 
舗装された大通りのような滝ノ瀬 十三丁 滝ノ瀬十三丁の美しい滝
The Takinose Zyuusantyou is like a big
street.
A beautiful fall in the Takinose Zyuusantyou
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【概要】
10年以上行きたいと思っていた大雪山・クワウンナイ川沢登りに行ってきました。
実際に行ってみると,核心の滝ノ瀬十三丁は,写真などで見て予想していたのと大違いで,非常にスケールの大きな滑滝でした。たとえて言えば,京都駅の大
階段に絨毯を敷き詰めて,これを直列に5つ位つなげて最上部から幅一杯の水を深さ10cm程度流したという感じです。
徒歩7時間を要する訪れる人も少ない(沢登り中は結局誰にも会わなかった)山奥にこのような自然物が存在するというのは不思議な感じがします。(日本で
一番)美しい沢と言うより,私としては一種の奇景と言うべきと思いました。
沢自体は(平水である限り)問題となるところはありません。ただ,中流域から源流まで詰め上がるという事で,距離が長く,エスケープルートも無いという
のが難しいところだと思いました。また,訪れた時季は源頭に高山植物が満開の時で,日本離れした大雪山の風景とともに楽しむ事ができました。
●日程:2011年7月30日(土)〜7月31日
(日)
(7/30)天人峡温泉0500→0520ポンクワウンナイ川出合→1100カウン沢出合1130→1210魚止めの滝→滝ノ瀬十三丁→1330オー
バーハングの滝→1530二俣の滝高巻途中のテント場(泊)
(7/31)テント場0600→1015登山道→1200化雲岳→1730天人峡温泉
●天気:7/30曇り時々晴れ 7/31曇り
●メンバー:単独(Ogawa)
●地図
【1日目】
前日,舞鶴からのフェリーで小樽に夜10時頃着いた。その後,高速道路を使って,天人峡温泉の駐車
場に午前1時頃着。明日からの厳しい行程に備え,すぐに車中で仮眠を取る。
朝4時起床。軽い朝食と準備を終え,5時出発。
ヒグマ対策は,@熊スプレー,A笛,B豆腐屋のラッパ,C鉈と完璧を期す。
入渓口は,天人峡温泉手前2個目のトンネル出口の橋を渡って直ぐの林道である。雑草が生い茂っているがわずかな踏み跡のある道を15分程辿ると,ポンクワ
ウンナイ川との二股に出る。川の規模で言うと芦生あたりの美山川程度である。ここで高度計を補正する。本日の目的地であるカウン沢出合は分かりにくそうな
場所なので高度計での判断が重要と思う。
水量は平水か平水+α程度。流れの緩そうなところでポンクワウンナイ川を渡渉し,その後は川原を歩いて行き詰まれば適当に渡渉する事を繰り返す(一カ所
あったゴルジュは小さく高巻いた)。渡渉も場所を選べば問題なし(一度転倒して危なかったが)。曲がり角ではヒグマとの出会い頭事故を防ぐために多めに笛
やラッパを鳴らすが,このせいで2,3日耳鳴りが消えなかった。また魚影は随所で見られる。
途中,川の水が急に濁ってきて鉄砲水かと焦ったが,特に何もなかった。
時々支流が流れ込み,変化のない川原歩きなので地図との照合が非常に難しい。
6時間程歩いて,小さな支流が左から流れ込むところで,右に赤テープを見つけ,ここがカウン沢出合だと分かる。岸にテント2張分のスペースがあるが,じ
めじめして不快そう。先客無し。
計画ではここで泊まる予定だったが,天気の良いうちに核心を越えたかったので,迷わず先に進む。時刻は11時半。
30分程で,魚止めの滝着。明瞭な高巻道で越える。その後にも結構大きな滝が続くがすべて問題無く越えられる。
いよいよ滝ノ瀬十三丁に入ってきたようで,あたりは滑滝の様相が強くなってきた。ここからは,滑落防止のためにダブルストックを持つ。
滝ノ瀬十三丁は思っていたより大規模で,下流を見ても上流を見ても遠くまで一直線の滑滝が続いている様は非常に不思議な光景だ。無人の歩行者天国を歩い
ているようなこの不思議な風景を1時間弱歩いてやっと滑滝が終わる。
行く手に屏風を立てたような壁が立ちはだかり,垂直の滝が落ちている。これがオーバーハングの滝か?左に高巻きの踏み跡があるはずで,探すと古いロープ
が残置されており,すぐに見付かった。
草付きの急斜面を登って岩壁の基部に着くが,この岩壁が手がスリップしそうで怖くて登れない。ロープでゴボウ登りを試みるがとても無理だ。ここから引き
返すわけにも行かず途方に暮れる。しばらく考えて,以前読んだ記録で,この部分でザックをロープで引き上げたという報告を思い出した。
すぐにザックをおろして古い残置ロープに結び,自分は空身で岩壁を登った。幸い空荷だと何とか越える事が出来た。上からザックを引き上げるのは重かった
が何とか成功! この部分さえ越えればあとはブッシュをかき分け,滝上に出る。ブッシュから川原に出る際は念入りに笛とラッパを鳴らす。
流れはだいぶ小さくなってきたがその後も滝が続き,15時頃,左右からの流れが滝となって合流する二俣に着く。ここは左が本流で,高巻きルートは滝と滝
の間にある。
笹をかき分け登ると,テント1〜2張り分のスペースが現れた。川から5m程高くなっており,増水時でも大丈夫だろう。またクワウンナイの核心部は越えて
しまい一安心だ。ここに泊まる事に決定。時刻は15時半。ちょっとした高台になっているので携帯が通じないか試してみるが圏外だった。また,この場所を中
心に獣道が何本も形成されており,変な動物が間違ってやってこないかちょっと心配だ。
テントを張り,水を補給し,アブがひどいのでテントに入って夕食。(虫除けは必携だ)夕食はいつもはカレーだが,今回は臭いが少なくヒグマにも気づかれ
にくいと判断して中華丼にした。私もヒグマも大好きなウィスキーを服にこぼしてしまい急いで拭き取る。
夜中に目覚め,時計を見ると12時。大型の動物が笹をかき分けて向かってくるのが聞こえた。すかさず,ラジオのボリュームを一杯にしてスイッチオンで対
応し事無きを得る。また沢で石が崩れる音がしたときはラッパで対応した。
【2日目】
気がつくと外が明るくなっていた。4時。無事一夜を過ごせた安堵感と鳥の鳴き声で嬉しくなってく
る。
朝食をとり,テントを撤収し,6時出発。
このあたりからは,源流の雰囲気で周りも潅木帯で明るい感じの沢登りとなる。時々,滝や雪渓が現れるが問題なくクリアできる。
適当なところで水を補給。エキノコックス対策のため濾過器を通すがこれが時間がかかる。
地形が地図と違うのか現在地を同定しにくいが,基本的に一番明瞭な踏み跡をたどれば良いようだ。振り返れば登ってきたクワウンナイ川流域が見渡せた。あ
そこを登ってきたかと思うと満足感で一杯になる。
10時過ぎには天沼付近の登山道に出た。登山道といっても誰も歩いていない。
天気が雨交じりの霧になってきたのでトムラウシはあきらめて,このまま下山する事にする。
化雲岳を経由し,天人峡温泉へ下山。17時半。疲労困憊でテントをあきらめ1泊2食付き7500円の旅館が空いていたので宿泊した。
明日は日本最北端の山・利尻に向かう。
以上
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