指先をうずめては素直に帰ってくる
やわらかいビーズに腕をうずめて
・・・・・・・・・笑顔。

サラサラ、サラサラと、心地の良い音。
やわらかい生地に、ナルトは顔をうずめる。
「う〜・・・、気持ちいいってばv」

イルカ先生に買ってもらった、というそのクッションは、最近のナルトの最高のお気に入り。
今も、ぎゅうっとその細い腕に抱きかかえて。
頬をうずめて、感触を楽しんでいる。
その表情は、御機嫌そのもの。
弾力無く押すがままに形を変えてくれるそのパウダービースのクッションは、ナルト曰く、とても触り心地がいいとか。

かれこれ10分以上。
クッションはナルトの腕の中。

「良くあきねーな、お前は・・・」
呆れたように言うのは、隣で読書中のシカマル。
「うん、だってこれ気持ちいいんだってば」
シカマルも触る?と。
差し出す。

「いらねーよ、本読んでるし」
そっけない返事。
そんなシカマルの態度に、ナルトは残念そうな顔をして。

「なんか機嫌悪そうだってば、シカマル。
 何そんなに怒ってんだってばよ」
と、詰る視線。
「・・・別に怒ってなんかいねーよ」
「怒ってる!」
「怒ってねェ!」
「じゃあ何で機嫌悪そうなんだってば?」
「何でって・・・・・・」

何でって。
そんなの。
ナルトの腕がさっきからずっとクッションに独り占めされてるからに決まってる。

いつもはうっとおしいと思うくらい自分の首に巻きついてくる腕も、今は
「抱き心地最高なのに・・・・・・」
パウダービーズのそのやわらかさを、存分に味わっている。

クッションに嫉妬?
まさかそんなこと言えるはずも無く。
「本読んでんだよ、俺は・・・」
答えにならない答え。

「むぅ〜〜〜〜」
そっけない態度に頬を膨らませて。
「あっそ、じゃあいいってば」
ナルトもそっぽを向く。
クッションを抱きかかえたまま。

「枕とかにしても、やわらかくって最高なのに」
ぎゅうぎゅうと、押したり握ったり、手でもてあそびながら。
「つまんねーやつ」

何がつまんないって。
クッションが気に入ってもらえなかったことじゃなくて、機嫌が悪いことでも無くて。
そっけない態度しか取ってもらえないこと。

御互い任務で忙しい身でたまにしか会えないんだからさ。
こんなときくらい、相手してくれてもいいのに。
・・・恥ずかしいから言わないけどさ。

このまんまいたってしょうがないなぁ。
どうしよう?
なんて思っているところへ。

どすん

ひざの上にのっかかる重み。

「いだっ!」
見れば、シカマルの頭が。

「何すんだってば、シカマル!本読んでたんだろ?」
おでこをぺちぺちとたたきながら、苦情。
シカマルが読んでいた本はと言うと。
すでにシカマルの手元に無い。

「寝る」
まさに単語だけでそう言ったシカマルは。
目も閉じて、まさしく睡眠準備態勢。

「寝るんだったらクッションかすってば」
枕に最適だ、というそのクッションを。
シカマルの頭の上で揺らす。
さわさわと、綺麗な音が鳴る。

「めんどくせー・・・・・・こっちの方がいい」

そう言って、すでに寝息とたて始めるシカマル。

「なっ・・・・・・」
思ってもいない大打撃。
トマトのように顔を真っ赤にして・・・沈黙。

あぁ・・・負けた。

口惜しいけれど。
それ以上の恥ずかしさと嬉しさ。
やわらかいクッションに、顔を半分うずめて隠して。

「重いってばよ・・・バーカ」

それでも、膝から叩き落として起こしてしまう気にはなれないのは。

何故でしょう?

シカナル好きがたぎりすぎて、ついにこのようなことに。
シカナルいっぱいかけて、本人は満足そうですよ。(人事)