「うぅ〜・・・、寒いってばよ・・・」
1年の中でも最も冷える時期、2月。
嫌々と震える身体に鞭打って、温かい布団から這い出すナルト。
冬の朝の刺すような冷気が、薄着の身体を直撃。
「なんでこんなに寒いんだってば・・・」
それは冬だからだ、ナルト。
腕をさすりながら着替えを用意するナルトの目に飛び込んできたのは、
「・・・あ・・・・・・」
窓から見える、いつもと違う風景だった。


Battle of Low Level



「珍しいわねぇ、木の葉の里に雪が積もるなんて・・・しかもこんなに」
モーニングコーヒーを飲み、窓の外を眺めながら、紅がつぶやいた。
ここは『人生色々』。
里の中の、奇人変人が集まっていると言われる、上忍たちが、更に集う部屋である。
「俺寒いの嫌いなんだよねぇ〜・・・」
うんざりしたようすで、溜息をついたのはカカシ。
彼らしいと言えば彼らしい台詞だ。
「アイツは好きそうだよなぁ」
ふとアスマが漏らした言葉。
その言葉に、ピクリと反応する紅。
それが全ての発端となった。
「アイツって誰?」
と、カカシ。
「ホラ、お前の班の・・・」
「ねぇ2人とも」
アスマが言い終わる前に、紅が口を開いた。
「コレだけ積もってるんだから、今日はきっと任務無しよね・・・?」

「あぁ?さぁなぁ・・・どんな依頼が来てるかによって・・・」
「無しよね?」
有無を言わせぬ紅の一言に、アスマは頷くしかなかった。
「・・・任務がどーかしたの?」
不思議そうな顔をして、カカシが尋ねる。
アスマの表情も同様。

「今日は、3班合同で演習に決定〜v」
「「!!」」
機嫌よさげな紅の声色に、2人同時に紅の狙いに気付く。
「おっ、面白そーじゃねーか。最近つまらん任務ばっかりであいつらも愚痴ってたしなぁ・・・」
「ちょっとちょっと、俺は反対〜」
1人異論をとなえるカカシ。
「どーせお前ら、ナルト目当てなんだろ?」
「そうよ、悪い?あんたばっかり毎日会って、卑怯じゃない」
対する紅は臆する様子もなく言った。
「それに、合同演習は他の班の者達が、どんな風に動いているのか見るのにも、結構役立つしな」
アスマも同調する。
「いやー、うずまきは雪とか降ったら、1番はしゃぐタイプだろうな」
見るのが楽しみだ、と呟いたアスマ。
(白い雪の中で遊ぶナルト(君)は、さぞ可愛いに違いない(わ)・・・vv)
アスマのそんな一言で、紅とカカシはトリップした。
似ていないようで、そっくりな2人。
「ともかく、今日は7・8・10班合同で、雪合戦演習ね。決定!」
その後、渋る火影を脅して任務解除を要請し、その日の予定が決まったのだった。


その日、いつもの7班の集合場所は普段より騒がしかった。
人口密度が一気に3倍に増えたのだから、当然と言えば当然。
久々にこのように集まれて、ナルトも含めて多くの者が嬉しそうだ。
彼らの狙いが誰なのかは伏せておくとして(笑)。
ちなみに、カカシとサスケは朝から不機嫌そうであり。
サクラといのは、そんなサスケをはさんでずっといがみ合いを続けていた。
ついでに言えば、それが更にサスケの不機嫌を煽る結果ともなっていたのだが。
「なぁ、カカシ先生。なんで今日、こんなにみんな集まってるんだってば?」
まわりを見渡しながら、ナルトが問う。
「あー、それはねぇ〜」
「今日は、3班合同で演習をするのよ、ナルト君」
カカシが答えようとしたのをさえぎって、紅が言った。
さすが上忍というか。
瞬時に襲ってくる、カカシの睨みなど気にもしない御様子。
『演習』と聞いて、ナルトの表情が輝きだした。
「演習?なにすんの、なにすんの?」
身を乗り出して喜びを隠さない表情は、こどもそのもの(実際そうだが)。
(可愛いっ・・・可愛いわ・・・ナルト君v)
思わず悦に浸る紅。
その他の者たちも、ほぼ同じく。
ただ、ヒナタは
(え、笑顔・・・///)
と、純粋に乙女であったことは、断っておこう(笑)。
「・・・?紅先生?どうかした?」
しばし黙り込む紅を覗き込んで、ナルトが一言。
(・・・・・・はっ)
「こほん・・・今日は3班合同、雪合戦演習をするわよ!」
気を取り直してみんなの方を振り返って言った紅の張りのある声が、空に響いた。

