◆待望のロック・チューン NEWシングル◆
『BLACK STONE/Ash』


 いやー、ほんとに久々の、ですね。アップテンポなシングルは『君が追いかけた夢』以来だから、丸々2年ぶりってことになる。新譜情報としては当初「バラード」という話が流れたみたいで、「またかよっ!!」とお怒りのファンの声がレビューに見られていましたが、ロックテイストということが判明し、ダイハツ「ムーブカスタム」のCMとしてサビがオンエアされてからも、「まだ明るすぎる!」という声が……。みんなそんなにガックンに暗くなってほしいのか(笑)。

 ま、気持ちはわかるんだよ。別にバラードでも『月の詩』や『Last Song』のような「痛いバラード」だったら許せると思うんだ。『月の詩』カップリングの『星の砂』なんてもう、手首切っちゃいそうだもんね。ただのラブソングなら、何もGacktが歌う必要はない、そのへんの口先だけのアーティストに歌わせときゃいいんだ、って。君が好きだの嫌いだの、そんな歌は巷にあふれすぎているんだから。

 でも、『LOVE LETTER』は決して表面だけの、流行りのラブソングじゃないと思うし、あれもまたガックンの魅力の一つ、表現の一つだと思う。ただ激しくしか歌えないアーティストだったら、やっぱり他にいくらでもいるもんね。

 と、前置きが長くなってしまった。アコースティックな表現、地声での歌唱、身近な(ダークな異世界でない)愛の歌、というインターバル(と言ってはガックンに失礼か)を経て戻ってきた“痛いGackt”はどれくらいパワーアップしているのか!? CMでのオンエアはあまりに短すぎて、「ああ、アップテンポの曲なのね」ぐらいしかわからない。その後ダイハツのサイトからの着メロダウンロードでもうちょっと長く、サビから間奏の辺りまでを聞くことができて。車のCMに使われるだけあって疾走感のある、『ANOTHER WORLD』系の曲だな〜と感じていた。

 そして今日、4月27日、発売なったCDを手にして、やっとフルで聞くことができた。曲調は確かに明るくて、声もなんだか少し可愛い。でも詩は、詩の中の「君」は、死んじゃってる。ガックンは実際に、大切な友人をこの1年の間に亡くしているから、彼に捧げる歌なんだろうな、って想像はつく。『BLACK STONE』は魔除けの石、ファンの間ではおなじみのオニキス。たとえ死んでしまっても、その身はこの世から消え失せても、「君」は僕の側にいて微笑んでくれている。きっと見守ってくれている。この石のように……。

 ジャケットの中の写真が、また菜の花畑の墓標なのね。『LOVE LETTER』の時の『Dears』と同じ。現実に亡くなった「彼」はいるけれども、「みんな死ぬ」ということを踏まえて、「それでもきっとまた逢える」というのは、一貫して変わらないガックンのテーマだ。「人間、どうせ死んじゃうのになんで生まれてくるんだろうね」とうちの母がよく言っていて、子ども心にそれがすごぉく嫌だった。たぶんその問いに納得できる答えはない。そりゃ生物学的には「子孫を残すため」とか言えるけど、そんなの何万年単位で見たらやっぱり「どうせ絶滅しちゃう」だし、今ここにこうして存在している自分がやがて無に帰すというのは、心の部分でどうしても理解しがたい。理解したくない。

 だからこそ。

 「だって、こうして逢えたじゃない」って思いたい。人に心があるのは、人に「自分」があるのは、そこに「自分」じゃない「誰か」がいるからだもの。くり返しくり返し、ガックンは歌う。「君がいるから」って。

 で。カップリングの『Ash』。タイトルを聞いた時についつい『バナナ・フィッシュ(吉田秋生さんのマンガ)』のアッシュを思い出してしまったんだけど。『Ash』=灰、ですね。「遺骨」という意味もある。おおっ、来たなって感じですが(笑)。これもCD聞く前に着メロで聞いて、「おおっ、来たぞ!」と(くどい)。うん、歌詞なしの、それも着メロなどという少ない情報量でも十分にそのダークな、痛い雰囲気が伝わってきて。

 ドラマティックですねぇ。ジャケットの写真で想像したよりも声も可愛くておどろおどろしくないんだけど(この写真、人形というかCGみたいな感じに見えるんだけど……どうなんだろう)、バックの盛り上がり方がまた、宝塚なの。舞台とかアニメのサントラとか、とにかく濃厚に「物語」を感じさせてくれる。インストゥルメンタルだけでもね、グッとくるよ。歌詞は抽象的でちょっとわかりにくいけど、「帰ってきた『MOON』」なら、「手首切ってるのに不死だから死ねない」みたいな……。あ、でもそうか、そういうことなのかな。昇る太陽にその身をさらして死のうとする瞬間、「君」の存在をそばに感じるっていう。

 「不死」というのは「限りある命」を写す鏡だし、現実にはそうそう「死んじゃった大切な人」のことを「でもいつもそばにいてくれる」なんてふうに思い切れない。身を切られるような、血を吐くような哀しみを経て、もがいて苦しんで、その先にやっとかいま見えるひとすじの光だから。

 映画版『Zガンダム』の主題歌になっている『メタモルフォーゼ』もすごくいい感じで、再び始まる“痛い物語”に期待大ではあるんだけど。私としては、ガックン本人はあんまり塗りたくったり飾り立てたりとかしない方が好きなんだけどなぁ。雑誌の表紙で“怖いGackt”があったので、ちょっとその辺だけが心配。って、勝手だねぇ、ファンって!

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