Fighting!

<ROUND2・寮内案内>




「まずは部屋に案内する」
と言ってつれてこられたのは、寝室らしい個室。
まさしく寝るためだけの、押入れ付の和室で、ちょうど6畳分の広さである。
「おおー、ここが俺の部屋かぁ・・・。隣は誰の部屋だってば?」
ナルトが、隣の部屋のドアを見ながら訊いた。
「隣は・・・油女シノと・・・」
「おっ、俺じゃん、隣。ご近所ってことで、よろしくなー」
ネジをさえぎって言ったのは、キバ。
5人の男たちから、一瞬殺気が漏れる。
ナルトはそんなことには気づかずに、
「よろしくってば!」
(キバって結構明るくて、気ぃ合いそうだってばよー)
一通り、キバと握手を交わし、シノに目をやり。
「シ、シノ・・・?よろしくな」
おずおずと挨拶をする。
(な、なんかコイツって良くわかんないってば・・・どんなやつなんだろ・・・?)
いまいち性格のつかめない、無口な“お隣さん”に不安を感じたナルトだったが。
「ああ・・・よろしく」
と、シノは控えめに挨拶をして、先ほどのキバと同じように、握手の意で手を差し出した。
少し驚いたナルトだったが、すぐに意図がわかり、同じように握手を交わす。
「あ、コイツ無口でよくわかんねーけど、嫌なやつじゃないぜ。安心しろよ」
と、キバが戸惑い気味のナルトを見て言った。
「あー、無口か」
なるほど、というような顔をして、ナルトはうなずく。
とっつきづらそうなやつだけど、嫌なやつじゃないならいっかー、と。
 
次に案内されたのは、武闘家には欠かせない、食堂だった。
すでに夕飯の支度が始まっているらしく、4人の女性グループが何やら忙しそうに準備していた。
「ここが食堂だ。今、住み込みの人たちが夕飯の支度をしているようだな」
ネジが簡単に説明していると、新顔を見つけて興味を持った4人が、集まってきた。
「・・・新人さんー?」
ものめずらしそうな目でナルトを見ているのは、山中いの。
「あぁ、ちょうどいいから紹介しておこう。新入員のうずまきナルトだそうだ」
「よ、よろしく」
控えめに挨拶したナルトの目は、ある一人の女の子の方を向いている。
桃色の髪の毛が目立つ、春野サクラだ。
(うわー、可愛い子だってばよーvv)
所詮13の考えることといったら、この程度。
ネジが、
「では、とりあえず4人とも自己紹介を済ませておくといい」
と、4人の紹介を促した。
「夕日紅よ。料理長兼事務長をしているわ。よろしくね、ナルト君」
とにっこり笑ったのは、唯一大人の女性だった。
背が高く、長い黒髪に紅を引いた唇が、大人の色香、というものを感じさせる。
「あたしはー、山中いのー。主に清掃担当、よろしくー」
いのは、語尾を伸ばし気味に自己紹介した。
少し気の強そうな、しかしどこにでもいそうな普通の女の子、という印象。
そして、次にナルトが目を引いた、桃色の髪の女の子だった。
「私は春野サクラよ。会計と日程を担当してるわ。月謝とかは私に出してね」
その役職にふさわしいような、知的なイメージを漂わせている。
「日向・・・ヒナタです・・・。食事と買出し担当の・・・」
うつむいて、頬を染めながら話したのは日向ヒナタ。
他の2人と比べるといくらか背は低く、そのせいか余計にひっこみじあんに見える。
「あれ・・・?日向・・・?」
聞き覚えのある苗字に、ナルトはヒナタとネジを見比べた。
それに気づいたネジが
「あぁ、俺とヒナタ様は従兄弟の関係にある」
と説明する。
従兄弟であるはずのヒナタを、様付けでよぶのに、少々疑問を感じたナルトだったが。
「へぇー、そうなんだ・・・・・・・・・・・」
ナルトも代々と継いできた一族の一人であるので、『御家問題の云々』はある程度わかっている。
何も突っ込まないでおくことにした。
食堂を出て行くときに、
「後30分ほどで夕食が出来上がるから、準備しておきなさいね」
と、紅から声があった。
 
