いつもどおり、7班の任務は日が暮れかける夕方に終わった。
「サスケ君、一緒に帰りましょv」
「断る」
すでに日常の挨拶と化しているこのやり取り。
朝になったら鳴る、目覚ましのようなもの。
なかったらなかったで、変な気分になる。
「・・・・・・」
ナルトも、密かなる想い人、サクラに、ちょっとしたお誘いを掛けたいのは山々だが。
そのサクラはただいまサスケにめげずにアタック中。
(やっぱ邪魔はしない方がいっか・・・)
ちょっと寂しいけれど、そこは少しだけ大人になったらしい。
引き際を少し、わきまえてきた、というところか。
男らしい決意(大げさな)をすると、ナルトは
「じゃ、俺帰るってば」
ばいばーい、と手を振って、帰ろうとした。
ところを。
ぐいっ、と後ろから襟首をつかまれる。
「ぐえっ!」
カエルの断末魔のような声が出てしまう。
「げほっ、サ、サクラちゃん・・・?何するんだってば・・・?」
ナルトは咽喉をおさえながら、少し非難がましい目でサクラを見た。
(それでも女の子には強く出れないナルト)
が、サクラはそんなことは気にもしないで、
「何さっさと帰ろうとしてんのよ」
と言う。
「え・・・だって、サスケは・・・?」
「帰っちゃったわよ、もう」
・・・・・・確かに、サスケはもうそこから姿を消していた。
「あんた、女の子に独りで帰らす気?」
「うっわ〜、すっげ夕焼けきれーだってば!」
ナルトは感心したように、紅い空を見た。
夕日は真っ赤に染まり、空に映る薄い朱色が、紫に近い青と混ざって、綺麗な色を見せている。
「ほ〜んと、明日は晴れね」
つられてサクラも空を見る。
「だけどさ、サスケ引き止めなくて良かったん?」
えらくあっさり引き下がったサクラが、ナルトは気になった。
「いつも会ってるんだし、別にいいのよ。それにたまにはナルトと帰りたかったしね」
「・・・俺と・・・」
ちょっと照れたようなナルトに
「勘違いしないでよね、サスケ君の次よ」
サクラの痛い突っ込みが入る。
「うっ・・・」
ざくり、とナルトに刺さった。(笑)
「むぅ〜、何で女子は皆、あんな奴がいいんだろーなー」
腕を組んで、ナルトが首をかしげる。
近くに、顔よし・性格よし・実力あり、のこんな俺がいるってのに・・・、と。
それが、どこまで確信でどこまで冗談かは知らないが。
「そりゃあそうよ。サスケ君はかっこいいし強いし、クールだしとにかくかっこいいし!」
サクラがうっとりと話す。
一方ナルトは、普段のサスケを思い出しながら、
(そうか〜??)
と、大分疑わし気にしていたが。
「それに比べてあんたは、ドジだしバカだし、強いのは認めるけど突っ走ってヘマするし!サスケ君のいうとおりドベでウスラトンカチだし」
「うぅっ・・・」
プスリプスリ、とナルトに刺さっていく棘。
「そ、そこまではっきり言うことないのに・・・」
「・・・でも、一生懸命だし、絶対に人のこと本心から悪く言わないし、少しずつ・・・少しずつでも確実に前進してるし・・・」
「・・・へ?」
少し風向きが変わってきたのに気付く。
「私は、そういうナルトが好きだけどね」
一瞬、ナルトが立ち止まってサクラを見返る。
と、
「じゃ、ここで道分かれるから。じゃあね」
サクラは颯爽と帰っていった。
「・・・・・・サクラちゃん?」
逆光で、ナルトにはサクラの顔が見えなかった。
夕日の赤さえ、ほとんど暗くなってしまった頃。
(あ〜もう!なんかナルトに、柄でもないようなこと言っちゃったじゃないのよ!なんかえらくまじめに言っちゃったし・・・)
先ほど自分の発した言葉に、酷く葛藤するサクラだった。
――でも、本当に思ってたから
――たまに見せる、あんたの強さは、本当にすごいと思ってるから・・・ね。
ナルサク・・・サクナル?いや、ナルサク。
私はサクラさん好きですが、どうも彼女を私が書くと、お姉さん臭がする。
(臭うみたいに言うな)