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タイトル


 9th Revenge 「カウント」


 咲紅が驚くのも無理はなく、その名はトップシークレットの中心人物だ。だが咲紅は平静を装い「誰のこと?」と訊いた。
「・・・・」
 ナナは咲紅の表情を観察した。僅かだが、目が泳いでいる。
「あたしが五年前に出逢った人です。ピンクの衣装で、ツインテールで、真っ白な羽根を付けていました」
「そ、その人が何か? 五年前のことでしょ? よく覚えてるわね」
「忘れられるはずがありません。だってその日は・・・・」
 ナナの視線がテーブルの上に落ちた。
「父が亡くなった日ですから」
 咲紅と真樹は、どう反応していいか分からなかった。しばらく静寂が続き、ナナが話を再会した。
「これはあたしの勘ですけど、ゆかりさんが伝説の『イレーザー』じゃないかと思っています」
「・・・・どうしてそう思うの?」
「だから勘です、って言いました」
「・・・・」
「そして、この世界の人じゃないか、って思いました。これも何となくです。あたしがこの世界に研修に来たのは、ひょっとしたら逢えるんじゃないかって思ったのも理由の一つです」
「・・・・会って、どうするの?」
「だって、直接会えたらイレーザーについての話が聞けるじゃないですか」
「でもそれは、ナナちゃんの勘に過ぎないんでしょ?」
「そうです。でも・・・・」
 ナナは咲紅の目をじっと見た。
「咲紅さんなら、それが事実かどうか知ってるんじゃないですか」
「・・・・」
 咲紅は言い返せなかった。否定しなければならないと思ったが、ナナの目を見ると嘘をつけない気がした。
「・・・・まぁ、いいですけど。咲紅さんはあたしを信用していないみたいですから」
「ナナちゃん、ひょっとして私の事、恨んでる?」
「どうしてですか」
「圭ちゃんのことよ」
「・・・・恨んでなんかいません。咲紅さんはご自分の仕事をしただけですから」
「その言い方、その顔。どう見たって割り切ってるように見えないんだけど」
「割り切れても割り切れなくても、決まりは決まりじゃないですか! 咲紅さんを個人的に恨むなんてこと、しません!」
「ちょっと待った!」
 真樹の腕が、ナナと咲紅の間に割って入った。
「やめよう、とにかくここでは周りに迷惑だから」
 真樹に言われてナナと咲紅が店内を見渡すと、お昼前で結構な客の入りだった。二人が恥ずかしそうに座り直したのを見て、真樹も姿勢を正した。
「今のナナちゃんは、ちょっと機嫌が悪いみたいだ。いい子じゃない」
「もう子供じゃありません」
「子供です。俺から見たら子供です。とにかく落ち着こうよ、疲れてるんだよ」
「真樹さんと違って若いですから、疲れなんてすぐ取れます」
「その言い方が、いつものナナちゃんじゃないって」
「いつものって、真樹さん、あたしと会ったのはほんの三週間前じゃないですか、何を知ってるって言うんですか?」
「三週間どころか、一日で分かったよ。君はいい子だ」
「・・・・買いかぶりです。前にも言いましたよね、あたしはそんないい子じゃないです」
「いい子だからこそ、小松さんを逃がしたことを悔やんで、何か事件を起こす前に捕まえなきゃいけないって焦っているんだ。でも倒れてしまって、咲紅さんの力になれるかどうか自信がない時に、咲紅さんが信頼している人に出会って、自分では勝てそうにないって落ち込んで、更に咲紅さんが何も教えてくれないから面白くないんだろう? もっと力になりたいのに、信用されてない。そんな焦りは、やっぱりナナちゃんが真面目でいい子だから生まれるんだよ」
「・・・・」
 ナナは膝の上に握った両手を置いたまま、黙っていた。

