『彼』を色に喩えるとしたら。


「黄色だろ」
口火を切ったのは、成績優秀・容姿端麗を誇る黒髪の少年。
太陽とかひまわりとか、数を上げればきりがないけれど。
そういう喩えは、どれでもあいつに合う気がする。
「何より見た目がまんまだしな」
との言葉に、全員がナルトの姿を思い出し、確かに、と頷いた。
「赤もいけるんじゃねぇ?」
と、次に元気の良さならナルトの上を行くほどの健康良児が、愛犬を抱き上げながら言った。
情熱・・・っていうか、いつも燃えてるって感じするし。
生命感があるっていうかな。
それに。
「いっつもドジ踏んで怪我してるから、血の赤とかもな」
冗談めかしていった言葉に、いつもその“ドジ”の尻拭いをしている、先ほどの黒髪の少年は深く頷いたという。
「青とかどうよ?」
長い髪を後ろで縛り上げた、タルそうな態度の少年が発言する。
空っつーか海っつーか・・・、とにかく広いイメージっての?
あと、なんか澄んでるとことかも。
「目の色だって青だし・・・・・・」
と言って、綺麗な例の瞳の色を思い出した。
「黒・・・・・・」
無口にかけては右に出る者もいないほどの、寡黙な少年がその口を開いた。
闇を表すその色は、ナルトとはあまり結びつかないような気がして、周りは首を傾げたが。
「アイツは・・・・・・時々大切なことを言わないときがある。分かりやすいようで、底の見えない奴だ」
という、サングラスの闇の向こうに瞳を隠した少年の言葉に、ああ、なるほどと全員が納得した。
『それはお前もな』という、全員共通の突っ込みはそのままに。
そんな子供たちの談義に、ナルホドねと1つ1つ関心を寄せる、上忍。
皆、なかなかナルトのこと良く見てるじゃない。
俺も負けないように頑張らなきゃねぇ・・・・・・。
と、不謹慎なことを考えながら。
「透明」
ポツリ、と言ったその上忍の言葉に、子供たちが振り向いた。
「透明?」
「そう」
正確に言うと、色じゃない気もするけどね、と付け足して笑いながら。
「どんな色も映すし、透き通るくせに、絶対に染まらないの。
 で、当たり前のように傍にあって、・・・・・・結構気付かないうちにね」
いつもの飄々とした顔に、ほんの少し真剣な色を見せる。
「急になくなっちゃったとしても・・・・・・もしかしたら気付かないのかもねぇ・・・・・・」
どこか思い入るような表情で、そんな風に言うものだから。
少年たちは、驚いた顔をしてすぐさま駆け出していってしまった。
おそらくは、『彼』を探しに。
「別に、本当にいなくなる、なんて誰も言ってないけど・・・・・・?」
と、頭を掻きながら上忍は苦笑して。

大丈夫だねぇ、ナルト。
あれだけ想われて、必要とされていれば。

「簡単に『消える』なんて、・・・・・・望んでも、出来そうにないね?」
分かるか分からないかの、安堵の笑みを浮かべながら、そう言った。