『暑苦しいから』
そう言う理由で、全部。
「シーカーマールッ」
うなるような声で言いながら、ナルトはシカマルに手を伸ばした。
うんざりしたように、シカマルがその手を払いのける。
「暑いっつってんだろーが・・・」
学習能力ってモンがねーのか、お前には。と。
自分の首だかどこだかに巻きつこうとした腕を、ギリギリと離す。
「いたっ。放せってばっ」
「お前な・・・そりゃこっちのセリフだ」
ぱっとつかんでいた腕を離して、シカマルが言った。
「さっきっから何回もおんなじこと繰り返しやがって」
「むぅ〜〜〜っ」
口を尖らせて拗ねたような表情で。
ナルト、上目遣いでシカマルを睨む。
「だってさ、さっきから触らしてくんないじゃん」
そう言い放って、ぷいっとそっぽを向いた。
「暑苦しいからって言ってんだろーが。理解しろ」
「夏だから暑いのは当たり前だってば!」
「暑いのは当たり前だから、よけー暑くすんなっつってんだ、バカ」
「バカって言ったらそっちがバーカ」
「・・・・・・ガキか、お前は」
「ガキで悪かったなっ」
どう考えても、幼稚園児の言い争い。
だって、だって。
好きな人に触れていたいと思うの、当然だってば。
『暑いから』
『暑苦しいから』
そんな理由で払いのけられて・・・・・・。
悔しいを通り越して、悲しい。
くだらない言い争いも途切れて、シカマルが向こうを向く。
ナルトの目がきらりと光った。
「スキ有りっ!」
同時にがしっと背後からシカマルを羽交い絞めにする。
「だーーっ、暑い、放せっ」
「やだもんねー」
シカマルもぎゅうっとしがみつくナルトを引き剥がそうとするが、なんせ背後からなので思うように力も出ず。
「暴れたらますます暑くなるってばよ!」
「っっっ!」
ナルトにしてはよく考えたもんだと、場違いにも感心する。
「・・・ちっ」
諦めて抵抗を止めたシカマル。
それに気付いて、ナルトも
「へへへへーっ」
満足そうに笑うと、今まで締め付けるかのごとく力を入れていた腕を、緩めた。
「ったく・・・しゃーねえなぁ・・・」
ため息をつきながらそんな台詞を吐いても。
実はまんざらでもないと思っているのは、本人とっくに自覚済み。
大好きな人だから触れていたい。
それは、相互であれば、なおさら。
『暑い』
なんて理由に邪魔されずに・・・ね。
私が書いたあと後悔するほど甘いと感じたものです。
はい、限界です。血継限界。違います。