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タイトル


 23th Revenge 「トランスソウル奪還」


 紅葉阿権は焦っていた。
 危険を冒して手に入れたトランスソウルの使用方法が分からない。こうしている内にも、先にトランスソウルを入手したであろう柳原に先を越されてしまう。
 阿権は古いタイプの人間である。
 魔法などという妖しげな力は信じないし、存在しない物だと思っていた。だがエミネントという世界があり、調べて行く内に魔法は存在することが分かった。
 強く願えばそれが叶う。要は欲する事を現実にする超能力だ。
 魔法の存在は受け入れた。そうなれば人は魔法に過度の期待をする。コンピューターが万能であると勘違いする人間と同じように、阿権もまた魔法さえあれば何でも出来ると思い込んだ。
 魔法さえあれば、紅葉グループが柳原コーポレーションを抑え、トップ企業になる。そんな妄想の最中に、柳原が魔法のアイテムを手に入れたと聞き、阿権は焦った。
 同じ力を手に入れなければ、紅葉は負ける。
 メビウスロードの監視はエミネント側の監視搭で行われているが、そのデータはこちら側の機関へも送られる。異空間を行き来する重大な施設であるから、誰が、いつ、どこへメビウスロードを繋いで通行したかが分かるようになっていた。
 つまり、柳原はそのデータを入手したのだろう。エミネントが来るのを知り、こちらに来た所を捕まえた。
 阿権も同じデータを入手し、研修生である神無月奈々美がまだエミネントに帰っていない事を突き止め、一人になった所を見計らって拉致に成功した。
 もちろん、政府にばれると大変なことになる。だが阿権は「魔法は万能」であると考えているので、先に魔法を使えるようになれば、政府への対応も可能であると思っていた。「いざとなれば魔法がある」、この危険な考えが阿権を支配していた。
 研究室の扉が開き、白衣の男が出て来た。阿権はその男に「どうだ?」と聞いた。マジカルクルスとマジカルロザリオが使えるかどうかという質問だ。だが白衣の男は阿権の期待に副える反応は示せなかった。
 首を振る男に阿権は「そうか」と言い、ポケットから携帯電話を取り出し、ボタンを押した。
「私だ。こちらは手詰まりだ。例の小娘から使用法を訊き出せ。なに、ちょっと脅せばすぐに教えるだろう。言わない場合? 多少手荒くなっても構わん」
 通話が切れたのを見て、白衣の男は阿権に向かって頭を下げた。
「機械的なことなら何とかなると思ったのですが、構造は普通の金属でした。魔力という目に見えないものはどうも扱いようがなく・・・・」
「いや、無理な事を言ったな。元々お前には専門外だ。悔しいが仕方あるまい。後はあの小娘が素直に教えてくれるといいのだがな」


