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22th Dream 「いつか魔法のシンデレラ」
「痛いよう・・・・」
怪我をしたトモとレイコを連れ、ミホは保健室へと向かった。それをただ見送るみここ。結局、あの3人に鉄槌を下すことは出来なかった。自分があれだけ苛められてきたというのに、謝るミホを見るとそれ以上のことは出来なくなってしまった。
(正義の味方なのに。悪者は懲らしめなきゃならないのに)
倉崎から受け取ったマジカルアイテム。それを使って本物の魔女っ娘になれと言うのが倉崎の言葉だった。
みここはコスプレをするだけあって、正義のヒロインに憧れていた。そこに、今日のう〜ちゃんの事件、マジカルアイテムの入手。みここは運命だと思った。このマジカルハンマーを使って、う〜ちゃんの敵を取る、それが神様が自分に与えた使命とさえ思った。
(でも、あの子達は違う気がする・・・・ミホちゃんの目を見て、何となくそう思った。でも、だとしたら一体誰が・・・・)
みここは土曜日にう〜ちゃんとお話をした。月曜の朝には殺されていた。
土曜日に自分がう〜ちゃんと分かれてから今日の朝までに、誰かがう〜ちゃんを・・・・。
(あっ)
みここは土曜日にう〜ちゃんと別れた後、不審な人物を見かけたことを思い出した。
(あの人!?)
制服の上着に染みが出来ていた。洗っても落ちなかった、という染まり具合だった。赤黒くて、胸の辺りにべったりと・・・・。
(あれは、う〜ちゃんの血だったの?)
その人物は、鼻血で制服の上着を汚した村木卓だった。だがみここの心の中では、既に村木が犯人になっていた。
(あの人・・・・あの人がう〜ちゃんを・・・・!)
パステルステッキを握り締める。
「みここく〜ん!」
その時、みここ目掛けて倉崎が必死の形相で走ってきた。うさぴょんモードゆかりんのうさぴょんサーチにより理科準備室に隠れていた所を発見された倉崎は、残りの体力を振り絞って必死で逃げてきたのだった。
「倉崎さん!」
「おお、パステルリップ第2戦闘形態! 素晴らしい、感動だよみここ君!」
「そんなことより、どうしたんですか?」
「おお、そうだ、助けてくれたまえ!」
ほどなく、ゆかりと透子が追いついてきた。
「もう逃げられないぴょん!」
「姫宮さん!?」
「あれ、ひょっとしてみここぴょん?」
ゆかりんもみここも、お互い同時に「何で学校でコスプレしてるの?」という疑問が湧いた。
「ゆかり、知り合い?」
と透子が聞いた。
「みここちゃんはクラスメイトだぴょん」
「でも、何なの、あの格好・・・・」
「コスプレ好きな子なんだけど・・・・さすがに学校でするのはおかしいよねぇ・・・・」
倉崎はみここの後ろに隠れた。
「みここ君! あいつらをやっつけてくれっ!」
「え、でも・・・・」
「奴等はマジカルアイテムを手に入れ、良からぬことを企んでいる悪者なんだ。僕と君のマジカルアイテムを奪いに来たんだ!」
「ええっ?」
「みここちゃんも持ってるの? だったら、返して欲しいぴょん!」
みここはゆかりのことを「お友達になれそう」だと思っていた。ゆかりもそうだ。
だが、マジカルアイテムを奪おうとしている。
みここにとって、マジカルハンマーはとっても素敵なアイテムだった。コスプレは所詮、キャラクターの模倣だ。だが魔法で変身することによりそれは模倣ではなく実在するものとなる。今日貰ったばかりだが、みここの夢を叶えてくれる大切な物だった。
それをくれた倉崎にも恩がある。助けないわけにはいかない。
「みここ君、あいつ等をやっつけてくれ!」
「でも、戦えません、あたし、あの子たちとは・・・・」
「マジカルアイテムを奪われてもいいのか!?」
「ふにぃ・・・・」
「う〜ちゃんの敵を取らなくていいのか!? そのマジカルアイテムを奪われたら、敵が取れなくなるぞ!」
「ふにゅ・・・・」
そのやり取りを見ていた透子は「ぽよぽよとこたん」に変身し、肩叩きを展開させた。
「何だかもめてるみたいだね」
「ちょっと透子、どうする気?」
「大丈夫、みここちゃんって子には当てないから!」
光が集まり、1本の矢と化す。
「ラブリーエンジェル、ライトニングアロー!」
掛け声とともに光の矢が放たれた。それは真っ直ぐにみここに向かって飛んでゆく。
「透子〜!」
「大丈夫だって!」
