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タイトル


 14th Dream 「A Day Of Little Girl」


 ユタカが「ここだ」と言って降りた駅で、ほとんどの客が降車した。混雑したホームはほとんどが男性で、暑苦しい。
「どこへ行くのよ、この人達も同じ場所に行くの?」
「あぁ多分、いや、きっとな」
 やっとのことでごった返す駅から抜け出し、人の波に逆らうことなく道を歩いて行く。ほどなく、何やら大きな建物が見えてきた。
「あそこに行くの?」
「あぁ」
「何する所?」
「来れば分る」
「もう、教えてくれてもいいじゃないの!」
 文句を言うゆかりの目に、横断幕が飛び込んで来た。
「ゲームアンドキャラクターズコンベンション・・・・」
「通称ゲーキャラショーだ」
「ゲーキャラショー?」
「そうだ」
「ゆかり、辛いのは苦手」
「それは激辛ショーだ! ていうか、そんなショーがあるか!」
 ゲーキャラショー。半年に一度この会場で開催される、ゲームとキャラクターの一大コンベンションだ。新作ゲームの発表、ゲームに纏わるイベントやゲーム大会などが行われ、新作ゲームのテストプレイも可能だ。毎回何万人という人が訪れており、その筋では有名なショーだ。
「で、ユタカはこれを見たかったの?」
「あぁ」
「この姿のゆかりと来たかったのは、子供と一緒じゃないと恥ずかしいから?」
「・・・・それもある。だがそれだけじゃないんだ」
 ユタカは大きな人の波から逸れ、別の通路を歩いた。ゆかりもついて歩く。
「どこ行くの?」
「別の入り口さ。親子入場口」
「お、おや・・・・」
「親子と言っても、父兄でもいいんだ。小学生以下の子供と、父兄が優先で入れる入場口があるんだよ」
「ゆかりをダシに、空いているその入り口から入ろうっていうの?」
「頼むよ、今の時間だと、一般入場口を通ってたらあと3時間は入れないんだ。その内にグッズとか整理券の配布が終わってしまう」
「ユタカ、何歳だっけ。こんな子供のショーを見に来るなんて恥ずかしいよ」
「それは違うぞゆかり! ゲーキャラショーは決して子供だけのイベントではない! いいか、今やゲームは世代を超えたいわば文化、インターナショナルかつクリエイティブ、センセーショナルな分野なんだぞ!」
「ゆかりって呼ぶな〜!」
「そうか、呼び方だな」
 ユタカが顎に手を当てる。
「え?」
「父兄という設定だからな。俺はゆかりがお父さんと呼ぶには若いだろう。そうだ、お、お兄ちゃんと呼んでくれ」
「え〜、やだよ」
「お兄ちゃんに向かって、嫌だとは何事だ!」
「ふぇ〜ん、お兄ちゃんがいじめる〜!」
「あ、ご、ごめんなゆかり、お兄ちゃんを許してくれ」
「ゆかり、ソフトクリーム食べたいな」
「あぁ、買ってやるぞ。どんどん喰え、めいっぱい喰え、腹を壊すまで喰え」
「そんなに食べたくないよ・・・・」
「なにぃ、お兄ちゃんの買ったソフトクリームが食えないと言うのか!」
「ふぇ〜ん、お兄ちゃんが怒った〜」
「ご、ごめんなゆかり、お兄ちゃんが悪かったよ」
 以下、同じようなやり取り(コント)が会場時間まで繰り返されるので、省略。


「ねぇ、ユタカ」
「お兄ちゃんだ、間違うな」
「じゃあ、お兄ちゃん」
「何だ?」
「ここ、暑い」
 建物内はあちこちから聞こえるゲーム音や各企業ブースの音楽で、耳が痛くなるほどうるさかった。それに人ごみの多さもあるが、ゲーム機や大仕掛けのステージ、煌びやかな照明など、熱を発する機器が多い為に冷房が追いつかないほどの熱気だった。
「ユタカ、暑くない?」
「こら、スカートをつまんでパタパタさせるな」
「大丈夫だよ、見えないから」
「そういう問題じゃなくてだな・・・・お、ゆかり、こっちへ来てくれ」
「何よ〜」
 入場してから1時間も経っていないが、ゆかりはいい加減脚が疲れてきた。
「新作のプリティキャッチャーだ」
