「スーパー・グッドフレンド・コンサート」イン・台北


10月5日(金)



 台北空港でイェンさん・シーさん            龍山寺                       夜の西門町

 午前5時に車で家を出発する。外はまだ薄暗い。6時過ぎに津なぎさまち第2駐車場に到着。車上ねらいに狙われないよう真ん中あたりに駐車、マイクロバスで津なぎさ港に向かう。港には一番乗りらしく、他のメンバーはまだ来ていない。6時半を過ぎるとT住夫妻や他のメンバーがぼちぼち集まり出す。6時50分頃には全員集合し、予定通り7時に高速船は出発。7時40分にセントレアの高速船発着場に到着した。

 空港ビルの2階のエントランスで8時に名古屋組のてらさん達と合流し、総勢16人となる。今回の台湾行きは飛行機や仕事の都合で、5日に出発する第1陣16名と、明日6日に出発する第2陣26名の、二つのグループに分かれて台湾入りすることになっている。第1陣の16名のうち12名は日本アジア航空で、残りの私達4名はあの(炎上事故で有名になった)中華航空でと、二つの飛行機に分かれて台湾に向かう。搭乗手続きを終え、予定通り10時に2機が相前後して出発、台湾まで3時間のフライトだ。

  中華航空151便は席はがらがらで、一人一列ずつでも使えそうなくらいだ。やはりあの事故のせいなのだろうか。(ちなみに台湾到着後、日本アジア航空に乗った団員に聞くと、そちらはほぼ満席だったという。)機内は各席に液晶テレビが備えられており、中国語字幕の「ファンタスティック4-Ⅱ」を見て時間を過ごした。12時に機内で昼食。メニューは豚肉ごはん、豆のサラダ、卵焼き、春巻き、果物、ケーキなどだ。台湾に大型台風15号が近づいていると聞いていたので、着陸できるか心配したが、ほとんど揺れることなく時間通り13時(現地時間12時)に台北中正国際空港に到着した。

 荷物をピックアップし、送迎ロビーに出てくると、「Vocal Ensemble 《EST》Welcome to Taipei」と書いた赤い札を持った二人の青年が笑顔で迎えてくれた。台北メール・クワイア(TMC)のイェン・シャンさんとシー・ショウさんだ。ロビーでは何やら大勢の人がずらりと並んで誰かの到着を待っているようだった。《EST》を待っているのではなさそうだったが。(あとで聞くと日本からアイドルグループNEWSがやってくることになっていたらしい。)

 バスで台北市内のホテルに向かう。バスの中でイェンさんとシーさんのあいさつと自己紹介があった。イェンさんはTMCの団員であり、かつ指揮者でもあるという。高校や少年少女の合唱団をいくつか指揮しているそうだ。シーさんとは高校の同級生で、TMCは成功高校のOBを中心にして創設されたらしい。バスは1時間ほどで市内の福君大飯店(フォーチュン・ホテル)に到着。荷物をホテルに預け、タクシーに分乗して観光に出かけることになった。ホテルの手続きからタクシーの分乗の指示、支払いまでTMCの四人の人達がてきぱきとこなしてくれる。至れり尽くせりだ。まず最初に国立歴史博物館へ。外は台風が近づいているにもかかわらず、風もそんなに強くはなく、雨も降っていない。イェンさんの話によると、台湾では台風は主に7・8月にやってくるのが普通で、10月にやってくるのは過去100年に4回しかないという。偶然にも今回はそのまれなケースに遭遇したわけだ。さて赤い中国風建築の博物館は6階建てで、最も印象に残ったのは、3階の殷や周時代の青銅器や陶器・甲骨文字などの展示だ。素晴らしい物ばかりだが、考えてみれば皆大陸で発見された物だ。各王朝の貨幣も興味深かった。次にタクシーで龍山寺に向かう。台湾のタクシーはすべて黄色で、料金も安い。 龍山寺は260年の歴史を持つ台北で最も古い寺院で、大勢の参拝客であふれている。参拝客は女性が多く、若い人もたくさんいる。みんな火の着いた七本の長い線香を手に持ち、一心に祈っている。線香の煙が境内に白くただよっていた。しばらく周辺を散策する。寺の周辺には薬草や茶葉を売る店がたくさん軒を連ね、所々に食べ物の屋台も出ていた。近くの小さな寺院の境内には小屋掛けがされ、京劇が演じられていた。