みここが身をかわそうとした瞬間、ライトニングアローの軌道が変わった。
「えっ!?」
通常の矢なら有り得ない軌道を描き、ライトニングアローは倉崎の右腕上腕部に突き刺さった。
「ぎゃあ!」
その拍子に倉崎は自分の「魔法の塵取り」を地面に落とした。
(にわか魔法少女では対抗できないということか! ならば・・・・)
「みここ君、マジカルハンマーを貸してくれ!」
「え? でも・・・・」
「いいから!」
自分のマジカルダストパンにはほとんど魔力が残っていない。倉崎はマジカルハンマーを強引にみここから取り上げると、頭上にかざした。
「出でよ、ゲームの世界!」
「あ、あいつまた・・・・!」
周りの景色が歪む。息が苦しい。耳鳴りがする。
ゆかりと透子はまたしても倉崎のゲームワールドへと引き込まれてしまった。
ゆかりと透子の前には某アニメに登場する「世界一武道会」のような闘技場が広がっていた。
「何なの、これ・・・・」
「まさか・・・・」
「そのまさかだよ、藤堂院透子! それに、姫宮ゆかり!」
闘技場のステージ上に、倉崎が登場した。
「僕は喧嘩が弱い。みここ君も実践には不慣れだ。君たちには敵わない。そこでだ、この格闘ゲームで勝負して貰おう」
「格闘ゲーム!」
「それぞれ2人ずつメンバーがいるから、それぞれ格闘ゲームのキャラクターになって貰おう。残ったもう1人が、そのキャラを操作するんだ。但し、僕の設定したキャラクターの中から選んで貰うよ。何でもありだったら、とんでもなく強いキャラを作られてしまうからね」
「・・・・」
ゆかりと透子は、表情には出さなかったが内心「しめた」と思っていた。2人共ゲームは得意で、格闘ゲームもある程度こなしていてそこそこ強い自信があった。
「待って、2対2でしょ? 1勝1敗になったら、どうするの?」
「その時は好きなキャラで決勝を行えばいい」
「ゆかり、この世界には詳しそうだったけど・・・・」
「うん、この世界の登場人物になり切れば大丈夫だよ」
勝負は1人がキャラになり、1人がそれを操作する。ライフゲージがゼロになるか、時間切れの時にライフの少ない方がと負けで、それぞれ1本勝負。1勝1敗になった場合は決勝戦が行われ、その試合はどちらが出場しても良い。ゲーム内容はオーソドックスな格闘ゲームだ。ダメージゲージが上がれば一発逆転が可能な超必殺技を出すことが出来る。
「まず、キャラを選んでくれ。あ、宣言しなくていい。ゲームスタートの時に分った方が面白いし、先に相手のキャラが分ってしまえば、それに応じて相手の苦手なキャラを選択してしまうことになるからね」
メニューには、16人のキャラクターグラフィックと、必殺技の特性とコマンドが載っていた。だが、実際に使ってみなければ技の性質は分からない。
「ちょっと、あなたはこのゲームを作ったんでしょ? 何だかズルくない?」
透子が抗議をしたが、倉崎は聞いていない振りをした。
第1試合、ゆかりvs倉崎。
ゆかりは透子が、倉崎はみここがコントローラーで操作する。
コントローラーは今流行りのゲーム機の物とほぼ同じであった。コントローラーに慣れていないというだけでも、かなりの時間のロスとなる。
「あたしたちが勝ったら、そっちのマジカルアイテムを貰うわよ」
「さぁ、それは約束出来ないな」
「何ですって?」
「君たちは僕の世界の中にいる。今度は姫宮君に内容を変えられてしまうような失敗はしないように、プロテクトを掛けておくよ。君たちが勝てばここから出してあげよう。と言うより、君たちは勝ってここから脱出するしかないんだ」
(そうね・・・・まずはここから脱出しないとね)
透子はコントローラーを持った。みここも同じように構える。
選択されたキャラが登場する。
ゆかりはカラフルな衣装を身に纏った、一見して魔法少女という感じのキャラを選択した。このキャラの武器はステッキで、ナイスバディな大人に変身することも出来る。大人に変身できるのは本当のゆかりと一緒だが、ナイスバディという部分が大いに違っている点だ。
一方の倉崎は大柄な体格の男性キャラで、背はゆかりの2倍はありそうだった。
「でかっ!」
「フフフ、捻り潰してあげるよ、姫宮ゆかり・・・・」
「あれって卑怯じゃない?」
ゆかりがプレイヤーボックスにいる透子に話し掛けた。
「でもあの身体のお陰で動きは鈍いと思うわ。任せて、細かい動きで翻弄してみせるから」
「うん・・・・信用するよ、透子」
レディー・ゴー!
