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タイトル


 16th Dream 「PINCH!」


(何だったんだ、さっきのは・・・・)
 鵜川は夜の見回りの最中だった。何やら騒がしい声が聞こえたので駆けつけてみると、どうやら子供の喧嘩らしい。人騒がせな、とそのまま通り過ぎようとした鵜川だったが、門の傍からその喧嘩を見ている女の子が視界に入った。夜遅い時間に女の子がうろついて、しかもおそらく人の家を覗いている。警官として見過ごすわけにはいかなかった。
「君、こんな時間に何をしてるんだ?」
 こなみは驚き、ビクっと肩を震わせた。声を掛けたのが警官と分り警戒を解いたが、それでも子供にとっての警官は少し怖い印象を受ける。
「え、えっと、ここ、お友達の家で・・・・」
「だったら、どうして隠れているんだい?」
「えっと、その〜」
 こなみはタカシと同様、透子に話があってやって来たのだった。もちろんタカシの話なのだが、透子の家に来てみるとタカシがいるし、しかも村木と言い争っている。入るに入れず、門の外から様子を見ていたというわけだ。
 そうしている内に、村木が魔法を使う様子を見せたので、こなみがとっさに割って入って、魔法を浴びることになった。
 だが鵜川は当然、マジカルアイテムの存在を知らない。最初は、例えば花火のように光を放つ子供の玩具かとも思ったが、光を浴びた女の子の衣類が文字通り「吹き飛んだ」事を考えると、ただの玩具とは考えられない。
 では、マジックか? 何らかのトリックか?
 あれこれ考えている鵜川の横を、飛び出してきた村木がすり抜けて行った。
(何だ、あいつは・・・・)
 女の子の様子を見ると、マジックの標的に進んでなったわけではなく、無理矢理に衣服を脱がされたようだ。となれば、子供の喧嘩では済まされない。女の子の服を脱がしたのだから、立派な犯罪だ。
「待ちなさい、君っ!」
 鵜川は慌てて村木の後を追った。


「透子さんの所へ、行ってあげないの?」
 派手な玄関マットを羽織ったこなみは、背を向けたままのタカシに問い掛けた。
「私に気を使うことないのに」
「そんなんじゃないけど・・・・お前は俺を庇ってそうなったんだし、責任が・・・・」
「責任・・・・か」
「芳井?」
「そんな優しさなんて、いらない」
 こなみの声が震える。
「芳井?」
「行けばいいじゃない、透子さんのこと、心配だったら、行けばいいじゃない!」
「どうしたんだ、芳井? 何をそんなに・・・・」
「透子さん、魔法を使えるんだよ? なのに、どうしてタカシ君が戦ってるのに助けないの? 何もしないの? 元はと言えば、タカシ君には関係ないじゃない。透子さんが戦うべき相手じゃないの? なのに、自分だけ隠れて、信じられないよ、私!」
「・・・・」
(芳井、お前はそんなに人を悪く言う奴じゃないだろう・・・・どうしてそんなこと言うんだ? 確かに透子さんは、少し変だ。村木との間に、何かあったのか?)
「芳井、済まない。ちょっと行ってくる」
「どこへ・・・・行くの?」
「村木の家だ。奴の家なら知っている。俺、あいつをこのままにしてたら駄目だと思うんだ。今夜の内にマジカルアイテムとやらを奪い返してくる」
「そんな、だって魔法を使う人と戦えるわけないよ、タカシ君!」
「・・・・大丈夫、いざとなったらゆかりんに助けを求めるさ。透子さんはあんなだし。ごめんな、芳井」
 走り去るタカシの背中を見つめるこなみの肩に、玄関マットの重みがズッシリとのしかかった。


(遅い)
 MOTの隊員・笠目要は「ゆかりと透子のマジカルアイテム強奪作戦」を決行するため、姫宮家の近くにある空き地で村木卓と待ち合わせをしていた。ところが、約束の時間を1時間過ぎても村木の姿が見えない。
 ちなみに村木は「藤堂院透子リアルフィギュア作成大作戦」にすっかり思考を奪われ、笠目との約束は忘却の彼方だった。
(あいつ、怖気づいたか?)