 台風が近づいてきたせいか、雨がぱらついてきたので5時に観光を終了し、タクシーで夕食に向かう。夕食はダルマ印のしゃぶしゃぶ屋だ。しゃぶしゃぶと言っても日本のように肉だけでなく、ベーコンや牡蠣、魚・エビ、たくさんの野菜や練り物、ラーメンまで湯に入れる。しかも湯の入れ物は一人に一つだ。しゃぶしゃぶと言うより鍋と言った方がいいかもしれない。夕食を堪能した後、歩いて西門町へ。「台北の原宿」と呼ばれるにふさわしく、衣服や雑貨・キャラクターショップが軒を連ね、ネオンが赤々と灯り、若者達があふれている。制服の中高生もたくさん歩いている。しばらく散策していたら日本でおなじみの「和民」があったので、てらさんと生ビールをいただく。その後みんなで西門駅近くの「茶文化会館」で茶芸を楽しむ。茶の専門家に正式の入れ方で中国茶をふるまってもらうのだ。会員制の茶芸店で客は私達のみ。ウーロン茶と黒茶を正式の入れ方で、1番出しから3番出しまで入れていただき、みんなで味と香りを楽しんだ。お礼に全員で「故郷」を披露すると、大変喜んでくださった。

 風が少しずつ強まってきたので、タクシーでホテルに帰る。明日は台風が接近するという。後発隊は無事台湾に到着できるのだろうか。心配だ。


10月6日(土)
  
     臨時休館の101                TMC練習場にて イェンさん          夕食の魯肉飯

 7時30分起床。外は雨、風もかなり強く吹いている。テレビをつけると、台風15号(現地では台風に人の名前をつけるので、柯羅莎~クローサ~と呼ばれる。)が台湾にかなり接近して来ている。中心付近の気圧が926hPaと猛烈な強さの台風だ。しかも予想進路を見ると、台北直撃のコースである。今日から明日にかけてが台風のピークになりそうだ。はたして今日到着予定の第2陣は無事台湾に着けるのだろうか。また着いたとしても、台風の真っ最中にコンサートを催して、お客さんは来てくれるのだろうか。せっかく台湾までやって来たのに、コンサートの開催自身が危ぶまれる最悪の状況になるかもしれない。 気を取り直して朝食会場へ。バイキング形式で普通の洋食スタイルに加え、炒飯や中華のおかずもたくさんある。朝食中に日本の第2陣から電話がかかってきた。搭乗手続きは行われてフライトを待っているとのこと、一安心するが、本当に飛ぶのだろうか。

 10時にロビーに集合。朝食後日本から再度連絡があり、結局台風のため台湾便は欠航と決まったとのこと、一同に不安が走った。とりあえずフライトが再開されるまで空港で待つらしい。これから台風がだんだん接近してくることを考えると、フライト再開は難しいだろう。第1陣の今日の予定は、午前中は観光、午後は3時に第2陣と合流して前日練習の予定だったが、第2陣の到着がどうなるかわからないので、予定を変えざるをえない。午後はたとえ第2陣が到着しなくても今いるメンバーだけで練習することを確認し、とりあえず予定通り「台北101」にタクシーに分乗して向かった。

 今日も朝からTMCのイェンさんやシーさんがタクシーの手配や案内をテキパキとこなしてくれる。「台北101」は高さ508mの世界一高いビルで、台北のランドマークとなっている。台風の影響で展望台には上れないらしいが、1~5階のショッピングモールは開いているという。しかしタクシーで地下駐車場に着いてみると、入り口に「因颱風因素、今日休舘」の札がかかっていた。臨時休館らしい。仕方がないので入り口のコンビニでペットボトルのお茶を買う。昨日お茶を買った人が「甘くて飲めない」と言っていたので、注意して「日本式緑茶、無糖」と書いてある物を買う。飲んでみると日本の物に近い味だった。そうしているうちにコンビニもシャッターを下ろし始めた。すべての店がクローズだ。この様子ではどこへ行っても観光は無理だろう。

