Fighting!

<ROUND3・食堂の戦い>




すでにいい匂いの漂っている食堂で、数人の殺気が立ちこめる。
一人まったく気にしていないもの(ナルト)は、
「うっわー、うまそーだってばよー。早く食おー、みんな」
と、テーブルに並べられた食事に目を輝かし、席に着いた。
他のものが、それを見逃すはずもなく。
 
「おい、俺があいつの隣を頂くからな・・・」
と、サスケがすでにその席に視線を集中させながら言った。
「勝負に勝ったら、だろう。うちはサスケ・・・」
「おまえもな、我愛羅」
先ほど静かだった諸君が、なにやら盛り上がりを見せている。
「っち・・・めんどくせぇー・・・。さっさとやるか?」
「あぁ、じゃ、とっとと勝負をつけようじゃねーか。行くぞっ」
キバが掛け声をかけた。
「「「「「ジャンケンポン!!」」」」」
「うわっ!?」
いきなり背後で大声でジャンケンをはじめたので、ナルトが驚いて振り向く。
が、それはとまることはなく、34回あいこが続いたかと思うと、
「「っしゃあ!!」」
と、2名が勝利の雄たけび(?)をあげて、ジャンケン勝負は終了した。
今日のラッキーボーイ(笑)は、先ほどまでちっとも脚光を浴びなかった我愛羅とサスケだったようだ。
 
(っち・・・何でこんなことに・・・)
(もしかして、これから毎日こんなことすんのか・・・?めんどくせ―・・・)
(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まぁ、部屋は隣だしな・・・)
殺伐とした5人の様子を見て、ネジはため息をついた。
(頼むから寮長の俺にまで迷惑をかけるなよ・・・。まぁ、ナルトならいいんだが・・・)
席順は、右側から、シノ・サスケ・ナルト・我愛羅・シカマル・キバ・ネジ。
ちなみにネジは、寮長らしく女子員の手伝いをしていて、勝負には参加していない。
 
(な、なんか苦手っぽいやつが隣になったなぁ・・・何でこいつらが隣なんだってば・・・?)
ナルトは横目で自分の隣に座るものたちを見ながら、不思議に思った。
寮内案内のときからずっとしかめっ面で、一言もまとも話さなかった2人が隣。
仲良くしていたはずのシカマルとキバは、我愛羅の向こう。
なぜだかずいぶんと距離を感じる。
しかしそこは、いつでも前向きナルト。
(ま、まぁいいか。こいつらだって、おんなじ道場の仲間だしなっ)
と、結論付けて、さっさと食事へ取り掛かる。
 
