◆8/10発売最新シングル◆
『届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…
/noesis』


 長い。

 長いっすよ、Gacktさん。

 帰ってきた『MOON』第3弾シングルのタイトルはなんと全24文字、おまけに「…」付き。しかも昔懐かしい電報のような漢字カタカナ文で打ちにくいったら。まぁひらがなだったら雰囲気出ないだろうな、とは思うけど。うん、ひらがなだと『届かない愛と知っていたのに抑えきれずに愛し続けた…』でしょ。ただの文章になっちゃうし、えらく穏やかな印象になる。カタカナの威力ってすごいね。カタカナにするだけで、何か硬質な、機械を思わせる手触りになる。このセリフを呟いた人間が、そのまま息絶えて凍りついてしまっているような。

 日本語の表記ってこういうことができるから好き。

 で、この長いタイトルの歌は昼ドラ『契約結婚』のテーマ曲になっているんだけど。

 ちょっとびっくりした。ガンダムはともかく、そーゆータイアップはあまりしないものだと思ってたから。ただ“売る”ための行動なんてしない人だと思うし、かと言って自分の世界観と関係のないドラマのために曲を書き下ろすとも思えなくて。あ、『月の詩』はアニメのテーマソングとして使われてたんだっけ。『oasis』も「北斗の拳」か……。アニメはまぁわかるんだけどな。昼ドラだもんね。「君に逢いたくて」が『ザ・ワイド』のエンディングに使われた時も、「なんで?」って思った。番組とあの曲に何の関係があるんだ?って。しかもほんとにちょろっとしか流れない。なんというか、Gacktさんの曲をみだりに使ってほしくないと思った。少なくとも、その世界観を無視するような使い方は。

 『契約結婚』は見たことがないから、どういう使い方をされてるのか、多少ともドラマと曲がリンクしているのか全然わからない。合ってるのかなぁ。Gacktさんの曲に「うわ、合ってる〜」と思えるテレビドラマなんてそうはないと思うんだけど。主要登場人物は全員美形じゃなきゃダメだし、ストーリーもチンケな恋愛ものなんかじゃ全然ダメ。ファンタジックで陰翳の効いた、その美しさで胸が苦しくなるような“痛い”映像でなくちゃ。

 実写じゃ無理です。

 前2作同様、『届カナイ……』はCDよりも先に着メロで聞いたんだけど、すごくゴージャスだった。なんか、音数が多いの、着メロ。鳴るとびっくりする。改めてCDで聞いたら、なるほど豪華だった。メロディー自体は歌いやすいというかわりとシンプルな感じだけど、バックの音の広がりはゴージャスでとても美しい。インストゥルメンタルで聞くとよくわかる。ほんとにGacktさんの曲って、歌なしでも十分に“作品”として成立してるんだよね。すごい作曲家だと思う。

 カップリングの『noesis』の印象があまりに強烈で、『届カナイ……』の方は「きれいな曲」と思っただけで聞き流してしまったんだけど、毎日聞いてるうちにだんだんしみてきて、気がつくと口ずさんでる。前にも書いたと思うけど、しっかりした“作品”だから、聞き込めば聞き込むほど味が出てくるんだ。飽きるんじゃなくて。

 歌番組では「王道のロックバラード」と紹介されていた。「ロックバラード」という定義自体、私にはよくわからないけど(ロックじゃないバラードは、例えばジャズバラードだったり演歌バラードだったりするのかな)、Gacktさんの曲は他のアーティストの曲とは一線を画したオリジナルなジャンルだと思うから、「王道の」なんて言い方は的はずれなんじゃないかなぁ。一体他の誰がこんな作品を残してるっていうの?

 『noesis』を聞くと、本当にそう思う。唯一無二の音楽。すごいよ、『noesis』。もうオープニングから尋常じゃない。「何が始まるんだ!?」という実にゴシックな音作り。“イントロ”なんていう軽いもんじゃないんだ。Gacktさんの曲はどれもそうだけど、歌の部分だけじゃなく、すべての音が物語を形作っていて、最初から最後まで一分の隙もない。間奏の盛り上がりも、終わり方も、あまりの素晴らしさに鳥肌が立っちゃう。

 サビまでの部分、Gacktさんの声はロボットがかっていて、なんとなくセカンドアルバム『Rebirth』を思い出させる。でも『Rebirth』よりさらにオーケストレーションに磨きがかかって、深くなってる。確かに「MOON」なんだけど、『MOON』と『Cresent』の音が違っているように、また今回も違う雰囲気があって、「まだこんなに新たな表現ができるんだ」と感心してしまう。アルバム『DIABOLOS』を聞くのがほんとに楽しみだ。

 『noesis』のオープニングを耳にした息子、「これ、犬夜叉の曲?」。うーむ、なかなか鋭い。もちろん息子が連想したのはエイベックスオンパレードの主題曲じゃなく、和田薫さんによる美しいサントラの方だ。「犬夜叉」の時代劇風な曲調とはやや趣を異にするとはいえ、『noesis』に込められた濃密な“物語性”、ポップスやロックというよりは「サントラ(それもアニメの)」であるGacktさんの曲の本質を見抜いている(って、褒めすぎ?)。

 半人半妖を中世ヨーロッパでやったら見事「MOON」になるわけだし。うん、たぶん映画や前のアルバムより時間軸が遡ってる。『届カナイ…』のPVには女の吸血鬼が出てくるけど、『noesis』はきっとそもそもの物語の発端、中世の吸血鬼の話なんだ(ホントかよ?)

 『BLACK STONE』もカップリングの『Ash』の方が“濃く”て好きだった。耳に心地いいだけの、聞き流す流行り歌とは全然違う音楽。たまにはテレビでカップリング曲を歌ってくれないかな、と思うけど、Gacktさんの物語性に耐えうる番組ってやっぱりありそうにない。すぐに騒がしいCMなんか入ったら興ざめだし、司会もうるさいし、他の歌手の曲だって陳腐で耐えられない。……ライブ行くしかないね。

 ちなみに「noesis」とは心理学用語で「認識」を意味するのだとか。意識だけが研ぎ澄まされてる感じなのかな……。

ちぎれた肉体、ばらばらになった記憶
暗闇の中、凍える魂が目を醒ます
ゆらめく面影
消せない痛み
果てしない時を、果てしない闇を
ただこの想いだけがさまよい続ける
“あなた”を求めて――

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