◆2009.06.10〜2009.07.01 New Out◆
GACKT 10 YEARS ANNIVERSARY COUNTDOWN
開かれた4つの扉に思うこと



 2008年末から始まったホールツアー『Requiem et ReminiscenceU〜再生と邂逅〜』。普通のライブツアーはアルバム発売後、そのアルバムの曲をひっさげて各地を回るのだけれども、今回は音源なしでいきなりツアーで新曲披露というスタイルだった。そのために予習コンテンツとして「サイボーグであるZeroと友人のアサクラ、マリアとの物語」が語られ、ライブ開始後には徐々に「歌詞」がアップされていった。私が参戦した1月末の名古屋では『Jesus』と『GHOST』がシングルリリース済み、歌詞はほとんどがアップされていたと思う。

 参戦後、「一体いつアルバム出るんだろう。早く聴きたい♪」と思っていたら。

 なんとアルバムではなくシングルで4枚リリースという。えーっっっ!? すごく意外だったな。しかも『小悪魔ヘヴン』がトップバッターで、シングルA面(という言い方は、CD時代にはおかしいけど)。ライブで聴いた時は、「小悪魔」はアルバムの「初回限定おまけCD」にでも入るのかと思ってた。だって、どう考えても「ЯRU」の物語には入らない、ライブで盛り上がるための「お遊び曲」でしょう。『ミュージックステーション』で披露された時には、「テレビでもやっちゃうのね」だったもん。今までのGACKTさんのイメージを覆すよね、あの詞。

 そうそう、この4週リリースからロゴが「Gackt」から「GACKT」に変更になっている。うーん、私としては「Gackt」の見た目の方が好きなんだけど、ソロ10周年を機に「さらに大きく」ってことなのかな。ずっと「Gacktさん」って書いてたの、私も「GACKTさん」って書き換えなきゃ。

 ライブで実際に曲を聴く前、歌詞だけを見て、実を言うとあんまり「ピンと来る」ものがなかった。「この詞、好き!」っていうのが、実はそんなにもなかった。「Zero、アサクラ、マリア」の物語を先に読んでしまっているから、全部「マリアに対するラブソング」(『Suddenly』はマリアから“Zeroに改造されてしまった彼”に対するラブソング)に見えて、「けっ!」って感じだったの(笑)。……きれいなお兄さんに「女」は不要だ、ってゆー持論(!)からすると、マリアさん、邪魔なんだもん。それに、詞だけを見るとどれもバラードっぽく思えて、「もっとハードで痛々しい歌はないのか!」って思ったり。

 サイボーグに改造されてしまった男が主人公なのなら、「失われた記憶」や、「戻ってきた記憶」「でももはや以前の自分ではない」「“人間”ではない」「けれど、誰もが人間らしさを失っていく戦場で、自分達の方がよほど“人間”だ」というような「存在」に関する歌が前面に出てほしい、そっちのが好きだ、って思った。

 前の「ЯR」はまさにそれだったと思うんだよね。『Cube』の「ぼくの破片が見えますか」ってゆーのが、すべてを物語るような。「君」という言葉が出てきても、それは「なくした自分自身」であるような、「自分という存在」を取り戻そうとあがくような歌で構成されていた。

 もう一度同じことをやってもしょうがない、ということもあるんだろう。「深く内へ潜っていく」ようだった前作と違って、今回の曲はどれも「外へ向かっていく」気がする。自己へ向かうのではなく、他者へ。「君」や「あなた」や「おまえ」という二人称が、正しく他者を指し、恋人や仲間や戦争で犠牲になったすべての人々に向かって行く歌。だから曲調も、けっこう明るいというか、明らかに前作とは違うし、もちろん『MOON』サーガの曲とも違う。

 『My Father's Day』とか『Faraway〜星に願いを〜』なんか、普通にFMでかかりそうな曲でしょ(笑)。GACKTさんの曲って、特にアルバム曲はクラシック的な、物語性の強いアニメのサントラを彷彿とさせるものが多くて、『ミュージックステーション』でもそこだけ「異世界」になるし、ラジオから流れてくる他のJ-Popとはもうまったく毛色が違う。その独特の「異世界」こそが好きな私には、上の2曲はむしろ「普通すぎて面白くない」ぐらいで(笑)。

 『GHOST』とそのカップリングの『Blue Lagoon〜深海〜』は実験的でSFチックな音作りになっているけど、最初にリリースされた『Jesus』がハードなバンドサウンドだったように、他の曲もギターの音がすごく聞こえる、普通の(という言い方もおかしいけど)Rockに近い音作り。もちろん、GACKTさんの「音作り」は作り込み方がハンパじゃないから、やっぱり他の人の曲とはひと味もふた味も違うんだけど。Instrumentalを聴くとそれがよくわかる。シングルで出たおかげですべての曲のInstrumentalが聴けるのがありがたい。

