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松本清張さんの本の書評

 

松本清張 (まつもと せいちょう)

 
(プロフィール)
1909年‐1992年。小倉市(現・北九州市小倉北区)生れ。
給仕、印刷工など種々の職を経て朝日新聞西部本社に入社。
1953(昭和28)年、『或る「小倉日記」伝』で芥川賞受賞。
 
黒革の手帳  点と線  ゼロの焦点  砂の器  けものみち
 
  
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黒革の手帳

黒革の手帳

おススメ度:(5点満点)

本体価格:514円(税別)
発行所  :新潮文庫
発行日  :1983年1月25日
形態   :文庫・321ページ(上)、326ページ(下)

ジャンル:サスペンス・ハードボイルド小説、ドラマ化された小説
 内容
 銀行の不正経理を記した”黒革の手帳”を武器に、銀行から奪取した7500万円の横領金を資本に、銀座のママに転身したベテラン女子行員、原口元子。 その後彼女は銀座で生き抜くため、第2・第3の”黒革の手帳”を画策していく。 そんな彼女の栄枯盛衰を描いた社会派小説。

 感想
 今から30年くらい前に発行された小説であるが全く古さを感じさせないできである。 ついついそのストーリーの引き込まれてしまった。 描かれているのは、いわば社会の暗部ばかりであり、またエンディングも暗澹としたもので、読後のスッキリ感というものはないが、すごく強い印象が残る作品である。
 主人公の境遇には決して共感はできないが、それでも最後には主人公の悪の部分も応援してしまっていることに気づいた。 これも作者の設定や筆力がなせる技だろう。
(書評作成:2010年8月13日)
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点と線

点と線

おススメ度:(5点満点)

本体価格:460円
発行所  :新潮文庫
発行日  :1971年5月25日
形態   :文庫・262ページ

ジャンル:ミステリー小説、映画化・ドラマ化された小説
 内容
 九州博多付近の海岸で、男性と女性の死体が発見された。 一見、心中事件と見られたが、二人の刑事が事件のちょっとした点に疑問を持ち、それぞれ独自に操作を行う。 その中で一人の人物が捜査線上に浮かんできたが、その人物には鉄壁のアリバイがあった。

 感想
 通信手段が電報であったり、また東京から九州への交通手段が汽車であったりと、現在の携帯電話や新幹線の時代からすると古臭さを感じるが、読みにくさは全く感じられない。
 鉄壁のアリバイをといていくのが本作品の本質であり、勘がいい人はそのトリックがすぐに分かってしまうかもしれない。 ただ本作品がご都合主義の奇をてらったトリックを使っていない正統派の推理小説であることの証明である。
(書評作成:2010年10月24日)
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ゼロの焦点

ゼロの焦点

おススメ度:(5点満点)

本体価格:520円
発行所  :新潮文庫
発行日  :1959年2月20日
形態   :文庫・409ページ

ジャンル:ミステリー小説、映画化・ドラマ化された小説
 内容
 結婚式から7日後、鵜原禎子の夫・憲一は以前の勤務地・金沢に戻り、そのまま謎の失踪を遂げる。 夫を捜しに禎子は金沢に向かうが、憲一に関係する人々が次々と謎の死を遂げる。

 感想
 典型的なミステリー小説で、何度もトリックが仕掛けられていてすごく楽しく読むことができた。 警察の捜査状況をほとんど参考にすることなく、素人がどんどん自らの推測に基づいて謎の核心に迫っていくという設定はちょっと気にはなるが、それを補って余りある面白さがある。
 巻末では評論家があまりにむうすっぺらい内容で、しかも物語の核心部分をバラすというミステリー小説にとってはあってはならないことをやっているので、巻末は本文を読み終えるまでは絶対に読んではならない。
(書評作成:2011年5月28日)
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砂の器

砂の器

おススメ度:(5点満点)

本体価格:660円(上)、700円(下)
発行所  :新潮文庫
発行日  :1961年3月27日
形態   :文庫・397ページ(上)、431ページ(下)

ジャンル:ミステリー小説、映画化・ドラマ化された小説
 内容
 東京・蒲田駅の操車場で男の扼殺死体が発見された。 事件の唯一の手がかりは、被害者の東北訛りと“カメダ”という言葉だけである。 今西刑事の必死の捜査の結果、徐々に事件の手がかりや、事件に関係していると思しき”ヌーボー・グループ”の存在が明らかとなってくるが、第二、第三の殺人事件が発生する。

 感想
 昭和にかかれたミステリーということで、時代的な古さがあるが、十分に楽しむことができる。 ちょうど高度経済成長に突入しようという時期であり、まだ貧しかった頃の日本の様子、古いものから脱却しようとする様子をうかがい知ることができる。
 たいていのミステリーは話の序盤で大体事件の概要や犯人のめぼしがつくのであるが、この本に関してはまさに謎だらけ。 いくつかの小さなきっかけを元の推測していかなければならない。
 途中で話の流れがつかめなくなって、再度はじめから読み返した。 じっくりとミステリーを読んでみたいという人にはぴったりの本であると思う。
(書評作成:2012年1月8日)
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けものみち

けものみち

おススメ度:(5点満点)

本体価格:660円(上)、(下)
発行所  :新潮文庫
発行日  :2005年12月15日
形態   :文庫・449ページ(上)、473ページ(下)

ジャンル:ミステリー小説、映画化・ドラマ化された小説
 内容
 割烹旅館で働く成沢民子は脳軟化症の夫を抱え、日々の生活に辟易としていた。 そんな彼女の元にホテルの支配人・小滝が現れ、彼は民子に対し今の生活から抜け出すために手助けをすることをほのめかす。 彼にすすめられるがまま夫を焼殺した民子は、日本の政財界を裏から牛耳る鬼頭の女として雇われることとなる。
 民子の事件は事件性がない事故として処理されるが、それに疑問を持った刑事・久恒は独自に捜査を進め、やがて民子の居場所を突き止める。

 感想
 この話で語られているのははっきりいって悪の話ばかりであり、読んでいて気持ちのよいものではない。 エンディングにしても実に救いようのない印象しか残らなかった。
 本作品のタイトルにあるように、まさに人のみちを外して”けものみち”に迷い込んでしまった人間たちの行く末が描かれている。 一見普通の道かと思って進むことはできても、それは本来の人が通るべき道ではないのでその先に待ち受けるのはまさに破滅のみ。 いずれの登場人物も悪役として描かれており、けものみちに迷い込みながら破滅へと進んでいくこととなるが、悪役でありながらも憎めない個性を持っており、つい応援したくなってしまう。 それは著者の筆力のなせる業であろう。
 ハッピーエンドの小説と比べると読後の爽快感などは皆無であるが、たまにはこのような悪の物語を読むのも気分転換になってよいと思う。
(書評作成:2013年7月27日)
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