 ピンポーン、と呼び鈴が鳴ったので、ナナは男に「お客さんですよ」と声を掛けた。
(誰だ・・・・?)
 男は警戒しながら、玄関に足音を立てずに近付いた。警察かもしれない、と考える。だが覗き窓から外を見ると、そこには社長の息子の顔があった。
(社長の坊ちゃんがここに何の用だ?)
 社長の息子が来た理由は分からないが、ドアを開けないわけにはいかない。男がドアチェーンを外すと、光輝が「さっさと開けろよ」と言って入って来た。続いて後から二人の少年が入って来る。光輝と同じくらいの年齢だった。
 光輝はリビングのソファに座っているナナを見付けると、ニヤリと口元に嫌な笑みを浮かべた。
「お前がエミネントか」
「・・・・そうですけど」
 ナナは背筋を伸ばした。トランスソウルの手掛かりがやって来たのだと思った。
「へぇ、結構可愛いんじゃねぇ?」
「・・・・」
 光輝にジロジロと見られ、ナナは負けじと見返した。
「おい、おっさん」
 光輝はナナを監禁していた男を呼ぶと、縛り付けてないのかと訊いた。
「そんなことをしなくても、その子は大人しかったものですから」
「大人しい・・・・か、いいねぇ」
 何がいいのかナナには分からなかったが、何となく嫌な感じのする少年だった。
「名前は?」
「・・・・神無月奈々美」
「ナナミか。お前に聞きたいことがある。あのネックレスと十字架の使い方だ」
「ネックレスは首に巻くアクセサリーで、十字架は神様にお祈りする時に使います」
「ふざけるなよ」
 光輝はナナにゆっくりと近付いて行った。後ろにいる男もナナが座っているソファの後ろに回り込んだ。
「言いたくなるようにしてやる」
 いきなり、ソファに座っているナナに光輝がのしかかった。
「きゃっ・・・・な、何を!?」
「大人しくしろよ」
 光輝がナナの両肩を押さえ込む。それを見て男が叫んだ。
「何をしているんだ!?」
「うるせぇ、下っ端。お前は黙って見てろ。いいもの見せてやるから」
 光輝は笑った。光輝の合図で、二人の少年はナナの両腕をソファの後ろから掴んだ。
「やめなさい、何をする気だ!?」
 男は光輝の肩を掴んだ。
「うるせぇ! クビにするぞ!」
「!」
「いいのかよ。親父に言えばお前の首なんてすぐ飛ぶぞ。廊下に出てろ、この野郎」
「・・・・くっ、で、ですが・・・・」
「出てろっつってんのがワカンネェのか!」
 男は光輝から手を離し、離れた。光輝は「フン」と鼻で笑い、再びナナにのしかかった。光輝の脚がナナの脚の間に割って入る。
 ナナが叫んだ。トランスソウルがなければナナは普通の十五歳の少女だった。
 男は耳を塞ぎ、慌ててドアを開けて廊下に飛び出した。
 クビになるわけにはいかない。男には守るべき家族がある。愛する妻と二人の子供がいる。この歳だ、今の会社を放り出されては再就職は難しいだろう。働き口が見付かったとしても、今の収入には到底及ばない。ローンに追われ、家計は苦しくなるだろう。
(見ず知らずの女の子だ・・・・あの社長の馬鹿息子に何をされようが、知ったことではない。俺には家族があるんだ、俺は何もしていない、俺が悪いんじゃない! ただ見て見ぬ振りをするだけだ、それだけで今まで通りの生活が保障されるんだ!)
 光輝のことだ、クビにすると言えば一人の社員をクビにすることくらい、平気でするだろう。こんな馬鹿げたことで職を失うわけにはいかない。
 ナナの叫ぶ声が聞こえ、男は耳を覆った。


 お嬢さん、おいくつなんですか?


 ナナとの会話が頭に蘇る。
 もし自分の娘だったら? それでもクビになることを恐れるのか?
 いや、ナナは娘じゃない。しかも自分たちとは違う、エミネントだ。
 エミネントだからどうなってもいいのか?
(違う・・・・)
 両親は五年前に亡くなった、とナナは言っていた。ならば悲しむ者もいない。だから・・・・。
(だからどうなってもいいと言うのか?)
 両親がいないからこそ、あの子を守ってやれるのは・・・・。
 男は勢い良くドアを開け、部屋に駆け戻った。
「な、何だお前!」
 ナナを押さえ付けていた光輝が慌てて振り返る。その顔面に男の拳が炸裂した。吹っ飛んだ光輝はテーブルの角で頭を打ち、そのままソファとテーブルの隙間に落ちた。驚いた残り二人の少年はナナから手を離し、逃げ腰になる。ナナはボタンをいくつか外されていたが、まだ脱がされてはいないようだった。男はナナを庇うように抱き寄せると、少年達に「死にたくなければ出て行け」と恫喝した。
「お、俺は、女とやれるからって言われて、付いて来ただけなんだ!」
「お、俺も!」
 少年は足を縺れさせながら、必死で部屋を出て行った。その後で光輝が鼻血まみれの顔で起き上がった。
「てめぇ、クビじゃ済まねぇぞ・・・・」
「お前も鼻血だけじゃ懲りないようだな、クソ坊主」
 男が凄むと光輝はフラフラした足取りで先に逃げた少年二人を追った。
「覚えてろ、親父に言いつけてやる!」
 捨て台詞を吐き、光輝も逃げて行った。
「やれやれ・・・・」
 男は自分にしがみ付いているナナの頭を撫でた。
「ごめんな」
「ありがとう、ございます・・・・」
 ナナの体は熱く、震えていた。
「怖かったんだな・・・・済まない」
 男はナナの震えを、恐怖から来るものだと思っていた。いや、恐怖には違いない。だがナナが恐怖を感じたのは少年に対してではなかった。
 ナナは呼吸を整えた。
(あの時と同じ・・・・)
 胸の奥が熱く、何かが突き上げてくるような感覚。
 廃工場でキョーコの手下にリンチされた時。体の中が熱くなり、抑えのきかない力が爆発した。
 マジカルロザリオがない今、ナナの魔力を抑える物はなかった。あの時と同じ現象が起きれば、この部屋は吹き飛んでいただろう。自分を助けてくれたこの男も無事では済まなかった。
「奈々美ちゃん、行こう」
 男がナナの肩を抱く。
「行く・・・・って?」
「君の大事な物を、取り戻しに」