「さて、まずはチーム決めだよなぁ・・・」
雪合戦、と遊びのように言っても、そこには一応、ルールと言うものがあり。
これだけの大人数では、とりあえずチームを分けなければならない。
「スリーマンセルの班でやれば良いじゃねーか」
と、まず提案したのはサスケ。
カカシもすかさずそれに合意。
それぞれ、ナルトと同じ班になることしか考えてはいないようだ。
だがしかし、それは他のものとて同じ事。
キバ「それじゃあ合同演習の意味がねーだろーがよ」
紅「キバの言う通りよ、バラバラになってこそ意味があるんじゃない」
シノ「では分け方はどうする・・・?」
いの「ここは公平にくじ引きとかじゃないの〜?」
サスケ「な・・・っ」
シカマル「あー、もぅ考えんのもめんどくせーし、それでいいんじゃねぇ?」
アスマ「まぁ、確かにそれが1番公平だな」
カカシ「テメっ・・・」
ヒナタ「じゃ、私・・・く、くじ作りますね・・・」
サスケとカカシの反論も挟まないまま、チーム分けが決まった。
「・・・・・・お気の毒に」
と、呆れたように、誰にも聞こえない声で呟いたのはサクラ。
そのころ、チョウジとナルト、すでに2人で独断雪合戦中(笑)。
(ある意味1番おいしい)
それに気付いたキバとサスケ、シノ、シカマルがものすごい勢いでそれを邪魔している間に、くじが出来上がったのだった。

ナルトが首をかしげるほど、なぜか皆殺気だって引いた、くじの結果が発表された。
シカマル・いのペア。
「ちっ・・・、サスケ君と離れたわ・・・。こうなったらサクラ、アイツを潰すわよ!シカマル!」
「はぁ・・・(やる気なさげ)」
サクラ・チョウジペア。
「いのをてってーてきに攻撃するわよ、いい?チョウジ!」
「おなか空いた〜」
「あとでお菓子くらいおごったげるわよ!」
アスマ・ヒナタペア。
「おい、残念だったなぁ、うずまきと一緒が良かったんだろ?」
「えっ、ええっ?あ、あの、私・・・(真っ赤)」
「(ずいぶん平和なペアになったな・・・)」
紅・キバペア。
「分かってるわね、キバ・・・?」
「もちろんっすよ・・・」
(団結力固し)
シノ・ナルトペア。
「シノと一緒かー」
「・・・不満か?」
「そんなことないってば、頑張ろうなっ、シノ!」
そして、カカシ・サスケペア。
「「・・・・・・・・・・・・」」
(共に打ちひしがれ、声も出ない様子)
ルールに関しては、あまりややこしくては難しい、ということで、
『戦える状態じゃなくなったらリタイア』
というものになった。
すでに雪合戦ではない。
ちなみに、上忍がいることで班分けが多少平等でないことについては、
“忍術を使ってはいけない”
ということで、とりあえず話がついた。

