小さな政府・小さな自治体

1. 法人税は増やせない――外国に合わす

 我が国は米国に資本自由化 をせまられ、それを簡単に呑んでしまった。そうなると米国資本が乗り込んで来る。ところが法人税が高かったから、米国が「非関税障壁だ」と声高に主張し た。これも日本政府ははいと聞いた。そして外国企業が「技術漁り」に入ってきた。自動車企業で残ったのは本田とトヨタだけというさんざんの状態である。

 これだけ見れば、亡国論者は、政府のだら しなさと売国的やり方に頭に来るのであろるが、現実には資本自由化を選ぶ以上、仕方ないことである。資本 自由化は資本が国の垣根を越えて行き来することを認めることである。そうなると我が国だけ法人税を高くするわけには行かない。資本の逃避、日本資本の劣化 が起こるのである。かくして法人税は安くさせられてしまった。

 勿論ドイツのように米国帝国主義に対して 徹底的に逆らうのが一つの方針である。垣根を全部取っ払って、少々給料を下げたからといって、中国に勝てるとも思えない。米国に逆らうことが日本を守るこ とかも知れない。勿論今の政府に期待できないことであるがーー

2. 金持ち優遇税制

 戦後40年間、金持ちは8割 方税金に取られるものであった。ところが今やその半分程度である。遺産相続税も大おまけにまけている。生存中もほとんどタダで相続できるようにするとい う。金持ちが行う株式投資の税金の削減はどうだ。これらは全て日本が貿易と資本の自由化を米国から強制された頃に始まったのである。新自由主義(新帝国主 義)は戦前のような金持ちと低収入の人で構成する社会を良しとする。金持ちを優遇することが社会を活性化するというのである。

 しかし、考えてみるとそのように金持ちを 優遇しなくても彼等は金儲けに走る。むしろ、優遇すると遊んでしまうのではないか。戦後の社会では金持ちも中産階級も熱心に働いた。それが日本アズNo.1と言わしめたのである。税金が高くなると金持ちは海外に逃げ 出すであろうか? 程々は取り立てるべきと私は思う。

3. 低所得層から税を取る

  税収はどこで確保するか。以前は金持から徴収したが、今では皆から取るという。収入の割合でいえば、貧乏人から徴収するのである。これは、びんぼうな層は 企業活動する力がないから、其れを優遇するのは損であるーーということだ。戦後は民主主義で「皆が中流階級」を目指した。これぞ修正資本主義の神髄であっ た。ところが米国が皆豊かになった社会をこじ開けて入ってきた。米国はいう、「これからは新自由主義である、いうことを聞きなさい」

 米国に巻き込まれ、企業や金持ちから税金 を少ししか取らなくなった。皆から取ることになった。ところが低所得層から消費税5%徴収しても知れている。最後には1520%にする必要がある。それでも収入は不足する。予算は80兆円の内45兆円ほどしか収入がない。残りは借金だという。とんでもない 政府だ。老人大国でもある。うば捨て山にする気かといいたいがーー

4. 支出を削減するしかない――小さな政府

 金のあるところにサービスしてしまった以 上、消費税やたばこ税を上げる。それでも絶対的に不足する。結局小さな政府にせざるを得ない。

 小さな政府とは厳しいものである。公教育 は最低限とする。数学、理科、国語程度を集中的に教えればよい。其れ以外は無駄である。要は従業員として 必要なことのみを教えればよい。音楽や美術は不要である。切り捨てる。米国の話だ。金持ちが通う私学で立派な指導者となる教育をすればよい。

 社会福祉はどうだ。徹底的にコストダウン しなければどうにもならない。基本は各人がやることで、ごく一部について手伝いする。スエーデンでは福祉関係職員の首切りが加速しているという。

 環境問題はどうだ。強化するだけコスト アップの国になる。だから金を出さないことしかしない。米国は環境対策は冬の時代である。ドイツが米国に抵抗していて最後の砦であるが、其れも今や財政赤 字でお手上げ寸前である。

 これらを見るとき、我が国が世界基準の社 会になるには、これから厳しい削減が待ちかまえている。口で言うほど簡単な社会ではない。それでも税収をおまけで半減してしまった以上、国は何もしない社 会にして、バランスをとらなければならないことになる。

5. 小さな地方自治体

  政府の税収を減らすとき、勝手に地方税も削減するようにしてしまった。一方的に面倒を見てくれたのである。このありがた迷惑なお節介は地方の自治体を直撃 している。法人税の割合が大きな県が最初に泣いた。次は市町村の番だ。さらに加えて地方交付税をどんどん減らしてきた。H.12頃は、それ財政投融資を使え、其れ使えといっておいて、H.14年度になると、一転、交付税を大幅削減してきた。ある町はこ れはだまし討ちにあったようなものだと怒る。しかし、国際社会の嵐の中で右往左往して戦えない日本を見よ。否応なしに小さな政府にならざるを得ないではな いか。

 小さな政府は小さな自治体を強制すること は当然で ある。地方分権がどうであれ、小さな自治体に必ずならざるを得ない。米国社会が倒産して世界がひっくり返らぬ限り、日本政府が目覚めない限り、仕方ない流 れでは無かろうか。町村合併だけではどうにもならない。それが分からない自治体がほぞをかむことになる。

6. 賢い地方自治体の勧め

 政府の予算を見るとよい。 到底まともなものではない。そこで出される方針はそのような土台に立てられていることを承知しよう。その先を地方自治体は見るべきである。米国的税収政策 を採っている以上、今のような公共投資とそれを交付金で支えるシステムは砂上の楼閣である。米国では軍事産業以外そのような投資はしないようである。いま 借金で公共投資を引き受けた場合、その面倒は国が見てくれるなどと分析してはならないことはいうまでもない。

戻る