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タイトル


 50th Milky 「ナナ、敵討ちを止めます」


「・・・・忘れたのか」
 真樹の声は力を抑えようとして失敗したようなイントネーションだった。
「忘れたって言うか、覚えてないって言うか」
 男はそう言って煙草を吹かした。
「その程度か、だから平気な顔でまだこんな所にいるのか」
「・・・・仕事があるんで」
 男は煙草を路上に捨てて靴で揉み消し、真樹に背を向けた。真樹の足はその後姿を追って踏み出された。


 星澄佐紀は星澄家の長女で、弟とは二つ違いの姉だった。
 才色兼備とまではいかないが、そこそこの美貌とそこそこの頭の良さとまぁまぁの度量と、抜群の料理の腕前を持っていた。
「姉さんがいると任せっきりになるから、母さんの料理の腕が落ちるな」
 そう息子に言われた芳江は、
「佐紀がいると真樹がいつまでもお嫁さんを貰いそうにないわ」
 と反論した。
 姉さんがいれば奥さんなんていらない、真樹はそう思っていた。
「佐紀、早くお嫁にいかないと真樹が駄目になるわよ。いつまでもお姉さん子で甘やかしたら真樹の為にならないわ」
 余計なお世話だ、と真樹はいつも心の中で反論したものだった。
 姉さん以上の女性はいない、真樹は常々思っていた。だから自分が結婚するとしても、姉以上に素敵な女性以外には有り得ない気がしていた。結婚以前に女性と付き合うにしても、絶対に相手の女性と姉とを比べてしまう、そんな気持ちで付き合ったり結婚するのは相手の女性に悪い。だから自分には姉さえいればいい、と思っていた。
 もちろんその考えは、姉の佐紀も結婚せずに星澄家にいることを前提としている。真樹は姉がずっと家にいることを願っていた。それが佐紀の幸せであるかどうかまでは考えることはしなかった。考えたくなくて避けていた、が本当の所だろう。
 この時、真樹は二十五歳、佐紀は二十七歳。今から二年前のことだ。


 こんな言い方をすると真樹は怒るだろうが、他人から見ればかなりのシスコンである真樹にある日の夕食時、衝撃が走った。
「母さん、私、付き合っている人がいるの。もちろん、結婚を前提としてよ」
 二十七歳の女性だ、当然有り得る話だろう。だが真樹はずっと、この日が来ないで欲しいと思っていた。漠然と、来るはずがないものだと思っていた。娘がどこかの家にお嫁に行くというのは、自分の家庭には縁のない、別の世界の話だと思っていた。
「今度、家に連れて来なさい」
 娘が行き遅れるのではないか、と懸念していた母の芳江は喜んでいたが、真樹は本心を隠して笑顔を作れるほど大人ではなかった。
「どんな奴なんだよ」
 真樹は顔を上げず、茶碗を睨んだまま言った。
「どんなって・・・・結婚のこと、ちゃんと真剣に考えてくれてるの。いい人よ、真樹もきっと気に入ってくれると思うわ」
 気に入るわけがない、と真樹は姉に聞こえないほど小さい言葉を吐き出した。相手の男がどれほど素晴らしい人物なら、姉と釣り合うのだろう。どうしようもない奴だったら許せない、また非の打ち所のない奴なら腹が立つ。つまり相手が誰であっても真樹は許せないのだ。
(姉さんが誰か他の男のものになるなんて、絶対に嫌だ)