少し気温の上がり始めた10時半。
アスマの掛け声で、雪合戦演習がスタートした。


「俺雪合戦なんてはじめてだってば、なんかわくわくすんな〜v」
木の上に身を潜めながら、ナルトがシノに話し掛けた。
一方、シノからの返事は
「まだスタート地点からあまり離れていない。あまり大きな声は出さない方が得策だ」
と、いたってそっけないもの。
内心(つまんねーの)、と思いつつも、敵に見つかってはいけないと思い、ナルトは口を閉ざした。
すると、まもなくそう遠くないところから激しい罵り合いが。

「いーかげん諦めなさいよねー!このデコブス!!」
「諦めんのはそっちよ、イノブタがぁっ!!」
「勉強ばっかしてるから、高度な術が身に付かないのよ〜」
「馬鹿の一つ覚えのあんたに言われる筋合いないわよ!」
「ともかく!サスケ君は私が頂くんだからねー。あんたはここでヘバってなさい・・・よっ」
「それは私の台詞よ・・・くらえっ、このぉ!」
無駄に体力を奪うのではないか、というくらい激し言い合いながら、雪玉を投げあう2人。
呆れたようにそれを見守る、2人。
(俺もやった方が良いのかねぇ〜、でもめんどくせーしな。何より巻き込まれたくねぇし・・・)
(なんだかんだ言ってサクラ一人でやってるじゃん・・・お菓子くれんのかな、本当に)
女子2人の勢いに押されながら、とりあえず
((この2人が共倒れしたら、シカマル/チョウジとやるか・・・))
と思う2人だった。

「・・・すっげぇ張り切ってるってば、あの2人」
高見の見物と決め込んでいるシノとナルト。
すさまじい女の戦いを見ながら、シノは
「俺たちもそろそろ動き出さなければいけない」
と、ナルトを促した。
「あ、うん・・・でもさ、具体的に何すれば良いのかわかんないってば」
むぅ・・・と、どう動くべきかを考え込むナルト。
シノの考えとしては、
(せっかくナルトとペアなのだから、できるだけ協力する作戦がいい)
というもの。
黙っているようで、なかなか考えているようだ。
「とりあえず、他のペア探さなきゃいけないんじゃねぇ?」
「いや・・・」
ナルトのとりあえずの提案を、シノは静かに否定。
「罠を仕掛けて待っていれば、向こうから来るだろう・・・」
こちらには“ナルト”という、向こうの目的ともいえる存在がいることだし。
『待ち』の戦法で行くことを考えれば、ナルトは格好の条件だった。
「そんなん、うまく罠に掛かってくれんのかよー?」
一方、ナルトはというと少々疑いの念をもっている様子。
自分の提案が蹴られたのも、不機嫌の要因なようだ。
「罠の作り方と、ナルトの演技次第だ」
「俺の演技?なんだってば、それ?」
「まぁ、そのうち判る・・・」
「・・・・・・?」
やっぱわかんねー奴だってばよ、と言う言葉は飲み込んで。
そういえば、と、あることにふと気付いてシノをじっと見るナルト。
「・・・なんだ?」
好きな人(笑)に視線を浴びせられて冷静でいられるほどシノも大人ではないが。
やはり顔に出ないところが、シノのすごいところ。
だったり、本人にとってはある意味コンプレックスだったり。

「あー、いや、シノがこんなにしゃべってんの初めて聞くなー、と思って」
シノを凝視したまま、そう言う。
「・・・・・・おかしいか?」
「ううん、別に変じゃない。なんか嬉しい」
「嬉しい?」
意図のつかめない返答に、聞き返す。
「だってさ、なんか嬉しくね?普段しゃべんない奴の話聞くのって」
にっこりと笑って、ナルトはそう言った。
何気ない台詞かもしれないが、それはシノとしては、なかなか心に響くもので。
「話くらいなら、いつでもしてやるぞ・・・」
照れながらそう言ったが、きっとナルトに照れていると知られることはないだろう。
「おうっ!」
さっきと同じ笑顔で、ナルトが答えた。