 プリティキャッチャーとは、ゲームセンターなどに置かれている、クレーンでぬいぐるみなどを掴み取る遊具だ。
「ゆかり、どれがいい?」
「え〜?」
 ゆかりも、こういう類は嫌いではない。よくゲームセンターに行った時には自分でちょこちょこと景品を取ったりしている。
 そのプリティキャッチャーの景品は、ぬいぐるみだった。しかし、一見何だかよく分からないラインナップだ。貼られているポスターには、こう書かれている。
「なつかし駄菓子ぬいぐるみ・・・・カレーせんべい、ソースせんべい、ふがし、ベビーラーメン、カップヨーグルト、いか君・・・・」
 ゆかりが小さい頃に食べた記憶がある駄菓子もあった。
 もちろんぬいぐるみなので、可愛い方が良い。だがクレーンで取れるかどうか、それを考えなければ、取れないものにお金をつぎ込むのは無駄と言うものだ。ゆかりもクレーンゲームは結構やる方なので、その形状から簡単に取れるかどうか、ある程度判断できる。
 せんべいのぬいぐるみは、平たいので掴む所がない。あえて言えば頭?に付いている紐をクレーンに引っ掛けるしかない。ベビーラーメンは四角く、クレーンが掴める幅より広く見える。カップヨーグルトは途中にくびれた部分があるので掴み易そうに見えるが、ゆかり自身あまり食べた記憶がない。いか君は茶色くてグネグネしていて、何だか気持ち悪い。
「ねぇユタカ、あれがいい」
 ゆかりはふがしのぬいぐるみを指差した。
「ん? どれだ?」
「あれ、あれ。ゆかり、太くて長いアレがいい」
「ふ、太くて長いアレがいいのか?」
「うん、あの黒いやつ」
「太くて長くて黒くて硬いアレが欲しいのか?」
「ぬいぐるみなんだから、硬くないよ」
「そ、そうか、ぬいぐるみか、そうだよな」
「何言ってるの?」
「よ、ようし、じゃアレを取ってやるぞ」
 100円硬貨を入れる。ボタンが光る。押す。クレーンが横に動く。もう1つのボタンを押す。クレーンが奥に移動する。ボタンを離す。クレーンが止まり、開く。降りる。ぬいぐるみを掴みにゆく。
「あ、掴んだ!」
 だがゆかりの歓喜空しく、ぬいぐるみはクレーンのアームをすり抜けて落ちた。空しくクレーンだけが元の位置に戻ってくる。残念さを現すような音が筐体から聞こえた。
「あ〜あ」
「アームの力は弱くないな。よし、今度こそ!」
 ユタカ、再チャレンジ。
「あ〜、惜しい〜!」
 クレーンの動きに一喜一憂するゆかり。
(こうして見ると、本当に子供みたいだ。でも、本当はあのゆかりなんだよな)
 確かに普段から子供っぽい所はあったが、この姿になったゆかりは本当の中学生だと言っても通用する。ユタカはそんなゆかりを不思議そうに見つめていた。
「どうしたの? ユタカ」
「え? いや・・・・」
「あ、取れた!」
「え? あ、本当だ、釣れた! ふがし、ゲットだぜ!」
 ゆかりはふがしのぬいぐるみをゲットし、抱きかかえたままユタカに連れ回された。抱き枕に丁度いい、とゆかりは思った。
 会場のある一角を通りかかった時、やけに目立つ衣装を来た人間が多いことに気付いた。しかも、そこは異様に女の子の人口比率が高い。
「ここは・・・・」
 そこはいわゆる「コスプレ」のコーナーだった。
 ゲームやアニメに出てくるキャラクターと同じ衣装を作り、それを着てキャラに成り切る。そんな子達の写真を撮らせて貰う男の子も多くいた。
 ゆかりにはほとんど何のキャラクターだか分からない。
「おお、あれは『マスタード!〜暗黒の洋ガラシ〜』のヒロイン! 凄い、あれは似てるぞ、体格までそっくりだ! あぁ、あれはちょっと酷いな。一見、何のキャラか分からなかったぞ。あれは『めろん120%』の眼鏡っ娘ヴァージョンだな。やっぱメロンのパンツを履いてるんだろうな。あの集団は・・・・? おお『魔法先生ツクね!』の生徒たちかっ!」
 ユタカは結構知っているようだった。
(ユタカってひょっとしてオタクだったの?)
