゆかりは、信じていいの?)
 俺、藤堂院さんと付き合うことにした。
 あの日、雨の夜。
 ユタカを信じられなくなった夜。
 男の人を信じられなくなった夜・・・・。
 ゆかりはユタカと付き合っていたとはいえ、あの時はまだ始まったばかりだった。これからと言う時に、別れを告げる言葉を一方的に聞かされた。
 よりによって透子と。
 ゆかりは大河原に対する策を苦慮している透子の横顔をチラっと見た。
(透子もユタカを好きだったのかな)
 透子から「付き合おう」と言われた、とユタカに聞いたことがある。
(信じられなかった。だって透子、そんな風に見えなかったから。自分から好きだって言ったり、友達の彼を奪ったり・・・・ううん、それ以前に、男の人に興味があるようには見えなかったのに)
 2人はどんな風に付き合っていたのだろう。どんなデートをしたのだろう。手を繋いだのだろうか。キスしたのだろうか。そんな光景は想像できなかった。したくなかったのかもしれない。
 ユタカが透子と・・・・?
「いやだ・・・・」
 どっちが嫌なんだろう? ユタカが透子とキスすることなのか、透子がユタカとキスすることなのか。
 友達に彼を取られる。彼に友達を取られる。
 どっちも嫌だ・・・・。
「ゆかり、マジカルチャージャー持ってる?」
「ふぇ、え、なに?」
「マジカルチャージャー、使ってないのがあるでしょ?」
「部屋に置いてる」
「もう、役に立たないなぁ」
「何に使うの? 魔力を溜めておく為の道具でしょ?」
「何とか大河原先生をあのロボットから引きずり出して、マジカルアイテムから無理矢理に魔力を吸い出せないかな〜と思ったんだけど・・・・」
 透子はそう言いつつ、魔力の詰まった青いチャージャーを1本、ゆかりに手渡した。
「1本、渡しとく。どうしても必要な時に使って。いい? どうしても・・・・」
 透子が言い終わるか否かの時、けたたましい爆発音に似た轟音が聞こえ、校舎全体が揺れた。
「な、なに〜!?」
「出てこないなら、教室を1つずつブチ壊すぞ! モグラ叩きの要領だな!」
 またもけたたましい爆音が響く。ジェノサイドグンダムがそのたくましい腕で、教室を1つずつランダムに正拳突きで打ち抜いていたのだ。
「学校を壊してるよ! 先生のくせに〜!」
「先生? 誰のことだ? 俺はジェノサイドのパイロット、大河原光だ! 馬鹿な奴め、叫んでくれたおかげでだいたいの場所が分ったぞ!」
「あぁ〜! しまったぁ〜!」
 耳を塞がなければならないような激しい轟音と立っていられなくなるような振動がゆかりと透子を襲う。ガラスの割れる音、木の折れる音、壁の崩れる音。隣の教室が窓から廊下までぶち抜かれた。
「死ぬよ、あれ、絶対死ぬ!」
「ゆかり、逃げるわよ!]
「逃げるって、どこへ〜! もう駄目だよ、逃げられないよ、殺される〜!」
 泣き叫ぶゆかりの肩が抱かれ、手が握られた。
「ゆかり! 孫の手を持て!」
「え・・・・ユタカ?」
 ユタカが孫の手を持ったゆかりの手を、大きな手でそっと包んだ。
「俺のイメージを受け取れ、そして作り出せ!」
「う、うん・・・・」
(ユタカの手、温かい・・・・)
 孫の手から放たれた光が膨張し、巨大化する。
「こ、これは・・・・」
 窓の外で、眩い光が広がり、集まり、形を形成してゆく。
「俺がゆかりをイメージして作った、ゆかり専用MS(マジカル・シューター)だ。行って来い、ゆかり! あいつを倒して来い!」
 ゆかりの身体が光の中に吸い込まれた。そして・・・・。
 大きさはジェノサイドに及ばないが、そこには20メートル近い巨大なMSが出現していた。白と赤とピンクを基調としたカラーリング、頭部にはウサギを思わせる巨大な飾り。
「行け〜、ゆかり! 俺とお前の共同作業、そのラビットグンダム、愛称パステルラビットで敵を蹴散らせ!」
「ぱすてる・・・・らびっと?」
 気が付くと、ゆかりの身体はラビットグンダムのコクピットに出現していた。
「凄い・・・・」
 その光景を眺めていた透子に、ユタカが話し掛ける。
「藤堂院さんも・・・・?」
「もちろん、ゆかりだけに任せておけない」
 透子は肩叩きを両手に握り締めた。その手に自分の手を重ねようとして、ユタカは躊躇した。
「いいのか・・・・?」
「多分、相楽君なら大丈夫・・・・だと思う」
 その言葉で、ユタカは透子の手を持った。瞬間、透子の手がビクっと動いた。
「平気か?」
「う、うん・・・・」
 肩叩きから光が溢れる。その光景を見て、ゆかりはちょっとだけ胸が痛んだ。
(どうして・・・・? どうしてユタカが透子の手を握ってるだけで、切なくなるの?)
