◆Gacktツアー2003『上弦の月』〜最終章〜◆
2003/07/05(土) 横浜アリーナ ††体感記††

【ところどころ私の妄想によって事実と違うことが
書いてあるかもしれません。どうぞご容赦ください】

 ……何から書けばいいんだろう。まだ1週間――もう1週間!――、なんだか夢のような気がする。終わった瞬間からもう夢だったような、あまりにも非現実的な時間。きらきら光る夢のしずくが指の間からこぼれ落ちてしまいそうで、どんどんあの幸せな時間の記憶が薄れていくようで。

 ああ、もったいない!!

 ともあれ、まず最初に、私の無謀な行動に文句を垂れながらも許してくれた愛しのダーリン、Hiroさんと、横浜まで付き合わせて熱を出させてしまった可愛い息子ひなたに、どうもありがとう。私はホントに幸せモンだよっ!

 しかし実際、我ながらよくやるよなぁ。『MOON CHILD』見たのが4月の25日で、3ヶ月経たないうちに横浜まで行ってるんだもんね。この情熱は一体何? 友達に「さすがの行動力」と言ってもらったけど、そのエネルギーをもうちょっと違うところに使ったらどうなの?って自分でも思う。思うが、いいじゃないの、幸せならば。愛だろ、愛。

 前置きが長くなってしまった。ライブだよ、ライブ。えーっと、私達が山下公園から新横浜に戻ってきたのはもう4時40分くらいで、開場20分前だった。なので、駅には一杯それらしい格好の人がいて。わかるんだよね、「あ、あの人もライブ行くんだ」って。お人形さんみたいっていうのかな、レース系じゃないお人形さん(どんなのだ?)。髪には大っきいリボンつけて、厚底のブーツで裾の広がったスカートで……あーゆー服ってどこに売ってるんだろう。あれも一種のコスプレだよねぇ。Gackt(以下ガックンと呼ばせていただきます)風のかっこ(って、これもどんなだよ?)をした男の人、女の人もいたな。とにかくわかる。見ればわかるんだー。不思議なくらい。もちろん会場にはごく普通のかっこの人も一杯いたけど。

 昔、聖飢魔Uのミサにはあのかっこ(もちろん顔も塗っている)のファンが一杯いた。ファンじゃない人から見ると「うわー」だし、ファンから見ても「すごー」って思う時もあるんだけど、好きな人の真似をするというのはとっても「基本」なことだし、なんといってもライブはお祭りで。私だって大急ぎで着替えて「いいカッコ」してアリーナに走った。みんな可愛いよっ!

私のいたとこ  5時開場で、私がアリーナに着いたのは5時5分頃。立ち見の行列に並ぶ。立ち見のチケットには整理番号がついていて、その番号順に並ぶんだけど、なんとそれ、同じ番号が4〜5人ずついるのだ。私は41番だったので、大体150〜200人目ぐらいだったというわけ。立ち見が何番まで出ていたのか、行列はかなり後ろに続いていて。たぶん整理番号300番ぐらいはあったんじゃないかな。「機材調整のため開場が遅れています」ということで、30分ぐらい待たされ、入口で手荷物検査を受けてやっと中に入ったのはもう5時50分ぐらいだったような気がする。整理番号41番でこれなんだから、立ち見が全員入るだけであと30分はかかるよね。まぁ絶対6時に始まるわけはないな、と思ったけど。

 6時30分を過ぎても、まだ始まらない。立ち見というのは基本的にその場を動けないので(動くと場所を取られるから)、ずっと立ってるわけだよ。5時から既に1時間半立ってて、脚が、むくむ。しびれる。あー、血栓ができそうだよー。それに眠い……。朝6時に起きて新幹線乗って観光までしてんだもん、眠いよ、そりゃ。まだかー、早く始まってくれい。

 もう7時になっちゃうぞ、という頃、ようやく、それまでずっとかかっていたクラシック曲が『Noah』になり、色とりどりの照明が舞台にかかっていた幕を照らしだし――「キャーッ」。場内騒然。指定席のファンも一斉に立ち上がる。「Gacktーっ!」