 しばらく機嫌の悪かった真樹だったが、姉の幸せそうな顔を見るたび、嬉しそうに彼の話をするのを見るたび、口に出せない怒りは和らいでいった。姉の話を聞いていると相手の男性はとても好青年で、誠意のある人物のように思えてきた。おかしな話だが、自分ではかなわない、と真樹は思うようになった。
(それが姉さんの幸せなら、俺が邪魔をする理由はない・・・・)
 ある日、結婚資金を貸してくれと佐紀が母に言ってきた。何でも相手の男性はバーで働いていて、独立する為にお金が必要で、結婚式に必要な資金がすぐに用意出来ないのだと言う。それならもっと先に延ばせよ、と真樹は思ったが、姉の幸せに水を差したくはなかった。結婚詐欺じゃないのかと思ったが、それを口に出すことは姉を悲しませることだと分かっていたので、胸の内に秘めたままその考えを抹消した。
 佐紀は父と母にお金を借り、結婚式の準備に入った。順風満帆に事は進んでいるように思えた。
 ある日、真樹は家の前で相手の男に会った。デートに行くので、佐紀を迎えに来たのだと言う。車に疎い真樹ですら知っている、有名な外国車だった。一般的な国産車とは値段の桁が一つ違う。下手をすれば真樹の車が十台は買えるほどだ。
「初めまして、弟の真樹です」
 自分でも、少し敵意が混じっていたような気がする挨拶だった。だが相手の男性は敵意を感じ取れなかったのか感じ取らなかったのか、快く「初めまして」と挨拶を返した。
 真樹には出来ない、爽やかな笑顔だった。それだけで負けた気がした。
「今日は多分、帰らないと思うから」
 佐紀は真樹にそう囁いた。
 認めたつもりでも、嫉妬心は収まらなかった。
 その夜、真樹は眠れなかった。姉は帰って来ていない。
(今頃、姉さんはあいつと・・・・)
 生活も衣類も振舞いも、日常全てが素朴な姉からは、男と女のそんな姿は想像出来なかった。
 したくもなかった。
 それでもやはり、姉には幸せになって欲しいと思う。姉の選んだ人でもあるし、自分が受けた印象も想像より悪くはなかった。そうなればもう反対する理由はなかった。心よりは無理でも、快く祝福するしかない。
 ただ一つ、相手の男が全く家に挨拶に来ないことだけが気になっていた。


 ある日、真樹はその男が働いているという店に足を運んだ。自分の中で、姉の結婚に納得したいという気持ちがあったのだ。バーと聞いていたので、営業は夜だろうと思い、少し遅い時間に家を出た。家には「友達と会う」と嘘をついた。
 南通り商店街の入り口に近い場所にその店があったはずだ。だが真樹は、聞いていた店とは別のある店の前で、先日見た男の姿を偶然見付けた。男は黒いタキシードを着ていて、派手なアクセサリーと派手な化粧で着飾った女性と抱き合っている。
(ホスト・・・・?)
 騙されているんじゃないか、真樹は即座にそう思った。前々からやっかみ半分に「姉は騙されていないだろうか」と思っていたからだ。佐紀は人を疑うことをしない。そこが長所だが欠点でもあった。
 家に帰り、真樹は姉に詰問した。あいつはホストだ、だから女性にはいい顔をして、調子のいいことしか言わないんだ、だから姉さんに対してもそうなんだ、と捲くし立てた。自分でも呂律が回っていたかどうか怪しかった。
「それは、お仕事だから」
 それが姉の答えだった。
「でも、私とのことは真剣よ」
「どうして分かるんだ!? 姉さんも騙されてるかもしれないじゃないか! いや、絶対にそうだ!」
「真樹、よく知りもしないで人を疑ってはいけないわ。それにね、あの人を疑うってことは、あの人を選んだ私を疑うってことよ。真樹、私が信じられないの?」
