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タイトル


 6th Dream 「Missing Piece」


「もう騒ぎは収まったみたいだよ、ゆかり」
 「着替え中の教室大公開事件」は、着替え中の女の子たちが全員着替え終わった時点で一旦、収束した。その後、そのクラスの女子がカーテンを下ろした犯人を見付けるように学校側に申し立てた。
 そうしている内に、昼休み時間も後半になり、昼食を終えた生徒がそれぞれの休み時間を満喫していた。
「とりあえず巳弥ちゃんに話を聞こうよ」
 という透子の提案だったが、クラスメイトに会わずにこっそり巳弥に会う手段が思いつかない。
「そうだ、校長室に行こう」
 巳弥の祖父である校長に会い、そこに巳弥を呼び出して貰えばいい。ゆかりと透子は職員室の前を通らず、校舎裏の普段は鍵がかかっているドアを魔法で開け、誰にも見付からないように校長室に潜入した。
「き、君たち。どうしてここに? ひょっとして、マジカルアイテムの一件かな?」
 校長は2人の姿を見て驚いた。何しろ魔法が使えなくなった2人が、こうして中学生の姿になって現れたのだから。だが予めミズタマに今回の事件の内容を聞いていたので、すぐに状況は理解できた。
「また君たちの力を借りることになってしまったか・・・・すまないな、巳弥がもっとしっかりしていれば・・・・」
「そうだ、校長先生、巳弥ちゃんが魔法を使えないってどういうことですか?」
「なに? 巳弥がどうしたって?」
 どうやら校長の耳にはまだ入っていないらしい。ゆかりと透子も詳しくは聞いていないので、説明に窮した。
 そこへ、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。
「どうぞ」
 ドアを開け、入って来たのは巳弥だった。
「・・・・あっ」
 巳弥も2人の姿を見て驚く。ゆかりと透子も、今から呼び出して貰おうとしていた巳弥がやってきたので驚いた。
「2人共、どうして?」
 ゆかりと透子はミズタマからマジカルアイテムが盗まれたことを聞き、このうさみみ中で起こった事件との関連を調べるためにやって来たのだと説明した。
「ごめんね、犯人を見失っちゃって」
 あの時、犯人を捕まえていれば一気に事件は解決していたかもしれないと思い、巳弥は申し訳なさそうに頭を下げた。
「でもさ巳弥ちゃん、どうして魔法が使えなくなったのかな? 壊れちゃったのかなぁ、魔法の麦藁帽子」
「・・・・」
「とりあえず、ゆかりたちが解決するから安心して。犯人はこの学校の生徒だったんでしょ? 知ってる子?」
「ううん」
 この学校に通い始めて5ヶ月経つが、夏休みなどもあって学校に来ているのは実質3ヵ月半である。同じ小学校だと顔は知っているだろうが、合併等もあって同じ学年でもクラスが違えば知らない生徒が大半を占めていた。実際、犯人である村木は同じ1年の1組だが、巳弥たちのクラスとは合同授業の機会もなく、まして周りと付き合いの浅い巳弥は村木の顔を知らなかった。だが相手も同じ状況とは限らない。巳弥は今まで麦藁帽子に暑い日でも長袖にストッキングという、ある意味目立つ子だったのだ。相手は巳弥を知っている可能性がある。
「校長先生」
 ゆかりが校長に向き直る。
「ということで、ゆかりたちの転校は取り消しでお願いします」
「取り消しって、そんな簡単に・・・・」
 ゆかりと透子は既に転校したと教師にも生徒にも発表しているので、今更「やっぱり戻って来ました」とは言い辛い。それでなくても友達という関係でしかない2人が揃って転校してきて、また転校して、更に戻ってくるというのは、納得のいく説明をすることが困難だった。