 1曲目は『Speed Master』。ガックン登場! が、もちろん顔はよく見えない。私はけっこう舞台に近いところに陣取っていたのだけど、それでも肉眼ではよく見えず、用意していた双眼鏡で――ああっ、本物だぁ。と言っても双眼鏡だとなんかテレビ見てるような感じになっちゃってできれば使いたくなかったんだけど、一回見ちゃうと目を離せないんだよね。ガックンは表情がすごいから見逃せない。

 昨年の『下弦の月』の時の黒の衣装の色違い(だと思うんだけど、違うかもしれない)の白の衣装に、髪型は映画のショウの時と同じ、ショートヘアに付け毛の尻尾。映画でハマった私としては、これ、とっても好きな髪型で、めちゃめちゃ嬉しかった! どんな髪型でどんな衣装でもかっこいいけど、可愛さがプラスされてなんともいいんだよぉ。

 2曲目『Lu:na』。ここまではアクションが派手だったので(バク転したり、ダンサーの上空をくるんと一回転して手前に飛んで来るというマッスル・ミュージカルのようなこともしていた)、歌は口パクっぽかった。でも3曲目の『Fragrance』から後は全部肉声。4曲目、『rain』では『下弦の月』と同じように本物の雨が降り、一旦ガックンはじめメンバーは退場。

 再び出てきたガックンは。一人ピアノに向かっている。暗い色のマントのような衣装に身を包んで。聴きたかったんだよー、ガックンの生ピアノ。私の場所からは後ろ姿で、弾いてる顔が見えなかったのが残念だったけど、でも嬉しい。初めて聴く曲だった。やっぱりとてもドラマティックで素敵なピアノ・ソロ。その次も知らない曲で、『世界中の誰もわからなくてもいいさ 君が笑ってるなら』というような歌詞だった。私はCD化された曲は全部聴いていて全部歌えるので、当然他の曲は全部一緒に歌っていた。未発表の曲を聴けるなんて、ライブならではだよねぇ。これだけでも来た甲斐があった。

 7曲目が『Doomsday』だったかな? その前に『death wish』があったのかな。さすがにこの辺まで来るとだんだん覚えられなくなってきた。とにかく表現力がすごいのだ。狂気っぽくて。やっぱり双眼鏡、離せない。

 そしてまた。一回引っ込む。次に出てくるのは、子どものショウ。そう、映画でガックンの少年時代を演じた男の子(この子がまた、可愛いんだよなぁ)と、スカジャン姿のガックン〈大人のショウ〉が二人並んで『月の詩』。歌の最初では距離を置いていた二人がやがて近づき、最後に倒れてしまった大人のショウを子どものショウが優しく撫でて……暗転。

 次は恒例の(かどうかは知らんけど、『下弦の月』のDVDにもあった)『Mirror』の前奏を使っての客席とのやりとり。ギターの音に合わせて「Gacktーっ」と叫ぶファン。何度か叫ぶとガックンが「聞こえませーん」と言ってくれるのでまた「Gacktーっ!」。この、思いっきり名前を叫べるっていうのがまた、ライブの醍醐味なんだよねぇ。いくらDVDの映像が迫力満点でもまさかテレビ画面に向かって叫んだりできないもん。名前だけじゃなくて他にも色々と叫ばせてもらったし、全部歌うし、腕は振り上げるし踊るし、私、相当変なおばさんだったような気がする。人格変わるっていうか本性が出るっていうか(笑)。でもこれがやりたくて行ってるんだもん、ライブで人目気にする方がおかしいよ。みんなガックンに夢中で隣のおばさんのことなんか目に入らないはずでしょ!?

 『Mirror』ではステージを降りて客席最前列まで来たガックン。コードが引っかかったのか、2回ほどひっくりかえっていた。あー、羨ましいぞ、最前列。ここまでで約1時間。既にガックンはゼーハーゼーハー。音楽って体力だよねぇ、ホントに。

ガックンの髪型  そしていよいよMCです。1回引っ込んだガックン、出てくるとおもむろにミネラルウォーターを口にし、そのペットボトルを水鉄砲のようにぷしゅーと振り回し、あげくに客席に投げ入れる。合計5本ぐらい投げたかなぁ。けっこう遠くまで飛んでたよ。受け取れた人、超超羨ましい。もちろん立ち見の所になんか飛んでこなかった。

