『裏切り』でしかないのかも知れない
『涙預ける肩』
自分より少し背の高いシカマルの肩にもたれて、涙を流す。
嗚咽も洩らさずに、ただただ眼球から水分を垂れ流すだけの自分は
『泣き慣れた』んだろうか。
それとも
『泣き方を知らない』んだろうか。
無言で流す涙の理由といえば、例えば悲しみ、哀しみ・・・・・・
そんな、チンケなものなんかじゃなくて。
と言って、それ以上の何がと訊かれれば、答える術もない。
突発的なものじゃない。
積み上げた色んなものが、溢れ出ていくだけ。
それこそ喜びから悲しみから・・・・・・、なんて、そんなものを自分で区分できる程、出来てない。
空っぽになるまで、泣く。
シカマルの肩の上に。
自分で背負いきれないものを、全部引きずり降ろす。
ずっと、理由も言わず、嗚咽すら洩らさず、肩に頭を乗せて泣くオレを
シカマルは、いつも黙って甘受する。
してくれる。
慰めもしない、戸惑いもしない、・・・肩を抱くでもなしに。
それこそ、棒みたいに突っ立って。
シカマルの肩の上は、いつからか俺の感情の捌け口だった。
頼るのはイルカ先生で。
師と仰ぐのはカカシ先生。
サスケは自分を高める糧として。
サクラちゃんは、良い仲間・・・・・・兼お姉さん役かも知れない。
それぞれ、自分にとって存在意義たるものが決まっていて。
シカマルには自分は、中身を伴わない涙を預けた。
『裏切り』に近い。
彼は自分の全てでも、多分、受け入れようとしているかもしれないのに。
自分は何一つ、委ねることをしない。
只一つ、空っぽな水分を流すだけのために、シカマルを
シカマルという存在を、利用しているのかもし知れない。
『裏切り』でしかない、のかも知れない。
オレは、シカマルを裏切ってる。
シカマルが、自分のことなんか信じてなかったとしても。
自分が、シカマルを頼ったつもりなんか、無かったとしても。
はやり、それでも。
自分の行動と感情は、『裏切り』にしかならないのかも知れなくて。
辛い。
けど
辛い。
のに
どうしようも、ない。
「ごめん」
罪悪感と、それよりももっと幼稚な、情けなさが込み上げて来て。
唐突に。
それだけ、呟いた。
相手に意味を伝える、という意思は、まるで無い、その言葉。
「・・・・・・ごめん、シカマル」
こんな、訳も分からず、謝罪の意しか表さない言葉。
どういう意味だと、シカマルが取ったのかは、知らない。
何を思ったのか、ポン、と軽く俺の頭を撫でて。
「いいんだよ、別に」
そう言ったのは、いつもの「めんどくせェ」と同じ口調。
『裏切り』でしかないのに。
悪いと、申し訳ないと。
少なくともちゃんと、理解はしてるのに。
(・・・・・・・・・駄目・・・なのになぁ・・・・・・)
理由すら聞かずに貸される肩を
思いっきり涙で濡らしてしまった。
「ごめん・・・・・・ってば」