 そう校長は2人に説明して「何とか学校に戻らずに事件を解決して貰えないだろうか」とお願いした。
「それは自分勝手ですよ校長先生! 事件だけ解決して貰おうなんて虫が良すぎます!」
「自分勝手って、君たちも相当・・・・」
「じゃ、いいんですか? このまま放っておいて、マジカルアイテムが大事件を引き起こしたら、誰が責任を取るんです? 盗まれた方が悪いって、トゥラビアの人に罪を償って貰うんですか? 可愛い生徒が、巳弥ちゃんがどうなってもいいって言うんですか?」
 真剣な顔で詰め寄る透子に、校長はたじろいだ。
「いや、それは・・・・」
「生徒が犯人だったら、生徒として潜入するのが一番だと思うんです」
「そうかもしれないが・・・・そうだ、丁度今、教育実習生が来ている。君たちも実習生ということで、どうだろう? ほら君たち、歳の割には可愛くて若く見えるじゃないか。大学生でも充分に通用すると思うが」
 校長はナイスアイデアが閃いたと思い、少しおだてて納得して貰うように務めた。
「教育実習って、先生の?」
 当たり前のことをゆかりが問う。
「もちろんだが」
「ゆかりが生徒に勉強を教えるの?」
「姫宮君、得意な教科は何だね?」
「う〜ん・・・・お菓子作り?」
「・・・・我が校は家庭科の実習生は受け入れておらんな」
「じゃあ、リボン結び?」
「それもどちらかと言うと家庭科だな。無理矢理に教科を当てはめるとしたら、だが」
「だってゆかり、勉強は苦手ですよ」
「一般常識を語るような口調で言われても困るが・・・・藤堂院君はどうかね? 得意分野は」
「んと、肩叩き?」
「どの教科にも分類出来ん!」
 校長は頭を抱えた。
「そうだ、巳弥。そこに生徒名簿がある。そいつで覚えている犯人の顔を探せばいい。見つけたら、早速ここに呼び出しをかけよう。これで首尾よく犯人を捕まえることが出来れば、君たちがこの学校に来る必要もないだろう」
 一安心といった表情の校長に、透子がシリアス口調で言った。
「校長先生知ってます? 盗まれたマジカルアイテムは全部で5つあるんですよ」
「な、何、5つも? そ、それは大変だ」
「でしょう?」
 1つだけなら、まだHな悪戯にしか使われていないのだから何とかなるだろうと軽く考えていた校長だったが、透子の話を聞いて事の重大さを認識したようだった。
 その間、巳弥は生徒名簿をくまなく見ていたが、なにしろ一瞬目が合っただけで、後は後ろ姿しか追いかけていないのだ。それに写真と実物では少し印象が違う。おまけに巳弥が一生懸命探している生徒は、名簿の写真を撮った時は髪が長かった。
「おじいちゃん、分からないよ。ごめんね、よく覚えてないの」
「む、そ、そうか・・・・それでは仕方ないな、うん」
 巳弥の申し訳なさそうな顔を見て、ついつい優しい声になってしまう校長だった。孫にはつい甘い態度になってしまう。
「では、やはりゆかりたちが巳弥ちゃんを護衛します。校長先生、可愛い孫娘のためにもゆかりたちが学校に通えるようにして下さい!」
 机の上に手をついて迫るゆかりに、校長は手を組んだまま諦めたような顔を向けた。
「分かった、私から君たち2人の転校は手違いだったと上手く説明しておこう・・・・」
「じゃ、明日からまた学校に通いますね!」
 飛び跳ねて喜ぶゆかりだった。実はかなり学校生活に未練があったようだ。
「そうね、だとするといきなり今日からあたしたちが構内をうろつくのもおかしいわよね。巳弥ちゃん、犯人に顔を見られた?」
「え、顔? うん、見られてると思うけど・・・・」
「だとすると、犯人が巳弥ちゃんを知っていたらやっかいね。口封じのために襲われる可能性もあるわ。巳弥ちゃんは今、魔法を使えないわけだし・・・・」
「そ、そうだな」
 校長が心配そうな顔で巳弥を見た。
