細 砂ろ過ろ過の概要と原理

1.研究の 端緒

  姫路市の水道は主に2級河川市川に依存している。市川の河川敷ゴルフ練習場のレストラ ンに給水していた地下水に大腸菌群が見つかったため,太陽砂工房が0.3mm以下の細砂のろ過槽を作ったのがきっかけである。そこで兵庫県立大学(当時は姫路工業大 学) の村上研究室と会社の共同の研究が始まった。これが細砂緩速ろ過である。これで大腸菌問題は解決した。

 

2.展開

○逆洗 付細砂ろ過の開発

 最初の水源は濁度が極めて低 く,閉塞の心配はなかった現7年経過してもなおろ過ができている。しかし,濁度が0.1以上の地下水では何れ閉塞する。さらに河川表流水となると,目詰まりは避けられない。い ろいろな試行錯誤を行った。最終的に到着した解決策は逆洗をである。これが逆洗付き重力式細砂ろ過である。

○高圧 力式細砂ろ過の開発

 このシステムの条件を研究し, ろ過速度をアップしていくと,ろ過砂の「みず道」が全く発生しないことに行き着いた。さらに圧力を高めた場合も「みず道」が出来ないことが分かった。そこ で圧力を高めた方式,高圧力式細砂ろ過に到達した。この圧力は従来の圧力式急速ろ過が最大2m水頭であるのに対して40m400kPa) であっても良い。砂ろ過としては世界で初めての高圧力である。

 このような研究の成果は順次日 本水道協会などに発表してきた。

 

3.標準ろ過砂と細砂は全く異な る

(1)0.3mm以 下の細砂は使用禁止であったが

 従 来は0.3mm以 下の細砂は使ってならないとされていた。使えば目詰まりを起こし運転不可になるというものである。緩速ろ過もしかり,急速ろ過もしかりであ る。
 緩速ろ過は平均粒径
0.8〜1mm程 度の砂を使う。ろ過で目詰まりすると人手により砂の掻取を行う。大 体1ヶ月に1回であるが,これを細砂にすれ ば11回 になって 運転不能になるのが理由である。
 これは逆洗で全く問題がないこ とが判明した。きれいな伏流水や地下水を使った場合,閉塞は少なく,掻取でも済む程度である。細砂であるからろ過性能が良く,ろ過速度を
10m/日以 上にしても問題なかった。
 急速ろ過では細砂はマッドボー ルが出来ることを確認し,細砂は使えないことが判明した。最小粒径は
0.6mmであった。設計指針の有効径0.6〜0.7mm,均等係数1.7以下と いうのは合理的である。
 しかしながら,凝集剤を入れな ければ,細砂がいくら微少であっても問題はないことが分かった。高 圧力式では超細砂
0.05〜0.1mmが有用である。

(2)標準 ろ過砂は高ろ過速度で は濁質が漏出

○標準の緩速ろ過では漏出

 設計指針では,ろ過速度は4~5m/日, 最大8m/日である。ろ過膜が正常に保たれていれば地下水の場合,さらに速度は高くできる。小島貞 男氏は15m/日が良いとの考えである。しかし無機濁質の流入が続く場合(河川工事,洪水など),ろ過 膜は破壊され濁質が漏出する危険性がある。結局,河川表流水では高速ろ過は難しいのである。

○細砂では漏出しない
 当然のことであるが,高速ろ過 が出来る。細砂の粒径が小さいほど濁質は漏出せず,ろ過速度を高くできる。重力式ではろ過砂は
0.1〜0.2mmの大きさであるが,無 機濁質流入が激しき無い原水では40m/日であっても問題はない。勿論クリプトスポリジウムの様な粒子は完全に除去できる。

 河川水で特別に無機濁質対策が 必要な原水は,重力式の場合2段ろ過を基本とすると良い。前段で最大80m/日で 大半の濁質をろ過する。

 高圧力式ではさらにろ過速度を 高くして運転できる。実施設では前段ろ過として200m/日,20m(200kPa)で運転しているところがある。

(3)急速ろ過の高圧は濁質漏 出,高圧力式は漏出しない

○急速ろ過は凝集剤が問題

 ろ過速度をアップする場合問題 になるのは,濁質の漏出である。急速ろ過の場合,水頭を2m以上取ると濁質が流出する。これは「みず道」として知られた現象である。圧力式急速ろ過 もこれが限界である。原因は,濁質が凝集剤でまとめられた浮遊物であることだ。この濁質は柔らかく,標準の大きさの砂ろ過であると,少し圧を掛けるとトロ トロ漏出してしまう。かといって砂を小さくするとマッドボールが出来る。

○高圧力式細砂ろ過は40m(400kPa)も可

 細 砂ろ過は凝集剤を使用しな い。実用上、圧力はいくら高くても問題は無い。実験では40m水頭(400kPa)すなわち急速ろ過の20倍まで圧をかけた。このような高圧の 砂ろ過は世界初である。

 高 圧ろ過はろ過速度のアップと ろ過砂粒径の微小化を可能とする。ろ過速度は現在200 m(2 00kPa)の定常運転が行っているがさらに高速も可 能であろう。細砂のおおきさは0.03mmの 超細砂も無機濁質除去に役立つことが分かっている。但し,砂供給を考えると現在は0.05~0.1mmを最小としている。河川表流水で,超細砂0.05〜0.1mm,ろ過速度100m/日として4ヶ月運転したところ,濁度は常に0.1度以下であった。

戻る