『気になる2人』


気分転換がてらの散歩途中。
うちはサスケは、珍しいものを目にした。

野原と呼ぶには少し荒々しい、広まった草むらの中。
仰向けになって寝ている、金髪。
忍びともあろう者が、少々無防備すぎる気もするが。
それ以上に、彼には“ある物”が目に入った。
横に無造作に置かれている、ヒョウタン・・・・・・に、見えるもの。
(あれは・・・・・・・・・・・・・)
疑うまでも無かった。
(砂漠の・・・・・・我愛羅・・・・・・?)
ついこの間、一戦交えた相手である。
その結果、勝敗については、敢えて思い出さないこととする。
(何故アイツがここに・・・・・・?)
他所の里の忍が里に侵入していることやら。
仲間は近くに居たりしないのか、などなど。
忍びとして注意することは、沢山有るのではあるが。
この際彼にしてみれば、気になることは只1つ。
(何でアイツが、ナルトの隣に座ってやがるんだ・・・・・・?)
そこは俺の指定席だ、と。
事実上は有りもしないことを、頭の中で思ってもみるが、所詮頭の中でのことなら、誰も文句は言わない。
思えば、あの戦いの後。
自分には良く聞こえなかったが、ナルトは我愛羅になにやらしゃべっていた気もする。
あの時は自分もかなり疲弊していたので、大して気にはしなかったが。
このような状態に、今あるとするなら、話は別。
あの男と我愛羅との間に、何かこうして2人きりで会うような関係が有るのか。
気になったサスケは、しばらく息を顰め、監視状態に入った。


熟睡状態に入っていると思われる、ナルト。
隣の我愛羅は、起こすことも無く、その寝顔を眺めている。
その表情は、無表情ながらも何処か柔らかさを帯びているようにも見えて。
(・・・・・・気持ち悪ィ・・・・・・・)
失礼にも、サスケがそう思ったのは、彼にしてみれば無理も無い。
何を思ったか、我愛羅、す、と右手をあげて。
ナルトの髪に触れる。
無造作に放置されている割に、意外と質の柔らかい髪は、その指の動きに従ってしなった。
冷静で居られる筈もない男が、ここに居る。
(誰に断って触ってやがんだ・・・・・・っ。
 ナルトもナルトだ、さっさと起きやがれ!それでも忍びか、お前は!)
少なくとも、彼に断らなければならない、という道理はない。
が、触れられても気付かずに寝ているナルトは、忍びとして、何処か失格かもしれない。

(なんなんだ、アイツは・・・・・・)
そんな彼らの様子を見ながら、ますます疑問を深めるサスケ。
とりあえず、あの我愛羅がこの里へ来る理由として、考えやすいのは、復讐。
だが、もしそうなら、とっくにナルトは今ごろ、殺されているはず。
1度は負けた我愛羅だが、あんなふうに寝ているナルトなら、容易く息の根を止められるだろう。
しかし、そんな雰囲気は我愛羅からは、微塵も感じられない。
寧ろ感じられるのは・・・・・・。
ナルトの寝顔を見ている目の、穏やかさや。
髪に触れたときの、静かでいて丁寧な動き。
自分の直感が、自分の推測が、間違ってさえいなければ。
あの男が、ナルトに抱いている感情は、多分自分と同じ様な想いなのでは・・・・・・?
サスケはそこまで考えて、寒気を覚えた。
冗談じゃない。
いきなり他所からやって来た、怪しい男に、そうそう簡単に、想い人を渡せるほど、自分は甘くはなく。
こう言っては何だが、余裕もない。

その憶測が、あっているにせよ間違っているにせよ。
そう思ったからには、これ以上彼らを、あのままにしておくわけにはいかない。
右手にチャクラを練りながら。
サスケは、1歩、ナルトの寝ている方へ、足を踏み出した。