「では校長先生、ゆかりたちは明日からしか学校に来れないので、今日は巳弥ちゃんを護衛出来ません。巳弥ちゃんはお昼から早退した、ということでよろしいでしょうか」
「あ、ああ」
 体調が悪くなったので早退したと言えば、巳弥を知っている者は「またか」と思うだけで怪しむ者はいないだろう。
「詳しく話を聞かせて、巳弥ちゃん」
「うん、あ、でも、危ないって言ったら、こなみちゃんも・・・・一緒に犯人を追っかけたから」
「え、そうなの? じゃこなみちゃんも早退させなきゃ」
「分かった、そっちも私から説明しておく」
 頭を抱える校長だった。だが、かつて巳弥のことでお世話になった2人には、実は頭が上がらないという気持ちもある。ある程度のお願いは聞いてあげなければ、と思った。
 かくして、ゆかりと透子は再び卯佐美第3中学に通うことになったのであった。


 担任の露里から「早退するように」と言われたこなみだが、詳しくは後で話を聞いてくれと言われて訳が分からないまま教室を後にした。まさか家で何か起こったのか、と露里に聞いたが、そういうわけでもないらしい。
(何なんだろ、一体)
「あっ」
 こなみが校門を出ると、ゆかり、透子、巳弥が立っていた。
(どうして・・・・)
 ゆかりと透子は中学生の姿だった。
「こなみちゃん、こっちこっち!」
 ゆかりに手招きされて、こなみは3人と一緒に歩き出した。歩きながら、ゆかりと透子が現状の説明をする。
「と言うことで、ゆかりたち、また学校に行くことになったから。また一緒だね!」
 ニコニコしているゆかりだが、こなみは別のことを考えていた。
(また、戻ってくる・・・・ゆかりんと、そしてとこたんも)
(透子さん、もうこの姿にはならないって思ってたのに)
(またタカシ君に会ってしまうんだ)
「こなみちゃん? 嬉しくないの?」
 心配そうに顔を覗き込むゆかりに、こなみは「う、ううん」と曖昧に返事した。
(どうしよう、私、透子さんのこと、好きなのに。好きなはずなのに)
(来て欲しくない。とこたんには、学校に来て欲しくないよ)
「ゆかりん!」
 道端の植え込みから、ヒョコっとミズタマが顔を出した。
「うわっ、ミズタマ、驚かさないでよ!」
「心配で様子を見てたんだじょ・・・・で、マジカルアイテムを盗んだ犯人は見付かったのか?」
「うん、それがね」
 ゆかりが現状をミズタマに話した。また学校に通うことになったこと、そんなわけで犯人を捕まえるまでマジカルアイテムを借りておくことになったこと。
「ゆかりんたちには、また迷惑をかけるな」
「ううん、気にしないで!」
 楽しそうなゆかりの顔を見て、複雑な心境のミズタマだった。結局、ゆかりたちの思う壺になっている気がしてならない。
「それにしても、よく何か盗まれる国ね、トゥラビアって」
「ぐっ、透子、相変わらずきついこと言うじょ」
「そもそも、どうしてマジカルアイテムが盗まれるわけ?」
「それがな・・・・」
 話が長くなるので、ミズタマは4人が向かっている透子の家に着いてから話すことにした。透子の家は今、親が旅行中で透子だけしかいないため、秘密の会議を開くにはもってこいの場所だった。


「けいさつ・・・・」
 女の子は困っていた。
 ゆかりに「警察署に行くように」と言われたのだが、聞いた通りに歩いてみても、目的地らしきものは見当たらない。
 歯科、電気店、理容、割烹、派出所。どこまで歩いても「けいさつ」は見付からない。
(あの人、いい人っぽかったから、嘘はつかないと思うんだけどな)
 あの人とは、ゆかりのことである。
 その少女・あずみは、ある店の前で足を止めた。
「秋本理容・・・・りよう・・・・りよ・・・・」
 あずみは莉夜の手掛かりがあるかと思い、秋本理容に入ってみることにした。