 そう言われると、真樹は何も言えない。そう言えばこの歳になるまで、姉を疑ったことなど一度もなかった。
「あの人にだって、真剣に人を愛する資格はあるわ」
 それはそうだ、だが・・・・。
 真樹はそれ以上、反論出来なかった。そこから先は、姉を信じることにした。信じるしかなかった。
 姉さんはお人好しだけど、騙されるほど馬鹿じゃない。
 だが。
 佐紀はある日、自ら死を選んだ。
 市内のあるホテルの一室。バスルームで手首を切っていた。
 テーブルの上に置かれた紙には「お風呂、汚してごめんなさい」と書かれていた。
 自殺の理由はどこにも書かれていなかった。
(あの男しかない)
 真樹には、姉の自殺の理由はそれ以外に考えられなかった。父と母はあの男の正体を知らない。結局、挨拶を受けることなく結婚はなくなったからだ。真樹もまた、男の素性を両親に言うつもりはなかった。
 焼香にもそれらしき男は来ていなかった。来るだろうか、と真樹は思っていたが、焼香の列の中にあの顔を見付けることが出来ないまま、葬儀の幕は降りた。
「結局、佐紀が一人で舞い上がっていただけなのかもねぇ」
 婚約者が現れない理由を、母はそう考えているようだった。相手にその気はなかったが、娘は結婚するつもりだったのだろう、と納得していた。相手の男に奥さんがいたとか、結婚する気はないと言われたのか、自殺の理由はそんな所だろうと思っていたようだ。
 そして司法解剖の結果、星澄佐紀は妊娠していたことが判明した。
 真樹は怒りに任せ、男が働いている店へと走った。だがその日、相手の男は休みを取っていた。
 逃げたのか、と思った。こうして自分が殴り込んで来るのを予想して。
 男の自宅は分からない。だがそれで、真樹には少し考える時間が与えられた。
 今、自分が騒ぎを起こしたとしたら。姉の婚約者でありお腹の中の子供の父親がホストであると世間に知られてしまう。確実に姉の評判は悪くなり、挙句に「そんな男に騙された方が悪い」「ホストに本気になるなんて馬鹿じゃないか」と言われるだろう。
 騙した方が悪いに決まっているのに、世間は何故騙された方を非難するのだろうか。
 少なくとも姉は真剣だった。真樹には分かる。だからこそ、余計に男への恨みは消えない。消えないが、姉の名誉の為には黙っておくしかなかった。いつか報いを・・・・という気持ちは無くなりはしなかった。人を疑わない姉が好きだったのに、今はそんな姉が嫌いだった。もっと姉が疑り深い性格だったら騙されなかったのに、と思っている自分も嫌いだった。
 真樹の希望で、佐紀の部屋はあの時のままにしていた。姉の思い出を片付けてしまいたくなかった。捨てることも焼くことも出来なかった。
 佐紀の死を境に、父と母の仲が悪化した。後になって思えば、姉が夫婦の仲を仲裁する役目だったのかもしれない。
 娘の育て方について言い合いをしている両親を見て、何を今更と真樹は疎ましく思っていた。もっと相手の男のことを聞いておけば良かったんだ、その役目はそっちだろう、甘やかせ過ぎたんだ、お前の飯はまずい、佐紀がいれば、佐紀なら、何で死んだんだ・・・・。
 姉の悪口を言われているようで、真樹は言い合いが始まると自分の部屋に篭った。真実を知っているだけに、平常心では聞いていられなかった。
 今更、何を言っているんだ。父さんも母さんも、相手に姉さんを自殺に追い込んだ罪を着せて、自分が楽になりたいのか?