 ゆかりはユタカのそういった面を、ほとんど知らなかった。
(これで本当に、付き合ってたって言えるの・・・・?)
「お、見ろよゆかり、あのパステルリップ、可愛くないか?」
 パステルリップは人気アニメなので、ゆかりも知っている。特に魔法少女物なので、当然のようにチェックしていた。
(あれ、あの子どこかで・・・・)
 パステルリップ第1戦闘形態のコスプレをした女の子を見て、ゆかりは「誰だっけ?」と首を傾げた。ちなみに第2形態の方が露出が高く、男の子に人気である。にも関わらず、その子の周りにはカメラを構えた男の子、女の子が沢山寄って来ていた。衣装だけでなく、髪型も体格もほぼパステルリップそのままだったこともあるだろう。なかなかコスプレ少女の中で「これは似ている!」と言える子は少ないのが現状だ。しかし本人たちにとってのコスプレは似ている、似ていないではない。好きなキャラと同じ格好をして、キャラに成り切る。心から成り切れるかどうかがコスプレを楽しめるかどうかなのだ。他人から見て似ているかどうかは、2の次だ。
「こっち、お願いします!」
「目線、下さ〜い」
 あちこちからカメラを向けられ、パステルリップは大忙しだった。
「決めゼリフ、お願いします」
 ビデオカメラを構えた男性に言われ、少しためらった後に女の子はポーズを決めた。 「正義のリップに真実のルージュ、悪を許さぬミラクルキッス! ミラクル戦士パステルリップ、ここに参上!」
(あれ、あの声・・・・)
 ゆかりは「どこかで見たことのある女の子だ」と思っていたが、声を聞いてその正体が分った。
「みここちゃん!?」
「えっ!?」
 パステルリップが振り返り、ゆかりと目が合った。
「ふにゅ、姫宮・・・・さん」
「やっぱりみここちゃんだ、ふにゅ〜!」
 パステルリップの正体は、クラスメイトの山城みここだった。普段は眼鏡をかけているため、すぐにみここだと気がつかなかった。
 みここはゆかりに見付かった途端、逃げ出す体制に入った。だが周りを囲まれているため、どこにも逃げ場は無い。あたふたと顔を隠すが、既に見付かっているので無意味な行動だった。
「ゆかり、知り合いか?」
「うん、同級生の山城みここちゃん」
「へぇ、同級生か。可愛いな」
「・・・・」
「どうした? ゆかり」
「ゆかりより?」
「へ?」
 そんなやりとりの間に、みここは「ごめんなさい、休憩時間です」と言ってタオルを羽織り、ゆかりとユタカのいる場所へと歩いて来た。
「凄いね、みここちゃん。そっくりだよ!」
「ありがとう・・・・照れちゃうな。何だか、恥ずかしい。こんなとこ、見られて」
「そんなことないよ、可愛いよ」
 みここはゆかりの服装を上から下まで見て、少し考える。だが自分の知っている範囲では、このような衣装のキャラクターは思い浮かばなかった。
「姫宮さんは、何のコスプレ?」
「・・・・これは普段着・・・・」
「あ、ご、ごめんなさい、その、あんまり可愛いから・・・・!」
 慌てて取り繕うみここに「気にしなくていいよ、可愛いって言ってくれて、ありがとう」とゆかりは微笑んだ。
「でも意外かも。みここちゃんって、普段は目立たない子だから」
「その・・・・みんなに言わないで欲しいの・・・・」
「どうして? うん、だったら言わないよ、誰にも」
「そんなに似てて可愛いんだから、胸を張っていいと思うけどな」
 ユタカが話に割って入った。
