ヴァニラは私にとって、大切な家族であると同時に宝物のような存在でした。

私がバーマンという猫種を初めて知ったのは、今から10年以上前です。当時、私はまだ10代でした。
本屋さんで猫種図鑑なるものを見て、一目で恋してしまったのがバーマンなのです。
キュートなポイントカラーにくりくりの青い瞳がとってもおちゃめ。サラサラふわふわの尻尾が優雅な雰囲気。
ポイントカラーだけでも十分チャーミングなのに、さらにホワイトのグローブ&ソックスをつけているなんて。かわいすぎです。
「ビルマの聖猫」と呼ばれている神秘的なところも、バーマンの魅力のひとつだったりします。
図鑑でバーマンを知ってからの私は、もう寝ても覚めても頭の中は「バーマン♪バーマン♪」でした。
いつか猫ちゃんと暮らせる日がきたら、絶対バーマンにすると心に決めていました。しかもシールポイントの男の子。
そればかりを夢見ていましたが、当時の私は実際には猫ちゃんと暮らせる環境ではなかったので、
それからは本屋さんに行くたびに猫種図鑑を眺めては、ため息ばかりをもらしていました。

長い(?)独身生活に終止符を打つべく、退職そして結婚。もちろん新居は「ペット可」の物件。猫ちゃんと暮らすためです。
不動産屋さんにも、「ペットがいないうちからペット可の物件を探すなんて珍しい」と言われたり(苦笑)。
主人には独身時代からバーマンのことは話していたので、家に迎えられる日が来るのを楽しみにしていました。
しかし、バーマンってまだそれほどメジャーじゃない猫種だったようで、ペットショップで見かけることもなく、
ショップの店員さんにたずねても「バーマン?それは何ですか?」って感じの返答ばかり…。
やっぱり夢は夢で終わってしまうのかしら…そう思っていた時に、「ブリーダーさん」という存在に気づきました。
猫ちゃんはペットショップで購入する以外にも、ブリーダーさんのところから直接譲っていただくことができることを知り、
それからは雑誌やインターネットで情報収集に励みました。当時はネットもダイヤル回線だったので大変でした(苦笑)。
そこで改めて知ったのが、バーマンのブリーダーさんそのものも非常に少ないということ。
ざっとインターネットで調べただけでも、悲しいかな、日本で数件…という状況でした。
ブリーダーさんだけでも数が少ないというのに、仔猫ちゃんが生まれるタイミングというのも更に難しくて…。
結局は数件のブリーダーさんにメールと電話で連絡をし、仔猫ちゃんが妊娠(出産)したら連絡をいただくように、予約をする形をとりました。
中には仔猫が誕生しても、シールポイントでなかったり男の子じゃなかったりということもあって、
かなり長期戦になることを覚悟し、同じように好きな猫種であったノルウェージャンFCのマロンを先に家族として迎え、
バーマンの仔猫は2ニャン目に迎えることにして、ひたすら誕生を待つことにしました。それが2003年秋のことです。

年が明けて2004年。本屋で猫ちゃん雑誌を手にとって、真っ先に仔猫ちゃん情報のページにチェックを入れると、
そこには「バーマンの赤ちゃん生まれました」の広告が!胸が躍るというのはまさしくこういうことを言うのだと実感しました。
その広告主のブリーダーさんは、これまでに電話でも予約を入れていたところでもありました。
仔猫が誕生したら連絡をいただけるはずでしたが、結局はこちらからお電話し、見学の予約をしました。
念願のシールポイントの男の子も生まれているので、見学の日が待ち遠しくて待ち遠しくてしかたなかったのを憶えています。
見学の頃には仔猫ちゃんも生後約3ヶ月ということで、気に入ればそのまま一緒に連れて帰ることができるのです。
やっとやっと我が家にバーマンの猫ちゃんが…。本当にドキドキワクワクの毎日でした。

2004年3月20日。大阪から新幹線で東京まで出て、そこからはレンタカーで千葉のブリーダーさんのところに向かいました。
ブリーダーさん宅に着き、部屋に案内されるとそこにはかわいいバーマンの仔猫たちが!
仔猫同士でくっついて寝ている子もいれば、独りでまったりと過ごしている子もいました。
そして、電話で予約をしていたシールポイントの男の子というのが、その独りでまったりしている子でした。
おっとりしているようにも見えましたが、ブリーダーさんから猫じゃらしのオモチャを借りて遊んでみると、
飛び跳ねるようにじゃれつき、その姿がとっても愛らしく、「即決」という感じで譲っていただくことにしました。
その子は自分がこれから旅立つことをわかっていたのか、食事をするとすぐにトイレに行きました。とってもお利口さんでした(笑)。
大阪までの道中も鳴いたりすることもなく爆睡している姿を見て、主人と「いい度胸した子だね」と話したことも憶えています。
そして、見学に伺う前からすでに猫ちゃんの名前は「Vanilla(ヴァニラ)」と決めていたので、
キャリーバッグの中の仔猫に向かって「ヴァニラいい子だね〜。ヴァニラかわいいね〜。」と話しかけていたことも憶えています。

