去年の「自然科学史」の授業で書いた文。
「核」について。
字数制限があった(1500字程度)ため、書きたいことのほとんどが書けなかった。
ほんの少ししか勉強しないで書いてしまったが・・・
「核」と一言で言っても、問題は様々、多く含んでいる。
世界には冷戦終結後の現在も、約4万発の核弾頭が存在し、原発事故が起きている。
「核」についての問題は、人類全体の未来に関わる重要な課題である。
両方の資料を読み、まとめようとしたが、とても収まりきれないと思ったので、今回は原発にしぼって書いてみる。
気候変動問題への世論の関心の高まりを背景に、原子力発電を二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーと位置づけ、温暖化防止対策の柱として推進しようとする動きが目立つ。
しかし、原発は、本当にクリーンなのか。
原発は、燃料としてウランを使い、核分裂反応を熱源として利用して発電しているので、発電時に二酸化炭素を排出しない。
しかし、ウランの採掘から始まって、製錬、転換などといった各過程で、多量のエネルギー(=二酸化炭素の排出)を必要とする。
また、発電後に出る様々な放射性廃棄物の管理にも多くのエネルギーを必要とする。
原発もまた二酸化炭素を排出するエネルギー源なのである。
電気しか生み出せない原発を推進すると、電力化率の上昇につながっていく。
原発は常に変化する需要に合った微妙な出力調整ができず、他の電源と合わせて運転しなければならないし、点検時や事故が起こった時に備えて、火力や水力などのバックアップの電源を必要とする。
電力化率を高めることは、結果としてエネルギーの浪費を進めていくことになり、気候変動問題解決に最も重要な、エネルギー消費の削減に逆行してしまう。
さらに、原発の開発には膨大な研究開発費が必要とされる。
日本のエネルギー研究開発費は、OECD諸国の中でも膨大だが、その中でも76%が原子力関連である。
反面、環境的に優れたエネルギー利用であるソーラーや風力などの再生可能エネルギーや省エネルギーには、全体の10%が割かれているに過ぎない。
また、原発を推進するための広報費や原発現地への交付金などの莫大な資金が集中することによって、新しいエネルギー産業の成長が妨げられるという問題も起こっている。
原子力には、いつも巨大事故の可能性がつきまとう。
13年前のチェルノブイリ原発事故は全世界に深刻な影響を及ぼしたが、日本の原発も数多くの事故を起こしている。
高速増殖炉「もんじゅ」のナトリウム火災事故、東海再処理工場の火災・爆発事故、敦賀原発2号炉の大量冷却水漏れ事故、そして今回の東海村の臨界事故である。
東海村の臨界事故で、大量の放射線を浴びた方が亡くなった。
これは、核物質を扱うことに必然的に伴う事故や危険性に対して、充分な安全対策を怠ってきた日本の原子力利用が生み出した災害である。
偽りの「原子力安全神話」を流布してきた政府の原子力安全規制の無責任体質、原子力産業の安全性軽視が多数の被曝者を生み出したのだ。
たとえ事故がなくても、原発は日常的な運転や定期点検において、人間が放射能で汚染されることを強いる。
しかも、日本では月平均で数件の原発事故やトラブルが起こっている。
以上みてきたように、原発は決して気候変動問題を解決しない。
多数の人々が放射能の犠牲となることを前提とする発電システムを、それらに目をつむり「二酸化炭素を出さない原発」とだけ言うのは、あまりにも一方的であり、私たちの社会に受け入れることはできない。
これまでの、大量消費を前提としたエネルギー政策を根本的に見直し、今すぐ、省エネルギーや環境により負荷を与えない新しいエネルギー政策に真剣に取り組むべき時である。
そろそろ日本も、欧米諸国が選択しつつある、経済そのものを環境重視型に切り替えていくことによる、新しい形の経済発展もあるということを、認識しなければ。
核廃絶は、現実として非常に難しい。
しかし、私たちは全ての核エネルギーを拒否しなければいけないと思う。
科学技術が発展し、それを使う私たちの精神の成熟はその速さに追いついていない。
原子力発電によってできるプルトニウムからは核兵器を作ることが可能だ。私たちが核を平和利用できるまで、完全に断絶すべきだ。
原子力技術を拒否し、平和的なエネルギーを選択すること。
アジアにおける核実験や原子力技術開発の継続に対し、大きく声をあげていくべき核保有の是非を問う前に、核についての知識を人々がきちんと持つ。
そして政府のレベルでは、国家の利益へのこだわりを捨て、話し合い、核の所有を禁止する法律を作るとか、考える必要があると思う。
<参考資料>
「地球核汚染 ヒロシマからの警告」 日本放送出版協会
「核と人間」 坂本義和編 岩波書店
NHK地球法廷 http://www.nhk.or.jp/menu.htm 「核と人類Part1・2」
ほとんど調べたことばかりですが。
核の問題は、ほんとに世界規模の問題です。
最近は事故が相次ぎ、真剣に考えるべき時がきているのではないかと思いますが、どうでしょう。