「こちらは?」とみここ。
「ユタ、えっと、お兄ちゃん、です」
「お兄ちゃんです」
 ユタカは自己紹介をした。
(お兄さんって、結構歳が離れてるんだ)
 みここはユタカを見てそう思ったが、失礼かなと思い言うのはやめた。
「声も何となく似てるしさ、胸の大きさも・・・・」
「ユタ、じゃない、お兄ちゃん! それ、セクハラだよ!」
「ああっと、ご免、えっと、みここちゃんだっけ? ごめんな、そんなつもりで言ったんじゃないんだ」
「いえ、いいんです・・・・」
 そう言いながら、みここは胸を隠して真っ赤になった。ちなみに第2戦闘形態になると露出が上がり、胸の谷間も強調される。向こうの方でそのパステルリップ第2戦闘形態のコスプレをしている女の子がいるが、みここよりも露出が高いにも関わらず、周りに集まっている見物人はあまり多くなかった。やはり露出の高さよりも似ているかどうかが重要なのだろう。
 そんな3人を、人影の向こうから見つめる人物がいた。
(山城みここ・・・・なるほど、彼女はパステルリップに相応しい人材だ)
(そして・・・・姫宮ゆかりか。彼女もここに来ているとはな)
 愛用のノートパソコンを脇に抱え、倉崎は3人を観察した。彼もこのゲーキャラショーには毎回足を運んでいる常連だ。
(コスプレ好きの美少女。普段は眼鏡をかけて目立たない存在、その実態は正義の魔法少女・・・・ふふふ、使える。使えるぞ、この設定は)


 コスプレブースを後にしたゆかりとユタカ。みここはまだまだ引く手数多の被写体となって忙しそうにポーズを決めていた。
「なぁゆかり」
「なに?」
「そろそろ人が多くなってきたからさ、はぐれないように・・・・」
「きゃっ」
 ゆかりの手が、ユタカの手に握られた。
「ちょっと、恥ずかしいからやめて」
「こんなに人が多いんだ、はぐれたら大変だぞ」
「・・・・そうだけど」
 お昼に近くなるにつれ、段々と人が増えて来た。通路も人で一杯になり、なかなか前に進めなかった。握り合う手と手に汗が滲む。
(ゆかりの手・・・・柔らかい。これって、やっぱり子供だから? そういえば元のゆかりの手って、どうだったっけ・・・・細かったのは覚えてる。こんなにぷにぷにしてなかったような・・・・)
「ちょっとユタカ、あんまりニギニギしないで」
「あ、ご、ごめん」
「可愛かったよね、みここちゃん」
「え? あぁ、さっきの子な」
「ユタカ、実はあんな子がタイプとか・・・・」
「な、何言ってるんだ?」
「ねぇユタカってさ・・・・やっぱりロリコンなの?」
「な、何を言うんだ、ゆかり!」
「明らかに動揺している・・・・」
「ば、馬鹿なこと言うなよ!」
「今日だって、ゆかりにこの格好して欲しいって言ったのも、実はこんな歳の女の子が好きで、一緒に遊びに来たかったとか・・・・」
「そ、そんなわけないだろ、俺はいつものゆかりが・・・・」
「どうせ、本当のゆかりは27だもん! こんなにお肌も綺麗じゃないし、枝毛だっていっぱいあるもん! 枝毛放題だもん!」
 ゆかりはユタカの手を振り払った。
「おい、ゆかり!」
「触らないでよ!」
 ゆかりは、ユタカが13歳のゆかりの手を握っている、それが本当の自分の手ではないと感じていた。ユタカが自分以外の若い女の子の手を握って歩いている。自分の手より、もっと綺麗で、柔らかくて、すべすべしていて・・・・。
「ユタカの馬鹿〜!」
「ゆかり、離れるな!」
