宝塚大好き!

◆宝塚バウホール月組公演(97/2/20〜97/3/2)感想◆
 〜『Non−STOP!!〜午前0時に幕は開く〜(作・演出 藤井大介)』〜

 4月の東京公演で宝塚を退団する月組トップスター久世星佳さんの、これは宝塚での最後の舞台です。前売り前夜から実家に泊まり、朝早くから並んで奇跡的に(?)チケットを手に入れました。今までにも何人かごひいきのスターさんを見送ってきましたが、今回は特別な気がします。それほど注目されていなかった頃からその成長ぶり(?)をずっと見てきて、見るたびに好きになり、でも最後までトップになれるかどうか微妙な位置にいらして、そうしてやっと念願かなって大階段を最後に降りる姿を見られたと思ったら、わずか1年半での退団……。感慨深くなるのも仕方ありません。バウ公演観劇の前日、どんな舞台か楽しみでもあり、一方で「いよいよ明日で最後なのだ」と思うと寂しくて、早く明日になってほしいような、なってほしくないような、複雑な気分でした。
 ファンの気持ちがどうであれ、時は止められません。2月21日午後2時半、私にとって最後の「宝塚の久世星佳」の幕が上がりました。役者志望の青年が劇場に住む精霊達に愛され、スターへ上り詰めていくというちょっとコミカルでハートフルな物語。幕開き、久世さんはいきなり客席から現れて、しばらく客席でお芝居をしてくれます。2列目中央に座っていた私とは手を伸ばせば届きそうな距離! バウホールの良さは舞台と客席の近さにありますが、最後にしてこんなに間近に久世さんを見ることができて……並んだ甲斐があった!
 純でまっすぐな故に周囲から少しずれてしまう青年。それでも「夢見る力」だけは誰にも負けなくてついにはスターになり、そうして「望んで得たはずの地位なのに何故か孤独」を感じる青年。決して2枚目ではない、ちょっぴりコミカルでちょっぴり寂しげなそんな青年を、久世さんはあったかく演じてらっしゃいました。「大人のリアリティ」が久世さんの身上と言われていますが、一番の魅力はこの「あたたかみ」だったような気がします。バウ初主演作の『BLUFF』でもトレンチ姿の格好良さと共に、老人に変装した時のあの「あったかい味」が忘れられませんし、『ミー&マイガール』のジョン卿、『銀ちゃんの恋』のわがままなのに憎めない銀ちゃん……。久世さんの笑顔ってホントに素敵なんですよね。
 フィナーレの「STAND BY ME」を歌いながら、久世さんの目にはうっすら涙が光っていて、見ている私もうるうるしてしまって……。実は私、大劇場でのサヨナラショーも見たのですが、前述の『BLUFF』に始まり、『グランドホテル』、そして最後は「サヨナラ!倉岡銀四郎」の大看板と「キネマの天地」をバックに大騒ぎのうち幕が降りるという、こちらもとってもあったかくてエンターテイメントなショーだったんですよね。トップとしてはたった1年半だったけれど、久世さんの宝塚生活はなんと充実していたのだろうと思うと同時に、こんなに素晴らしいエンターテイナーがもう宝塚を去ってしまうなんてもったいなすぎる!という想いも強くて。退団したからと言って久世さんがいなくなるわけではないし、きっと他の舞台で活躍されることだろうとは思うのですが、宝塚の舞台はやっぱり特別なんです。魔法がかかっているんです、あの舞台には。
 最後の最後まで私達を楽しませてくれたノンちゃん、本当にありがとうございました。あなたに出逢えて幸せでした。これからもずっと……。


インデックスに戻る