試合開始。まずは軽く様子見ということで、ゆかりはステッキを振っていわゆる飛び道具を放った。弾速はあまり早くない。
バシィ。
「おうち!」
だが意外にも倉崎の足にヒットする。相手のライフゲージが減った。
「あれ、当たった」
「み、みここ君! これくらい避けてくれないと・・・・」
倉崎が痛がっている所を見ると、ゲームの中でも攻撃を受けると痛いらしい。
「ご、ごめんなさい、その、どうやって避けたらいいのか分らなくて・・・・」
倉崎は自分の失敗を悟る。みここは格闘ゲームに関してはド素人だった。
「スティックを上に入れたらジャンプするから、それで避けるんだ」
「は、はい」
再び、ゆかりが飛び道具を出す。みここは言われた通りにジャンプするためにレバーを上に入れた。
「おうち!」
ジャンプした倉崎の足に攻撃がヒットする。ジャンプした時に攻撃を喰らって、倉崎は後方にぶっ飛んで倒れた。
「あ、あれ、ジャンプしたのに」
「さ、さっきのはしゃがみ状態からの飛び道具だからジャンプして避けるんだ、今のは立ち状態からの飛び道具だから、しゃがんで避けないと・・・・」
「え、で、でも、飛んで避けろって・・・・」
倉崎はこの試合を諦めた。
次の試合で自分がみここを操作して勝てばいい。そして決勝も勝てばそれでいい。
「一気に行くわよ、ゆかり!」
透子のコントローラーさばきで、ゆかりが倉崎に向かってジャンプする。落ち際に強パンチを出して倉崎の胸元にヒットさせ、着地したと同時に強キックを入れる。続いて弱パンチを連打し、最後に無敵時間のある上り強パンチでフィニッシュした。
「げひっ!」
倉崎のライフゲージが一気に半分まで減る。
「やった、凄いよ透子!」
「相手がノーガードだからね」
透子は追い討ちをかけず、距離をとって余裕なところを見せつけた。
「く、くそ・・・・」
「倉崎さん・・・・」
今にも泣きそうなみここ。格ゲー初心者のみここに、家にいる時は「喰う・寝る・ゲーム(又はテレビ)」の透子の相手は酷だ。
「みここ君、相手に近付いて相手側にレバーを入れながら強パンチだ」
「え? あ、相手に近付いてレバーを強パンチ?」
「とにかく相手方向にレバーを入れて強パンチ連打!」
「は、はい!」
のしのしと迫る倉崎。ゆかりは飛び道具を放つと、足にヒットする。それでもレバーを入れっぱなしなので、少し仰け反ってからそのまままた前進。攻撃を受けながらも倉崎はゆかりに迫ってきた。
「な、何だか怖い!」
でかいゾンビを相手にしているような気分だった。だがゾンビと違うところは、相手のライフゲージが確実に減っている点だ。
「みここ君、強パンチ連打!」
「ど、どれですか」
「赤いボタン!」
ぶん、ぶん、と倉崎のパンチが空を切る。身長差があるため、倉崎のストレートパンチはゆかりの頭上を空しく往復した。
「違う、もっと近付け! そしてレバーを入れたまま赤ボタン!」
「は、はい!」
ステージ端まで追い詰められたゆかりがジャンプで逃げようとしたが、でかキャラの倉崎を飛び越えることが出来なかった。
「ちょっと透子、端に追い詰められたよ!?」
「どうやって逃げよう・・・・」
倉崎の太い両腕が小さなゆかりを捕えた。
「きゃっ!」
そのまま持ち上げられ、ゆかりは倉崎に抱きかかえられてしまった。
「いや〜ん!」
「おりゃあ!」