 敵は女の子とはいえ、マジカルアイテムの所持者、しかもその扱いについては向こうが先輩であり、上手だと考えられる。村木が勝ち目の薄さを感じて怖くなったということは充分に有り得ることだ。
(だが、それでは正義の味方は勤まらないぞ、村木隊員)
 彼らのしようとしていることは、正義の味方からは程遠いし、第一村木は正義の味方ではない。
「ねぇ兄ちゃん、まだぁ〜?」
「おなかすいたよ・・・・」
「蚊が沢山いるよ〜」
 笠目の周りに、男の子1人、女の子2人。3人共小学生で、笠目の弟と妹たちだった。一番上の兄貴・要に命令されてこうしてついて来たのだが、具体的に何をするのかは聞かされていない。ただ、いつも兄に遊んで貰っている弟・妹たちは、普段の「戦隊ヒーローごっこ」より楽しいことだと言われたので、こうしてやって来たのだった。ちなみにこんな夜遅くに小さい弟や妹達を連れ回して両親は何も言わないのかという疑問が湧くと思うが、彼らの両親は共働きで、普段この時間はまだ帰宅していない。自然と長男の要が子供たちの面倒を見ることになり、弟・妹達は要になついていた。
「もう少し待っててくれ、もう少しだから」
(くそ〜、姫宮ゆかりはこんな時間までどこに遊びに行ってるんだ!? 悪い子はこの俺がお仕置きをしてやる!)
「腹減った!」
「帰ろうよ、お兄ちゃん」
「あたし、トイレ」
「あ〜、うっせぇ、静かにしろ!」
 近所迷惑なので、なるべく小さな声で注意する。要自身もいい加減、蚊に刺されたり腹が減ったりしてきたのは事実だ。
 何とか村木と連絡を取ろう、そう思った時、笠目の視界にゆかりが入った。隣にはもう1人、男性が一緒に歩いていた。
(父親? いや、確か父親は家にいるはずだ。となると・・・・)
(違う意味でのパパか!?)
「ここでいいよ、ユタカ」
「あぁ、今日はありがとな、ゆかり。すっかり付き合わせてしまって」
「ううん、割と楽しかったよ」
「なぁゆかり、今度は本当の姿で、その・・・・?」
(何だ?)
 ユタカは周囲の空気に違和感を感じた。例えるなら、長いトンネルから抜け出した時の感覚。いや、トンネルに入る時の感覚か。
「・・・・ユタカ」
「ゆかりも感じるか」
「うん・・・・」
「ゆかり、感じちゃう〜! か?」
 ゆかりがユタカの足を踏む。確かに下品な冗談を言っている場合ではない。
 遊園地にある、動物を形取った空気で膨らませたドームの中で跳ねて遊ぶ遊具。小さい頃、それで遊んだ感覚をゆかりは思い出した。
「な、何が起こってるの?」
「分からない・・・・俺から離れるな」
 ユタカは、周りの物音が一切聞こえなくなったことに気付いた。普段なら聞こえているはずの、近くの道路を走る車の音。夏場なので窓を開けている家から漏れるテレビの音、子供の声。遠くで吠える犬の鳴き声。全てが何者かに消されている。
 音だけではない。それらの気配すら感じられなかった。
(俺たち以外の全ての生き物が消えた・・・・? もしくは俺たちが別空間に閉じ込められた?)