 ナナが化粧室に行く為に席を立った時、咲紅が真樹に話し掛けてきた。
「真樹さん、ナナちゃんのことよく分かってるんですね」
「え、そうですか?」
「ええ。私よりよほどあの子のことを理解している気がします」
 咲紅が少し落ち込んでいるように真樹には見えた。
「難しいです、あの歳頃の女の子は」
「・・・・咲紅さんがそんなこと言ったら、二十七歳男性の俺にはもっと難しいですよ」
「ひょっとして真樹さん、ナナちゃんのこと・・・・」
「えっ」
「・・・・いえ、それはないですね」
 咲紅が何を言い掛けたのか、真樹は思い切り気になった。
「実はここだけの話、圭ちゃんはまだ生きてるんですよ」
「え、そうなんですか?」
「エミネントに連れて帰って、すぐにこんな事態になったでしょう? 圭ちゃんをジャッジメントに連れて行く間がなくて」
 ジャッジメントが禍津夜光によって崩壊し、機能しなくなったことで圭ちゃんの刑の執行がまだ成されていないのだが、その事情は真樹には言わずに置いた。
「でもそれを言うと、ナナちゃんにまた辛い思いをさせるでしょう? いずれは執行されるわけだから、今はまだ生きてますって言ってもぬか喜びなだけで」
「ええ、確かにそうですね・・・・」
「法を守るのも、結構大変なんですよ」
 咲紅は作り笑いを浮かべた。その顔からも疲れが見て取れる。真樹は自分に出来ることは何でも力になろう、と改めて決心した。


 何度かチャイムを鳴らしたが誰も出て来ないので、澤田麻美(通称:アサミ)は樋川家の玄関ドアを引いてみた。
「何だ、開いてるのか」
 アサミは樋川家の玄関にお邪魔すると「キョーコさーん」と叫んでみた。だが応えはなく、静まり返っている。
(変だなぁ)
 アサミはキョーコから「来てくれ」という電話を受け、こうして樋川家にやって来たのだった。アサミは電話での、元気の無いキョーコの声が気になっていた。
「上がりますよ」
 何度か遊びに来ていて、勝手は分かっている。アサミは階段を登り、キョーコの部屋を覗いてみた。
「何だ、いるじゃないですか、キョーコさ・・・・」
 キョーコは部屋の隅に座り込み、膝を抱えていた。その顔には覇気がなく、目は落ち込み、隈が出来ている。腕には赤い痣が多数あった。
「キョーコさん、ど、どうしたんですか!?」
 アサミが慌てて駆け寄ると、キョーコは顔を上げた。
「アサミ・・・・」
「誰ですか、誰にやられたんですか、この傷は!」
「この傷は・・・・」
 キョーコは空ろな目で自分の腕を見た。
「これはあたいが自分でやった・・・・」
「え、な、何を言ってるんです? 誰かと喧嘩したんでしょう?」
「小丸の奴・・・・」
「小丸!? あの小松貴美愛ですか? まさかあいつが? 仕返しにやって来たんですか!?」
 アサミはキョーコの額に何かが書かれている事に気付いた。それは「正」の文字だった。
「な、何ですかこれ? 流行のタトゥーですか?」
「・・・・これはカウントだ」
「カウント?」
「あたいは寝ると、必ず同じ悪夢を見る・・・・それはどこで目が覚めても、次に目を閉じれば必ず続きから始まる・・・・最初は横棒一本だった。次にTの字になり、棒が足されて行き、正の字に・・・・これはあたいが悪夢を見た回数だ。巻き戻り、最初から始まるとカウントアップされてゆく・・・・」
 キョーコは痣だらけの腕を、爪を立ててつねった。
「な、何してるんですか!?」
「寝ない為だ・・・・寝ると、またあの夢を見る・・・・」
 キョーコの腕から血が滲み出た。
「ち、血が出てますよ!」
「見れば分かる・・・・」
 キョーコの目は空ろなまま、アサミに返事をしていた。
「あの夢を見るくらいなら、痛い方が、マシ、なんだ・・・・」
「やめて下さい、キョーコさん! 何なんですか、その夢って! 何で同じ夢ばかり見るんですか、小丸が何をしたって言うんですか!」