強烈なサバ折りを仕掛けられ、ゆかりの身体に全身が砕けるかと思えるような痛みが走った。
「いや〜!」
叫んだ瞬間、サバ折りが解けてゆかりは開放された。
「みここ君! 相手を掴んだらそのまま赤ボタンを連打だ! 攻撃回数が増える!」
「は、はい!」
「ふんっ!」
ステージ端に追い詰められたゆかりは、またも倉崎のサバ折りを受けてしまった。
「ふん、ふん、ふん!」
(うへへ、姫宮さんの身体が僕にギュウギュウ押し付けられる・・・・)
「いや〜、この人、何だか目がやらしいよ〜!」
勝負を捨てた倉崎は自分の趣味に走り、みここにこの攻撃のみを要求した。だが予想外に効果的で、このまま逃がすことなくKO出来るような気がしてきた。
「みここ君、連打だ、連打だぁぁ!」
「ふにゅ、は、はいいい!」
みここはもうステージを見ていない。ただひたすら、レバーをゆかり側に倒したまま赤ボタンを連打していた。ゆかりは締め上げられ、解放されると同時にまた捕まれ・・・・という攻撃を繰り返し受け、逃げる隙を見付けられない。
「ふん、ふん、ふん!」
「ふぇぇぇ〜ん!」
突然ゆかりのキャラのコスチュームが破れ、飛び散った。
「ふえっ!?」
ゆかりは中に着込んでいたであろうスクール水着だけの格好になってしまった。
「な、何なのこれ〜!」
「そのキャラは一定のダメージを受けると、服が破れてしまうんだよ」
「だとしても、何でスクール水着なの〜!? 作った人、変態だ〜!」
「僕が作ったんだぞ、悪かったな! ふん、ふん、ふん!」
「あっ、あんっ、あぁ〜ん!」
スクール水着のゆかりが、倉崎にサバ折りを喰らい続ける。反撃も出来ないまま、ゆかりのライフゲージは4分の1を切った。
「と、透子〜!」
「・・・・」
透子は黙ってコントローラーを持ったまま答えない。
「ふふふ、どうやら藤堂院さんは諦めたようだね」
倉崎はサバ折りを繰り返しながら「姫宮さんにもう少し胸があったら嬉しいのに」と思った。
「おらぁ!」
「あぁ〜!」
ゆかりのライフは残り僅か。倉崎のライフは半分近く残っている。あと1回、サバ折りラッシュを受ければ負けてしまう。
「透子・・・・」
「お待たせ、ゆかり」
「え?」
透子の左親指が目にも止まらぬ速さで動いた。
「まさか!?」
倉崎が叫ぶ。ゆかりの「超必殺技ゲージ」が満タンになっていた。攻撃を受け続けたため、ダメージゲージが溜まったのだ。
ゆかりの全身が光る。その光が段々と大きくなってゆく。
「超必殺技『大人になるんだもん!』」
ゆかりの背が伸び、胸が膨らみ、ウエストが締まる。
「こ、これを狙っていたのか、藤堂院透子〜!!!」
「スーパー・アダルト・ボンバー!」
倉崎の身体全体に、アダルトゆかりのパンチとキックが無数に炸裂した。
殴られ、蹴られながら倉崎は「このナイスバディを抱き締めたかった」と思った。
倉崎のライフがゼロになる。超必殺技の威力はその時の状態により様々だが、ライフゲージの半分以上を減らすこともあるのだ。
YOU、WINの声が響いた。
「ちなみに・・・・」
仰向けに倒れたまま息も絶え絶えの倉崎。
「スク水の格好でアダルトになってフィニッシュすると、水着が小さくて食い込んじゃっていや〜ん、という勝ちポーズになるんだ・・・・」
違う意味で倉崎に恐怖を感じるゆかり。まさに「いや〜ん」だった。
第2戦、透子vsみここ。