我が家に着いて、マロンと初対面。ヴァニラのほうが、近づいてくるマロンに対し「シャー」と威嚇。
小さいカラダをしていても、怒っている姿は一人前でした(苦笑)。そんな姿がとっても微笑ましく思えました。
食事もトイレも初日からOK。自分の居場所もすぐにキープして、本当にしっかりした子でした。
最初はマロンに対して威嚇してばかりのヴァニラでしたが、ヴァニラとマロンは誕生日に3ヶ月の差はあるものの、
お互いにまだ仔猫ということで、1週間もしないうちに仲良く遊ぶようになりました。
まだ春先の寒い日には、寄り添って寝ている姿はまさに「My Sweet Angels」という感じでした。
一度だけしか見られませんでしたが、寝ているマロンの足の肉球をヴァニラがチュパチュパ吸っている姿には、心から癒されました。

仔猫の頃のヴァニラは本当におちゃめでユーモラスで、そばにいるだけで幸せになるかわいさがありました。
鳴き声もネコらしくないというか、「るるるるるるるるな〜お」とまるで巻き舌のよう音を立てていました。
ちょっと寄り目気味できょとんとした顔立ちもそうなのですが、仕草も愛らしくて、いつもオッサン座りをしては私を笑わせてくれました。
毎日元気にマロンとのプロレスごっこ。体格に差があるのに、必死になっている姿はとてもいじらしく思えました。

大きくなってからのヴァニラは、これまで私が図鑑で見たバーマン以上の魅力がありました。
写真や解説文にあったような、サラサラふわふわのシルキータッチの被毛は限りなくゴージャス。
シールポイントらしくお顔もどんどん黒くなって、その中で輝くブルーの丸い瞳はとても美しかったです。
どの猫種もそうだと思いますが、やはり写真よりも実物が数段良いですね。
生前からサイト内では写真や動画でヴァニラをご覧いただいてきたのですが、
その見た目のかわいらしさや手ざわりの良さというものは、どうしても伝え切れていなかったのではないでしょうか。

ヴァニラのいいところ、かわいいところ、親ばかの私だから一つ一つ挙げていったらきりがないんですけどね(苦笑)。

ヴァニラはイタズラをするのも動機が好奇心によるものだから、邪気がなくて。「だって気になるんだもん」って感じなのです。
ちなみにマロンの場合は知能犯的なところがあったり、こちらの関心を惹こうとしてイタズラすることが多いかも(汗)。
隣の部屋でガラガラガシャーンと音がし、私が駆けつけると…。現場を目撃していなくても犯人がわかるんです。
そのイタズラの犯人がヴァニラの場合、猛ダッシュで逃げて隠れます。そして自分が犯人じゃない時は知らんぷり。
すごくわかりやすいんです。そんなところがまたかわいくて、ついつい怒りそびれちゃったりもして(笑)。

オモチャで遊ぶ時は、いつもお兄ちゃんのマロンの後でした。マロンがすぐにウ〜ウ〜唸るから。
それでもヴァニラは大人しく順番を待って、マロンが疲れた(飽きた)頃に大はしゃぎで遊んでいました。
動きが大雑把というか、ダッシュしたり飛んだり跳ねたり、とにかく疲れ知らずで賑やかに走り回っていました。
今、思えば、そんな小さいカラダの中では、心臓に大きな爆弾を抱えていたんですよね…。
息を切らすこともなく常にMax状態で遊んでいたのは、自分に与えられた一生が短いものだとわかっていたからでしょうか。

ヴァニラがオモチャで遊ぶのと同じくらいに大好きだったのが、私の「おいでおいで」とかくれんぼでした。
私が小さく手叩きをしながら「ヴァニラ、おいで〜」と呼ぶと、タタタタタタタッと駆け寄ってきてはゴキゲンのスリスリ。
「ヴァニラは『おいで』がわかるのね〜。頭いいね〜。」といって頭を撫でてあげると、超ノドを鳴らして大喜びです。
またちょっと私が離れた場所に移動して「ヴァニラ、おいで〜」と呼ぶと、すぐに駆け寄ってきてスリスリ。
直立した尻尾をゆらゆらと揺らしながら小走りする姿がかわいくてかわいくて(笑)。
単純な繰り返しですが、ヴァニラは飽きずに何度でも付き合ってくれました。
時々、私がわざと姿が見えない場所に隠れると、慌てて探し駆けてくる姿も愛おしくて。癒されてばかりいました。