そんなほほえましい2人を、遠くから見つめるものが。
白眼と言う血筋ゆえの武器を持った少女、ヒナタ。
「シノ君・・・羨ましいなぁ・・・」
言葉までは聞こえないが、なにやら仲の良さそうな2人を、羨望の眼差しで見つめている。
恋する乙女の「ちょっと幸せなひと時」を邪魔することはさすがに出来ず。
アスマは同じ木の上でタバコをふかしていた。
いいのかアスマ、木の上に「隠れて」いるのにタバコなんか吸ってて。
「おい、ヒナタ。そろそろ行動を起こした方がいい。他の奴らがどうしてるのかも、探らんとな」
そろそろ周りのペアたちの行動も気に掛かってきたところだ、と、アスマが腰をあげた。
「あ・・・はい・・・」
もともと大人しいヒナタは、それに従うことに。
お得意の「ナルト君観察(笑)」は惜しいが、今は休憩時間ではなくて演習中なのだ。
それくらいは割り切れるヒナタだった。
「甘いわよ!!」
木から降りようとしたアスマの目の前に現れたのは、紅。
しかも、いつもより並々ならぬチャクラをまとっている。
「く、紅先生・・・とキバ君」
「さっそくだなぁ・・・」
突然の出現に慌てるヒナタと、特に慌てた様子はないアスマ。
上忍と下忍の差、とでも言うか。
「判ってると思うけど、私たちにはやることが今からもあるのよ・・・。ねぇ、キバ?」
「そーっすねぇ・・・」
「だから、あんたごときに時間をとっている暇はないわ・・・さっさとリタイアしてくれる?」
ホラー映画よりも恐ろしい笑顔で、アスマに向かって紅が言った。
もちろん『やること』と言うのは、ナルト関係だろう。
ということは、アスマにもヒナタにも察しがついた。
(うずまきが絡むと、カカシもそうだがこいつも手におえなくなるんだよなぁ・・・)
と、心の中で溜息をつくアスマ。
しばらく答えないで入る2人を見て、リタイアする意志無しとみなしたのか
「さっさと行くわよ!アスマ!!」
と、襲い掛かってくる紅。
「はぁ・・・・・・」
うんざりしたように、溜息をつくと、
「はいはい、俺たちの負けだよ、コーサン」
顔の前で手のひらを振って、戦う意志無し、と意思表示するアスマ。
ピタッ、と紅の足が止まる。
「マジで?」
「本気だよ」
紅は手にしていたクナイをしまった。
「なんだい、情けないね。つまらないわ・・・」
「オイオイ、時間はとりたくなかったんだろう・・・」
言ってることが違うじゃねえか、とアスマはタバコを取り出す。
「そろそろアイツ等もうずまきのところに向かってる頃なんじゃねぇのか?
これ以上面倒くさいことはごめんだ、ということで、相手の宿敵、というか最大の邪魔者のことを匂わせてみたり。
効果はてき面。
「!そうだわ・・・アイツ等もうナルト君のところに向かってるかもしれない!行くわよ、キバ!」
そう言うや否や、紅はあっという間に姿を消した。
「えっ?はぁ・・・」
あわててキバが追いかける。
キバもナルトに特別な感情を抱いているとはいえ、紅やカカシなどの上忍についていくほどの気合はない。
結局、引きずりまわされるタイプなようだ。
「アイツも大変だよな・・・お前も」
「そう・・・ですね」
放心したようにヒナタが頷く。
「あの、よ、良かったんですか?リタイアしちゃって・・・?」
もしかして自分が足手まといだったのではないか、と気になって、ヒナタが聞いた。
「お前さんは、あいつと戦いたいと思うのか?」
アスマはそう言って、もぅ姿の見えない先ほどの2人を指した。
ヒナタは少し考える顔をして・・・・・・、首を横に振った。


「なぁシノ。どうやって敵を倒すんだよ?俺、カカシ先生とかにまで本気で勝てる自信ねーってば」
先ほどから何も動かないシノに、そろそろ我慢できなくなったらしく、ナルトが言い出した。
シノはというと、『罠をしかける』と言ってからも、動く様子はなく。
じっと地面を見つめているばかりである。
「罠だってなぁ、ちゃんと動かなきゃ作れないんだってばよ。
本当にコイツ、やる気あんのかよ、とちょっと疑いの疑念が浮かんでくる。