 男はナナを地下駐車場に停めていた車の助手席に乗せ、発進させた。
「俺の勤めている会社は紅葉興行、紅葉グループの一企業だ」
「くれは?」
「紅の葉と書く。エミネントの君には耳馴染みはないかもしれないが、日本人で知らない人は珍しいだろう」
「紅葉・・・・」
 ナナはその苗字に聞き覚えがあるような気がした。だがすぐには思い出せない。
「おそらく君のマジカルアイテムとやらがあるとすれば、科学研究所のある本社ビルだろう。そこに向かう。まぁ科学研究所が魔法ってのもおかしな話だがな」
「あの、でも、そんなことをしたら・・・・」
「俺はもうクビ決定さ。これ以上何をやっても、何度もクビには出来ない。それに、奴等は君から無理矢理に奪ったという後ろめたさがある。俺を警察に突き出すわけにはいかないだろう」
「ごめんなさい、あたしの為に・・・・」
「君の為・・・・とはちょっと違うな」
「え?」
「恰好良く言えば、自分自身の正義の為・・・・かな?」
 話している間に、男が運転する車は本社ビルの地下駐車場に到着した。
「だがここからが問題だな。どうやって取り戻すか・・・・まずどこに君の大切な物があるか、だな」
 ナナはしまった、と思った。
 男の勢いに乗って紅葉本社まで来たのはいいが、こちらには何の準備もない。咲紅に連絡が取れれば手助けして貰えたのに、と後悔した。せめてセルフ・ディメンションが使えれば侵入は容易いのだが。
 咲紅に直接連絡を取る手段はない。ナナは携帯電話を取り上げられているので、星澄家にも真樹にも連絡が出来ない状態だった。
「君はここにいてくれ。俺は社員だから社内に入れるが、君は無理だ」
「でも・・・・」
「心配しなくていい」
 男は車を降り、一人で歩いて行ってしまった。
 その時。
(!?)
 ナナは車のドアを開け、神経を研ぎ澄ました。
(感じる・・・・誰かがディメンションを張っている! この感じは・・・・)
「小松さん!?」
 ナナは男を追った。
「待って下さい、一緒に・・・・!」