食堂を出た後、トイレ、風呂場、洗面所など、ある程度最低限の場所案内をしてもらった。
「へぇー、結構綺麗だし、広いんだな」
「気にいったんか?」
シカマルが、初めて声をかける。
「うん!修行も楽しみだってばよ」
心底わくわくしながらナルトが言った。
家柄の事情で仕方なく、とはいっても、やはり拳法自体は好きなことで。
修行もまじめに取り組んでいたし、強くなっていくのは嬉しかった。
ただ、将来の夢、という点に、当てはまらなかっただけのこと。
「そういえばさ、お前んとこの道場は寮生じゃなかったのか?」
やけに楽しそうなナルトを見て、シカマルが再び訊いた。
「あぁ、うん。住み込みで・・・って人もいたけど、完全寮生じゃなかったな、ここみたいに」
「そっちのほーがいいじゃねーか、めんどくさくねーし・・・」
「きしししっ、シカマルはめんどくさがりやなんだなー」
シカマルの発言を聞いて、ナルトが笑う。
「そうなんだよなー、コイツ、すぐいろいろめんどくさがりやがんの」
キバも仲間に入って、ちゃちゃを入れる。
めんどくさそうにシカマルが対応した。
「面倒なとはないに越したこたぁねぇだろーがよ・・・っち」
「お前そんなん言いながら、なんだかんだ言って、面倒見いいよなぁ・・・」
キバが言うと
「へぇー、そうなん?じゃあ俺、めっちゃ面倒かけちゃうかもなー」
と、ナルト。
「なんだよそりゃぁ・・・、あながち嘘じゃないっぽくてヤダな・・・めんどくせー・・・」
そう答えながら、シカマルはどこか嬉しそうである。
 
ちなみに、ほぼ忘れられていそうな、3人。
ネジは寮長であることで、いくらかの対応とともに会話も交わしたが。
残るシノ・サスケ・我愛羅はほとんど言葉を交わした覚えがない。
もともと自分から話し掛ける、ということを最も苦手とする部類なので、仕方がないが。
(((あのまま3人仲良し組、として決定されてたまるか)))
という思いは、3人とも共通。
チャンスがあるとすれば、それは、今日の夕飯。
(((ナルトの隣はいただく・・・)))
ともに同じ野望を抱いたはいいが、3人がナルトの隣、というのはありえない。
それにまず、人は最初に仲良くなった人物の近くに座る、というのが心理の基本。
今まで特に友達と言うのを作らず生きてきた、この3人にはわからないかもしれないが。
思った以上に、その矮小な野望をかなえるのは、困難そうである。
 
ナルトが、ふと思い出したようにくるりと振り返って。
「なあなあっ、もうそろそろ夕飯の出来るころじゃねぇ?」
 
『ナルトの隣の席争奪戦』の始まりの合図だった。
 
ちなみにその頃。
ネジは、いかに寮長と言う立場を使って、ナルトに接近するかを考えており。
カカシはいかに師範と言う立場を使って、ナルトに接近セクハラするかを考えており。
ヒナタは
(さっきのナルト君って人、かっこよかたなぁ・・・v)
と、一人頬を染めていた。
 
なんにせよ、ここ、木の葉流拳法道場での生活は、まだ始まったばかり。



女性キャラ登場編。
NARUTOの女性キャラは個性的なので、書くの楽しいですv
まだなんだか総受けっぽくないような気がしますが・・・。
これから総受的にしていければなぁ・・・と。
キバとシカマルとナルトがそろうと、他の4人はちっとも会話を突っ込めないですな(汗)。