 馬鹿な、とユタカは自分の考えを否定しようとした。だが隣にいるゆかりが「魔法少女」という非日常的な存在なのだ。何が起こってももはや受け入れるしかない。
「とう!」
「!」
 誰もいないと思っていた夜空から、何者かが飛んで来た。ユタカは慌ててゆかりを庇いつつ、横っ飛びでその攻撃を避ける。その拍子にアスファルトに肩をぶつける。
「ユタカ! 大丈夫!?」
「あぁ、大した事ない!」
 ユタカは体制を立て直し、追い討ちに備えて攻撃を仕掛けた相手に向き直った。
「あ〜っ!」
「何だゆかり、奴を知っているのか?」
「正義の味方、ソニックマンだよ!」
「正義の味方だったら、どうして俺たちを襲うんだ!?」
 全身シルバーのボディ。よく引き締まったとは言い難い体で、ソニックマンは腰に手を当てて仁王立ちになる。
「私は正義の味方だ」
「嘘つけ! それならどうして俺たちを攻撃する?」
 ユタカも負けじと睨み据えた。
「何故なら、お前たちが悪だからだ」
「こんな健全な市民を捕まえて、悪だと? 嘘を言うな、嘘を!」
「私を嘘つき呼ばわりしたから悪だ」
「それは俺たちを悪者だと言ったからだ!」
「嘘をつく者は悪者だ。自然の摂理だ」
「論点が堂堂巡りな気がする・・・・」
「それにお前はいい歳をして、中学生の女の子をこんな遅くまで連れ回している。立派な淫行だな。ロリコンは悪だ」
「人が誰を好きになろうが、勝手だろ! 悪者呼ばわりされる謂れはない!」
「ユ、ユタカ、そんなことよりロリコンを否定してよ・・・・」
 ゆかりが後ろから弱々しく指摘する。
 そこに、ゾロゾロとソニックマンの子供のような人物が3人現れた。
「うわ、あんなにソニックマンが!」
「フッフッフ、ソニックマンとは我らの総称なのだ! 俺はそのリーダー、ソニックレッド!」
 シャピーンという音と共に、ソニックレッドがポーズを決める。
「僕はソニック青!」
「馬鹿、さっき教えただろ! 青は英語でブルーだ!」
「あ、そうか、ソニックブルー!」
 ブルーがレッドに注意され、名乗り直す。
「あたしはソニックピンク!」
「ソニックグリーン!」
 次々と決めポーズらしきものを披露する彼らだが、いまいち決まっていない。
「5人揃って、ソニックマン!」
 笠目の頭の中で、ソニックマンの主題歌が流れる。
「お兄ちゃん、4人しかいないよ」
「お兄ちゃんじゃない、レッドだ!」
「レッド、5人揃ってないよ」
 笠目の頭の中の主題歌が止まる。
「くそ、全てあの村木隊員、ソニックイエローのせいだ!」
 ソニックレッドは肝心の決めポーズが1人欠けていたため、相当不機嫌らしい。
 ユタカとゆかりは、そんな光景をポカンと見ているしかなかった。
「なに、あれ・・・・」
「俺に聞くな。ゆかり、ソニックマンを知っているみたいだったじゃないか。もし仮にあいつが正義のヒーローだったら、俺たちは怪人と同格ということか?」
「こんな可愛い怪人、いないよ!」
「とあ!」
 ソニックレッドがふいにゆかり目掛けてジャンプした。
「きゃ!」
(そうだ、ソニックマンはマジカルアイテムで変身してるんだった!)
