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ラックの生き残りサバイバル必勝法

ラックはミニ(前述)の娘で、この春五歳になる。
生まれたときは五つ仔で、参考までに、五匹の名前は。
『ひと』『ふた』『V』『ラック』『アール』(前述)である。
まったく何の繋がりもなく、適当に付けたように思われるが、一応、お揃いだったりする。
どのへんがお揃いかというと。始めにつけた名前をきけば、一目瞭然。
ちなみに、五つ子の始めの名前は
『1号』『2号』『V3』『ブラック』『RX』という。
これをきいてすぐに、名前の元ネタがわかったそこのあなた!
あなたは、特撮オタッキーです。(確定)ついでに、歳がばれますよ。
それが、どのような紆余曲折を経て、変遷していったかは、どこかで語ることもあるかもしれないが、いまは省く。

閑話休題。ラックの話に移ろう。

人間でも、兄弟が多いと、生存競争が激しくなると思う。少なくとも、四人兄弟の私にとっては、そうだった。(おやつの取り合いとか、そんなんだけど)
当然のことながら、ラックにとっても、それは易しいものではなかった。
生まれ落ちた時点で、すでにサバイバルは始まっている。
母乳を飲むときがそうだ。五匹もいると、当然ながら、横一列に並んで仲良く乳を吸うわけにはいかない。
大体、一匹、ないし二匹くらいが下になる。
あまり覚えてはいないが、少なくとも、ラックが下敷きになっていたことは、ないと思う。黒いのが(ラックは名前の由来からも推察されるように、全身真っ黒の黒猫である)埋もれていたことはなかったので、そうなのだろう。
どのような手段を講じたのかはしらないが、ラックがさりげにベストポジションを奪取していたのは、間違いないだろう。
要領のいいヤツである。

そんなラックが最初の試練に晒されたのは、生後三月くらい経ったころのことだ。
野良犬に襲われたのだ。
このとき、二番目(勝手に決めつけ)ふたが敢え無く昇天している。
一番目(同)のひとはドラム缶の中に逃げ込んだはいいが、出られなくなって泣いていたところを救出。
三番目(同)のVは隣の家の敷地にまで逃げ込んで、戻れなくなって彷徨っているところを救出。
末っ子(同)のアールは、どうしていたかは、記憶にないが、その後のモアスモールな行動から推測するに、どっか隅っこに逃げ込んで震えていたのだろう。たぶん。
ラックは、戻ってこなかった。ふたのように確認してはいないが、これは、もしかしたら犬に殺られたのか?と心配していたのだが。
三日後くらいに、排水溝を辿り無事生還。
戻ったのは嬉しいのだが、しかし。もうちょっとマシなとこに逃げればいいのに。とそうつっこんだ記憶がある。

危難を無事乗り越え、生後一年が経った頃。
ひとが車に撥ねられ、これまた敢え無く昇天。
この頃くらいからだろうか。ラックの奇妙な放浪癖が始まったのは。
最初は、何日か置きに二三日戻ってこない日があったくらいなのだが。
それが、やがて。二日留守にしたら、戻ってきた後三日くらいは家に居て、その後今度は一週間程戻らず、帰ってきて五日程大人しくしていると思ったら、次ぎは十日戻らず。と、だんだん家出する日数が増えていったのだ。
そして、終いには、一月、二月では飽き足らず、三ヶ月程戻らなかったこともある。
もう、これは、いくらなんでも戻ってこないだろうと、考えているとひょこりと帰ってきたりする。
その行動の真意はまったく理解できない。

それが、一年半程続いた頃。
アールが、出ていった。(蚤心臓のアールも、ようやく雄の本能に目覚めて、嫁さん探しの旅に出たようなのだ。たぶん)
そうすると、不思議なことに、あれ程放浪しまくっていたラックが、ピタリとそれを止めたのだ。マジな話。
・・・。それ程、嫌だったのだろうか?アールのことが。一緒に居るのが嫌な程。もしそうだったとしたら、あまりにアールが哀れ。

この後のラックは、それまでの生活が嘘のように、日がな一日、ほとんど寝て過ごしている。
もしかしたら、一生分の行動力を、一年半の間に使い果たしたのかもしれない。

とにもかくにも。ラックの放浪癖が治って、半年が過ぎたときのことだろうか。
二月の寒い日。Vが昇天した。野良犬に襲われたらしい。
朝起きたら、すでに冷たくなっていたのだ。

それから二年。
五つ子の中で唯一匹、ラックだけが生き残り、ミニとの親仔仲良し生活を手に入れたわけである。
その為にラックが何をしたか?
何も、していないと思う。言い方は悪いが、兄弟達が勝手にドロップアウトしていっただけである。
そう。ラックのサバイバル必勝法とは、“何もしない”ことだったのだ。

『果報は寝て待て』この諺は、ラックの為にあるのではないか?
気持ち良さ気に眠るラックを見て、私はそう確信したのだった。


作:MIHO

 タラタラ



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