後の祭り



「ナルト〜・・・どこだぁ〜?」

昼休み、サスケの隙を見計らって恋人の姿を探す某上忍の姿。
言わずと知れた、はたけカカシその人だ。

ナルトの何時もの修行場所をキョロキョロと見渡してみる。

(可愛いあの子はどこかなぁ〜?)

鼻歌交じりに歩いていると、ようやく見つけた金色でぽふぽふの頭。

嗚呼ッ!飛びつきたいッ!!
ここ1週間、あんなに強請るナルトを突き放して別々に修行してたものだから、気まずくて様子を見に来れなかったのだ。

一週間ぶりに見るナルトに愛しさが溢れてくる。
すでに我慢なんて2文字は頭中にないカカシだった。

エビスに扱かれて辛い思いしてるかな〜?
オレに会いたいって寂しがってるかな〜?

「ナルトー!あいたかっ・・・・・・・・・・・・」

そんな思いは見事に打ち砕かれた。




頭しか見えなかったが、近づくにつれて全体が見えてくる。

そこにはカカシの知らない男の腕に抱かれて眠るナルトの姿があった。

ナルトは自分とイルカ先生以外の人間には親しくすることがあっても、気を許すことはない。

ましてや腕の中でスヤスヤと気持ちよさそうに眠るなんて事はカカシにとって有得ない事だった。



(ナ、ナルト〜〜〜〜!?)


あまりにも気が動転してしまったカカシはその場に即座に突っ込むと、男からナルトを奪い取る。

「何じゃ!?」

驚く知らない男の正体は勿論、自来也。

スヤスヤと眠り込んでいたナルトも強制的に起こされてしまった。

「何だってばー?・・・・ギャ!??」

目を擦ってしぱしぱと瞬き。
ぼんやりとする視界の中で一番最初に確認したのはカカシのどアップ。
驚くはずだ。

「ギャー。って酷いナァ。心配して来てみたら他の男の腕の中で寝てるんだもん。ビックリしちゃったよ?」

笑ってはいるが、こんな状況でのカカシの笑顔の恐ろしさを誰よりも知っていたナルトは焦った。

自分は只、修行の合間に昼寝をしていただけであってそんなことで怒られるのは理不尽な気がするが、怒ったカカシには何を言っても通用しない。

「ゴ、ゴメンってばよぉ。」

訳が分からないがココはとりあえず謝ってみる。
これで機嫌を直してくれればいいのだが・・・・。

「だったらゴメンナサイって、チューして?」

ナルト、目の前の男を殴ってしまいたい衝動に駆られた。




「オイ。コラ。お主、誰じゃ?」

自来也登場。

暫らく放ったらかされていた男は少し機嫌が悪いようだった。

ナルト、ちょっとホッとした。

これで自来也が言ってくれればカカシも大人しくなってくれるだろう。

だが。ナルトは肝心なことを忘れている。

「ハ?お前こそ誰だよ?オレのナルトにちょっかい出しやがって。」

そう。コイツはナルトに声をかける、酷いときには、目が合っただけで「オレのナルトに舐めまわすようなヤラシイ視線を向けていた。」などと難癖つけて誰にでも嫉妬する人間だ。

だが、自来也、カカシの鋭い視線にも動じない。

「ほぉ?・・・・お前がナルトの話していたカカシ先生とやらか・・・・・・話どおりの男じゃのう。」

「ゲッ!オイ!オープンスケベ!」

慌てるナルトだが、抱きかかえている男の殺気にビクリと身体を震わせた。
恐る恐る振り返る。

(やっぱり・・・・・・・)

「ナルト。」

「・・・・・・・・ハイ。」

「ナルトはオレとコイツとどっちの方が好きなの?」

「ハァ?」
てっきり自来也と乱闘になるのかと思ったナルトは予想外のカカシの言葉に、呆けたような返事しか出来なかった。

「ねー。オレが好きなんだったらチューしてよー。」

「何言ってるんだってば?!」

何となくカカシの考えていることが読めてきた。


この状況でオープンスケベに見せ付けてやろうとかいう魂胆に違いないってば!!(滝汗)


ニヤニヤとこっちを見ている自来也に、食い入るようにこっちを見ているカカシに。

ナルトの頭は混乱して今にも泣きそうだった。

ここでキスをしてしまうようなことがあれば、自来也に後々からかわれる事は目に見えていたし、自来也でなくとも他人の前でキスなんかしたくないに決まっているし。

「せんせぇ・・・お願いだってばよぉ・・・・・今は無理だってば。」

ナルトのホントにホントのお願い。

(さすがにこれ以上言うといいすぎかナァ?)

でも、しかしここで引きたくない。
得体の知れないあのオヤジを牽制しておきたい。
・・・・・・・・・・っていうかナルトに触れたい。

少々の罪悪感は残しながらもやっぱりカカシは、

「えー?先生のこと嫌いなの?」

そう言ったが、瞬間、後悔した。
今にも零れてしまいそうなほど涙を溜めたナルトが俯いて黙り込んでしまったのだ。

「ナ、ナルト?」

カカシ、謝ろうとしたが時すでに遅し。





「先生の・・・・・・・・
ばかーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!




炸裂した平手打ちのパチーン!と小気味良い音がしたと思うと、ナルトはカカシの腕の中から逃げ出して、走り去っていく。

見事、頬に紅葉型の痕をつけられたカカシは暫らくボーゼンとしていた。


「ククッ、こりゃ、イイモノを見せてもらったわい。」


ガバッとカカシは男の方を睨みつけるが、男は屁でもない様子で、軽く手であしらう。

「お主、追わんでもいいのかのぉ〜?」

顎を撫でながらニヤニヤとしている。
カカシは久々に他人に馬鹿にされてると感じて、ムッとした。


叩きのめしたい気持ちはあるが、このままナルトを放ったらかしにすると泣かせたままなんてマズイし、暫らくの間口もきいてくれないことになる。













「くそ!!」


今更後悔したって遅い。



後の祭りですヨ?カカシ先生。