「あたいが教えて欲しいんだよ!」
 キョーコはアサミを腕で突くと、そのまま前のめりに倒れた。
「くそ・・・・瞼が・・・・閉じ・・・・」
「キョーコさんっ!」
「アサミ・・・・あたいを、殴れ・・・・」
「えーっ、な、何を言ってるんですか!? キョーコさんを殴れるわけ、ないじゃないですか!」
「いいから殴れ、このつぶれアンパン!」
 アサミはキョーコの病的な勢いに気圧され、思い切ってキョーコの頬に平手打ちをかました。
 パチッ。
「何だ、そのヘナチョコは・・・・もっと思い切りやれ! でないと、眠気が・・・・」
「し、知りませんよー!」
 バシ、バシ、バシ。
 アサミは何度も何度も、力任せにキョーコに平手打ちを浴びせた。
(こ、こいつ、本当にあたいに恨みがあるんじゃないのか・・・・)
 思い切りやれと言っておきながら、猜疑心にかられるキョーコだった。
「このやろっ、このやろっ!」
 勢いに乗ってきたアサミの口から、声が出始めた。
「ア、アサミ、お前・・・・!」
「えいっ、こいつめ、思い知ったか!」
「ア、アサミ・・・・」
 キョーコの頬は叩かれ続け、痛いを通り越して感覚が無くなってきた。
「や、やめろ、アサミ、寝ないようにと言うより、意識が、遠のく・・・・」
「気絶すればいいんじゃないですかね、寝たことにならないのでは!?」
「そ、そうか?」
 そうしている間にも、アサミのビンタは続く。
(気絶すれば、夢は見ない・・・・か・・・・)
 それも悪くない、と思うキョーコだった。
 そして・・・・。
 アサミが気付いた時、キョーコは動かなくなっていた。
「・・・・キョーコさん?」
 我に返ったアサミは、キョーコにそっと話し掛けてみる。息をしているし脈はあるので、どうやら生きているようだ。
「それにしても・・・・何なんですかね」
 アサミはキョーコの話を全く理解出来ていなかった。
「キョーコさん、ちょっとおかしくなったのかなぁ」
「ふふっ」
 鼻で笑う声が聞こえ、アサミは慌てて振り返った。
「こ、小丸!?」
「澤田麻美・・・・あなたにもたっぷりと借りがあるわ」
 マジカルバイブルを抱え、リュックを背負った貴美愛が立っていた。
「ターゲットの後をつけてみると、目的地はこことはね・・・・あぁ、気絶したって無駄よ。私の『デッドリー・ナイトメア』からは逃れられないわ」
「デッド・・・・何だって?」
「説明を聞くより、体験した方が早いわ。あなたの頭で理解出来るように説明するのは疲れるもの」
「何だと、てめぇ、本当に小丸なのか!?」
 目の前の貴美愛はアサミが知っている貴美愛ではなかった。口数が少なく、悪口を言っても何も言い返して来ない、暗くて人付き合いの悪い奴。そんな貴美愛と、目の前の凛とした態度の人物が、同じであるはずがない。
「今までが間違っていたのよ」
 貴美愛はマジカルバイブルのページを開いた。本が光を放ち、部屋中を照らす。
「これが本当の私。夜光様に出会い引き出された、真実の小松貴美愛」
 アサミの頭を割れんばかりの激痛が走った。
「い、痛い、な、何だ、これっ! ぎゃああっ!」
 頭を抱え、アサミが畳みの上を転がる。貴美愛は平然とマジカルバイブルを開き、そのページに目を通していた。
「あなたの最悪の出来事が、この程度なの?」
 更にアサミの頭を激痛が走る。アサミはまるで頭の中を掻き回されているかのような錯覚に陥った。
「やめて、痛い、痛いよー!」
「・・・・これだけ捜しても大した悪夢が出て来ないなんて、あなた相当に幸せな人ね」
 激痛が止む。
「はぁ、はぁ・・・・」
 這いつくばったアサミの目に涙が滲んでいた。
「まぁいいわ・・・・」
 貴美愛はそんなアサミを見下ろした。