 観光が無理となれば、あとはホテルで待機するか練習するかしかない。イェンさんに聞いてみると、午後から練習に使用予定のTMCの事務所は午前中も使用可能だという。観光の予定を切り上げて、午前中から練習をすることにし、タクシーでTMCの事務所に向かった。TMCの事務所は街中の貸しビルの11階にあり、事務所と練習場の二つの部屋を備えている。練習場は防音加工が施されており、棚にはTMCが国内や海外のコンクールで受賞した数々のトロフィーが飾られていた。11~13時までF本君の指導で練習。パートバランスがすこぶる悪く(ソプラノ2、アルト7、テノール2、バス5)アンサンブルに苦労する。しかし今いるメンバーで最善を尽くすしかない。外は雨風ともに強くなり、台風が近づいてきたことを物語っている。窓ガラスが強風でたわんでいるのがよくわかる。割れるのを防ぐためTMCのメンバーが窓ガラスにガムテープを×の字に張ってくれた。窓の端からは雨水が浸入し床を濡らし始めている。これも時々TMCのメンバーがモップで拭き取ってくれた。ペットボトルの水も団員数分用意していてくれる。細かい心遣いに本当に頭が下がる思いだ。13時で一旦練習を中断し昼食に。外に食べに出られないので、TMCの人が買ってきてくれた餃子とスープをいただく。温かい餃子とスパイシーな中華野菜スープは本場だけあってとてもおいしい。デザートに「珍珠奶茶(チョンヂューナイチャー)」まで用意してくれた。これはミルクティーにタピオカを入れた物で、おいしいけれど腹にこたえる。

 昼休みに日本のメンバーに連絡を入れると、結局今日のフライトはなく、明日の便のキャンセル待ちをするという。今日と同じ10時発の中華航空便がとれればいいが、全員分を取るのは難しく台北に着陸できない可能性もあるので、とりあえず南部の高雄着の便を押さえたという。しかし高雄着の便だと新幹線で台北まで移動せねばならず、明日の本番直前しか到着しない。それも飛行機がとべばの話だ。この話をイェンさんらにすると、早速高雄発の新幹線を押さえる手配をしてくれた。さらに中華航空社に「第2陣26名全員が10時発の中華航空便に乗れるように、台湾側から働きかけてみる」と言ってくださった。本当にありがたいことだ。外の風雨はさらに激しさを増してきた。台風が近づいてきたのだろう。練習は14時から再開。途中でホールの様子を知るためTMCの演奏会のDVDを見せていただく。大変立派なホールで、こんな素晴らしいホールで演奏させてもらえる幸せをひしひし感じる。だが台風如何によっては演奏会自身が中止になるかもしれず、不安がよぎる。練習は17時30分まで続き、最後にDiu Diu の中国語の発音をイェンさんらに指導してもらい、練習は終了した。

 タクシーに分乗してホテルへ戻る。風雨は少し弱まったような気がするが。TMCの案内で、ホテルから歩いて5分ほどの食堂へ夕食に行く。中は夕食をとる地元の人であふれていた。きれいではないが、おいしい物を食べさせてくれそうな店だ。メニューは魯肉飯(肉そぼろかけ御飯)と肉と筍のスープ、キャベツのガーリック炒め、鶏肉の包み揚げだ。どれもなかなかおいしい。中華を十分に堪能した後、ホテルに戻る。