 なんか、「自己」から「他者」への変化っていうのは、物語の必要上以上に、やっぱりGACKTさんの変化なのかな、って気がする。私はソロデビュー当時は知らないし、「ЯR」ライブにも参戦していない。だけど写真や映像で見る限り、この10年でGACKTさん、よく笑うようになったな、って思うし、構えてとんがっていたのが、ホントに余裕を持って「かかってこいよ!」って言える感じになったというか……。歌い方もストレートになったしね。

 4週連続リリースの最後、「Anniversary Disk」と銘打たれた『Flower』。ホールツアーで一番感動したのがこの曲の時だった。『Faraway』から『Flower』へと続くところで、「生まれてきてよかった! 世界が無意味でも、私達は幸せだ!!!」ってすごく思えた。ちょうどその日に歌詞がアップされた曲でもあって、何かこう、「めぐりあわせ」を感じてしまった。そうしたらその曲が「Anniversary Disk」。GACKTさんにとっても大切な、特別な曲なのかな。だとしたら、とても嬉しい。

 もちろん、ライブで1回聴いただけで曲が覚えられるわけもなく、詞を見てもどんな曲だったのかさっぱり思い出せない。およそ半年が過ぎて、Dearsサイトでサビだけ先行で流れて、それを聴いた時に「あ、やっぱりこの曲が一番好きかも!」って思った。改めて読み返した歌詞も、曲も。そしてYahoo!サウンドステーションでフルサイズで聴いて。

 ボロ泣き。

 サビだけ聴いた時に、「これって○○の曲じゃん!(注:○○には私の物語の登場人物の名前が入る)」って思ってしまったもんだから、フルで聴く時にはもう妄想全開。ラストシーン近い場面がばーっと目の前に浮かんで、○○なりきりで、涙が止まらない。

 ……正直、「ЯRU」の物語とは無関係に感動してしまって、どやねん!?って思うねんけど、でも普通のラブソングとか、みんな「自分の経験・感情」に引きつけて、やっぱり感動するわけでしょ? 同じ小説を読んでも、それぞれの経験や考え方によって感動する箇所は違う。同じ曲を聴いても、どんな物語を思い描くかは人それぞれでいいと思う。

 だからね。最初、歌詞を見た時にピンと来なかったのって、うっかり「Zeroやマリアの物語を読んで予習しちゃったからなんだな」って思った。私、予習要らなかったって(笑)。むしろ下手に「物語」を細かく提示されると、それが邪魔になって自分の妄想が拡げられなくなる。だから「ピンと来ない」。これまでのGACKTさんの楽曲の中で私にとっての不動の一位は『君が待っているから』なんだけど、これも実は『MOON』の物語を無視して、自分の小説に重ね合わせて感動してしまう曲なの。「私の書きたいことがこの中に全部詰まってるよ〜」って。『Flower』もそう。

 そして『Flower』はやっぱり、今までの「痛々しい」曲とは違うな、って思う。GACKTさんの曲ではいつも、大切な人はそばにいなくて、たいていは死んでしまって、一人残された「ぼく」は相手のことを想い、嘆き、哀しみ、血にまみれながら闘いを続けている。消えてしまった相手の面影だけが、生きていく支えで。

 『Flower』でもやっぱり大切な人は「ぼく」を一人残して逝ってしまったのだけれど。その哀しみが終わることは決してないのだけれど。でも。「大地は果てしなく すべては美しく」「思い焦がれていた 世界が始まる」 ……光が見えるんだよ。光を、見つけるんだ。ただ嘆くだけではなくて。

 光を求めて、歩いていく。

 「いつかもう一度逢える」という意味の詞は、これまでにもたくさんあったのだけれど、「生まれ変わるなら寄り添う花に」。なんか、うまく言えないけど、「突き抜けた」気がする。すごく哀しい、せつない歌なんだけど、でも今までの歌より(たとえば『君が待っているから』とか『Metamorphose』とか)前向きで、光が見えて、そしてだからこそその“強さ”がいっそう哀しいような。

 バックのギターもなんかすごいし。うん。曲もすごくいいよね。進んでいくにつれてどんどんと盛り上がっていって……。詞も曲も起承転結というか、一つの物語になってる。好きだなぁ。ついに『君が待っているから』を超えたか!?

 うっ、今またサウンドステーションで『Flower』だわ。何回聴いてもうるうるしちゃう。

 この後、また『MOON』サーガに戻るのかどうかわからないけど……ずいぶん違う“音”になるのかもしれないなぁ。紡がれる物語の方向性も変わってくるのかもしれない。楽しみだな♪ でもとりあえず、アリーナツアー終わったらGACKTさんにはゆっくり休んでほしい。10周年ってことでテレビもいっぱい出てくれて、ホントにすごいスケジュールになってるから……。次のCDがいつ出るとしても(劇場版『仮面ライダー』主題歌はすぐ出るけど)、次のライブがいつになるとしても。

 ずっとついていきますから。


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