 キックをかわしたゆかりは「魔法の孫の手」を取り出し、ぷにぷにゆかりんへの変身呪文を唱えた。
「きゅんきゅんはぁとで華麗に変身、萌え萌えちぇんじでぷにぷにゆかりん、颯爽ととうじょ〜!」
「おお、魔女っ娘の変身シーン!」
 変身シーンを間近で見られると喜んだユタカだったが、ゆかりには何の変化もなかった。
「・・・・あれ?」
「どうした、ゆかり!」
「今日はほとんど使ってないから魔力は充分だし・・・・どうして変身しないの〜!?」
「ポーズとか、呪文が間違ってるんじゃないか?」
「これはゆかりが勝手に付けてるだけだから、変身には関係ないんだよ! おかしいなぁ、ソニックマンも魔法で変身してるはずなのに、どうしてあっちは使えてこっちは使えないの〜?」
「ソニックマンも魔法で?」
(この異様な空間が怪しいな・・・・向こうは魔法が使えて、ゆかりが使えない世界ということか? もしくは・・・・そうか、試してみる価値はあるな)
「ゆかり、俺にも魔法、使えるか?」
「え? ど、どうかな?」
「ちょっとそれ、貸してみてくれ!」
 ユタカがゆかりに向かって手を差し出す。
「え〜・・・・」
「嫌な顔するなよ! まるで俺が子供からオモチャを取り上げてるみたいじゃないか!」
「その例えは的を射てるよ」
「俺を信じてくれ!」
「う、うん」
 ゆかりから魔法の孫の手を受け取ると、ユタカは右手に持って「魔法を使う時の呪文は何だ?」と聞いてきた。
「そんなの、無くても使えるよ」
「言ってみたいんだ、教えてくれ!」
「わ、分ったよぅ。じゃ、ゆかりの後について言ってね」
「お、おう!」
 ゆかりが胸の前で手を合わせたので、ユタカもそれに倣う。
「みにみにすか〜と、ふりふりふりる!」ニッコリ微笑む。
「み、みにみにすか〜と、ふりふりふりる!」ニッコリ微笑む。
「ぱんちらた〜んで」回転する。
「ぱんちらた〜んで」回転する。ちなみにズボンだ。
「はぁとをげっと!」手を前に突き出す。
「はぁとをげっと!」手を前に突き出す。
「気持ち悪い!」
「恥ずかしい真似、させるな!」
 真っ赤になっているユタカだった。
「ユタカがミニスカートを履いてるシーンを想像しちゃったよ〜!」
「勝手に想像すんな! で、後はどうするんだ?」
「出したい物を念じながら、孫の手を振りかざして地面に向かって振り下ろすの。本当に地面を叩いちゃ駄目だよ!」
「おし!」
 ユタカは言われた通りに、華麗なゆかりとは違って豪快に孫の手を振り下ろした。  魔力が溢れ出し、やがて収束する。
「おおっ!」
 現れたのは、金属製の小さな物だった。ユタカはそれを拾い上げると、自分の手首に装着した。
「凄い、ユタカ、魔法が使えた! どうやったの?」
「まぁ見てろよ」
 その金属のアイテムは、ソニックマン達の着けている物と同じだった。
「チェンジ、ソニック!」
 ユタカが叫び声と共に金属を付けた腕を天に掲げる。
「何だと!?」
 驚くソニックレッドの前で、ユタカの身体が光に包まれる。
「まさか・・・・!」
「そのまさかだ!」
 そこには、黒いボディのソニックマンが立っていた。既存のソニックマン達よりは、はるかに格好が良い。
「参上、ソニックブラック!」
「ソ、ソニックブラックだとぅ!?」
「ど、どうして? ユタカ!」
 ゆかりがソニックブラック・相楽豊の傍に駆け寄る。
「これは推測だが・・・今、俺たちのいるこの世界は、閉じられた空間なんだ」
「閉じられた?」
「おそらくあいつの作った世界なんだろう」
 と、ソニックレッドを睨む。
「奴の世界、つまりヒーローの世界だ。ヒーロー物の世界に、魔法少女なんて出て来ないだろう?」
「うん」
「だから、変身できなかった。この世界に拒否されたんだ」
「世界が拒否?」
「俺は考えた。奴らも魔法で変身した存在なら、同じ世界の登場人物になればこの世界に受け入れられるのではないか、と」
「よく気付いたな」
 ソニックレッドがユタカの推理を肯定した。
「さすがは年の功」
「ほっとけ!」
 ユタカは更に孫の手を使い(今度は呪文抜きで)もう1つ、変身アイテムを出した。
「ほら、ゆかり」
「ふぇ?」
「変身するんだ。でないと、こいつらと対等には戦えない」