 真樹の思う通りだった。佐紀の四十九日が終わった後、父と母は離婚した。
 父親は家を出て実家の九州に戻り、真樹は母元に残った。ここは元々母の地元であるし、今の仕事もある。何より真樹は姉の佐紀から離れたくなかった。
 あれから二年が過ぎていた。


 真樹はほとんど無意識に、相手の胸倉を掴んでいた。
「お前が・・・・姉さんを殺したんだ」
「だから、そんな女は知らない・・・・」
 真樹の手が、男の手で振り払われた。男は襟を正し「言い掛かりはよせ」と、再び店の入り口に足を向けた。真樹は拳を固め、背後から襲い掛かった。
「真樹さんっ!」
「!」
 突然真樹の腕に、ナナがしがみ付いてきた。
「ナナちゃん、どうして・・・・」
「様子がおかしかったので、付けてきました」
「離してくれ!」
「離しません、何があったのかは分かりませんが・・・・」
「分からなかったら、止めるなよ!」
 真樹は思い切り腕を振り、ナナを引き離した。
「きゃっ・・・・」
 ナナが尻餅をつく。その勢いで、圭ちゃんもポケットから飛び出してしまった。
「もきゅ〜!」
「えっ? どうしたの、圭ちゃん」
 圭ちゃんの様子がおかしいので、ナナは立ち上がって真樹の前に回り込んだ。
「目が・・・・赤い・・・・」
 魔力の暴走。
「真樹さん!」
 ナナは真樹を止めようと正面から抱き付いた。
「どけっ!」
「駄目です、真樹さん、落ち着いて下さい! でないと魔力が!」
 初期状態なら、ナナが抱き付くことで魔力を中和出来る。だがナナの見た所では、真樹の暴走は瞬時にマックス状態まで上がってしまっているようだ。
(それだけ強い怒りってこと・・・・?)
 真樹の腕がナナの両肩を掴み、引き剥がした。そのまま、ナナは横向きに放り投げられ、地面に倒れた。
「真樹さ・・・・」
 真樹が男に掴み掛かり、頬に一撃、パンチを繰り出した。
「やめて下さい、真樹さんっ!」
 ナナは人に見られてはまずい、と瞬時に判断してセルフ・ディメンションを作り出した。これでナナ、真樹、男の姿は周りからは見えない。
「お前のような、社会のゴミに、姉さんは、姉さんは騙されてっ! 自殺した!」
 真樹は殴り続ける。男の悲鳴が断続的に聞こえて来る。
「姉さんがどれだけ素晴らしい人だったか・・・・お前なんて、姉さんに比べれば生きている価値すらないんだ、だから!」
 男が地面にくずおれる。
「死ねばいいんだ」
 真樹の靴が男の顔面を蹴りつけた。男の鼻と口から血が飛ぶ。
「何で姉さんが死んで、お前が生きているんだ!」
「真樹さん、もうやめて下さい!」
「こいつは死んでいい! 俺が殺してもいい!」
「ここはエミネントじゃないって言ったのは、真樹さんです!」
「エミネントだろうがどこだろうが関係ない、法律が違っても俺の気持ちは変わらない! こいつは死んで当然なんだ!」
 真樹がそこまで言うのなら、その通りなのだろうとナナは思う。
 真樹の腕力も脚力も、魔力によって威力が上がっている。このまま真樹に殴られ、蹴られ続ければ男は死ぬだろう。真樹の言うように死んでも当然の男だとしたら、ナナは止める気は無い。
 だが・・・・。
「!?」
 真樹の両手、両足が鎖に搦め捕られた。
「・・・・」
 四肢の動きを封じられた真樹が、体をひねってナナの方を見た。
「君が俺を止めるのはおかしいんじゃないか?」
「エミネントなら見過ごします。でもこの世界では・・・・」
「その話はもういい、離せ!」
 真樹の目の前にカタルシス・ゲートが出現した。扉の向こうはモヤモヤして、得体が知れない。
「やめろ、ナナちゃん」
「・・・・浄化します」
「やめてくれ!」
 真樹の叫びを聞かず、ナナはマジカルクルスを振り上げた。
「ジャスティ・ホーリーライト!」
 十字架の先端から、七色の光が真樹目掛けて飛んだ。
「やめろぉぉぉぉ!」
(やめてくれ・・・・俺はこの力がなければ、姉さんの仇を取れないんだ!!)
 真樹の背中に、虹色の光が突き刺さる。
「ぐあっ・・・・!」
 その光が皮膚を突き抜け、肉を、内臓を抉り出すように貫通していく。
(こっ・・・・これが・・・・!)