 ガックンは、みんなに「おかえり」と言ってくれて、みんなが「ただいま」と応えると、「神威楽斗(漢字ではこう書くらしい。カムイ・ガクト)、横浜アリーナに帰ってまいりました」。「おかえりーっ!」 次にガックンが話し始めるとすぐに客席から『♪ハッピバースデイトゥユゥ〜』の歌声が。そう、ガックンは前日7月4日がお誕生日! 照れくさそうなガックン、「弱いな、こーゆーの。こんなに素敵な誕生日を迎えてるのは世界中で――」「Gacktだけ!」 みんなに先に言われてちょっとふてくされて、「そう、僕だけだっ!」

 「みんなに祝ってもらって、ホントに幸せなんだけど、まだ他に嬉しいことがあってね」とガックンが話してくれたのは、初めて沖縄からおばあちゃんがライブを見に来てくれているってこと。「今あそこで見ててくれてるんだ」と照れくさそうに、でもとっても嬉しそうに、袖の方を指し示し。ファンは一斉にそっちを向いて「おばあちゃ〜ん!」 全然どこにいるんだか見えなかったけど、「こんな、1万5千人に手を振られるおばあちゃんは他にいないよ」 おばあちゃんはもう90を越えてて歩くのも不自由で、と言いかけたガックン、さっき自分で「468歳(だったかなぁ。細かいとこは忘れたがなんかそれぐらい ※『うたばん』で463歳と言ってました。計算上1540年生まれだと)になりました」と言ったことを思いだし、「でも不思議なのはおばあちゃんの方が僕より年下だってことで……」 わはは。

 その前だったか後だったか、ガックンが「今日7月5日、昨日4日――」と言いかけたら即座に客席から「おととい3日!」「わかってるよ!」 こーゆー掛け合い、ホントに楽しいよねー。生ならではじゃない。4日の夜に家族揃って食事をしたのがとっても嬉しかった、こんな誕生日は本当に初めてで、って話してるガックンを見てると、なんかこっちまで嬉しくなっちゃって、「良かったね!」ってつい叫んでしまう。「なんだか感動して眠れなかった」って。うふふ。良かったねー、ガックン。

 ところが、この話にはオチがあって。「朝起きて」(ここでまた客席から「眠れなかったんじゃないの?」というツッコミが入り、「言葉のアヤじゃん!そうだよ、寝てないよ。朝になって!」)「姉が起こしに来てくれたんだけど……」とお姉さんとのやりとりを一人二役で再現。お姉さんは、「え?昨日誕生日だったの?」「……お誕生日会じゃなくてただのお食事会だったのかよ……」がっくり。いや、それはきっとお姉さんのネタだと思うよ。「こう言ってはなんだけど、お姉ちゃんは超ヤンキーです!」とお姉さんネタはさらに続く。ガックンは小さい時から年の離れたお姉さんが怖かったらしく、今でも頭が上がらないと雑誌で言っていた。なのですぐに「ステージの上なので強気で言っちゃった」とフォローしていました。「でも僕の誕生日忘れてたんだから、お姉ちゃんは今日ここに来てくれたみんなにすごい借りを作ったんだ、もしみんなが帰りにお姉ちゃんに会ったらきっと「ありがとう」と言うはずだ」みたいなことを言って。ガックンのお姉さんって、やっぱりすごい美人なのかなぁ。

 そんなこんなでメンバー紹介。これもとっても面白かった。面白いというか、お茶目なのねぇ。「ぼくの左舷7時にそびえ立つ……」リュウさんの紹介の時にはガンダムの効果音(だと思うぞ)の口真似。音に合わせてずんずんと立ち上がっていくリュウさん。「ぼくの右舷7時にそびえ立ってない」レンさん。レンさんは昨夜日付が変わる直前にガックンに電話をかけて、おめでとうと言おうとしたのにゆっくり「たいしたことじゃないんだけどぉ」としゃべってるうちに「ああ、もう12時なっちゃった!」 ここのガックンの一人二役がまた。ガックンの電話は「ガクト、電話だよ」と鳴るらしい。茶々丸(この漢字でいいんだろうか)さんには、「その髪型、ダスキンみたいだよ!」 そして最後、YOUさんは。「1万5千人を前にしてもちっとも動揺しない男。これだけみんなが誕生日誕生日と騒いでもおめでとうの「お」の字も言わず、淡々としている男。でもYOUのことは僕が一番わかってるから、きっと今月の28日ぐらいになって「ガク〜、お誕生日おめでとう〜」って言うんだ」 YOUさんすごい格好良くて、客席からも何回も声援が飛んでたのに、ホントに素はぽわーんとした人なのかなぁ。うぷぷ。