 ゆかりはユタカから受け取ったチェンジリングを手首にはめた。
「ちぇ、ちぇんじ、そにっく!」
 瞬く間に白いソニックマンが現れる。
「うわ、スカート、短い!」
 ソニックホワイト・ゆかりがスカートのすそを摘んで太腿を隠そうと引き下げた。
「アクションでのパンチラは特撮物のヒロインには必須なんだ」
「そ、そうなの!?」
「ちなみに本当のパンツではなく、白ビキニだから安心しろ。視聴者はそれを見てパンチラだと喜ぶ」
 妙な所で凝っているユタカも、相当なオタクらしい。
「ソニックブラックに、ソニックホワイトか・・・・相手にとって不足なし!」
 ソニックレッドは腰の鞘からソニックブレードを抜き放った。
「いざ、勝負!」
「受けて立つ!」
 ブラックもブレードを抜き、レッドの一撃を受け止めた。
「いい歳して大丈夫かよ、おっさん!」
「大人に勝てると思うなよ、小僧!」
 剣が火花を散らし2度、3度と激突する。
「とう!」
 レッドが夜空高くジャンプした。
「くらえ、レーザーソード・ブレード!」
「あ、あれはカエル怪人を倒した技・・・・! ユタカ、危ない!」
 ソニックホワイトことゆかりの叫びに重なって、ブラックの叫び声が響き渡った。
「ソニック・ライジング・ブレイカー!」
 ブレードを真上に構えたブラックが反動をつけ、飛来するレッドに向かって跳躍した。
「兄ちゃん!」
「お兄ちゃん!」
 ブルー、ピンク、グリーンは激しい戦いに入って行けず、ただ見守るしかなかった。
「レッド! 長年の恨み、今こそ晴らす!」
「恨みだと!? 俺が貴様に何をしたと言うのだ、ブラック!」
「お前は知らないだろう。俺と貴様は双子の兄弟だ!」
「な、なに!? い、いや、どう見てもその双子っていう設定はおかしいが・・・・」
「だが王子を継承するのはどちらか2人・・・・俺はただ生まれつき額に傷があるというだけで、王と王妃の策略によってこの世から抹殺されかけたのだ!」
「ま、まさか! 父上と母上がそんなことを!?」
「俺は崖から落とされた俺を助け出してくれた恩人の娘・ゆかりと共にお前たちに復讐する機会を伺っていたのだ!」
「ふぇ・・・・」
 よく分からない展開に、ゆかりもただ見ているしかなかった。
「父と母のしたことは俺が代わって謝る! だが俺も黙ってやられるわけにはいかない! 覚悟しろ、ブラック!」
「受けろ、レッド!」
 空中激突!
 ほぼ同時に地面に落下するレッドとブラック。アスファルトに打ち付けられ、2人の 体が跳ねる。そのままお互いに動かなくなる。
「兄ちゃ〜ん!」
「ユタカ!」
 ホワイト、ブルーらが駆け寄ろうとした時、レッドの手が動いた。
(ユタカが・・・・負けた?)
 ホワイトの脚が止まる。レッドはブラックに向かって言葉を搾り出した。
「ブラック、貴様・・・・手加減したな」
「・・・・お前こそ、レッド」
 ブラックも上半身を起こす。ホワイトはホッとして胸を撫で下ろした。
「何故だ、ブラック。お前は俺を恨んでいたはず・・・・くっ」
 手加減をしたブラックの一撃は、だが、レッドにかなりのダメージを与えていた。
「俺が恨んでいたのは父と母・・・・お前は何も知らなかったのだな。それに・・・・」
「それに?」
「お前が死んだら、あの子たちは誰を頼りに生きていけばいいんだ?」
 ブラックがブルー、ピンク、グリーンに目をやる。
「ブラック・・・・!」
 レッドの変身が解け、笠目要の目からは涙がこぼれていた。
「俺の・・・・負けだ」
 ガックリと項垂れる笠目。その周りに、2人の弟と1人の妹が集まってくる。
「お兄ちゃん!」
「すまない、お前たち・・・・」
 周りには、いつもの夜が戻っていた。
 家々からは一家団欒の声が聞こえている。遠くに電車の走る音、サイレンの音などが響いていた。ゆかりとユタカも、変身前の姿に戻っている。
「・・・・ユタカ」
「何だ?」
「ゆかり、さっきの戦いがさっぱり分かんないんだけど。ユタカ、勝ったの?」
「いや、勝ったのはあいつの弟や妹たちだ。俺は何もしていない」
「・・・・やっぱり分かんないや」


17th Dream へ続く


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