大阪地下鉄は堺筋線の恵美須町駅を降りると、昭和の面影を色濃く残す恵美須町があります。いやむしろ「新世界」の方が馴染みがあるんじゃないでしょうか?新世界はNHKで放映された『ふたりっ子』の舞台であり、また『プロジェクトX』で再建の物語が登場した通天閣を有する街でもあります。5年前、下町大好きのS氏に「串カツ食いに行こう」と連れてこられたのがMSの新世界初体験。ここは「劇場型市街地」とでも表現すればいいんでしょうか、昼間から路上で唄う熟年男性や踊る壮年女性の姿があり、まるでフェリーニの映画の世界。

そもそもこの街の遍歴自体がちょいと変わってます。現代にほど近代、明治時代に遡ります。1903年に内国勧業博覧会が現在の天王寺公園・大阪市立美術館・茶臼山・天王寺動物園と広大な面積で開催されたのが開発の契機。関西以外のヒトにはわかりにくい話ですが、実際に歩いてみるとこれはトンデモナイ広さです。その博覧会の跡地として計画されたのがこの新世界。

ナンでも街の北半分をパリ、南半分はニューヨークを模した大歓楽地として構想され、開発の象徴が今や大阪のシンボル=通天閣です。現在の通天閣は内藤多仲氏の手による二代目。上部はエッフェル塔を、下部は凱旋門を同時にパクったデザイン(笑)昔はどんな広告が掛けられていたのか知る由もありませんが、現在は『日立ITソリューション』と、ここにもIT革命の波が押し寄せていました(笑)

大阪の過剰な街、と言うイメージは『かに道楽』に代表される道頓堀と、『づぼらや』に代表される新世界に負う物が大きい…と思ってたんですが、帰りに日本橋やアメ村を歩けばどの街にも同じセンスが感じられました(爆)考えてみると新世界の大衆娯楽・道頓堀の飲食店・日本橋の電器街・アメ村のファッションなど、何らかのコンテンツが求心力となって多くのショップが集う構造も同じ方程式に拠る…とも言えそうです。それにしても各エリアの棲み分けは見事。

(※画像は左から新世界、道頓堀、アメリカ村の風景)

そんな街並みをO氏と共に歩いていると、彼の腹時計がメシ時を伝えます。今日は「ソースの二度漬け禁止」の張り紙でも有名な『八重勝』で昼から串カツ。「肉こそ我が命、肉無き人生に憎しみあれ!!」と宣言するO氏の瞳が輝きます。並んでいると前のおばちゃんが「ここのは美味しいでぇ」と我が子を自慢するようなニコニコ笑顔で、昼から串カツで旨そうにビールをグピグピやってました。

実際ここの串カツは、旨い!!串カツが揚がるまで、まずはどて焼きをアテにウーロン茶(笑)を飲んでいると「ハイッ、揚がりました!!」と威勢の良い声と共に串カツが眼前に。軽くソースをからませれば、思わず口がカツのお迎えに。MS達の目の前で生地に加えられた山芋が、衣と共に油をくぐってまずサックリ、そしてふんわりの衣を演出します。もちろんエビやホタテなどの定番も充実ですが、MSのオススメはなんたって生椎茸!!油でサックリ軽い食感に揚がった椎茸を口へ運べば、加わった熱で旨みが広がる堪えられないシアワセ!!

大満足の昼メシ後、ジャンジャン横町を抜けてぶらぶら歩けば『フェスティバルゲート』に遭遇します。ここは大阪市の土地信託事業としてスタートしたものの、一度も黒字を計上せず(笑)そして現在は破綻(爆)委託先の銀行と大阪市で壮絶な責任の押し付け合いが展開された失笑のテーマパーク。結局、大阪市が公費200億円を投じて信託契約を解除した経緯があります。ふと見上げればフェスティバルゲートに掲げられたメッセージ。『この社会、あなたの税が生きている』大阪市のこの無責任なセンスには、もう笑うしかありません。

フェスティバルゲートをぐるり一周し、再び新世界へ。すると『映画とAV通天楽座』の看板が(笑)この新世界、かつては東映・松竹・東宝・日活・大映・東宝と全ての邦画封切館が揃った映画の街としても知られており、その時期が新世界の最盛期だったそうです。しかしテレビの登場と共に娯楽の王様の座を奪われ、映画館も今ではポルノ映画を上映中。それにしても昨年のカンヌ・グランプリ『オールドボーイ』とポルノフィルム『痴漢電車 いい指濡れ気分』が同時上映される映画館は、そうそう無いんじゃないでしょうか(笑)

どの角度から見ても、過激に過剰。しかし不思議な空気と人情が満たす街でもあります。歩くほどに「あなたの知らない世界」が広がること請け合い。さぁ非関西圏のアナタも後日来阪の暁にはディープな大阪を体現する街、”新世界”へようこそ!!

(05.03.06)

新世界アンダーグラウンド。