宝塚大好き!

◆宝塚大劇場星組公演(97/11/7〜97/12/15)感想◆
 〜『ダル・レークの恋』〜

 今年の宝塚大劇場の最後を飾るのは、30数年ぶりの再演となった『ダル・レークの恋』。インド北部のダル湖畔で繰り広げられる王族の娘と騎兵大尉の息詰まるラブ・ロマンスの一本立て。「レビュー・ルネサンス」の最後をしめくくるということで、ダンスシーンもふんだんに取り入れられており、非常に華やかな宝塚らしい舞台に仕上がっています。

 まず、何と言っても衣装が素晴らしく美しい。インドのお話ということで、娘役はサリー、男役はターバンを巻いての登場ですが、ヒロイン始め主要な人物が王族ということもあり、本当に豪華なんです。お芝居だけでなく、フィナーレの衣装も素敵で、これを見るだけでも価値があるなぁと思うほど。また、ダンスもインド風の振り付けを取り入れていて何ともエキゾチックだし、始めて宝塚をご覧になる方や団体のお客様には『宝塚ならでは』の魅力をたっぷり楽しんでいただけるのではないでしょうか。

 30年以上前の作品ということで、話のテンポや筋が古めかしいのではと心配していたのですが、なんのなんの。十分楽しめました。騎兵大尉ラッチマンに心を奪われながらも、身分違いゆえにわざと愛想づかしをする令嬢カマラ。その直後にラッチマンに指名手配中の詐欺師の疑いがかかり、「二度と姿を現さないかわり、カマラと一夜を過ごしたい」というラッチマンの取引に応じざるをえないカマラ……。この場面は本当に「息詰まり」ます。好青年から一転して女を手玉に取る悪党に変わるラッチマンと、騙されていたと憎みながらもどこかで恋情を捨てきれずにいるカマラとの歪んだ恋の駆け引き。また麻路さきさん扮するラッチマンが色っぽくてしかも悪っぽくて、どきどきしちゃうんですよねぇ。

 一旦は去ったはずのラッチマンが再びカマラ達の前に表れ、もう一人の悪党ペペルとの対決で実はラッチマンも王族の子息ということが判明して……。ここでお姫様と王子様が「めでたしめでたし」とならないところがまたこの作品の良いところ。身分や階級に縛られたくない、平民の出だからと拒んでおいて王子だとわかったからよりを戻したいなんてそんなのは本当の愛じゃないとラッチマンはカマラの前を去っていくのです。いやぁ、カッコいいですねぇ。かの春日野八千代さんが「今まで演じた中で好きな役」にラッチマンを挙げているのもわかるというもの。色気があって悪っぽくて、信念のためには地位も恋も捨てる男。かつての春日野ファンを悩殺したこと間違いなしですが、麻路ファンにもたまらない役です。

 カマラを演じたのは今回からトップ娘役となった星奈優里。少しキンキンして聞こえる声が私はちょっと苦手なのですが、美しくプライドの高いお姫様を好演。長身華麗な星組男役陣に混じっても負けない華のある人だし、カマラの複雑な心理変化もよく出ていました。ペペル役の二番手稔幸さんのファンには少々もの足りなかったかもしれませんが(出番が少ないので)、脇を固める役者さんも適材適所でそれぞれが好演しており、最後まで楽しめました。

 5組化で来年は1回しか公演がないらしい星組。ファンならずとも『ダル・レークの恋』は見逃せませんよ。


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