 だが切なくなっている場合ではなかった。
「ラビットグンダムか・・・・そうでなければ面白くない。MS戦というものをやってみたいと思っていたのだよ!」
 ジェノサイドがラビットを指差した。
「ユ、ユタカ、これってどうやって操縦するの〜!?」
 コクピットには、操縦席らしきものがなかった。あるのはスクリーンのみだ。ゆかりは改めて自分の格好を見て「なにこれ〜!」と叫んだ。青い全身タイツに、手首、足首、肩、頭などに金属の輪らしきものが付いている。
「ゆかり、聞こえるか!」
 ユタカの声が部屋の中に響いた。
「それはゆかりが身体を動かせば、その通りにMSが動くシステムだ! ゆかりの動きがダイレクトにパステルラビットに反映されるから、難しい操縦は不要だ!」
「そ、そうなんだ・・・・」
「頑張れ、ゆかり!」
 ユタカは透子から何の反応もないことに気付いた。透子も既にMSに乗っているはずだ。
「藤堂院さん、どうした?」
「こんな格好、嫌!」
「へ?」
「こんな格好、したくないの!」
 透子はコクピットの中で座り込んでいた。普段は絶対に体のラインを見せない透子なので、今着ているバトルスーツは絶対に許せない恥ずかしさだったのだ。
「わがまま言わないでくれよ、この世界に準じないといけないんだから」
「じゃ戦わない」
 透子は床に座り込んで、動きそうになかった。
「きゃ〜!」
 ヘッドホンを通して、ユタカの耳にゆかりの叫び声が飛び込んで来た。
「ゆかりっ、どうした!?」
 ユタカが慌てて窓の外を見ると、パステルラビットがその巨体を校庭に横たわらせていた。
「こけた〜! 足、かけられた〜!」
「足を出したら、見事にスッ転んだぞ」
 大河原が呆れ声で説明してくれた。ユタカは失敗を悟る。
「そ、そうか! Gグンダムに登場するパイロットの肉体的動きを反映するシステムは、パイロットが格闘家だからこそ強かったんだ! ドジッ娘のゆかりや、インドア派の藤堂院さんが操縦しても、強いはずがない!」
「ドジッ娘って言うな〜!」
 ゆかりはユタカに抗議しつつ、何とか校舎の壁を持って立ち上がった。
「仕方ない、普通の操縦席にするか・・・・」
「出来るなら最初からやってよ!」
 透子が座り込んだまま抗議の声をあげた。
 ユタカがコクピットをイメージし直すまで、しばし休戦。大河原は「MS戦がやりたいから」とその間、手出しをせず待ってくれた。
 マッサージ機のようなどっしりとしたシート、しっかりした操縦悍、何が何だか分からない計器類の並ぶコンソール、360度見渡せるフルスクリーン。そしてパイロットスーツに身を包んだゆかりは、あつらえたようにシートにスッポリ納まった。それもそのはず、ユタカがゆかり用にイメージしたのだから当然だ。
「ゆかり、聞こえるか?」
「うん、ユタカ」
「このオタ空間では、いかにこの世界に溶け込めるかがポイントになる。出来ればグンダムに登場するパイロットに成り切れたらいいが、ゆかりはよく知らないだろう。そこでだ、せめてセリフだけでもそれっぽくなるために、俺がスクリーンにセリフを送る! それを口にして戦うんだ!」
「う、うん、分った」
 早速、目の前のスクリーンに文字が表示された。文字はユタカが巳弥から借りたマジカルハットを介してパステルラビットへと送り込んでいる。
「えっと、ひめみやゆかり、ぱすてる・・・・」
「こら〜、感情がこもってないぞ、ゆかり!」
「だって読みながらなんだもん!」
「覚えろ、その程度! そして叫べ! そんなことではオタ空間の戦いには勝てないぞ! 相手を超えるオタクになれ!」
「無理だよ! って言うか、そんなのなりたくないよ!」
 と言いつつも、目の前の敵を倒さなければならないことはゆかりにも分っている。
「ようし・・・・」
 ゆかりは両手に操縦悍を握り、そして叫んだ。
「姫宮ゆかり、パステルラビット、行きま〜す!」
 バーニアが火を噴き、パステルラビットはジェノサイドグンダムに向かって飛んだ。
 一方、少し離れた場所に立っている真っ黒なMS。頭部には猫耳が2つ、手と足には爪がある。名前を「グンダムブラックキャット」、愛称を「コケティッシュキャット」と言う。
「相楽君、ゆかりのはゆかりをイメージしたんだよね?」