「あなたは所詮、寄らば大樹の陰、長い物には巻かれろ主義の、一人では何も出来ない人間。樋川恭子に嫌われまいとご機嫌を取って、適当に私を苛めてストレスのはけ口にしていた小心者だものね」
「て、てめぇ、キョーコさんに、何をした・・・・」
「夢を見るようにしただけよ。今までの人生で、最悪の出来事の夢をね。それも目を閉じるたび、その日の出来事が鮮明に、リアルに、エンドレスで続いてゆく」
「キョーコさんの最悪の出来事・・・・まさか・・・・」
「知っているの?」
 貴美愛は意外そうな声を出した。
「誰にも言えず苦しんできたと思っていたのに、あなたには話していたの? 親戚の叔父さんにレイプされたなんて・・・・しかも五年も前に。まぁそんな体験があれば、性格も歪むでしょうね。同情はしないけど」
「キョーコさんは隠し事なんてしなかった・・・・」
「それがあなた達の友情ごっこ? それを話したのは、同情を引こうとしただけよ」
「う、ううっ・・・・」
 キョーコが唸った。夢を見ているのだろう。
「やめて、痛い、痛いよ・・・・!」
「キョーコさん・・・・」
 アサミはキョーコを揺り起こそうとしていたが、ふいに振り返って貴美愛に襲い掛かった。
「キョーコさんを元に戻せ〜!」
 アサミの腕が何者かに掴まれる。
「薄汚い手で姫に触るな」
 リュックから出現した烈がアサミの腕を捻り上げ、突き飛ばした。アサミの体はキョーコの上に折り重なるように倒れた。
「こんな・・・・こんな目に遇わされるような酷いことはしてないぞ!」
「する方とされる方・・・・程度の認識には、あなたが思っている以上に開きがあるのよ。大人しく罰を受けなさい」
 貴美愛はアサミを一瞥すると、窓から外に身を躍らせた。
「・・・・」
 アサミはただ呆然とその光景を見送っていた。


 一方、ナナと真樹は咲紅と別行動を取り、貴美愛のクラスメイトやキョーコの交友関係を当たっていた。貴美愛が行きそうな場所の手掛かりを得る為だ。
 広沢家を訪ねると母親が応対してくれて、すぐに広沢美雪(通称:ミユキ)が顔を出した。
「神無月さん? エミネントに帰ったんじゃ・・・・」
「まぁ色々ありまして」
 ナナと共にミユキの部屋に通された真樹は、落ち着かなかった。この歳になって中学生の女の子の部屋に入るなど、初めての体験だからだ。ナナの部屋にはお邪魔しているが、元々は真樹の姉の部屋なので、ナナの部屋としての生活感は感じない。だがこのミユキの部屋はインテリアから壁の装飾、芳香剤のような香りに至るまで、派手ではないが確かに「女の子らしさ」を感じる。真樹は部屋を少しでも汚してはいけないと思い、髪の毛一本も落ちないように気を配っていた。
 コーヒーを出され、正座のまま固まっていた真樹に、ミユキは「楽にして下さい」と声を掛けてくれた。援助交際の一件で面識はあるので、気心は知れている。
 ナナはざっと今の状況を説明した。人に会う度に説明をしなければならないのは面倒だが、きっちり話しておかないと協力を得るのは難しいだろうと思うからだ。
「小松さんが居そうな場所、ですか・・・・」
 ミユキはしばし考え、首を振った。
「アサミさんやマスミさんが苛めていたのは知ってますけど、それ以上の付き合いはなかったので」
「マスミさんて?」
「一応、キョーコさんのグループの一員でしたが、何人かで別行動を取っていることが多い人でした。その・・・・小松さんを苛めていたのは、キョーコさんやアサミさんよりマスミさんの方が多かった気がします。多いと言うか、より酷いと言うか・・・・」
 その話はナナには初耳だった。
「一度小松さんが腕の骨を折って入院したことがあるんです。その原因も確かマスミさんが関わっていたはずです」
「・・・・そう」
