奇跡など一瞬で この肌を見捨てるだけ

こんなにも無力な私を こんなにも覚えていくだけ

でも必要として

貴方に触れない私なら ないのと同じだから

 


 

存在理由

 

 

彼がいるから自分は生きていけるんだと思う。

けど、彼は自分がいなくても生きていけるんじゃないだろうか?

そう思ったら、どうしようもなくなってしまった。

 

 

静寂の時間が、長い間続いている。
ナルトとシノが2人でいるときは、大体こうして静かな時間が多い。
本を読んでいたり、何をするでもなくテーブルで向かい合わせになっていたり。
そんな中でたまに取り留めのない会話を交わすのが、ナルトは好きだった。
今は、特に何の会話を交わしているでもない。
ナルトは、読書をしているシノを、じっと見つめる。
 
「・・・顔に何かついてるか?」
さすがに変に思ったシノが、本を閉じて顔をあげた。
「あ、ごめんってば、邪魔した?」
「いや、別にいいが・・・」
それより何をじろじろと見ていたのか、の方が気になる。
ポーカーフェイスの王様とでも呼べるべきシノであっても、好意を持っている相手にこうも見つめ倒されると落ち着かないのは当たり前。
訊いてみると、
「あ・・・ううん、なんでもないってばよ」
と、ナルトは言葉を濁した。
その言葉の信用度は、薄弱なものがある。
ナルトは、無遠慮に人の心の中に入ってくるくせに、変なところで臆病だ。
ちょっとくらいしつこくても、追求しなければ、いつのまにか妙な隔たりが、なんてことになりかねない。
「なにかあるんだったら、ちゃんと言った方がいい・・・と思うが」
しかしながら、シノの方もあまり人と関わる方ではないから、こういうときの対応が困る。
御互いにコミュニケーション慣れしていないところが欠点だな、とシノは思った。
「すっげぇくだらない事だってば・・・」
「別にくだらないことでもいい。話してみろ」
「んー・・・」
まだちょっと迷い気味のナルトだったが、
「あの・・・さ」
おずおずと、口を開いた。
 
「シノって、俺必要?」
 
ナルトの言葉は、シノを困惑させるに十分な言葉だった。
もっとも、シノの表情にそれは表れないが。
「・・・・・・?」
あまりにも単純難解なその言葉の意味を、察し損ねる。
「どういう意味だ?」
「いや、だってさ、シノは強いし・・・油女家の一員じゃん?そのうち後も継ぐし・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
ナルトの存在を特別に想うようになった今、油女家を本当に継ぐかどうかは、シノにとっては怪しいところであったが。
「う・・・まぁ、上手く言えないけど、シノは俺がいなくても、同じように生きていけるんじゃないかなって思ったんだってば」
物事を論理的に話す事があまり得意でないナルトは、さっさと結論に至った。
可笑しなことを考えるものだな、とシノは思ったが、ふと気付いた。
誰にも必要とされることなく、幼少時代を生きてきたナルトにとって、自分を必要としてくれる人間がいるかどうかは、重要な位置を示しているのかもしれない。
殊、ナルト本人が大切に思っている相手なら、なおさら。
「では、ナルトは?」
「・・・へ?」
ナルトは質問を返されるとは思っていなかったらしく、素っ頓狂な声を出す。
「ナルトは、俺が必要か?」
「ひ、必要だってば」
そう言ったはいいが、少々恥ずかしかったらしく、頬が少し染まる。
「なぜ?」
更なるシノの質問に、ナルトの思考回路が回る。
 
なんで・・・?
何でシノが必要?
 
「ナルトだって強いし、これからも強くなるだろう」
「・・・当たり前だってばよ」
「火影になる夢だってあるだろう」
「・・・うん、ある」
ひとつひとつ、シノの質問に、確認するかのように頷いていくナルト。
「一緒だ、どうして俺が必要なんだ?」
そこまで訊かれて、ナルトの思考回路が一旦停止する。
「それは・・・なんでだろ?」
滅多にしない、自分の精神分析などしてみる。
 
単純と人に言われ、自分でもそうなんだろう、と思っていた自分の頭の中。
考えてみたときに、分からないところがあるとは思っても見なかった。
それでも、出て来る答えとしてはただひとつ。
 
「ともかく、シノが必要なんだってば・・・俺に」
「それはなんで?」
「んっと・・・」
シノはずるい、と思った。
あの低い声で優しく聞かれると、答えなくちゃ、と思ってしまう。
落ち着かない頭の中で、ナルトは必死に言葉を探す。
「シノがいなくても俺は強くなるし・・・火影にもなりたいけど・・・」
 
なんだろう?
シノがいなくちゃだめだ、と、感情的に判断する理由。
 
「シノがいなきゃ、なんか・・・つまんない・・・気がする」
それは酷く曖昧な答え。
嘘ではない、のに、それを表現する言葉が見つからないのは、もどかしくて堪らないものだ。
「なんで、とかじゃなくて、なんとなくなんだけど・・・さ」
ナルトが迷いながらそう言うと、シノは
「じゃあ、俺も同じだ」
と言った。
「別に理由があるわけじゃない。ナルトも同じなのだろう?」
「・・・・・・あぁ、そっか」
ナルトは笑った。
シノもつられて表情が緩む。
「・・・・・・あ」
それをちょうど目の当たりにしたナルトが、少し驚いたように声をあげた。
笑顔、とは判断のつきにくいものだが、シノの表情のある顔なんて、めったにお目にかかれるものじゃない。
「どうかしたか?」
そんなことは無意識のシノは、突然驚いた顔をするナルトを訝しげに見る。
「あー・・・・・・なんでもないってばよ」
ナルトはごまかすようにそう言って笑った。
シノの笑顔、なんて騒いだら、絶対しばらくの間笑ってくれなくなる。
偶然見れるのを待つしかないんだろうなぁ、とナルトは思った。
そんな偶然は、多分宝くじがあたる確率よりも少ない。
それでも、他の人と比べればナルトはチャンスが多いほうに違いないが。
 
 

「理由」なんて 後からいくらでも出来る言い訳

そんなのは要らない

説明なんかつかないような ふと思うこと

 

「君が必要」




鬼塚ちひろさん、大ファンです。Coccoの次に好きv(え?)
内容と関係あるんだかないんだか。
でも、この曲聞いてるときに思いついた話なんで。
なんか・・・甘くしようと思ってたんですが・・・甘くない?あれ?