 最悪の事態も考え、TMCのイェンさんらとESTのスタッフで明日のことについて対策を相談する。中華航空便が人数分とれて第2陣が14時頃にホールに来られる場合、高雄着の便でしか来られず本番直前にホールに入る場合、結局飛行機が飛ばず第2陣が到着しない場合の3通りの可能性が考えられる。どのケースになっても、私達は演奏会が開催されると考え午前中から練習することを確認した。イェンさんから「今いるメンバーでできる曲は何曲あるか」と聞かれた。指揮者もいずパートバランスも悪く、とてもESTらしい演奏はできそうにないが、TMCにこれだけの準備と歓迎をしていただき、また演奏会に来てくださる台湾の方々のことも考えると、こちらの都合でむげにキャンセルはできない。曲数を半分くらいに減らし、4パートでなんとか歌える歌だけをピックアップしてみた。その際にはTMCがもう1ステージ分曲を増やして演奏し、時間をもたせてくれるという。明日何とか飛行機が飛んで、3番目のケースにならないことを祈るばかりだ。

外は幾分風雨がおさまってきたように感じる。テレビでは台湾の南部で大雨による被害が出ていると伝えている。ああ柯羅莎よ、何とか今夜のうちに通り過ぎてくれ。


10月7日(日)


     中正公園正門                   国家音楽庁                 TMCの皆さんとステージにて

 7時30分起床。すぐに外を見る。どうやら雨も上がり風もそんなに強くない様子だ。これなら飛行機も飛びそうな気がする。テレビをつけると台風クローサは台湾の海岸で一回転して西の方へ抜けたらしい。朝食のため11階のレストランに上がると、すでに何人かが食事を始めていた。メニューは昨日と同じバイキング。みっちゃんも今日のことが心配でなかなか寝付かれなかったらしい。後発組のN島さんに電話をかけてみる。するとTMCの台湾からの要請もあり、10時発の中華航空便で第2陣26人全員分の席を確保でき、飛行機も飛ぶ予定であるとのこと。思わずレストラン内に歓声が上がることとなった。一時はコンサート中止の最悪の事態も考えたが、全員そろって演奏ができるめどが立ち、本当にホッとした。改めてTMCの皆さんに感謝したい。

 9時30分にロビーに集合。午前中の練習は当初TMCの事務所で行うはずだったが、イェンさんらがコンサートホールと交渉して、午前中の練習がホールの楽屋でできるようにしてくださった。タクシーに分乗して国家音楽庁へ向かう。外は風雨もおさまって、曇り空だが穏やかな朝だ。タクシーの運転は相変わらず荒い。昨日少なかったバイクも今日は元の数に戻り、交差点に止まると前は十数台のバイクに占領される。バイクはどんどんタクシーの前に割り込んでくるのでヒヤッとすることたびたびだ。10時前に国家音楽庁のある中正公園に到着、広大な公園だ。正面に「大中至正」と書かれた正門があり、その対極には蒋介石を記念する中正紀年堂がそびえている。公園の中央部には左右対称に同じ建て方の国家音楽庁と国家戯劇院が正対して建っている。この国家音楽庁が今日のコンサート会場だ。中国宮殿風の立派な建物で、こんな素晴らしい会場で演奏できるかと思うと、身の引き締まる思いだ。広場のちょうど中心で手をたたくと、周りの建物に反響して不思議な音が聞こえてくる。そういう風に設計されているらしい。

 10時からステージを下見する。残響の長いとてもよく響くホールだ。「三重五章」のためにパイプオルガン前の通路や客席の入り口・通路を確認する。客席には横の通路がないので、歩き方を少し工夫しなければならないだろう。11時30分まで女性の楽屋で練習。楽屋といってもめちゃくちゃ広く設備も整っている。第2陣から、飛行機の出発が少し遅れたので、ホール到着が14時30分頃になりそうだ、との連絡あり。とにかく全員無事着いてほしい。

 練習を終了し、イェンさん達と歩いて10分程の「牛乳大王」に昼食に向かう。途中、風で根こそぎ倒れた街路樹や信号機を目の当たりにし、昨夜の台風の凄さを再確認した。「牛乳大王」はパパイヤミルクが有名なチェーン店で、牛の模様のクッションがかわいい。メニューは「ビーフプレート」。御飯に中国風ビーフシチュー、生揚げの煮物、野菜サラダだ。そしてもちろん食後はパパイヤミルク。甘くておいしいのだが、かなりこってりしていてとても全部は飲みきれない。残りはテイクアウトしてホールに戻った。

 13時から楽屋で練習を再開。14時30分からはいよいよホールでの練習となる。第2陣の到着を待ちながら練習は続いた。そして15時過ぎ、舞台袖から聞き慣れた声が聞こえてきた。第2陣がようやく到着したのだ。歓声で迎える第1陣のメンバー達。これでやっとEST全員がそろったのだ。これで演奏会ができる!

