般若心経の原本は、サンスクリット語という古いインドの言葉で書かれたお経です。それを玄奘三蔵法師が漢文に翻訳したものが、私たちが日常読誦している般若心経です。
 正式な名称は「
摩訶般若波羅蜜多心経」と言い、
 摩訶とはサンスクリット語のmaha(マハー)のあて字で、大きいという意味です。
 般若とはパーリ語(古代インドの下層階級の言葉)のpanna(パンニャ)のあて字で叡智という意味です。叡智とはあらゆる物事の本質を見抜く直感力のことを言います。ちなみに、「般若」というと、鬼の面の使われていますが、それは昔、般若の智慧にあやかろうとして般若坊という名の能面づくりがおり、彼が得意とした面が女の鬼の能面であったことから、鬼の面が「般若の面」と言われるようになったのです。
 波羅蜜多とはサンスクリット語のparamita(パーラミーター)のあて字でparami(河の向こう岸に着いた)+ta(状態)の結合した言葉であり、ある物事を完成し終わった状態のことです。
 心はあて字ではなく、心という意味です。サンスクリット語のhrdaya(フリダヤ)すなわち心臓、心、肝心要のことという意味の訳です。
 このように、題目だけを見ても原本のサンスクリット語を漢語に訳す際、意訳と音訳が混じったものになっているため、多くの解説書には「この題目には、般若心経のすべての内容が秘められている」など、哲学的なむずかしいことが書かれていますが、素直に意味を解すると「マハー・パンニャ・パラミーター心経」すなわち「
大いなる叡智を完成することについての心のお経」となります。こう考えるとわかりやすいかもしれません。

般若心経について

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