「そうだけど」
「あたしのも、あたしをイメージしたの?」
「そのはずだけど」
「相楽君が持ってるあたしのイメージって、こ〜んなに真っ黒なわけ?」
「そ、そんなことないですよ」
「どうして敬語になるのよ・・・・」
「黒猫ってのは可愛さと格好良さを兼ね備えた、気品ある動物なんだよ! そう、可愛さと聡明さを併せ持つ藤堂院さんに相応しいMSなんですよ!」
 何だかとても言い訳がましいが、言い争っている場合ではないので透子は諦めることにした。
 スクリーンにユタカの発信したセリフが浮かぶ。
「藤堂院透子、コケティッシュキャット、出るわ!」
 かくしてMS3機による、うさみみ中学を舞台にしたオタ空間での戦いが始まった。
「何か武器はないの!?」
 ゆかりの声に反応したかのように、コンソールに武器の表示が出る。パステルラビットは腰のアーマーの内側に収納されたビームサーベルを取り出し、ジェノサイドに向けて振り下ろした。
「やぁ〜!」
「ふん!」
 ジェノサイドもまた、サーベルを抜き放ちパステルラビットの一撃を受け止める。サーベルが交錯した部分から激しく火花が散った。
「貰った!」
 背後から近付いたコケティッシュキャットがジェノサイドにビームサーベルを振り下ろす。
「やらせはせん!」
 ジェノサイドの背中に畳まれていたカニの爪のような巨大なアームが伸び、コケティッシュキャットの腕をなぎ払った。
「きゃっ!」
 サーベルが飛ばされ、運動場の端まで転がる。
「ちぃ、2対1か・・・・倉崎君は何をやっているんだ? この空間には入っているはず・・・・MSのイメージが上手く出来ないのか?」
 ジェノサイドの左腕に、突然アタッチメントが現れた。二連のハンドビームガトリングだ。
「くらえ!」
 ガトリングから無数のビーム砲がパステルラビット目掛けて射出された。
「キューティーリップル!」
 パステルラビットのビームサーベルが新体操のリボンのようにしなやかな動きをしたかと思うと、螺旋となって身体全体を覆った。その回転に当たったビームがパステルラビットまで届かずに全て弾かれる。
「バリアーか!」
「キューティーリップルはビームエネルギーの回転からUFフィールド(Unnessesary Fear Field:恐怖を感じる必要のない領域)を発生させ、全てのビーム兵器を無効化するのよ!」
「小癪な。では物理攻撃ならどうだ!」
 ジェノサイドの右手に鎖付き鉄球が出現した。それを見たユタカが「おおっ!」と声を上げる。
「あれはマニアに絶対的な人気を誇る『グンダムハンマー』! くそ〜、こっちも装備させたかったが、女の子のイメージには合わないと思って断念したんだ、畜生、いいなぁ〜!」
 羨ましがるユタカを尻目にハンマーが振り回され、パステルラビット目掛けて投げつけられた。超重量のハンマーによる重い重い一撃を受け、パステルラビットはキューティーリップルもろとも吹き飛ばされた。
「いやぁぁ〜!」
「ゆかり!」
 ユタカはマジカルハットを被った。巳弥より頭が大きいので入らない。
「ユタカさん、何を!?」
「ゆかりをサポートする! こなみちゃん、君も来てくれ!」
「は、はい!」
 パステルラビットを吹っ飛ばしたジェノサイドはコケティッシュキャットに向き直り、ハンマーを振り上げた。
「そこっ!」
 コケティッシュキャットの腕のギミックが展開した。アームパーツが開き、肩の下に付いていたもう1つの手がビームサーベルを掴み、ジェノサイドに向かって畳まれた内蔵の腕が伸びる。
「何だと!?」
 ジェノサイドの拳が振り上げたハンマーごと切り落とされた。この伸びる腕こそコケティッシュキャットの強襲用隠し腕「ネコマネキ」だ。
「ぬうう! よくも!」
 大河原が操縦悍を一気に前方に倒す。ジェノサイドの足に装着されたバーニアが一斉に火を噴いた。そのままコケティッシュキャットに体当たりを食らわす。
「きゃぁぁぁっ!」
「透子!」
 透子のMSは巨体のタックルをまともに受けて吹き飛び、運動場にあるジャングルジムが下敷きになった。


31th Dream へ続く


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