何故かこの頃ナルトが気になる。
いつのまにか目で追ってる。
おかしい。
何で俺が。
でも確かに感じる内輪では有名な変態上忍カカシへの嫉妬心。
なんだかとても棘のある言い方ですが…。
そうなのです。
サスケ君はスリーマンセルで一緒になりナルト君を好きになってしまったのです。
そういう訳で千年殺しなどという変態的な術をナルト君に使ったカカシ先生に対する心持ちはそう良くないのです。
そしてうちは一族の生き残りサスケ君の一日はナルト君へのチョッカイから始まるようです。
でも今日はいつもと勝手が違っていました。
「遅いわね、ナルト。カカシ先生はいつものことだけど…。」
珍しくスリーマンセルの集合時間に遅刻しているナルトをサクラが少し心配する。
「ねえ、サスケ君。ナルトどうしたのかしら?」
「さあ、俺が知るわけないだろ。」
そう冷たくサクラちゃんに返しておきながらも内心気が気でないサスケ君。
「ナルトの家行ってみない?」
サスケにそう促しながらサクラの足はもうナルトの家の方向を向いていた。
「仕方ねーな…、ドベの奴。」
そう、サスケ君は口が悪いのです。これではナルト君がサスケ君のことを好きになるはずがありません。それは愛情の裏返しなのだといつかナルト君が気付いてくれるのでしょうか?
そうして着きましたのはナルト君のお家。静まり返っていてかえって怖いくらいです。
「ナルトぉ?寝てるの〜?」
サクラちゃんが朗らかな声でナルト君を呼びます。
が、返事はなく気配さえありません。
「ちょ、ちょっとサスケ君。ナルトいないわよ?」
そう言葉を発しながらサスケ君の方に向き直るとサスケ君は何やら険しい顔をしています。
「どうしたの、サスケ君?」
しかしサスケ君はサクラちゃんの声が聞こえぬ程に怒り狂っていました。
…この微かな気配は…。
アイツだ、カカシだ。
何でナルトの家に来てるんだ?
くそっ!いつのまに。
そう思うが早にサスケ君はナルト君の家中をごそごそと探し始めました。
何も気付いていないサクラちゃんはポカン、といきなり挙動不審なサスケ君を見守るだけです。
内なるサクラちゃんはただ戸惑うばかりでありました。
さて不安そうに見つめているサクラちゃんを他所にサスケ君はカカシ先生と、カカシ先生と一緒にいるであろうナルト君を探しました。
もはやサスケ君はナルト君の匂いで満たされたこの家に留まっていることが困難になってきておりました。寝室を探した折、ふと鼻を掠めた石鹸のいい香りとともに。
…ナルトの匂いが。
おやおや、これではサスケ君は変態の仲間入りですね。
カカシ先生と仲間になってしまってますよ、サスケ君。
そんな変態入りしたサスケ君が現実に引き戻されたのはサクラちゃんの声。
「いないみたいね、じゃあカカシ先生んとこ行く?それでカカシ先生にナルトがいないってこと報告しなきゃ。」
カカシの家?!
思いもよらなかったがもしかして…。
サスケ君は頭を掠めた恐ろしい考えが強ち外れていないような気がしてなりませんでした。
はたけカカシ
簡潔に書かれたプレートがその玄関に付けてありました。
ふざけた名前だ。
と鼻で笑おうとした瞬間。
僅かにナルトの気配がする。その事実にサスケ君は言い知れぬ焦燥感を感じ、その場に立ち尽くしました。
すると、中から声が…。
「あっ、駄目だってばよ…、カカシ先生。」
ナルトの妙に切なそうな声。
サスケ君は身体を強張らせて驚きました。
な、な、何やってんだ!?あのクソ上忍!
まさか、な?
サクラちゃんにもその声は聞こえていたようで顔面蒼白になっています。
「くっ!そんなことやめてくれってばよ〜…。」
その瞬間耐え切れなくなったサスケ君は平静を失いノックもせず勢いよくカカシ先生の家のドアを開けました。
「何やってんだ、このヤロウ!!」
あらあら、こんなサスケ君は誰も見たことがなかったようです。
何もかも見透かしたようににやにや笑っているカカシ以外全員驚きに目をみはっています。
「あれ?サスケくーんどうしたのかなー?」
ベッドの上にはカカシ先生とナルト君。
そこを見れば何をやっていたか一目瞭然。
二人はトランプをやっていたのでした。
そしてナルト君のあの声の原因はカカシ先生が意地の悪い手を使ったからであったのです。
真っ赤になったサスケ君はカカシ先生を思いっきり睨むついでにナルト君にまたもや憎まれ口です。
「おい、ドベ!集合時間に来ないで一体何やってんだ。」
「悪かったってば。でもそれだけで、そんなに怒ることないってばよ!なあ、カカシ先生、こいつちょっとおかしくねーか?」
「さーあね、サスケ君は色々思うところがあるんじゃないの?」
「思うところ?何だよ!それと俺と何がかんけーあるんだってばよ。」
相変わらずにやにや含み笑いを漏らしているカカシ先生に飛びつき、その首をどうにか締めようとサスケ君は頑張りましたがやはりそこは上忍。
キャリアが違います。
サクラちゃんは何がなんだか分からないという顔をしてナルトと顔を見合わせて首を傾げました。
「サスケ君はね、ナルトのことが好きなんだよ〜vV」
からかうようにナルトに投げつけた言葉にナルト君とサクラちゃんは怪訝な顔をしました。
「何のことだってばよ?」
「そうよ!先生!からかうのもいい加減にしてよ!」
「残念だったねサスケvナルト気付いてないみたいだけど?俺が喰っちゃおうかな〜?」
耳元でぼそりと呟かれた言葉にサスケ君は思わず蒼白になりました。
「ふっ、ふざけんなーーーっつ!!死ね!この変態!!」
すっかり取り乱したサスケ君の怒鳴り声はそれはもう両隣三軒には絶対に聞こえてるはずの大音量でしたとさ。
おわりv