宝塚大好き!

◆宝塚大劇場月組公演(96/12/20〜97/2/2)感想◆
 〜『バロンの末裔』『グランド・ベル・フォリー』〜

 月組トップスター久世星佳さんのサヨナラ公演となった今年のお正月公演。大劇場史上初の『年越し公演』でもあります。
 『バロンの末裔』は元日にBSで生中継があり、ご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。没落しかけの男爵家を舞台に、双子の兄弟と幼なじみの女性とのドラマが繰り広げられます。数々の野心的な作品を送り出してきた正塚先生の作品にしては無難にまとまっているなというのが第一印象でした。久世さんのバウホール初主演作『BLUFF』以来、相性がいいと言われ続けたコンビでもありますし、サヨナラということで期待が非常に大きかったので、正直ちょっとがっかりしてしまいました。どこがどう悪いというのではないのですが、何か普通すぎるんですよね。
 主役のエドワードとその双子の兄ローレンスを演じるのが久世さん。一体どういう仕掛けになっているの?という早変わりのシーンがあり、また、対照的なキャラなので久世さんの違った個性が一度に見られるという利点はあるのですが、少々色が薄い。これがサヨナラでなければ、その愛ゆえに身を引くエドワードは確かに久世さんに合ったキャラだとは思うのですが、もうこれで久世さんの男役を見るのは最後だと思うと、バロンはバロンでも『グランドホテル』の男爵のような濃い役でドラマティックなお芝居を見せてほしかったと思うのです。私の友人は久世さんのサヨナラは絶対『グランドホテル―男爵編―』だ!と常々言っていましたし……。私も見たかったです。
 エドワードとローレンスの二人に愛されるキャサリン役の風花舞さん。彼女は本当にうまくなりましたねぇ。エドワードを愛していながら、エドワードに愛されていないと思いこんでローレンスと婚約し、エドワードの本心を知って苦悩する場面では本当に涙が光っています(この場面では久世さんの目にも涙の浮かぶ日があるとか)。
 少々無難ながらもそれなりに良くできてはいる『バロンの末裔』ですが、ショー『グランド・ベル・フォリー』の方は本当に、本当にがっかりしました。『レビューの原点に戻って』という触れ込みだったのでさぞや豪華で華やかな舞台なのだろうと期待していたらさにあらず、超地味! 衣装も舞台装置も音楽も地味なんです……。一体レビューの原点って何なんだろう、と思ってしまいました。『理屈なしに華やかで理屈抜きに楽しめる』のがレビューの原点というものじゃないでしょうか。お正月だしサヨナラ公演だし、せめてもうちょっと豪華な衣装でもいいのに……。うう、残念です。


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