 着いたばかりの第2陣には申し訳ないが、リハーサルの時間は限られている。声出しをする間もなく、「三重五章」の立ち位置を確認してからすぐにリハーサルに入った。午前中から練習していた第1陣も着いたばかりの第2陣も、演奏会が全員そろってできるうれしさに気持ちを高揚させながら、引き締まった練習が続いていく。17時からはTMCのメンバーも加わって合同アンコール曲「島唄」の練習だ。Masaokunの日本語をTMCの日本語のできるメンバーが通訳して、練習は進んでいった。17時30分に練習は終了、楽屋でTMCの用意してくれたお弁当とお茶をいただく。その後「三重五章」の衣装に更衣すると、いよいよ本番近しと気分が高まってくる。18時15分からステージで最後のリハーサル。19時からは楽屋でステージでできなかったアンコール曲等の練習をし、本番開始15分前にようやく練習は終了した。

 ステージは予定より10分遅れて19時40分に開演。イェンさんの挨拶の後、Masaokunと女性陣がステージに登場、いよいよ「三重五章」の始まりだ。F本君の2階席からの声がきれいに響いている。客席が集中して聞いているのがよくわかる。続いて「ラプソディー・イン・チカマツ」。少し失敗もあったが、日本の心を伝えられたのではないかと思う。客席からは鳴りやまぬ大きな拍手をいただいた。続いてはTMCの単独ステージ。その間に私達は更衣だ。休憩を挟んで第3ステージはルネサンスの音楽。オケゲム、デ・プレ、パレストリーナと続く。宗教曲にもかかわらず1曲ごとに大きな拍手をいただいた。続いてロマン派から現代曲。ブラームス、ラインベルガー、カモレットと順調に進んでいった。ここでもう一度更衣。時間を稼ぐため、MasaokunがMCでつなぐことになっている。(もちろん日本語通訳付きで。)ステージ裏で素早く着替え袖にスタンバイするが、MasaokunのMCがなかなか終わらない。入場したらやめるだろう、ということで話の途中で無理矢理入場する。最後のステージはキューバの曲。「ほら吹き」「苦悩よ」「バルカローラ」「何て素敵なんだ」と続く。お客さんが楽しんで聞いてくれているのがよくわかる。特に前の方の席でリズムをとりながら聞いているお二人のアフリカ系の方が印象的だった。マンボの最後の振り付けが決まると、会場からは万雷の拍手だ。なかなか鳴りやまない。指揮者が一度引っ込んでもまだ鳴り続けている。アンコールに応え、「Diu Diu」と「ふるさと」の2曲を披露する。Masaokunのステージを回るパフォーマンスも大いに受けていた。そしていよいよTMCとの合同アンコールだ。客席からTMCのメンバーが次々上がってくるが、一人一人がESTの団員宛のプレゼントを持っている。EST団員の名前を彫った印鑑と、花のマスコットを一人一人にプレゼントしてくださったのだ。そしてもう一つのサプライズ。イェンさんが何やら話し始めた。今日誕生日のESTの団員に贈り物をしたいというのだ。TMCの「ハッピー・バースデイ」の合唱の中、N島さんが前へ出ると、何と彼女のご主人が舞台袖から花束を持って現れた。すべて秘密のうちに用意されていたのだ。彼らの憎い演出と心遣いにほんとうに感心した。そんなわけで合同曲の演奏は大変感動的なものとなった。ESTの団員の中には涙している者も多かった。こうしてスーパー・グッドフレンド・コンサートは大成功のうちに終了した。

