
KUNPEI AZUMA

東君平さんの本と出会ったのは、図書館でいつものように詩の本を探していたときでした。「はちみつレモン」という
その題名に、なんとなく惹かれて手にとって、「かわいいなぁ〜」と思いました。詩をよむ前に、その挿し絵に感動。
白と黒の世界。切り絵でした。シンプルな絵も、詩もかわいくて、あたたかいものです。何かの紹介で「大人も子供
も楽しめる」とありましたが、本当にその通りだと思います。46歳という若さで亡くなった東君平さん。残念です。。。
東君平 「紅茶の時間」より
「電話」
電話の前にすわって
ベルの鳴るのを待っていたのに
りーん りーん りーんと
三度目に
やっと受話器をとりました
「いないのかな」
と心配して欲しかったからです

「紅茶の時間」
木陰のテーブル
紅茶に うかんだ
レモンの 薄切り
こんな小島に
ふたりで住みたい
東君平 「魔法使いのおともだち」 より
「にわとりのこと」
いつだったか珍しく
あいつが朝寝坊した
ピクニックの約束のある日だったけれど
誰ひとり怒る者はいなかった
やはりたまには
いくら本職とは言え
一つ二つの失敗がなくては
面白味も出ないし
進歩も少ない
にわとりの朝寝坊
いい感じ

「くじらのこと」
あの大きなからだ
やつは自分でどうしようもないと
いつもなげく
あげくのはては
ズドンとやられる
ほとんどのくじらが
こんど生まれ変わるなら
イワシでいいと言っているらしい
東君平 「はちみつレモン」 より
風は
みんなに吹く
こんな当たり前のことが
ついこのごろわかった
うれしい
甘くて すっぱい
はちみつレモンは
どこか自分に似ている気がする
たとえアヒルの歩みでも
それが子犬の知恵にしろ
自分で選ぶ道だから
自分の歩く道だから
自分の足の向くままに
自分が生きて行く先は
自分の足の下にある
たとえアヒルの歩みでも
それが子犬の知恵にしろ
自分の生きて行く先は
自分の足の下にある

「綱渡り」
綱渡りの旅芸人は
ゆらり ゆらゆら ゆらりゆら
きのうも きょうも 綱渡り
止まれば落ちて けがをして
戻れば 客に笑われる
すすむしかない 哀しさが
青春の日々に 似ていると
いつか 思ったことがある
綱渡りの 旅芸人は
ぐらり ぐらぐら ぐらりぐら
きょうも きのうも 綱渡り
小屋から小屋への 旅ぐらし
過ぎた昨日が 見えるから
ふりかえることは やめている
青春の日々と 同じだと
いつか 感じたことがある
綱渡り 命がけ
青春 無我夢中
どちらも 細い綱の上