「そろそろいい頃だろう・・・」
シノがそう呟いて、木から下りた。
「え、な、なんだってば?」
ナルトも続いて降りる。
「なんかいい案あるのか?」
「ここら辺は危ないから動くな・・・」
ナルトの前に腕をあげて、シノは少し前へ歩いた。
「???」
訳がわからない、という顔で見ているナルトを横目に、シノは何の変哲もない雪の積もった地面を、かかとで蹴った。
ぼこっ、と、小気味良い音がして大きな穴があく。
「うわっ、な、なんで?」
蹴っただけなのに・・・?と驚き顔で首をかしげる。
「あらかじめ、虫を使って土を彫らせておいた・・・」
「あ〜、なるほど。さすがシノ。・・・で?この穴何に使うんだってば?」
「落とし穴」
まぁ、オーソドックスな答である。
しかし問題は・・・。
「う〜ん・・・、でもさでもさ、簡単に落ちてくれるとは思えないってば。後残ってるチームには、上忍の先生達がそれぞれいるし・・・」
その通り。
上忍がそう簡単に、下忍の仕掛けた落とし穴なんかにはまるとは、思えない。
ちなみに、同じ下忍グループだったいの、サクラたちは、今ごろバテて倒れているころだろう。
「だから罠を張るんだ」
「・・・・・・罠?」

「なぁシノ・・・マジでこんなんで、罠に引っかかるかなぁ・・・?(汗)」
「ナルトの演技次第だ」
「本当かよ・・・」
疑惑満載の不満顔で、しかし作戦があるらしいし、とシノの言うことを大人しく聞くナルト。
雪の積もった木の上に、ぺたりと座り込んで。
「うぅ〜、ケツが冷えてくるってば・・・」
「少々の我慢だ。・・・・・・もうすぐカカシ上忍とうちはが来る」
「げぇっ・・・マジ?ぜってー馬鹿にされるってば・・・」
思わず、かの悪友、サスケの口癖『ウスラトンカチ』と聞こえたような気がして、ナルトは頭を振った。
「できるだけ痛そうにするんだぞ・・・」
「へーいへい」
一体どんな考えがあるんだ?と思いながらも、ナルトは『作戦』を実行することにした。


「おい、本当にこっちで良いのかよ・・・」
あからさまに不機嫌なサスケの声。
運悪くナルトとペアになれなくてもこいつとだけは嫌だ、と思っていた男と、よりによってペアになってしまったのだから、仕方ないかもしれない。
しかし、それはカカシとしても同様で。
「こっちじゃないと思うんだったら、お前一人でどっか行けばー?別に俺としてはお前なんかいなくて良いし」
っつーか、寧ろどっか行け、という言葉を言外に匂わせた言い方。
サスケのこめかみに血管が浮き出る。
「出来るもんならやってんだよ、今が雪合戦演習中じゃなかったらな!」
「雪合戦演習なんてどうでも良いなー。ま、お前は修行中の身だしね?せいぜいい頑張れば?俺はナルト探すし」
「こっのくそエロ変態なまくら上忍・・・いつか殺す・・・・」
「そういうことは、殺せるくらい自分が強くなってから言いなさいね?今だったら簡単に返り討ちだよ〜」

