2005年4月9日に亡くなったヴァニラの死亡解剖の検査結果についてご報告します。
真実をきちんとお伝えしたいと思い、各専門家からいただいた結果報告書をそのまま書き写しました。
表現が難しかったり、専門用語が多々出てくるかとは思いますが、どうかご了承ください。

獣医師による肉眼検査所見

検査日 平成17年
4月9日
愛称 ヴァニラちゃん 生年月日 平成15年
12月23日
年齢 1歳齢
動物種 ネコ 品種 バーマン 性別 オス、去勢 体重 3.96kg
外景:著変なし      内景:下記の通り
大網 著変なし
小腸(十二指腸、
空腸、回腸)
著変なし
大腸
(結腸、直腸)
直径約1cmの糞塊 下行〜横行結腸 盲腸に少量のガス貯留
外貌は正常 少量の胃液、胆汁
肝臓 著変なし
胆嚢 著変なし
膵臓 左葉の辺縁に米粒大、赤色部を散見
腎臓 表層、実質ともに全体に赤色を呈した 左:37×23mm 右:34×23mm
膀胱 尿貯留:USG(尿比重)1.024 pH6.5 RBC(赤血球)(-) WBC(白血球)(-)
胸膜腔 胸水貯留 無色〜桃色透明 左胸腔:10ml 右胸腔:17ml タンパク2.7
全葉で濔漫性に赤褐色を呈した
心臓 左室後壁、中隔壁ともに約6.5mm 心嚢膜はゼラチン様に浮腫 心嚢水:1-2ml 無色透明


ラボによる病理検査結果

病理診断
濔漫性のうっ血、出血、肺水腫
心臓 部分的な心筋線維の錯綜配列、心筋線維の部分的な変性および繊維化
腎臓 うっ血、部分的な軽度の慢性間質性腎炎
顕微鏡検査所見
標本内には、肺の一部が観察される。肺胞は広範囲に虚脱しており、散在性に少量〜中等量の好酸性物質(漿液)を充満している。
間質は濔漫性に重度にうっ血し、部分的に出血巣が見られる。
心臓 左心室壁および心室中隔では、部分的に心筋の錯綜配列と心筋線維間での線維性組織の増生が見られる。
僧帽弁は、粘液性線維化を呈し、部分的に肥厚している。
腎臓 腎実質および髄質の境界部では、間質において、散在性軽度から中程度のリンパ球、形質細胞を主体とした細胞浸潤が見られる。
糸球体は、比較的正常な形態を保っている。
コメント
心臓では、心筋線維の錯綜配列、心筋線維間の離解、線維化および僧帽弁の肥厚と粘液状変性など
肥大型心筋症に特徴的な所見が認められました。
肺では、部分的な肺水腫とうっ血、出血の所見を認めます。腎臓では、軽度の慢性間質性腎炎が見られています。
腎臓の標本から腎機能の程度を明確に観察することはできませんが、糸球体には顕著な異常所見は見られていないようです。
以上の所見より、今回の標本からは、肥大型心筋症による心不全が主病変であり、肺および腎臓の病変は二次的な変化と考えられます。


獣医師による肉眼検査および病理検査の結果からの評価

胃〜大腸にかけての上・下部消化管には著変なし。また、肝臓、胆嚢、腎臓に著変なし。膵臓には限局した赤色部があった。
尿比重から、ある程度の尿濃縮能力の存在が示唆された。胸水の性状から、変性漏出液あるいは偽乳糜性の滲出液と考えた。
心臓において、左室壁・中隔壁は厚く、左室内腔が狭小していたことから、肥大型心筋症が示唆された。


かかりつけ病院の担当獣医師による、死亡までの経過説明・病理解剖結果からの考察・治療内容の詳細

2005年4月7日晩に来院。BUN、CREの上昇があり入院静脈点滴処置を行いました。
4月8日血液検査、一般状態も改善傾向が見られたため、引き続き静脈点滴処置を行いました。
4月9日早朝呼吸状態が悪化しており、改善が見られないまま死亡。
解剖検査結果報告書、病理診断書から潜在的に肥大型心筋症を持っていたため、
突発的な心不全が起こり、肺のうっ血など重篤な循環器障害に陥り死亡に至ったと推測されます。
死因に関しては解剖検査結果報告書に記載。
治療:脱水補正の為、点滴治療(乳酸リンゲル液にビタミン)と抗生剤、シメチジン、塩酸メトクラミドの注射を行いました。