コダワリが妥協を拒否する、職人達のジーンズ。
『どれだけ一生懸命ジーンズが作れるかです。シルエット、縫製の細かさなど、デニム好きが作ったジーンズは見ればわかりますもん。生地の表情を見ただけでどこのメーカかも当てられます』(塩谷健一,ポパイ編集部:『98年度版ジーンズ大特集』POPEYE 5月10日号;マガジンハウス.1998.P83)

ウエアハウスは徹底して「昔のままのジーンズ造り」にコダワっている。ウエアハウスのジーンズを最初に目にしたのは、フルカウント同様、またも『NOISE』である。アツい接客を受けながら見せられたウエアハウスのジーンズの写真(後にウエアハウスの広告に使われた写真だった)はヒゲやアタリがしっかりと出た、素晴らしい色落ちを見せていた。

「おぉ、スゲェ」とか思ってる間に多くのマニアの視線を集める存在になった。バイト先が茶屋町店(現在、ウエアハウスの直営店は茶屋町からアメリカ領事館の近辺へ移転している)の比較的近所だったこともあり、ちょくちょく顔を出していたが、その頃はrigidのままドゥニームのXXとフルカウントの0105を持っていた(既にこの頃からストックを持つクセがあった)購入したのはスウェットやベルトばかりで、ジーンズを購入するのはおよそ1年後の1999年のLimited modelが最初になる。そう、当時マニアの視線を釘付けにした酸化デニムである。

創業当初にバックポケットを飾っていたアーキュエイトステッチや酸化デニムなど、実は私はどちらかと言えばウエアハウスに好意的なイメージを持ってはいなかった。特にバックポケットを飾るアーキュエイトに、「復刻」をキィワードにしていると感じたからだ。その後多くのブランドがXXタイプのジーンズ復刻へ参入し、差別化を図れないまま淘汰されていった事を考えれば、もはや復刻というキィワード自体が付加価値を持たなくなることは当時から明らかなことだった。まぁ私が復刻にあまり魅力を感じないのは、オリジナルとなるオールド・リーバイスへの知識と理解が乏しく「どれほどオリジナルに似ていようがあまり興味がない」だけだが。

他の人はどう考えているかは知らないが、我々の世代はそもそも501XXを知らない。すでに知った時は501XXに異常な付加価値を世間が認めていた時期だ。「だからヴィンテージの代用品としてレプリカを…」と言う人もいるだろうが、少なくとも私は代用品ともレプリカとも思っていない。501XXを体験していないからだ。

だからノスタルジーでジーンズを穿くことはないし、完全復刻などと語るブランドにあまり興味を引かれることはない。そんな意味で私はウエアハウスのジーンズの素晴らしい色落ちを認めつつも、なかなか購入に踏み切れなかった。

勿論、貧乏学生には次々ジーンズを買うだけのカネがなかったことは否定しない(笑)
大学時代から4年間使い続けたギャリソンベルトを買ったのもSALEだったもんなぁ…。

しかしウエアハウスのジーンズを実際に穿いてみて考えが変わった。ゴワつくことなく身体に馴染み、クセを刻み込むデニム。高品質と安っぽさ(失礼!!)の絶妙バランスに成り立つボタンやリベット、美しく飴色へ変化するレザー・ラベル…。ウエアハウスが造り上げたジーンズは出色の出来映えだった。これは単にオールドモデルを復刻するブランドではなく、ウエアハウスの視線はいかに手間ヒマをかけて昔のロゥテクで、今のジーンズ造るかに注がれている気がする。レギュラーモデルの造りに元々手間ヒマを惜しまないからこそ、セミオーダーなど非常に面倒なこともやってくれるのだろう。個人的にこのセミオーダーは+5,000円くらいで好きなデニムを使って好きなパターンのジーンズをオーダーすることができ、「いつかは俺様仕様」と思っているマニアにはたまらないサービスだったと思う。冒頭の塩谷健一氏の言葉通り、ウエアハウスに関わる人々はデニムが好きで好きでたまらないのだろう。04年を最後にこのセミオーダーは終了してしまったが、今後もマニアックな定番モデルで多くのユーザーを楽しませてくれるだろう。

『レプリカは時間まで作れないってよく言われたんです。それならって染色の段階で酸化する液体をプラスする手法で、早くヴィンテージ風になるモデルを作ろうって』
(塩谷健一,ポパイ編集部:『98年度版ジーンズ大特集』POPEYE 5月10日号;マガジンハウス.1998.P83.)

ジョー・マッコイがモノ造りの背景を徹底して創り込み『テクストから遠く離れて』を地で行くのなら、ウエアハウスは徹底してそのモノ造りにコダワリ、『リーバイス』や『レプリカ』と言う背景との関係性を切り離し、徹底してテクストのみを読み解く(笑)べきブランドだろう。ドゥニームやジョー・マッコイに比べるとちょっと頼りない気もするトップボタンは、ジーンズを穿き込んだ時にくたびれたデニムの風合いと最高にマッチするのだ。この「全体的にヤレたカンジ」に、パーツや生地単独ではなく、過ごした時間と共に魅力的になるジーンズを造ることへの情熱を感じる。

しかしウエアハウスはまだ満足していない。その後も限界染めなど、飽くなき探求心で魅力的なモデルを登場させ、今も多くのマニアから絶賛を浴びている。私もそんなウエアハウスに魅せられ、限界染めの2ndを購入した。浅いインディゴブルーが気になって購入した限界染めGジャンだったが私のミニマムな身体ではサイズがあわず、結局まったく着込まないまま現在は兵庫県の山奥で働くT氏の所有物となっている(泣)