いきり立つサスケに対し、カカシはあくまで飄々としたポーカーフェイスを崩さない。

もっとも、それが余計にサスケの苛立ちを煽っていることは、間違いないが。

「じゃあ、ココで戦ってみるか・・・?」
すっ、とクナイを取り出しながらサスケが立ち上がる。
「・・・・・・」
カカシも無言のまま、戦闘準備態勢。
・・・・・・と。
「・・・っ!!これはナルトの気配・・・ナルトが近い!!!」
「なっ!?」
瞬く間に上忍カカシの姿は見えなくなった。
「ちっ」
舌打ちしながらも、慌てて上忍の後ろを追う。
「なぁ〜るぅ〜とぉ〜〜〜!!!」
そう叫びながら雪深い木々の間を、目にも止まらぬ速さでかけていくカカシは、既に人間を超えている。
ああはなりたくない、と願いながらも、サスケは自分も同じ速さで後を追っていることには気付いていなかった。

「この近くだな・・・」
カカシとサスケは立ち止まり、耳をそばだてた。
「いってぇ・・・・・・」
「「!!!!!」」
微かだったが。
確かにナルトの声が聞こえた。
「「ナルト?・・・こっちか!?」」
先ほどからハモリまくりなこの2人。
ともあれ、ナルトの姿を発見することが出来た。
なにやら雪の積もった地面に座り込んで、足を抑えている。
アホでも、足を怪我したんだろう、とわかる状況である。
「いぃって〜〜・・・」
「「ナルト、大丈夫かっ!?」
2人が慌てて駆け寄ろうとしたその時。
ドサドサっ・・・・
「「っっっ!!!!?」」
見事、2人揃って何の変哲もない落とし穴に落ちたのだった。
「・・・・・・・・・」
ひょこっ、とナルトが上から覗き込む。
穴は相当深く、カカシの身長でも上に手は届かない上に、狭い穴なのでお互いの身体が邪魔で、上手く身動き取れない。
「やったってば、シノ。大成功〜〜!!」
ナルトは嬉しそうに飛び跳ね、木の上にいるシノにピースサインを送った。
「な、ナルトぉ〜??」
「おま・・・っ、怪我はどうしたんだよ・・・?」
呆然としながら、見上げるカカシとサスケ。
この上なく情けないが、さすがに可哀想なので伏せておく(笑)。
「怪我?してねーってば。アレは演技だってばよ!」
「「演技!?」」
「いやー、俺の演技も大したもん・・・つーか、カカシ先生もサスケも情けねー」
ご機嫌な顔をしてそう言うナルト。
本人には悪気はないと思われるが。
悪意のない素直なその言葉は、ザクザクと2人の心に傷を作ってはえぐっていく。
「「・・・・・・・・・(沈)」」
「うまくいったな・・・」
「あっ、シノ。大成功だってば!」
降りてきたシノに、満面の笑みを浮かべる。
「あんなんで引っかかるとは思わなかったけどなぁ〜」
ナルトはそう思うかもしれないが。
この2人を騙すのに、あれ以上の方法は多分ない。
「では、埋めるぞ・・・」
「は?埋めるって・・・・・・マジで?」
さすがにそれはヤバイのでは?という感が否めないナルトだが。
「この程度では、きっとこの2人が這い出てくるのは容易だ。それにコレは雪合戦演習だからな・・・」
と言いながらシノが、どこから調達してきたのか、直径1.5mはありそうな雪玉をとりだした。
「「・・・・・・・・・・・・・(滝汗)」」
ドサァ・・・っ
シノは表情1つ変えずにそれを、穴の入り口めがけて落とした。
「・・・・・・・・っ」
「さぁ、行くぞ」
「う、うん・・・。まぁ、・・・大丈夫か、サスケとカカシ先生なら・・・」
少々気になりつつも、ナルトは非情な判断を下し、その場を後にした。