倉崎はゲームおたくだ。ゆかりもゲーム好きとはいえ、格闘ゲームに関してはそれほど上手とは言えない。苦戦は必至だった。
みここは猫型モンスターのキャラを選んだ。武器はその爪。肌の露出が多く、腕と脚以外は大事な部分だけが毛皮で覆われている。マイクロビキニに毛を生やした、という感じだ。当然頭には猫耳とお尻には猫尻尾が付いている。ゆかりはそれを見て「ねこにゃんモード」のライバルだと思った。とはいえ、露出度で勝とうとは思わないが。
「ごめんなさい、倉崎さん。さっきの試合・・・・」
「いや、いい。思ったより健闘したと思うし、それに・・・・」
(僕自身、いい思いをしたからね)
「それに?」
「あ、いや、何でもない。それよりこの試合、絶対に勝つから安心してくれ」
「は、はい・・・・」
(ちょっと大胆過ぎたかなぁ・・・・)
普段は恥ずかしくて出来ないコスプレをしようと思い切ってこのキャラにしたのだが、Tバックぎみのお尻を気にするみここだった。胸も大きい為に、胸元が大きく開いて谷間が思い切り見えている。
「あの・・・・やっぱりキャラを替えてもいいですか?」
モジモジしながらみここが倉崎に問い掛ける。
「何故かな?」
「その、やっぱり恥ずかしくて・・・・」
「何を言ってるんだ、山城みここ君! 今の君はみここ君であって、みここ君ではない! 今の君は猫型モンスターのチャムキャットなのだ! その格好はチャムキャットにとってはごく当たり前の格好なのだ! 君もコスプレイヤーなら、チャムキャットに成り切っているのではないのか? だとしたら、恥ずかしいというセリフは出ない筈だぞ!」
「ご、ごめんなさいっ」
倉崎の剣幕に思わず謝ってしまったみここだが「確かにそうだよね」と納得してしまうあたり、コスプレイヤーの鑑だ。
(激しく動いても、落ちないよね?)
多少心もとない小さ目のブラを気にするみここだった。
一方の透子は、格ゲーで人気のある女性キャラを選んだ。人気があるから選んだわけではなく、露出が一番少ないキャラだったからだ。みこことは対照的に、露出している肌と言えば顔から首にかけてと、腕だけだ。武器は短刀だった。
(あれ、短刀?)
「しつも〜ん」
透子が倉崎に向かって手をあげた。
「ゲーム中で切られても実際は大丈夫だよね?」
「・・・・あぁ、痛い思いはするがな」
(ふん、あのコピーと同じ質問をしたな)
倉崎はコピー透子に負けた悔しさを思い出した。
「痛いんだ・・・・我慢してね、みここちゃん」
「ふ、ふにゅ・・・・頑張ります」
斬ったらみここが可哀想、とは思わない透子だった。実際は斬れていないのだから、遠慮する必要はないと思う。痛みも感じるということだが、痕が残らなければいいだろう。
「と言うことで、遠慮はなしだよ、ゆかり」
「う、うん」
頷くゆかりだが、透子ほど上手にプレイする自信がない。しかも、相手は倉崎だ。
(でも、ゆかりが負けても決勝戦で透子が勝ってくれるからいいよね?)
と思っていたゆかりだが、
「これで勝ったらあたしたちの勝利だからね。さっさと終わらせたいし、次にあたしが勝つとは限らないんだから」
と透子に釘を刺されてしまった。
レディー・ゴー!
23th Dream へ続く
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