 終演後ステージで写真を撮影し、更衣する間もなくバスでホテルに戻った。そしてホテルに荷物を預け、再びバスでTMCが準備してくれた「ウェルカム・パーティー」の会場へと向かう。会場の中華料理店ではTMCとESTの団員がいくつかの円卓に混ざって座り、飲茶しながら交流を深めようというわけだ。アルコールは無し。キウイジュースやウーロン茶を飲みながら、次々出てくる蒸し餃子・小龍包・叉焼包・大根餅・蝦仁腸粉などたくさんの点心に舌鼓をうった。TMCから私達一人一人に彼らのCDと今回の演奏会ポスターのプレゼントがあった。ESTからはお返しに豆絞りと日本のお菓子をプレゼントした。交流の輪が広がり話がつきなかったが、明日のこともあり2時過ぎにパーティーは終了した。


10月8日(月)


      台湾手工芸館                      台北101                  蒸籠いっぱいの小龍包

 7時45分起床。昨夜はパーティーで遅かったのでまだ眠い。8時30分に朝食会場に行くが、数時間前にさんざん飲み食いした後なので食欲無し。おかゆとジュースですませておく。今日はいよいよ帰国の日だ。今日は帰国する我々A班と明日帰国するB班に分かれて行動することになる。我々は5日から来ているので最初の一日は観光できたが、かわいそうなのは第2陣で来ながら今日帰国する人達だ。もともと仕事の都合等で3日間しか台湾にいられないのに、クローサのおかげで最初の一日はセントレアで缶詰め、昨日は到着早々リハーサルで観光の余地無し、今日の午前中に少し買い物をするくらいで日本に帰らなければならない。せっかく台湾までやって来たのにである。

 荷物をまとめてホテルに預け、10時にA・B2台のバスに分かれてホテルを出発。昨日まで案内をしてくれたイェンさんらはB班の方に行ったので、今日の案内はチェン・カイビンさんだ。彼もイェンさんらと同じ高校の同窓生らしい。ユーモアたっぷりの明るい案内でバスの中は笑いが絶えなかった。バスはまず「台湾手工芸館」に向かう。ここは地下1階~地上3階の大きな土産物店で、台湾の土産物なら比較的安価で何でもそろう。30分ほど買い物をして、次は我々のリクエストに応えて「台北101」に向かう。6日に臨時休館で中に入れなかったので心残りだったのだ。時間の関係で展望台までは上れなかったが、建物を背景に記念撮影をし、1~5階のショッピングモールを散策した。本屋には日本の雑誌がたくさん並んでいた。これで短い観光は終了し昼食へ。今日は小龍包専門店で昼食だ。出来たてのいろいろな具材の入った小龍包が次々と出てくる。どれも肉汁たっぷりでとてもおいしい。チェンさんと話していたら、ESTは今まで招いた合唱団の中で最も「カインドリー」だという。今までにはかなりクレームの多い難しい合唱団もあったらしい。話しているうちにも空の蒸籠がどんどん増えていく。韓国の合唱団がこの店に来た時には、空の蒸籠が山積みになったという。はるさめのスープもなかなかおいしかった。 食事後一度ホテルへ戻り荷物をピックアップし、別のバスで台北中正国際空港に向かう。バスの中でも最後のもてなしとして「珍珠奶茶」を一つずつ配ってくれた。最後まで細かい心遣いをしてくださるTMCの皆さんに頭が下がる。1時間ほどで空港に到着。チェンさんが搭乗手続きも手伝ってくださった。全員で記念撮影をした後、再会を約してチェンさんらTMCのメンバーとお別れした。

 中華航空150便で16時20分台北発。台湾ともこれでお別れだ。長いようで短い台湾の旅だった。飛行機は行きに比べかなりこんでいる。夕食はチキンのパスタと焼き豚、ジュース、パンなど。19時55分セントレアに無事到着。(着陸後炎上することもなかった。)

A班はここで解散となった。私は津に車があるので高速船に乗車し、21時40分津なぎさ港着。車で帰宅したのは23時頃であった。

                                            海外旅行Topへ戻る