「知らない!」
 あっという間に、人の流れに飲み込まれる。
 通路は人で埋まり、真っ直ぐ歩けない状態だった。大人でもその波に流されてしまい、思った方向に進むことが出来ないでいる。
 ゆかりの周りは、ほとんどがゆかりより背の高い男ばかりだった。
 暗い。周りが見えない。自分がどこを向いているのか、どこへ歩けばいいのか、どこまで歩けばこの状態から抜け出せるのか。
 分からない。
(ふぇ・・・・)
 大音量の音楽や、何かを叫んでいる声、周りの雑踏が入り混じって聞こえる。
 腕が当たる。脚を踏まれかける。偶然か故意か、誰かの手がお尻に当たる。
(いやっ、怖い)
 ただでさえ照明や画面を目立たせるために、会場内は暗い。ましてゆかりの周りは人で埋め尽くされ、真っ暗な中で手探り状態のまま、どこにいけばいいのか分からないまま小さな体が流されて行く。
(助けて・・・・)
 ゆかりは泣きそうになった。
(助けて、ユタカ!)
 ガシ、と腕が掴まれる。
「きゃ〜っ!」
「俺だ、ゆかり!」
「ユタカ?」
「はぐれるから手を離すなって言っただろ!」
 腕をグイ、と引かれ、ゆかりはユタカの傍に引き寄せられた。
「離すなよ」
「うん・・・・」
 ゆかりはユタカの手をしっかりと握った。


 会場を後にする人々がまばらに駅を目指して帰ってゆく。
「ごめんな、今日は付き合わせて」
 いかにも疲れていそうなゆかりの歩き方を見て、ユタカは済まなそうに謝った。
「ゆかり、足が痛い」
「そうだな、そんなに細い脚だもんな」
 ユタカはそう言うと、ゆかりの前にしゃがんだ。
「なに?」
「乗れよ、おぶってやる」
「い、いいよ、恥ずかしいよ」
「いいから乗れ。疲れてるんだろ」
「でもゆかり、ミニスカートだから・・・・」
「ちゃんと押さえてやるって」
 乗らないと動きそうにないユタカを見て、ゆかりはしぶしぶユタカの背に乗った。
「よっ」
 ユタカが立ち上がると、ゆかりの目線がグンと高くなった。
「きゃあっ、ユタカ、お尻触った!」
「スカートを押さえないと、見えるんだろ!?」
「スカートだけ押さえて、お尻は触っちゃ駄目!」
「んな無茶な・・・・それにしても」
「ん?」
「胸、全然ないんだなお前」
 ゆかりの所持していたふがしぬいぐるみが、ユタカの頭にヒットする。
「いてっ」
 ぬいぐるみなのであまり痛くはないが、とりあえず痛がるユタカだった。
「馬鹿、セクハラ大王!」
「だ、大王!? 俺はセクハラ国の王様か!?」
「大帝でも皇帝でも何でもいい、とにかく王様!」
「じゃゆかりはペッタン国の王女様だ」
「どんな国なの〜!」
「胸はないけど、みんな可愛い。特に王女様は群を抜いてつるぺただ。何しろ、王女様だからな」
 2発、3発、ふがしがユタカの即頭部にヒットする。
「馬鹿、降ろして〜! 自分で歩く〜!」
 そんな2人を、道行く人々がジロジロと見て通った。
「ゆかり」
「え?」
「誰でもいいわけじゃない。そりゃみここちゃんは可愛いと思った。だけど、可愛いと思うのと、自分に必要だと思うのとは別だ。確かに俺は可愛い子と一緒にここに来たかった。だけどそれは単に若くて可愛いからじゃない。ゆかりだから、俺はゆかりとここに来たかったんだ」
「ユタカ・・・・」


15th Dream へ続く


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