 ナナはうさみみ中学の学生名簿をめくった。浅田真純、三年二組なので貴美愛の隣のクラスだ。
「と言うことは、その子に復讐する可能性が高いね」
 真樹が口を挟んだ。
「単独行動を取っていたとすれば、樋川さんはそのマスミさんの、小松さんに対するイジメを知らなかったという可能性がありますね」
「小松貴美愛はそのイジメが樋川恭子の命令だと思っていたとすれば、樋川恭子の家に真っ先に向かった事も分かるな」
「ありがとう、美雪さん」
 ナナは生徒名簿を閉じると、早速席を立った。
「あなたはイジメに加わっていないから狙われることはないと思うけど、もし小松さんに会ったら連絡して」
 ナナは自分の携帯電話の番号をメモし、ミユキに渡した。この携帯電話は芳江から受け取ったものだ。元はと言えばナナが芳江に貰ったものだがエミネントでは使えないので、芳江に譲っていた。
「あの・・・・神無月さん、捕まったら小松さんはどうなるんですか?」
「それは管理局が決めることだから。こっちの世界の人がエミネントのトランスソウルを持ち出した事件なんて例がないし、色々とややこしくなると思う」
「そう・・・・」
 ミユキは少し躊躇した後、ナナに言った。
「私、キョーコさんが心配なので、様子を見てきます」
 それはナナと真樹にとって、意外な言葉だった。ミユキはキョーコらに半ば強制的にグループに入れられ、利用され、もう少しで援助交際をやらされるところだったのだ。それがきっかけでキョーコらのグループを抜ける決心をしたはずだった。
「確かに、キョーコさんのしていることは良くないことです。でもあの人は、きっと淋しいんです」
 ナナもキョーコに掛けられた魔法の正体を知らないままだったので、様子を見にいかなければならないと思っていた。ミユキに見に行って貰えれば手間が省ける。そうミユキに言うと、快く承諾してくれた。
「昨日・・・・私とアサミさん、それにキョーコさんも、神無月さんを見送りに行ったんです。その、キョーコさんが嫌がって、遠くから見送っただけですけど。きっと、顔を合わせ辛かったんだと思います」
「そう・・・・だったんですか」
 ナナはキョーコが寧音や泉流にした仕打ちを思うと、許せるとは思えない。だが影からとは言え見送りに来てくれたということは、キョーコにも少しは反省の気持ちがあったのだろう。
 エミネントでは一度でも悪い事をすれば、その人は悪人と扱われる。どれだけ反省しようが、起きてしまった犯罪は消えないし、二度と犯罪を犯さないという保証はなく、より凶悪な犯罪を犯すかもしれないからだ。ナナもそんなエミネントで育ったのだからその基本的な考えには異論はないが、この世界に来てからは少し考えが変わった気がする。
 エミネントでは犯罪者はすぐに処罰されていたので、気付かなかったことがある。それは犯罪者の「更正」だ。
 悪人が完全に悔い改めることなどない、と思っていた。いや、それは今でも思っている。だがキョーコのやっていたことが、友達が出来ないことへの淋しさ、誰かに自分という存在を分かって欲しい、という願望から来るものだとしたら、何て悲しい自己表現だろう。そう考えるとキョーコに対する恨みも、哀れみに変わって来る。
 キョーコの家に一泊した時、確かにキョーコはそれほど悪い人間には思えなかった。
(だからって人を傷付けたり、騙したり、悲しませたりするのは・・・・)
「ナナちゃん?」
「え? は、はい」
「真剣な目をしてたけど・・・・」
「行きましょう、浅田真純さんの家に」
 ナナと真樹は生徒名簿に載っていたマスミの家の住所をメモった紙を持ち、広沢家を後にした。



10th Revenge に続く




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