 あずみは莉夜と「空飛ぶホウキ」に2人乗りをしている途中で、トゥラビアの追っ手から逃れる為に無茶な運転をした莉夜のおかげで地上に落ちてしまった。気を失っていたのか、それからしばらくの記憶がない。気付いてみれば辺りはすっかり明るくなっていて、莉夜がいなかったというわけだ。
「いらっしゃ〜い!」
「わ」
 秋本理容に入った途端に威勢良く声を掛けられて、あずみはその場で立ち止まってしまった。
「どうぞ〜、空いてますよ」
「えと、その・・・・」
「カットですか、お客さん、初めて?」
 なかなか元気のある女性定員だった。ショートカットで、水色のショートパンツに白のブラウス。9月に入ったとはいえ、まだまだ世間の夏は終わっていなかった。
「お父さん、お客さんだよ!」
 店の奥に向かって、その店員はよく通る声で父親を呼んだ。実際に理容師免許を持っているのは父親の方らしい。
「理子、そんなに大声を出さなくても分かってる」
 のっそりと姿を現したのは理子と呼ばれた20歳そこそこと見られる女性の、父親であり秋本理容店の主人だった。
「お、これは可愛い娘さんだ」
 あずみを見るなり、父親の背筋が伸びた。
「いやぁ、最近の若い娘さんはみんな美容院とやらに行ってしまって、うちのような散髪屋には来てくれなくてねぇ。全く、チャラチャラした格好で馬鹿話ばかりして、美容院じゃなくて病院に行けと言いたくなるよ」
「お父さん、そんなこと言ったら逃げられちゃうよ!」
 理子が小声で父親に耳打ちする。だが、あずみにはしっかりと聞こえていた。あずみの聴覚は人間の平均値の10倍はある。
「さぁ、ちょっとサービスしていつもの倍は切ってあげるよ、お嬢ちゃん!」
「切り過ぎだっての!」
 手の甲を父親に向け、ツッコミのポーズを取る理子。
「あ、ごめんね、まぁ、座って頂戴」
 理子が椅子を回してあずみを招く。あずみは「断ったら可哀想」という気持ちになり、言われるまま椅子に座った。
 ちなみにあずみの髪は人間と同じく伸びる仕組みになっているが、本物の頭髪ではない。
「髪型は今のままでいい? 少し変えてみる?」
「あの、ここは髪型を変えるお店なのですか?」
「え? ええ、そうよ」
「えっと、その・・・・長くしてみたいので、少し伸ばして下さい」
「出来るかっ!」
 理子はお客さんに対して、思わず普段通りのツッコミを入れてしまった。
「あ、ごめんなさい、もう、冗談言わないで」
「はっはっは、面白いお嬢さんだな」
 理子と父親が笑う。あずみは何が面白いのか分からない。
「あの、ごめんなさい。私、人を捜してるんです」
「え? お客さんじゃないの?」
「・・・・ごめんなさい」
「なぁんだ、早く言ってよねぇ」
 理子は怒った様子もなく、あずみの首に巻こうとしていた布を解いた。
「で、誰を捜しているの?」
「りよちゃん」
「りよちゃん、か。あたしと名前が似てるね。あなたとどういう関係? 歳は? 特徴は?」
「りよちゃんは私の友達で、歳は14歳。魔法使いに憧れてて、ちょっとだけわがままで人に迷惑をかけたりもするけど、本当は優しい子です」
「あの、外観の特徴を教えてくれると助かるなぁ」
「はい、背は私と同じ147cm、ポニーテールで少し痩せ型、スリーサイズは70・54・74。いなくなった時の服装は、真っ黒な魔法使い風のミニのワンピースにマント、それに鍔広の帽子です」
「・・・・」
 莉夜の特徴を聞いて、妙な子だと理子は思った。コスプレをしている最中にはぐれたのだろうか、と推測した。
「そもそも、どうしていなくなったの? 遊んでる途中でいなくなったの? それとも家出?」
「遊んでる途中・・・・です。ウサギさんに追っかけられて・・・・」
「ウサギ?」
(魔女のコスプレでウサギに追われる? 不思議の国のアリスか何かかしら?)