そこから少々離れたところの木の上にて。
「・・・見た?キバ?」
「見ましたよ」
「・・・・・・っ、何っていいザマなのかしらね〜っv」
「・・・はは・・・(汗)」
他人の不幸、というかカカシとサスケの不幸などどこ吹く風で、ご機嫌最高潮に笑う紅。
キバはさすがについて行けなくも、しかし、最大の難関であった車輪眼2人がいなくなったことに安堵を覚えた。
「後残りは、私たちとナルト君たちだけよ」
「いのやサクラもいるんじゃ・・・?」
「馬鹿ね、あの2人はあの2人で、今頃はきっと相打ちして倒れてる頃よ」
「・・・なるほど」
さすが上忍というか。
読みが違う、とキバは1人頷いた。
「ともかく」
というと、紅は華麗な身のこなしで音もなく立ち上がり、
「後は私たちが、たのし〜く、雪合戦を楽しむのよ!」
>そう言って、キバにも立つように促した。
「まともに演習なんてする気なかったんすね・・・」
「なに言ってるのよ、カカシが生きてたらちょっとはまじめにやったわよ」
「・・・死んでねぇっすよ?」
控えめな(笑)キバの突っ込みには答えず、紅は動き出した。

少々ざわついた気配に、シノとナルトがピクリと反応する。
「近くにいるな・・・」
「誰だってば・・・・・・?」
警戒心をまといながら、身構えてあたりを見回す。
「十中八九、紅上忍とキバだろう」
シノが答えた。
これだけ時間がたった今、まだヒナタとアスマが残っているとは思えなかった。
おそらく、紅の最初の敵にあたるはず。
そう読んだ、紅上忍の元で日々任務や修行をしているシノの考えは、的を得ている。
「さすがね、シノ。正解よ」
という言葉と共に、紅とキバが現れる。
どうやら、ずっと隠れておくつもりはなかったらしい。
「よっしゃ!これからが雪合戦本番だってばよ!!」
嬉しそうにナルトが雪玉を作り始めた。
「なんかさ、なんかさ、ずっと雪合戦っぽくなくて、つまんなかったってばよ」
そう言いながらギュッと雪玉を固めるナルトは、心底わくわくしているといった感じだ。
確かに、このままでは、これのどこが雪合戦なのか、と聞かれては答えられないようなまま、演習が終わるところだった。
ナルトと同じく野生児ワンパク小僧のキバは、やはり嬉しそうに
「ひゃっほぉ!やっぱ雪合戦はこうでなくっちゃな!」
と、雪玉を作り始めている。
続いて紅とシノも同じようにつくり、本当の雪合戦を始めるのであった。
それはもう力の限り・・・・・・。


ギャアギャアという、にぎやかな声は、森の真ん中に倒れこんでいる下忍4人の耳にも届き。
「アイツ等・・・元気だな・・・くそッ、こっちは疲れて動けねえってのに・・・」
「僕お腹空いた〜〜・・・死ぬぅ・・・」
「空腹ぐらいで死んだら、笑ってやるわよ・・・」
「今回は相打ちだけど・・・、次は絶対私が勝つわよ、イノシシ女
「私が勝つに決まってんでしょ、デコ女!」
こちらも負けじと(いう訳ではないが)、ギャアギャアと騒ぐ女子2人。
「充分元気だよ、お前らは・・・」
「食べ物ぉ〜〜・・・」


「「「「はぁ・・・はぁ・・・っ」」」」
4人分の息切れが、静かな森の中に響く。
あたりはというと、激しい雪合戦の戦いの痕跡が残り、ぐちゃぐちゃに荒れている。
「楽しかったってばよ〜〜」
「ふぅー、やっぱサバイバル系はいいな!」
額の汗をぬぐいながら、ナルトとキバが笑った。
「そろそろ、・・・・・・撤退しますか」
呼吸を整えながら、シノ。
「そうね、これはじゃあ引き分けってことになるわね」
そう言うと紅は、他の班のメンバーを呼びに行くため立ち上がった。
多分もう残っているチームはいないはず。
「じゃ、あんたたちはココに残ってなさいね」
紅はそう言い残して消えた。