 今まで真樹はジャスティ・ホーリーライトをただ見ているだけだった。苦しむのは自業自得だと思って見ていたが、実際に自分が受けるのとは訳が違う。ナナは前口上で「多少の痛みは覚悟して頂きます」と言っているが・・・・。
(こっ、これのどこが多少なんだ!?)
 体全体が、針で突かれたように痛い。
 真樹の魔力がカタルシス・ゲートに全て送り込まれた時、真樹は気を失っていた。
「はあっ・・・・」
 ナナは大きく息を吐き出し、ロザリオと十字架を収めた。
「うう・・・・」
 真樹に痛めつけられた男が呻く。ナナは治療すべきかどうか迷った。男が真樹の言うような人間なら、治療してあげる義理は無い。だが、このままだと男は真樹を訴えるかもしれないのだ。ここは完全に治療し、夢だったと思わせるのが得策ではないだろうか。ナナはそう考えて、男に近付いた。
「・・・・」
 ナナは男が、傷の痛みで呻いているのだと思っていたのだが、その男は泣いていた。
「そうだよ・・・・佐紀は俺が殺したようなもんだ・・・・」
 ナナに言っているのか、真樹に言っているのか分からない。だが真樹は気を失ったので、ナナが聞く以外になかった。
「佐紀さんのこと、忘れてなかったんですね」
「当たり前だ・・・・俺が本当に愛した女だったんだからな」
 歯が折れているのか、男の言葉は少し聞き取り辛かった。
「ホストは夢を売る、愛を売る商売だ。客は皆、偽物の愛と割り切ってやって来る。俺はその愛に応える。だが仕事だから、その愛は本気じゃない・・・・騙すとか、騙されるとか、そういう世界じゃないんだ・・・・だが佐紀は違う。あいつは客じゃなかった。たまたま俺が酔って倒れていた時、助け起こしてくれたんだ」
「・・・・」
「客と色々あって・・・・上手くいかない時に酒に逃げ、飲み過ぎて・・・・そんな時、佐紀が・・・・」
 男の頬を涙が伝った。
「こんな嘘まみれの俺を・・・・信じてくれたんだ」
 言葉が詰まる。男はしばらく言葉を発することが出来なかったが、ナナは辛抱強く待った。
「店には客の女だと誤解され、いつものように早く何とかしろって・・・・客のババアが勘違いして、佐紀を殺してやるとか言って来て・・・・自宅まで突き止められて・・・・本当に好きだったんだ、結婚も嘘じゃない。子供のことは後で知った・・・・俺のためにと思ったのか、黙ってたんだ、あいつは・・・・」
「・・・・」
「あいつを守る為に別れようとした。それが反対にあいつを追い詰めていたなんて・・・・俺は、俺は・・・・」
 その言葉が本当か嘘かは、ナナには分からない。客を騙す為に身に付けたテクニックの一つだとしたら、ナナには見破れはしないだろう。
 もし男の言うことが本当なら、真樹の姉は騙されたのではないことになる。真樹があのまま怒りに任せてこの男を殺していたら、大変なことになっていた。
 ・・・・いや、男が死んでしまっていたら、真実は分からなかっただろうから、真樹は姉の仇を取ったことになる。真実とは異なるとしても、それで真樹の復讐は完結する。
(もしこれがエミネントなら・・・・)
 被害者である真樹が加害者の男を殺し、事件は解決する。その中には同じように、行き違いや勘違いで「処罰」されている人もいるのではないか?
 悪は即刻排除。この規律は、悪を蔓延らせない最善の策だと思っていた。警察を呼んでいてはなかなか「即刻」とはいかず、犯人に逃げられてしまう可能性もある。だから被害者に処罰権限が与えられる。その判断を下すのは被害者側の人間だから、冷静な判断が出来るはずもない。
 一体、どの方法が一番望ましいのだろう。ナナは分からなくなっていた。
「・・・・」
 ナナのセルフ・ディメンションの中に、いつまでも男の嗚咽が響いていた。




51th Milky に続く



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