『大丈夫』


めでたく高校生になってから。
いつも、姉のように接していた彼女に、言えないことがいくつか。

高校生になって、初日。
生まれて初めて、絡んできた不良のクラスメイトに、歯向かった。
高校生にもなって絡まれた、と知れば、きっと心配して。
それこそ、雇われボディーガードのように警護してくれるだろうから、言えないけれど。

高校生になって、数日。
生まれて初めて、逃げるためじゃなく、本気で走った。
高校最速と言われている人に、『勝つ』ために。
僕が「アイシールド21」だと知られたら、殺されるので、言えないけれど。


まだまだ臆病で。
虚弱で貧弱で脆弱で最弱、だけれど。
ほんの、ちょっとしたときの強さでしかないけれど。
それでも、少し、ほんの少し、骨くらいは出来たんじゃないだろうか。
フニャフニャで、軟体動物みたいだった僕にも。
ギリギリのところで、踏みとどまるくらいの、強さは。
なんて、思うわけで。


いつも、彼女の後ろに庇われて、彼女の後ろで泣いて。
いつも、彼女に泣き言を言っては、彼女に励まされて。
そんな自分だったから、本当は誰よりも、この事、伝えたいのだけれど。
いろんな事情で、そんなことは言うことが出来なかったり。
言いたくなかったり。
だから、少し罪悪感を抱きながら、心の中だけで、懺悔。
そして、感謝、と。


いつもまもってくれて、ありがとう。
これからも、多分、まもられっぱなしだとは思うけれど。
これからも、多分、心配をかけっぱなしだと思うけれど。
もう、大丈夫、です。

ありがとう。