たった今、拳と拳の勝負(ジャンケン)で勝利を果たした2人はというと、心の中で自分に負けていた。
(ふ、普通に話し掛けるんだ、普通に・・・さぁ行け!うちはサスケ!お前はうちは家のエリートだろ!?)
うちは家のエリート、残念だがこの設定でそれは通用しない。
(・・・・・・話し掛ける・・・?そ、そんなことが出来るか!っちぃ・・・ナルト、お前の方から話し掛けてこい)
ずいぶんと自己中なのは、我愛羅。
2人ともそんなことばかり考えて、食事はまったく進んでいない様子である。
チャンスは向こうからやってきたようだ。
「なぁなぁ、お前ら食べねーの?」
固まったままの両サイドを見て、少し心配になったナルトが、声をかけた。
「「えっ!!///」」
ぎょっとして振り返る2人。
顔は真っ赤。
もっとも、そんなことにいちいち気づくほど、ナルトは鋭くはない。
「うまいのに・・・この豚のしょうが焼き・・・」
と言いながら、豚肉をムグムグと食べるナルトも、この2人には欲目に可愛く見えるらしい。
嗚呼、病気。
硬直から抜け出したサスケが、そのしょうが焼きにはしを伸ばす。
「あ、ああ、そうだな・・・俺も貰う・・・」
「じゃあ、俺も頂くか・・・」
同じように我愛羅も食した。
「・・・・・・何を笑っている?」
やけに笑顔のナルトに気づいて、我愛羅が渾身の勇気を振り絞って話し掛けた。
ステップ1。
今夜は赤飯。実際は白ご飯。
「ん?あっ、ごめん。だってさ、我愛羅とサスケとまともにしゃべったのって、初めてだなーって思って」
そう言って嬉しそうに笑うナルト。
((((((!!!!!)))))
6人の脈拍が一気に跳ね上がる。
と同時に、サスケと我愛羅以外の4人の殺気が、一段と増した。
(くっそー・・・羨ましいっ。やっぱ俺も隣が良かったよなー)
(はーっ、めんどくせ・・・)←何がだ
(・・・・・・明日こそは・・・・・・・・・・・・)
(ちっ・・・、寮案内のときに、もっとアピールしておけば・・・)
それぞれの思考が飛び交う。
一方、ナルトの笑顔を直に浴びた2人は、固まったまま。
そんなことは一向にお構いなしに、ナルトは食事を続ける。
「なあなあ、ご飯食べ終わったあとは何するんだ?」
半分以上食べ終わった自分の食事を見て、ナルトがネジを方を向いて訊ねた。
「あぁ、それは各自自由となっている。修行をするもよし、勉強や読書をするもよし、寝て体力を温存するもよしだ」
ネジは、ここぞとばかりに誇らしげに答えた。
「修行かぁ・・・」
ナルトは少し考えるような顔をする。
ここへ来た理由は、『強くなるため』なのだから、やはり修行をするのが1番か、と考え。
よし、そうしよう、と決めたところに
「ナルト、修行をするなら一緒にしねーか?」
と、キバからお誘いをかけられた。
聞き逃すはずもない他のメンバーが、後に続く。
「じゃあ、俺も参加しちゃる・・・めんどくせーけど、お前らだけ強くなんのはズリィしな」
「差をつけられるわけにはいかねぇ・・・俺もするぞ」
「うちはサスケがするというのなら、俺もするか・・・」
「・・・・・・・・・・・・では俺も・・・」
「こんなメンバーが集まっては不安だ。俺も行くことにしよう」
「えっ、ええ・・・?」
続々と加わってくるメンバーに、対応しきれないでいるナルト。
の目の前に。
一人、背の高い男が座った。
「「「「「「こんばんは、師範代」」」」」
体育会系らしい挨拶が、6人一緒にハモる。
ナルトはというと、男を見て驚いて目を丸くして。
「・・・・・・カッカブトさん!!」
と叫ぶ。
「やぁ、久しぶりだね、ナルト君」
好青年らしい笑顔で挨拶すると、師範代薬師カブトはナルトの向かいの席についた。
当然他の皆の視線は、そこにあつまる。
2人は知り合いだったのか、どこで知り合っていたのか、カブトが驚いた様子でないのはなぜか”
等、考えだせばキリがないくらい疑問はあるが、彼らの頭の中にあるのはただ1つ。
 
“何でそんな親しい関係なんだよ?”
 
実際そう思うくらい、2人の会話は親しげなもの。
 
「師範代の名前、薬師カブトって言ってたから、そんな気はしてたんだけどさー」
「ははっ、普通は気づくよ、ナルト君」
「しししっ。あのさあのさ、カブトさんは俺が来てるの知ってたってば?」
「・・・どうしてそう思う?」
「だって、さっき俺の顔見たとき、普通の顔してたじゃん」
「そうだねぇ。話はカカシ師範に聞いてたよ。知ったときは驚いたけどね」
「そっか」
すっかり思い出モード(?)にはいっている2人に、横槍が入る。
「なあなあ、話してるところ悪いんですけどー」
犬塚キバ。
相手の片方は師範代なので、一応敬語。
「ナルトと師範代は、どこで知り合ったんですか?」
「あぁ、それはうずまき流道場だよ」
「カブトさんは2年前までうちの道場に、出稽古しに来てくれてたんだってばよ」
「あー・・・なるほど」
キバと、聞き耳を立てていたほかの全員が、納得する。
「ナルト君は、強くなったかな?」
「あったり前だってば!今からだって、修行するんだってばよ!」
懐かしい、武道の先輩とでも言うべき人と話ができ、ナルトは嬉しそうになる。
カブトも、嬉しくてかどうかは知らないが、にっこりと好青年の笑みを浮かべて。
「今から?そうか・・・じゃあ、久しぶりにナルト君の成長振りを見てみようかな?」
「えっ?マジで?一緒に修行してくれんの?」
「そうだね、懐かしいしね」
「やったあ!」
ナルトはそう言って、急いで残りのご飯を食べ終わると、
「早く行こうってば、カブトさん!」
と、カブトの手を引いて食堂を後にした。
誘いの言葉すら見捨てられた、他の6人を残して。
 
「「「「「「くっそおおぉ!いつか倒してやる、薬師カブト!」」」」」」
彼らの、強くなりたい、という願望が、1つ高まった。



カブトさんです。
カブナル、大好きなのに書いたことがありませんでした。
世の中ではカブトさんは鬼畜として取り扱われています。
私も実際そうだと思います(笑)。
が、ナルトにだけは優しいカブトさんを信じています。
それが乙女のドリームですから。
このままカブナル書き続けたい気満々ですが、
それではこの話が進みそうもないので。
シカナルも入れたいですし、シノナルも入れたいですし。
どうもサスケと我愛羅は損キャラっぽいですね・・・ごめむ。
(あんまり反省してないですが)