同じように毎日の日課として私が癒されていたのがバスタイム。連れ風呂です。
ヴァニラが大きくなってからなのですが、毎日一緒にお風呂に連れて行っていました。
もちろん、カラダが濡れないように、お風呂の蓋の上いただけなんですけどね。
最初の数日はこの状況に戸惑って、早く出たがったり鳴いたりしていたのですが、
すぐに慣れてしまって、いつの間にか、蓋の上でリラックスしてまったり過ごすようになったのです。
湯船に浸かっている私と蓋の上のヴァニラ。会話はなくても、お互いにくつろぐ最高の時間でした。
たまに私が体調が悪くてお風呂に連れていかなかったりすると、ドアの前で大鳴きするほどにお風呂が大好きにもなりました。
ヴァニラが入院する前日にも、真昼間からお風呂に行きたがってばかりいました。連れて行ってあげると大喜びです。
しかし、部屋に戻るとまたお風呂に行きたがって鳴きまくり…。こんなことは初めてでした。
あの日が最後になるなんて思いもしなかったから、「さっきお風呂行ったからもういいでしょ〜」と言って、連れて行かなかった私。
ごめんね、ヴァニラ。大好きなお風呂場に連れて行ってあげなくて。何も気づいてあげられなくて、本当にごめんね。

考えてもしかたないけど、ヴァニラの寿命というものを知っていたら、死期というものに気づいていたら、
もっともっとしてあげたかったことが山のようにあって、後悔ばかりしてしまいます。
いっぱいいっぱい甘えさせてあげたかった。いっぱいいっぱい幸せを感じさせてあげたかった。
そして、最期という時を、我が家で静かに看取ってあげたかった…。

完治することはなくても、早期発見していたら、治療しながら数年は延命できたであろう病気。肥大型心筋症。
ヴァニラの場合、聴診器では一度も心雑音を確認することはありませんでした。亡くなって解剖して、初めてわかった病気です。
この病気は末期になると、猫ちゃん自身の闘病生活もかなりつらいものになるそうなので、
ヴァニラの場合、亡くなる10日前まではごく普通に元気に暮らしていたことは、
ヴァニラ自身が苦しむ時間が少しでも少なくてすんだということであって、それはそれで良かったのかな…と。
でも、私にとっては愛する家族の突然の別れを簡単には受け入れることができず、
できれば治療しながら、少しでも長く一緒に過ごす時間が欲しかった…とも、ついつい考えてしまいます。

ヴァニラはとってもいい子でした。ああいう形で亡くなるまでは、とにかく病気知らずの元気っ子でした。
食事も好き嫌いはしなかったし、トイレに関しても粗相をすることは一度もありませんでした。
イタズラに関しても、基本的には二度と繰り返さなかったし…。とってもお利口さんでした。
純真無垢で天真爛漫。ストレスもあまり溜め込まない性格だったように思います。
それでいて穏やかで、結局は我が家に来た時の数日に威嚇しただけで、それ以降は一度も怒る姿は見ませんでした。
病院でもドクターや看護士さんから、いつも「いい子にしていますよね〜」と褒められていました。
家ではいつもいつも足元にまとわりついては私のことをじっと見つめて、
「ボクの視界にはママしか入らないの〜」って顔をするので、とにかくかわいい子でした。

2005年4月9日、入院先の病院で永遠の眠りに就いてしまったヴァニラ。
1歳3ヶ月という短い生涯でしたが、ヴァニラと暮らした1年という月日は、キラキラと輝く素敵な思い出ばかりです。
本当にしあわせな時間を過ごすことができました。ヴァニラには感謝の気持ちでいっぱいです。



最愛のヴァニラへ…。

この世に生まれてきてくれてありがとう。我が家の家族になってくれてありがとう。
私をママとして慕ってくれてありがとう。たくさんの思い出を残してくれてありがとう。
ママはヴァニラと出逢えて、本当に本当に幸せだったよ。世界一、幸せだったよ。

つらい病気にも、ひとりでよく頑張ったね。ヴァニラ、とってもえらいよ。
今はもうどこも痛くないかな?つらいことはないかな?元気にしているよね?
姿形はなくなっても、ヴァニラがママの大切な宝物であることには変わりないから。
そして、虹の橋に行っても、ヴァニラの幸せを願う気持ちにも変わりないから。

いつかまた会える日まで…。それまでは、虹の橋でたくさんのお友達と楽しく遊んで過ごしてね。
ママやパパよりも早くマロンが会いに行った時には、マロンのことをよろしくね。
お花畑で追いかけっこしたり、プロレスごっこしたり、また一緒に遊んであげてね。



普段、サイト内ではそれほど親ばかぶりは発揮されていなかったのですが、
このページだけは思い切り書かせていただきました。恥ずかしいですね(苦笑)。

ヴァニラが亡くなった時には、ネットで知り合ったお友達からたくさんのお悔やみと励ましのメールとお花をいただきました。
皆さまの優しいお心遣いに深く感謝いたします。本当にどうもありがとうございました。
心身喪失状態だったり、何かと忙しかったりと、なかなかお返事することもできないのにも関わらず、
何度となく心温まる言葉をかけてくださって、私自身大変励まされ、このつらく悲しい日々を乗り越えることができました。
ヴァニラが他界して2ヶ月。諸事情があって、100%の完全復活するにはもう少し時間がかかってしまうかもしれませんが、
早く皆さまの想いにも応えられるように、私自身も前向きに頑張りたいと思っています。

2005年6月9日 「My Sweet Angels」管理人Chocolat