宝塚大好き!

◆宝塚大劇場花組公演(97/8/8〜97/9/15)感想◆
 〜『ザッツ・レビュー』〜

 今年はモン・パリ誕生70周年、宝塚歌劇団は『レビュー・ルネサンス』と題して年頭から様々なレビューを上演してきました。その集大成とも見えるその名も『ザッツ・レビュー』、さぞやきらきらしい舞台が展開すると思いきや、実は1本立てのお芝居です。昭和初期、『モン・パリ』初演から東京宝塚劇場開場までの数年が、レビューに夢を賭けた若者達の青春として描かれます。そう、この作品は今年一杯で幕を閉じる東京宝塚劇場へのはなむけでもあるのです。(この作品は12月に東上、現東宝劇場の最後の公演になります)

 主人公は東北からレビュー上演の夢を追って東京に出てきた純朴な若者、春風泰平。彼と共に夢を追う華族の青年との友情、レビューの踊り子との恋模様、泰平を慕うスリの若者、最初は毛嫌いしながらも徐々にレビューを認めていく歌舞伎役者……。巧みな人物配置に、宝塚歌劇のライバルだった松竹歌劇団の話や、不況・戦争の影など当時の世相を盛り込みながらのストーリー展開。ラストで竣工なった東宝劇場を前に登場人物達がそれぞれの感慨を述べるシーンでは涙がこぼれました。

 『パリゼット』、『花詩集』など往年の名作の再現シーンもオールドファンには懐かしいところでしょう。フィナーレの黒エンビでの「すみれのボレロ」は非常に格好良く、これぞ宝塚といった感じ。

 春風泰平役はもちろん花組トップスター、真矢みき。「周りの人の幸せがおらの幸せ」(全編セリフは東北弁)という、どこかで聞いたような「いい人」を熱演。きれいな衣装もカッコいいダンスもないけど、非常に素敵でした。トップになってからの作品では一番好きです。少年のように目をきらきらさせて、「野心」ではなく「夢」を追う。バリバリのキザな役も得意な彼女ですが、絶賛を博した竜馬役といい、案外本質はこちらなのかと。

 泰平に惚れていながらも会えばいつもけんか腰になってしまう、気の強い踊り子お仙役に千ほさち。口では強いことを言いながらも根は可愛い女の子を好演。特異な声も役に合っているんだけれど、少々聞き取りにくいのが難点。歌も弱いです。

 二番手男役の愛華みれは華族の青年大河原亮。意外と出番が少なく、地味な辛抱役。彼女もかすれ声なので、セリフと歌が弱いのが気になります。

 スリの若者源次に香寿たつき。こいつのおかげで泰平さんは目は悪くするわ怪我はするわ、あげくに東北へ帰らなきゃならないというとんでもない役なのですが、おかげで出番が多く、おいしい役所。いきがってるけどホントは可愛い憎めない若者像がよく出ていていました。残念なのは歌が少なかったこと。おそらく今男役で一番歌がうまいのは彼女だと思います。

 脇を専科のみなさんががっちり固め、本当に見応えのあるお芝居です。「宝塚ってやっぱりすごいんだ」と思うと同時に、今では当たり前になってしまったレビューや専用劇場といったものが、先人の努力のたまものであることを再認識しました。おこがましい言い方ですが、生徒のみなさんにこそ見ていただいて、更なる飛躍への糧にしていただきたいです。


インデックスに戻る