Pherrow's L2

私の大好きなジーンズ、ドゥニームのXXモデルである。
ドゥニームは他にも66や505、WWUなど多くの素晴らしい
ジーンズを造り出し、定番として人気のブランドである。

中でもこのXXモデルはデニムの荒々しい色落ちと相まって、
多くのファンを持つジーンズだ。その染めは濃く、半年ほどで
やっと色落ちを確認できるほどの手強さで、デニム自体も
ファースト・ウォッシュ程度では立位保持できるほどに固い。
しかしその堅さからヒゲの位置がズレることは少なく、綾織り
のセルヴィッジはファースト・ウォッシュ後にクルリと反り返って
くれる。

こういった細かなディティールの積み重ねで、このジーンズは
コントラストの強いタテ落ちとシャープなヒゲ、セルヴィッジの強い
アタリを味わうことができる。

『レプリカ』ブームが去った現在では、ドゥニームもXXの定義
に縛られず、XXモデルに使用しているデニムを使って66や
805を造っている。股上が浅いこの2つのモデル、特にボタン
フライの66モデルは素晴らしいヒゲ落ちを見せてくれるだろう。

ドゥニームを率いる林氏自身も『あと2年で完璧な
色落ちのができる』(林芳亨:『デニムスタイルブック Biggri3』,
ライトニング別冊:竢o版.2004.P79.)
と語るように、現在
はユーズド加工のモデルが人気を博している。

ドゥニームはまだブームの頃からユーズド加工に挑戦
していた。正直、その頃のユーズド加工のデキは充分
な水準ではなく、10m先から見てもユーズド加工だと
判った。しかし現在の加工技術は非常に高水準にあり、
6月15日にリリースされた『VINTAGE LINE』はその
技術の結実と言える。

左から'96、'98、'04。以下の画像も並びは同じ順。

ストーンウォッシュをかけたジーンズにサンド
ブラスト加工を加え、シェービングでトドメを刺す。

ただでさえ手間のかかるジーンズ造りの工程に、
ユーズド加工と言うとてつもなく手間ヒマのかか
る工程が加わる。加工を失敗すれば商品価値
を失ってしまう為、失敗は許されず、職人の技術
によって仕上げの美しさが決まる。

私は「手間ヒマを惜しまないモノ造り」が大好きだ。
だが、ユーズド加工だけはどうも心が躍らない。
それは私が考えるジーンズの最大の魅力である
『同じ時間を過ごす』日々の過程を職人の技巧に
よって奪われてしまうように感じるからだ。

中央の'98と右'04は共にジャストサイズの27インチ
だが、左の'96だけが28インチである。ヒゲの出方に
は、やはりジャストサイズに軍配が上がる。

勿論、ユーズド加工のジーンズを購入するヒトは
自らの意志でユーズド加工を選択している。
だから「奪われる」という表現は本来なら適切
ではないだろう。

ファッションとしては濃いインディゴのジーンズよりも、
ある程度色落ちの進んだジーンズの方がコーディネ
イトに取り入れやすい。だからファッションアイテムの
ひとつとしてジーンズを捉えているヒトにはイチから
ジーンズを育てるより、手っ取り早いユーズド加工
ジーンズの方がいいのかも知れない。

ユーズド加工を購入するヒトが自ら加工モノを選択する
のなら、私も自らの意志でrigidを購入しよう。

デニムフリークの儀式と化しているファースト・ウォッシュ
も、当然、自分の手で行おう。

'98と比べて('04は現時点では論外だろう)'96は最も
激しいタテ落ちを見せる。なんせこの当時、この一本
しかジーンズを持ってなかったからなぁ(笑)

レザー・ラベルにも穿き込んだ年期に応じた変化が
生じている。'96は特に熱湯加工を施したワケでは
なく、ごく普通に穿き込んだだけだが、迫力のある
色に変化した。実は単にフルカウントのベルトの
染料だったブラックが移っただけなんだけどね(^^;)

左が'96、右が'98の画像。'96を購入したショップに
ユニオンスペシャルが無かった為、シングルステッチ
での裾上げになった。当時はあまり気にしなかったが、
やはりチェーンステッチによってアタリのでた裾の方
が個人的には好きだ。

それもまた、『自分だけの一本』と
過ごす楽しい時間の一部なのだから。