びわ草子



 10月25日(土)    オレンジ

ふと目をあげると、空がオレンジ色にゆっくりと染まっていくところだった。
「オレンジ」を思い出して、なんだか涙がこぼれた。
この曲を初めて聴いたのは、そうしょっちゅうは会えない友達のところに遊びに行った時で、私はまだ学生だった。もう後半に突入していたけど。
遠いところにあると思っていた「未来」がいつの間にか目の前に差し迫っていて、戸惑いながら、忘れようとしながら、それでもどこかで考えていた時のことだ。
楽しく話して、彼女の作ってくれた料理を食べていたその空間に「オレンジ」が繰り返し流れていた。
とりとめのない話をしながら、「この時はきっと戻ってこないんだろうなー」とぼんやり思っていた。
静かでおだやかで、どこにでもありそうな、あの朝を思い出す。
・・・シリアスになったのは、この涼しさのせいかもしれない。秋だからだ。
空の色ひとつで泣けるのは、秋だからだ。
うろこ雲までオレンジ色に輝いていて、とてもきれいだった。