「シノ、俺たちってすごくねっ?」
息切れもいい加減一段落ついた頃、ナルトが嬉しそうにシノに話し掛けた。
「・・・何がだ?」
「だってさ、カカシ先生とサスケにも勝ったじゃん。俺シノと組めてよかったってばv」
シシシシシ、と歯を見せて笑うナルト。
「では、これからも合同任務のときは俺と組むか・・・?」
「マジで?そう出来たら良いってば」
「オイこら2人、勝手に話し進めんな」
2人の雰囲気に絶えられなくなったのか、キバが割り込む。
「今回シノと組んだらたまたま良かっただけで、いつもそうとは限らねーだろーが。それに、もし俺と組んでたらもっと良かったかも知んないぜ?サバイバル戦
ちの十八番なんだよ」

「う〜ん、そうか・・・」
そうかもしれないな、と考え込むナルト。
キバがにやっと笑う。
「だろ?んじゃ、この次は俺と組もーぜ」
ほぼ決定を裏付けたような言い方で。
その時、ナルトは、キバの周りの異変に気付いた。
「・・・・・・・・・・・・キバ、う、後ろ・・・」
引きつった表情でキバの後ろを指差す。
ナルトの人差し指の先には・・・・・・スズメバチの大群。
固まるキバ。
「っ!!!!!てめっシノ!覚えてろよ〜〜〜!」
捨て台詞も早々に、キバはスズメバチを撒くためものすごい速さで走っていくのだった。
「あれ・・・シノが?」
同情の念を抱きながら、キバを見送るナルト。
「まぁな」
「なにやってんだってば・・・」
「別に」
「・・・・・・?」
不可解な表情をしながらも、まぁキバなら平気か、とナルトは納得した。
「ま、紅先生より早く戻ってこれるよな、キバなら」


帰り道。
「結局最後まで残ったのは、紅先生たちとナルトたちだったのね。私はイノブタのお陰で共倒れだし・・・」
サクラは溜息をついた。
いのも対抗。
「なによその言い方ー、あんたが先に突っかかってきたんじゃないのー」
「あー、めんどくさかった」
「お腹空いたなぁ・・・・・・」
それぞれのパートナーであった2人は、すでに演習のことはどうでもよしといった感じである。
「しかし10班は全滅か、1度修行しなおさんとなぁ・・・」
アスマが自分の部下達を見ながら言った。
すかさず
「あんただってリタイアしたんじゃないの、アスマ」
と、紅のツッコミがはいる。
例の、自分の剣幕を棚に上げて。
「やっぱ俺らが優秀なんだよ、こういう面では」
1番多く勝ち残った8班のリーダー、キバは、得意げな顔で言った。
ヒナタはさりげなくナルトの隣へ行き、
「な、ナルト君も勝ち残ったんだよね・・・、おめでとう」
と声をかけた。
「おう、サンキュー、ヒナタ」
嬉しそうにナルトが答える。
「勝ち負け別にしても、今日は楽しかったってば。またみんなでこうやってやしたいなぁ〜」
「そうね、今度は7班も頑張らなきゃ・・・あといのも倒さなきゃ・・・」
「またすんのかよ、メンドクセーなー・・・」
「なに言ってやがる、今度は10班の奴も勝ち残るように、みっちり特訓してやるからな!」
アスマが言うと、
「「「ええええ〜〜〜!?」」」
10班メンバー全員から不満そうな声が出た。
一同に笑い声があがる。

「ところでさ、なんっか忘れてる気がするんだけど・・・気のせいかなぁ?」
何を忘れているんだろう?と首を傾げるナルト。
「きっと大したことじゃないわよ、思い出せないんだったら。さぁ、帰りましょう」
紅がそう言って、暗に帰りを急がせる。
それを見ながら、アスマは全てを察知した。
(気の毒なこった・・・・・・)


雪の中に埋もれたカカシとサスケが発見されたのは、次の日の夜中だったとか。



END




*後書きという名の後言い訳*

何というか・・・すみませんとしか言いようが・・・。(汗)
雪合戦ということだったはずなんですが・・・ほとんど関係なし(死)。
シノナルというのもなんか微妙ですし。
大分人数多かったため、
長くもなってしまいましたし・・・。
何はともかく、500ヒットありがとうございました!!