「ぎゃああっ!」
 紅葉阿権は頭を抱え、カーペットの上で転げ回った。その様子を貴美愛が冷ややかな視線で見下していた。
「あなたに個人的な恨みはない。私の恩人に対するお礼として、あなたに悪夢を差し上げるわ」
 貴美愛はそう言いながら、マジカルバイブルのページを繰った。
(これが槻島さんを巻き込んだ交通事故かしら・・・・)
 悪夢の中の一頁に目を通す。
(脇見運転。散歩中の歩行者に突っ込み、犬を撥ねる。歩行者は手の平に傷を負う軽症。助手席に座っていた長男の緋駆(ひかる)はその事故で失明。会社を継がせようと思っていたが目が不自由では何かと不便な為、次男に継がせようかと思うが、兄と比べると明らかに出来が悪い。母親に似たのだろうか・・・・)
 随分と腹の立つ内容だが、事故の瞬間の表情は恐怖に歪んでいた。
(これを悪夢に設定してあげるわ)
「はぁ、はぁ・・・・」
 阿権は頭を押えながら起き上がると、貴美愛を睨んだ。
「何の真似だ、貴様・・・・」
「槻島さんの代わりに、あなたに罰を与えに来たわ」
「槻島・・・・?」
 阿権はしかめっ面でしばらく考えていたが、思い出したのか、渋い表情で頷いた。
「・・・・あぁ、あの娘か」
「ようやく思い出したようね」
「罰とはどういう意味だ? あの娘はたいした怪我をしていなかったはずだ」
「犬を轢いたわ」
「犬? あの雑種か? 馬鹿を言うな。あんな犬ごとき、二、三十匹は買える金をくれてやったんだぞ」
「・・・・ステラは世界に一匹よ」
 貴美愛は眼鏡の奥から阿権を見下ろした。
「ステラだかカステラだか知らんが、ふざけるのもいい加減にしろ! こっちは息子の目を失くしたんだぞ、犬ごときで何を言っている!」
 阿権は立ち上がり、貴美愛に掴み掛かった。それを見てリュックから兇が飛び出し、阿権の手を掴んだ。
「き、貴様、ど、どこから出てきた!?」
「そんなことはどうでもいい」
 兇は阿権の腕を掴む手に力を入れた。
(こいつがあの子の犬を・・・・そうか)
 兇は泉流に出会った時の事を思い出していた。溝にはまった仔犬を助け上げていた時の泉流の優しい目、仔犬を撫でる手。
(だからあの子はあの仔犬に対して、あんなに優しかったのか)
 泉流の愛犬を殺した男。
 だが本人は全く反省していない。まるで物を壊しただけのような言い草だ。泉流がどれだけステラを大切にしていたかなど、考えたこともないのだろう。
「い、痛い、離せ!」
 阿権の声が震える。言葉は命令口調だが、明らかに状況は不利だった。
「兇、後は私が」
 貴美愛は兇を制し、阿権の前に立ちはだかった。
「あなたはお金で何でも解決出来ると思っている人種・・・・」
 マジカルバイブルが開く。バイブルの放った光は紅葉阿権を包み込んだ。
「デッドリー・ナイトメア」
「ぎゃあああああ〜!」
「悪夢の中では、お金は通用しないわ」
 貴美愛の眼鏡が光った。
「社長!」
 阿権の叫びを聞き、社長室に何人もの男が入って来た。中にはガードマンのような服を着た者もいる。
「よっしゃあ、出番だぜ!」
 兇が威勢良く飛び掛ると、先頭にいた男が絶叫と共にカーペットの上に倒れた。
「し、侵入者だ! 捕らえろ!」
 ガードマンらしき男が怒鳴る。それを合図に兇を目掛け、一斉に男達が飛び掛ってきた。
「男は近寄るなあっ!」
 兇のナッコーが上下左右前後、ありとあらゆる方角から来る男の攻撃を撃墜した。社長室のあちこちに血が飛び散り、叫び声が上がる。その中で一人の男が叫んだ台詞が、貴美愛の耳に入った。
「くそっ、あのエミネントの小娘の仲間かっ!」
(あのエミネント? 小娘?)
 誰の事だろうか? 思い付くのはナナか咲紅だけだ。だが貴美愛にはこの会社との接点が思い浮かばなかった。
「兇、その男を締め上げて」
「仰せのままにっ!」
 兇は楽しそうに男の首根っこを捕まえた。まるで猫が鼠を狩るような動きだった。
「エミネントの小娘って、誰のこと?」
 貴美愛は兇に締め上げられた男に訊いた。
「あ、あのマジカルアイテムとやらを取り返しに来たんじゃないのか!?」
「マジカルアイテム? どんな?」
「ネ、ネックレスと十字架だ」
(神無月奈々美のトランスソウル・・・・何故、ここに? 奪われたとでも言うの?)