「おい、てめぇ・・・・・・何してやがる?」
「・・・・・・・・・・・」
依然ナルトの隣に腰を据えたまま、我愛羅は無言で振り返った。
その目つきは、先ほどナルトを眺めていた目とは、まるで別人。
だが、かつて自分と戦ったときの我愛羅とは、同一人物に見えた。
「ナルトに何の用だ?答えろ」
「・・・・・・お前には関係ない」
「何故お前がここに居る?てめぇ、他国の忍びだろーが」
「それは、コイツが起きてから、こいつに聞いてみればどうだ?」
我愛羅、優越感に満ちた口調で言う。
サスケは、足元に寝転がって、未だに寝息を立てているナルトを、半ば叩き起こすように起こした。
「オイ!てめ・・・ウスラトンカチ!!起きやがれ!」
彼なりに、心配から来ているのだろう。
が、それがいつも本人に伝わらないのは、彼の天邪鬼性質の所為と思われる。
頭の上で怒鳴られ、身体を思いっきり揺すぶられ。
これで目を覚まさなければ、忍者失格を通り越して、相当の惰眠者。
さしものナルトも、驚いて飛び起きた。
「うっわ・・・・・・っ?・・・・・・・・な・・・え?サ、サスケ・・・・・・?」
まだあまり働かない思考能力で、とりあえず、自分を叩き起こした人物を確認する。
「なん・・・でサスケがいるんだってばよ?・・・・・・っつーか、ここ何処だっけ?」
「寝ぼけてる場合か、この馬鹿っ。オイ、コイツはなんなんだ?」
馬鹿、と呼ばれ腹の立たないナルトではなかったが、それ以上に相手の剣幕に押され。
“コイツ”と、指差したほうを見れば、当然そこには我愛羅の姿。
「やっと起きたか」
「・・・・・・あ、れ?我愛羅・・・・・・・・・・あっ、もしかして、俺が起きるの待ってたってば?」
「・・・・・・・まぁな」
「ごめんってばよ・・・・・・ってか、起こせばいいのに・・・・・・」
「クッ・・・・・・ま、お前のマヌケな寝面も、なかなか面白くて見ものだったぞ」
「どーゆー意味だってばよ、オイ!」
「?????」
予想外の2人の展開に、サスケが頭の中にクエスチョンマークを浮かべる。
「オイ、ナルト・・・・・・どういうことだ、説明しろ」
「・・・・・・あ、サスケ」
ついさっきまで存在を認識していたくせに、今気付いたかのように言われ。
サスケも、落胆を隠せない。
が、あからさまに出せば、あのヒョウタンに笑われるのは目に見えているので、平静を装う。
「なんで、コイツがここに居るんだ?」
質問をもう1度繰り返す。
「俺が呼んだんだってばよ。・・・・・・あ、許可とってあるし」
「・・・・・・何?どういうことだよ」
「一緒に修行しよう、って約束したんだよなー」
ナルトが改めて、我愛羅の方へ、笑顔を向ける。
「・・・・・・・・・まぁな」
答えながら、我愛羅もサスケに、勝ち誇った嫌味な笑みを向けた。
「なっ・・・・・・」
「じゃ、ま、そういうことだから。待たせて悪かったってばよ、我愛羅。んじゃ、演習場所行こうってば」
「ああ・・・・・・」
うろたえ、戸惑い、困惑するサスケを尻目に。
2人は振り返ることもせず、歩いていってしまったのだった。

後に残された、サスケ1人。
「クッ・・・・・・上等じゃねぇか、強くなる目的が、増えたってモンだぜ・・・・・・・」



その夜のことである。
カカシ上忍宅に、サスケが、更なる修行を請いに来たのは。





***後書きと言い訳***

と言うわけで、我ナル←サスケ、でした!
相変わらずサスケ氏の片想いは、面白いほどスムーズに書けます。(ヲイ)
シリアスにするか、コメディ・ギャグにするか、迷ったんですが。
サスケ視点にすると、勝手にコメディになってくれました。(笑)
こ、こんなものでよろしければ・・・・・・。
(ラヴなのか・・・これは・・・・・・ラヴなのか?)
・・・あ、タイトルに関しては、気にも留めないで下さい。(フフ・・・)

それでは、23000HIT、有難うございました〜〜vv