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遅刻戦隊オクレンジャー
第8話「遅刻戦隊よ永遠に」


「おい、おっさん!!もっとスピードは出ないのかよ!?」
 既に池里の呼び名を「長官」から「おっさん」にしてしまったオクレレッド。
「まだだ・・・・間に合うか、間に合わないかの瀬戸際、その時に爆発するCSPの力・・・・これが遅刻戦隊の、そしてこのオクレプリンスの原動力なのだ」
「間に合わなかった時の事を考えていないようだな」
「アクアマリン、君は悲観的に物事を考えるな。良くない傾向だ」
「あんたが楽観的すぎるんだ!!」
 巨大怪人が槍杉研究所に迫った。どう考えても間に合わない距離だ。
「おっさん!!無理だぜ、間に合わない!!」
「むぅっ」
 流石に池里も無理だと思った。いくらオクレプリンスがCSPによって信じられない力を出そうが、瞬間移動する以外に間に合うはずがなかった。
 が、その時!!
 研究所の天井が開き、巨大な建造物の様なものが現れたのだ。建造物・・・・そう、まるでそれは中世の「城」だった。
「お城・・・・?」麗華が言った。
「おっさん、あれは・・・・」
「分からん、あれは一体・・・・?」
 その「城」はゆっくりと浮上した。そう、それは巨大要塞だった。
「よう、池里長官!!」
 不意に通信機になんとも陽気な声が飛び込んできた。
「誰だ!?」
「おいおい、忘れてるんじゃないだろうな、この俺を!! 自分が選んでおいて、そりゃないだろう!? オクレンジャーの指令官にして6人目の適格者オクレレインボーこと、このチー・エンを!!」
「なにぃ!?」
「6人目!?」
「へぇ・・・・」
「いたの!?」
「ふにぃ?」
「6人目・・・・おお、留学中の教師見習い、チー・エンか!! そうそう、お前は確か遅刻の帝王チー・エン!! そういや第1回の収集に呼んだはずだが!?」
「悪い、遅れちまってな。今来たってことにしてくれ」
(お、遅い!!)
 池里を含む、オクレプリンス搭乗者全員が思った。さすがは遅刻戦隊最後の人・・・・。
「合体するぜ、用意しな!!」
「なに、合体するのか、その城と!?」
「おう、このオクレキャスルとオクレプリンスが合体することにより、究極の兵器が誕生するんだ!!」
「むう、いかに多くの玩具を子供に買わせようとする販売計画にマッチした、いかにもな戦隊物ロボットだ・・・・。さすがは槍杉博士・・・・」
「行くぜ、究極合体フォーメーション!! オクレカイザー!!」
「まてぇい!! キングとクイーンが合体してプリンスはいいとしよう、だが、何故にプリンスとキャッスルが合体してカイザーになるんだ!? ちょっとおかしくないか!?」
 アクアマリンがはりきっているチー・エンに水を差した。
「いいんだよ!!子供にキングやカイザーが何たるか何て分かるもんか!! 要は、ゴロが格好いいかどうかだ!!」
 やはり池里と同じく、現実と子供向け番組との境目があやふやである。
「つべこべ言わずにボタンを押せ!!」
 レッドはしかたなくボタンを押すことにした。例のごとく、変形に信じられない程の時間がかかる。今回は究極変形ということで、オクレキャッスルの変形がこれまた嘘のように時間がかかった。
「見よ、これが槍杉博士作の究極兵器、オクレカイザーだぁ!!」
「素晴らしい!! これぞ芸術、これぞ戦隊ヒーローだぁ!!」
「・・・・あの、お2人とも、お取り込み中に申し訳ないんですけど・・・・」
「なんだ、ピンクハウス」
「既に研究所は見る影もないんですけど・・・・」
「なにぃぃぃ〜!?」
 そう、槍杉研究所は巨大怪人の手により壊滅していた。
「しまった、遅かったか!!」
「くっ、これで侵略者に対抗し得る兵器は、このオクレカイザーのみになったということか!!」
「おっさん、敵が攻撃してきた!!」
「おい、操縦がきかないぞ!!」
「おお、オクレカイザーになったら俺が操縦するんだった」
 チー・エンが落ち着き払って言った。
 「早くしろぉぉ!!」
 ドカァァァァ・・・・ン。
 オクレカイザーの腹から背中のオクレキャッスルにまで敵の腕が突き抜けた。
「おい、ヤバいんじゃねぇかぁ!?」
「駄目、エネルギー炉がやられてるよ!!」
 情報コンソールを見て、バイオレットが叫んだ。彼女が叫んだのは生まれて初めてかもしれない。
「脱出だ!!各自脱出ポッドの発射ボタンを押せ!!」
「これだな!!」
 池里を含む7人が各々、脱出ボタンを押した。
 オクレカイザーの体のあちこちから火花が散り、火が吹きだし始めた。
「おい、おっさん!! この脱出ポッドとやらはいつ発動するんだ!?」
 既に全世界にセメオトス帝国の手が伸びていた。さらに追い打ちをかけるように宇宙船にして数百もの本陣が地球上空に姿を現したのであった。

 何もかもが遅過ぎた。

 遅刻戦隊オクレンジャー 完


ED「遅刻もいいじゃん」

  遅刻して 廊下に立った 足腰強くなるぜ
  おまけに バケツ持たされた 腕力がつくぜ
  放課後 グランド10周 スタミナ付くぜ
  漢字の書取り テストに役だった イエー!
  遅刻もいいじゃん 遅刻もいいじゃん
  細かい事にクヨクヨせずに でっかく生きようぜ



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