新エネルギーの可能性

1.新エネルギーの定義

自然エネルギー 

   通常放棄されているエネルギー源、

   有害廃棄物を出さない(クリーンな)エネルギー源

(定義が難しい、石油や石炭も、自然[太陽エネルギー]が生んだエネルギー)

 再生可能エネルギーという言い方は正しいか

(利用しても後からどんどん出てくる、なくならないという意味では言える)

(あとで述べるように、再生というのは再生産可能とするべきなのでは.)

 

2.地表で利用できる自然エネルギー(自然エネルギーの流れ図)

太陽起源(99.98%) 太陽光、太陽熱、風力、水力、バイオマス、波力、海流、潮汐

地球起源(0.02%) 地熱

 

3.自然エネルギーの特徴

◎枯渇しないエネルギー源

◎エネルギー密度が小さい(例えば太陽は平等に照らす)

◎コンスタントでない(長い時間でみれば一定しているが短時間変化や地域性がある)

 

4.利用可能性の大きい自然エネルギーとその利用方法

 太陽光−−太陽電池(蓄電池ではなく変換素子−量子エネルギー変換(内部光

      電効果)

 太陽熱−−太陽熱発電、熱の直接利用、太陽熱ヒートポンプ

 風力−−−風車による風力発電

 水力−−−水の位置エネルギーによる水力発電

 地熱−−−マグマの熱による火力発電、バイナリーサイクル発電、高温岩体に

      よる発電

 波力−−−波力発電

 海洋温度差−−バイナリーサイクル発電

 バイオマス−光合成によって太陽エネルギーを固定したもの、生物資源、主に

       植物、炭水化物系廃棄物、いわゆるゴミも含まれる.エネルギー

       源、資材としての利用

 

 

5.自然エネルギーの可能量と現状

5−1.太陽光発電

日本で開発可能発電量 家庭用・産業用計900億kWh/y(?)

(総電力使用量約8050億kWh、家庭用電力使用量約1980億kWh[93])

太陽電池−変換効率17.2%(10cm角多結晶太陽電池)12.0%(10cm角アモルファス太陽電池)、効率は劣化により100時間程度で8〜10%に下がる。

太陽光発電システム技術−インバータ(直交変換)効率93%,ジーゼル発電ハイブリットシステム

現在 住宅用設備(3kW程度)で設置コスト1400円/W、発電コスト100円/kWh(現行電力料金20〜30円/kWh、コスト減2000年を目処に達成サンシャイン計画)

  H7.3現在導入量約2万kW、(世界では12.8万kW)

5−2.太陽熱利用 暖冷房・給湯、産業用ソーラーシステム、太陽熱発電システム、断熱材等の省エネシステム(パッシブソーラーシステム)

日本で開発可能太陽熱量 家庭用450兆kcal/y(石油約450万kl [家庭用石油製品消費量約2000万kl])

日本で開発可能太陽熱発電 産業用1900億kWh/y

現在 民生用ソーラーシステム設置価格約100万円(機器60万、工事費40万)

   産業用は研究段階

H6末導入量 ソーラーシステム約44万台、太陽熱温水機約470万台

       集熱器面積で約60万m(これで約1年間で石油5万8千kl分)

5−3.廃棄物発電等

日本で開発可能廃棄物発電 400億kWh/y(稼働率80%約570万kW)

高温焼却時発生するガスで設備の劣化を押さえるため、蒸気温度を低く(280℃程度)押さえなければならないので発電効率が落ちる(15%程度)。

廃棄物の固形燃料化、メタンガス化、燃料油化などが研究中

発電コスト 燃料(廃棄物)コスト0として5000kW級設備で8〜9円/kWh

H7.3現在導入量 64.1万kW(130カ所)

5−4.風力発電 日本では安定した風力が得られる場所が少ない

500kW級大型風力発電システムの開発、100kW〜400kWの集合型風力発電システムの技術開発を実施(ニューサンシャイン計画) 発電コスト 43〜46円/kWh(250kW級)

H7.3現在導入量約5600kW(米約162万kW商業化、欧約165万kW)

5−5.地熱利用

日本で開発可能地熱発電 700億kWh/y(稼働率80%約1000万kW)

95年5月現在、地熱発電所は14ヶ所44万kW(1ヶ所最大で6.5万kW)、ほとんどはマグマが地表地殻に貫入して得られる熱源を利用して蒸気タービン発電を行っている。稼働率は高く極めて安定。

 多量の熱水を利用するバイナリーサイクル発電、高温岩体に注水して熱水を得て発電する高温岩体発電等を開発中。

 また熱エネルギーを直接利用して給湯、暖房、養殖、施設園芸等への利用も開発が進められている。

 

5−6.水力

95年現在900億kWh/y (2100万kW)

大型ダムは環境破壊につながるので小規模の水力を開発する。(数百kW)