 後はノンストップでノリのいい曲の連続。ガックンもスカジャン脱いで白のランニングになって『ANOTHER WORLD』『wasurenaika』『Missing』(2番の頭でガックンは歌詞を1フレーズ飛ばしてしまった)。猫の着ぐるみと一緒にキュートに歌い踊る『Soleil』。もう最高に楽しくて、一緒になって歌い踊ってる私も汗だく。幸せだーっ。

 「もしも君が挫けることがあっても、大丈夫。僕が、いるから」という言葉とともに『君が追いかけた夢』を熱唱。そう、その通りだよ。たとえ世界中の誰も読んでくれなくても、ガックンがいれば小説が書けるわ!(……いいのか、それで……) 最後は、静かなピアノ伴奏で始まった『memories』。ステージの端に腰かけて歌うガックン。最後の曲は絶対これだよな、と思ってた。アルバム『MOON』の最後に収められた優しい曲。映画を見て、どうしてこれが最後なのかよくわかった。

 が。まだまだ甘い日向霄。『memories』で終わりじゃなかった。黒い衣装に着替えたガックンは『birdcage』を歌う。映画公開時、途中からエンディングテーマとして使われたこの曲の最後のフレーズ、「二度と戻れないあの頃にも 僕たちは微笑っていた」が終わった瞬間真っ暗になり、光が戻るとガックンの立っていた場所には子どものショウ。わぁ、時が戻った!

 今回のツアーコンセプトは「記憶をさかのぼる」と言っていた通り、バンパイアになって長い時を生き続けたショウがどんどん記憶をさかのぼり、子どもに戻る。これだけでも十分素敵な終わり方だったんだけど。まだまだ甘い日向霄! 鐘の音とともにライトがひとつずつ消えていき、子どものショウの姿も闇に包まれると、流れてきたのは――映画のテーマ曲! 映画のオープニングに流れていた曲!! うわぁ、始まるんだ、またここから!!!

 ぞくぞくした。さすがガックン。思わず、「Gacktーっ」じゃなくて「ショウーっ!」と叫びたくなった。映画でファンになった私としてはホントに感動の、感涙の、最高にかっこいい終わり方だった。もう一度始まる物語。ひょっとしたらそれは、私達の知っている映画とはまた違う、新しい物語なのかもしれない、そんな。

 幸せな時間だったなぁ。『下弦の月』のライブDVDを見た時、映ってるファンの顔がホントに幸せそうで、「いいなぁ、私もあそこに混ざりたいな」って思って横浜まで行ってしまったんだけど、ホントにもう幸せで幸せで幸せで……。なんていうんだろ。顔が見えるとか見えないとか、そういうことじゃないんだね。もちろん見えたらなお嬉しいけど、生の迫力っていうのは何m先に本物がいるとかそういうことじゃなくて、同じ時間をともに生きてるっていうこと。一緒になってその時空を創りあげてるってことが、とにかくたまらなく気持ちいい。こっちは1万5千分の1にしか過ぎない、全日本的には何万分の1かわからないファンの1人、ちっぽけな存在なんだけど、あの2時間の間だけはまるで1対1になれたような。いや、まぁ向こうからこっちは絶対見えてないんだけどさ、なんかそーゆーつまんない卑屈な考えが全部消えちゃって、とにかく純粋にわーっと楽しいんだ。そう、やっぱお祭りだね。最高の“ハレ”の時空。

 帰ってきて、忙しかったせいもあってライブの3日後に熱を出すわけだけども。アホやね、ほんま。友達が、「おしゃれして、大好きな人のコンサートにどきどきしながら行けるなんて、最高! たとえ3日後に熱が出てもやっぱり若い!」と言ってくれた。ありがとう。確かに、こんなアホができる私はまだ若いのかも!?

 ガックン、素敵な時間を本当にありがとう。絶対また行くからね!


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