 理子はそろそろ目の前の少女も、りよという子も「変な子かもしれない」と思い始めた。面倒なことになる前に、出て行って貰った方がいいのだろうか。
「そう言えば、名前を聞いてなかったわね」
「名前は、あずみです」
「あずみちゃんね。苗字は?」
「みょうじ?」
 首を傾げるあずみに、ますます不安になる理子。
「あるでしょ、ほら、私だったら秋本、秋本理子」
「あずみはあずみだけです・・・・りよちゃんがいつも『あずみちゃん』って呼んでます」
「う〜ん、どう言えば分かってくれるかなぁ」
「あ、ひょっとして苗字が『あ』で、名前が『ずみ』?」
「そんなわけないでしょ!」
「じゃあ苗字が『あず』で名前が『み』?」
「そりゃ、そういう名前も無いとは言えないけど・・・・ねぇ、あずみちゃん」
 理子は苗字を諦め、あずみで手を打った。
「りよちゃんを捜してるんでしょ? 警察に行ってみたら?」
「けいさつ? あ、それです、そこに行きたかったんです!」
「そ、そうだったの。早く言ってくれれば良かったのに」
 こういう場合、警察に任せてしまうのが一番手っ取り早い。幸い、歩いて100メートルの場所に派出所があるのだ。
「じゃ、行こうか」
「はい!」
 あずみは理子の後について、秋本理容を後にした。
 秋本理容店のある商店街から右に折れると、すぐに派出所が見えてくる。理子は近くに警官がいるというのは、防犯の意味で頼もしく思っていた。
「こんにちは〜」
 と言ってから、もう夕方なので「こんばんは、だっけ?」と思った理子だった。
「はい・・・・」
 薄暗い派出所の中から、1人の警官が顔を出した。
「きゃ」
 理子は警官の顔を見て、思わず声を出してしまった。目の周りや唇の端が、青紫になって腫れていたからだ。
(きょ、凶悪犯と格闘でもしたのかなぁ〜)
 理子はその風貌から思わず逃げる体制を取ってしまったが「警官だから怖がる必要はない」と思い直した。
「この子、人を捜してるみたいなんです」
「人を?」
 その警官・鵜川は、あずみをじろじろと見た。
「じゃ、私はこれで」
 立ち去ろうとする理子に、鵜川は声を掛けた。
「待って、君は、この子とは?」
「今、会ったばかりで。全然関係ないんです」
「そう、じゃ行っていいよ」
「じゃあね、あずみちゃん。りよちゃん、見付かるといいね」
「はい、ありがとうございます、親切にして頂いて」
 ぴょこっと頭を下げたあずみを見て、少し悪い事をした気がした理子だった。
(ううん、私は交番に連れてきてあげたんだもん、親切だもん! 決して、人に任せて放っておくんじゃないんだもん・・・・)
 手を振るあずみに笑顔を作って、手を振り返す理子だった。
(でももし、あの子が変な子じゃなかったら私、一緒に捜してあげたんじゃないの? おかしな子だと思ったから、お巡りさんに任せようって思ったんじゃないの?)
 自問しながら理子が店に戻ると、父親がキョロキョロしていた。
「理子、さっきの子は?」
「うん、派出所に連れて行ったよ。人捜しだから、その方がいいかなって」
「派出所って、あの派出所か?」
「そうだけど?」
「昨日あの前を通ったんだがな、あの警官、何か1人でブツブツ言ってたんだ。『許さない』とか『いなくなればいい』とか・・・・」
「えぇ?」
 先ほどの警官の不気味な顔を思い出し、理子は不安になった。
(ひょっとしてあの人、危ない人なの!? 私、そんな人にあずみちゃんを預けちゃったの!?)
「まぁ、おかしくなる気持ちも分かるがな・・・・あんなことがあっては」
 父親の呟きを聞かず、理子は店を飛び出した。
「理子!?」
(あずみちゃんごめんね、無事でいて!)


7th Dream へ続く


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