日本で新たに開発可能水力発電 1100億kWh/y(現在稼働中を含め2000億kWh/y)

5−7.海洋エネルギー  エネルギー量は膨大であるが密度が低い

@海洋温度差発電 フロン、アンモニア等の低沸点媒体を循環させるクローズサイクルの実験プラント100kWと50kWは終了したが経済性を見出せず。温水を気化させその水蒸気でタービンを回し、仕事を終えた蒸気を冷水で凝縮させ電力のほかに淡水も得られるオープンサイクルについて開発中。コストは50〜70円/kWh

A波力発電 航路標識の電源としては1000基の実績.浮体式振動水中型(海明125kW 8基)、沿岸固定式(40kW,30kW)、振り子式(1〜20kW)等多くの機関で開発進行中,コストは60〜130円/kWh

5−8.バイオマスエネルギー

生物体エネルギー−薪、木炭、家畜の糞等、地球上のバイオマスの賦存量は約2兆トン、毎年2000億トンが光合成により再生産されている。

利用法−直接燃焼、熱分解・部分酸化によるガス化、微生物を利用した醗酵によるメタン、エタノール化、直接液化

現状−サトウキビ繊維、稲わら、廃材等は食糧と競合せず、醗酵作用により燃料用アルコールを製造する技術開発やユーカリ等の高効率な植物から炭化水素を製造する研究が進行中 コスト的には現状では困難

5−9.未利用エネルギー

生活排水、中・下水の熱、ビルの排熱、清掃工場の排熱、超高圧地中送電線からの排熱、変電所の排熱、河川水・海水の熱、工場の排熱、地下鉄・地下街の冷暖房排熱、これらのエネルギーをヒートポンプ等によって利用できるものに変換する技術を開発研究中.

 

6.原子力発電代替の可能性

 92年原子力による総発電量 約2230億kWh/y

 すでに挙げた自然エネルギーによる可能発電力 約5000億kWh/y 技術的に難しい面もあるが可能であるとみる.

 電気事業法の改正により電力会社への売電が可能になった。企業、自治体の売電による電力だけで100万kW級原発40基分になると言われる。(現在原発は50基、4140万kW)

 

7.自然エネルギー利用の視点

◎ローカルな利用を考える。−エネルギー密度が小さいので大容量なものを考えると設備が大規模なものとなってしまいかえって環境破壊を招く。水力の利用も小規模にすべき。

◎自然エネルギー利用を脱石油として捉えるなら、エネルギー使用量を減らすべき.(少なくとも全世界で1/3、日本では1/5)いくら自然エネルギーといえども限界がある.限界を越えると自然体系に影響を与える.例えば砂漠に到達する太陽光の多くを電気や熱にに変えて消費すると大地反射によるエネルギーが減って赤外放射による熱量が増える=大気温度が上昇する

8.問題点

自然エネルギーは再生産されるか(石油代替は可能か)

 自然エネルギーから有効なエネルギーを得るためには、別のエネルギーを投入しなければならない。例えば人手で穀物を栽培する場合、人の労働[エネルギー]を投入して得られた穀物の栄養[太陽エネルギーの光合成による利用]でさらに次の耕作が可能でないと永続可能、再生可能といえないのではないか.

明らかに  が1以上でないと継続できない.この単純な場合でも、人の代謝量や子孫を増やすことなどを考えると少なくとも10以上は必要

   例 太陽光発電で生産された電力を利用しつつ、その電力で新たな太陽光発電施設を作れるか。

 1万kW太陽光発電システムの場合

  施設への投入エネルギー 201.7×109 kcal

  発電エネルギー     11.3×109 kcal/y

   つまりエネルギー回収に18年かかる(和歌山大鷲田)という計算がある。

 積み上げ法や産業連関表を使用した他の方法では9.4〜5.8年かかるという計算もある。(稲葉ほか1995)

電力以外のエネルギー(燃料、原料)の石油代替の可能性はあるか

 エネルギー利用形態として電気のみに頼っていないか

 水素が利用できれば、ある程度解決されるか

本当にクリーンであるか

 例 設備を作る段階で石油を使っている

   半導体の製作工程で発ガン性廃棄物が廃液の中に含まれる

   地下水蒸気の中に硫黄酸化物、硫化水素、ひ素等が含まれ、利用の際には大気中に廃棄される

貯蔵は可能か

 太陽電池は太陽の照っているときにしか発電しない。必要なとき使用できるように貯蔵する必要がある。コンスタントでない自然エネルギー全般の問題である。

水素による貯蔵が検討されている。また直接燃料や、原料としても使用できる。

 水素の製造−太陽光による水の光分解(研究段階)、電気分解、バイオ利用

 水素の貯蔵−液体水素、金属水素化物(バナジウム水素化物は50℃で10気圧の水素圧)

 水素による発電−燃料電池