 一方、ナナと男は状況は分からないが社内の混乱に乗じ、潜入に成功していた。
「ここが研究室だ」
 二人はドアの前まで来たが、ドアはロックされていた。重要な施設である為にカードがなければ入れないのだ。ちなみに男は権限がないのでカードは持っていない。
(さて、どうするか・・・・)
 侵入方法を考える間もなく、前方から数人が廊下を走る音が聞こえた。男とナナは慌てて身を隠し、息を殺した。
「エミネントが例の物を取り返しに来たらしい。何としてもここだけは守れ!」
「はいっ!」
 白衣を着た男はポケットからカードを取り出し、ドアのロックを解除した。会話の内容から、この部屋に「例の物」がある事は明らかだ。おそらくナナのソランスソウルだろう。
「行くぞ」
 男は飛び出し、白衣の男に体当たりを浴びせた。怯む他の男には蹴りと拳をお見舞いする。その隙にナナは倒れた男が落としたカードを拾い上げ、ドアを開けて部屋の中へと侵入した。
「あった!」
 ナナは机の上に置かれたマジカルロザリオを首に掛け、マジカルクルスを持ち、元の大きさに戻した。
「うわあっ!」
 多勢に無勢、ナナの相棒の男は五人の男に袋叩きに遭っていた。
「これさえあれば!」
 ナナがマジカルクルスを振ると、白衣の男達は目に見えないロープで足を縛られ、一斉に床に倒れた。
「大丈夫ですか!?」
「あ、ああ」
 ナナは男の手を取り、起き上がらせた。マジカルクルスの光を浴びると、男が殴られて怪我をした部分がたちどころに治ってゆく。
「こ、これは・・・・」
「治癒魔法です。さぁ、早く!」
 ナナは男の手を引くと、セルフ・ディメンションを展開した。これで追っ手からは二人の姿は見えなくなる。
(小松さんがいる・・・・でも、ここは・・・・)
 貴美愛がこのビルにいるとしても、現時点ではここから脱出する事が先決だとナナは考える。どういう理由で貴美愛がここに来たのかは不明だが、この状況では捕らえることは難しいだろう。
 そしてナナがディメンションを張ったことで、貴美愛もナナの存在に気付いていた。
(捕まっていた? 紅葉が、どんな理由で神無月奈々美を?)
 ナナの魔力が遠ざかる。
 ガードマン達は私の事を仲間だと勘違いした。取り戻しに来た、と言うことはトランスソウルを奪われていたということ・・・・ディメンションを張ったのだから、取り返したと考えていいわね。この混乱に乗じて? だとすると私がその手助けをした事になる・・・・)
 貴美愛の目の前には、紅葉の社員やガードマンが所狭しと倒れていた。全て兇が一人でやったことだ。
「少しは運動になったな」
 兇はポキポキと指を鳴らした。
 傍らでは紅葉阿権が呻き声を上げていた。おそらく、気絶したことにより一度目の悪夢を見ているのだろう。
「目的は達したわ。帰るわよ、兇」
「へ〜い」
 兇は暴れたからか、上機嫌で貴美愛のリュックに戻った。
(解せないわね)
 貴美愛は紅葉阿権の部屋を後にした。
(紅葉が神無月奈々美のトランスソウルを奪った。考えられるのは魔法の悪用以外にないわね。この世界の野心家が魔法に目をつけないはずが無い。いずれこういう事が起きるのは安易に想像が付いたけど・・・・それにしても強引過ぎるし、神無月奈々美がこの世界に戻って来ている事を知っているのも・・・・いえ、そうね、紅葉ほどの企業なら裏から手を回す事も可能。メビウスロードのデータを手に入れていてもおかしくは無い、か)
(姫、どうかした?)
 亜未がずっと無言の貴美愛を気遣った。
「いえ、ちょっと考え事をしていただけよ。色々と面倒な事になりそうだから、さっさと用事を済ませるわ」
(計画外のことをするとろくなことがないわ。敵に塩を送ってどうするの。私が紅葉に手を出していなかったら、神無月奈々美はトランスソウルを取り返せなかったかもしれないと言うのに)



24th Revenge に続く




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