真琴と高尾の性格を入れ替えてみた

「フーンフンフンフンフンフフンフン♪」

 鼻歌も高らかに、今朝も橘真琴は幼馴染みの七瀬遙を迎えに行く。

「おっはよー、田村さん!」

 家の前の階段を勢いよく下り切ったところで、ご近所の田村さんに会った。ご近所付き合いは大切だ。元気よく挨拶をする。

「おはよう、真琴ちゃん。これ持っていきな」
「ありがとっ♪ 行ってきまーす!」

 熟女からのプレゼントをゲットして、軽やかに石段を登って行く。
 真琴の家と遙の家は、石段を挟んだお向かいさんだ。遙の家は、神社へと続く階段を半分ほど登った左手にある。
 階段の途中で待っていてくれた、ちっちゃな色白美人ちゃんに挨拶をして、一の鳥居を左に折れる。
――ピンポーン。
 インターフォンを鳴らすが応答はない。見上げた遙の部屋の窓にはカーテンが引かれている。

「しょうがねーな」

 なにしろ遙は、新学年の初日から学校をサボった強者である。勝手知ったる他人の家、縁側の脇を通って裏へ回ると、案の定、勝手口の鍵は開いていた。

「おっ邪魔しまーっす!」

 不法侵入にならないように一応声を掛けて、真っ先に向かうのは風呂場だ。

「やっぱりここか……ぷっ」

 真琴の期待を裏切らず、脱衣籠に遙の抜け殻が脱ぎ捨てられている。真琴は笑いを噛み殺しながら、風呂場の引き戸に手を掛けた。

「開っけるよー」

 返事を待たずに遠慮無く中をのぞくと、ザバッと水音を立てて遙が水面から顔を出した。

「おっはよー! ハルちゃん♪」
「だから、ちゃん付けはやめろって」

 満面の真琴ちゃんスマイルは、無表情で受け流された。でもめげない。真琴が差し出した手を取って、遙が立ち上がった。

「ブフォッ!? また水着着てるし!」
「ほっとけ」
「ってか水風呂! ぷっ、くくっ」

 次々と襲ってくる波状攻撃に耐えきれず、とうとう真琴は身体を二つ折りにして笑い出した。

「……ぐっ、くっ、く……くくくくくっ……」
「いつまで笑っているんだ。遅刻するぞ」
「それっ……お、俺のセリフ……あははははははっ!!」

 ツボに入った真琴の笑いはなかなか止まらない。肩を震わせて笑っている真琴を置いて、遙はさっさと風呂場を出て行ってしまった。

 真琴がようやく笑いをおさめて風呂場から出てくると、遙は台所にいた。なんだかとても香ばしい匂いが漂っている。

「ぶっ! なんでサバ焼いてんの!?」
「朝飯まだ食ってないから」

 引っ込めたばかりの笑いがまたぶり返す。
 いや、確かに朝食は大事だ。大事なのだが……

「……水着にエプロンって……ぶわっはっはっはっはっはっはっはっ!!」

 真琴は腹を押えて床に崩れ落ちた。遙の足元にかがみ込み、笑いすぎて涙のたまった目で遙を見上げる。

「さっ、寒くないの?」
「水着に油が飛ぶのは嫌だ」
「水着に油……! 火傷しないためじゃないんだ……さすがハルちゃん、歪みねぇ……ぎゃははははは……ゲホッ……ゴホッ……ヒィー」

 真琴は時折咳き込みながら、息も絶え絶えに笑い転げた。

「しかも……食パンにサ、サバって! ハァ……もぉ死ぬ……」
「うるさいぞ、真琴」

――真琴が呼吸困難で窒息死しかねないので強制終了。