本の虫

◆第64回『のだめカンタービレ』/二ノ宮知子◆

 どこまで続く『のだめ』熱。アニメも始まったし。

 blogを読んでくれている皆さんには周知の事実だと思うけれど、月9ドラマ『のだめカンタービレ』にはまり、誕生日プレゼントにコミックス全巻を義母と夫からもらってしまった私。年賀状書きも後回しで、1巻から16巻まで、一気に読んだ。そしてまた1巻から……。やめられない止まらない。かっぱえびせんよりもすごい魔力。息子なんかもう4巡目。まだ買ってもらって一ヶ月経ってないのに、すでにコミックスがかなりよれよれになっているような……。ああ。文庫化されたらまた買っちゃうかも(おいおい)。

 ことほどさようにのめり込んでいる『のだめ』。最初がドラマだったので、マンガを手に取る前は、「逆にマンガ読んだら面白くないかもな」と思ったりしていた。ドラマの千秋(=玉木宏)がものすごーく格好良くて、声も顔も演技もとにかく素晴らしくて、良かったので、マンガだと物足りないかもな〜、って。

 だって、マンガの千秋は、いわゆる「美形」じゃない。いや、まぁ、あのマンガの中では「男前」だけれども、二ノ宮先生の絵は、そんなにも「少女マンガ的美青年」って感じじゃないから……(←単に私の趣味の問題です)。

 でもそんな心配は全然杞憂。マンガはマンガで、とっても面白い。あ、このセリフあったあった。わ〜、ドラマとおんなじ、みたいな。ホントは「ドラマがおんなじ」なんだけどね。コミックスを読むと、あのドラマはホントに良くできてたな〜、と改めて感心する。要所要所のセリフやギャグをきちんと取り入れながら全体の構成をすっきりうまくまとめていて、千秋の飛行機恐怖症なんかはドラマの方がさらに強調されて面白いぐらいだったし、何よりドラマは実際の“音”があるからSオケデビュー公演とかピアニカ版『ラプソディー・イン・ブルー』とか、もう最高。そのシーンを読むと、流れてくる。(なので、ドラマでやってない後半の曲が、どんな感じのものなのかすごく気になる。)

 ドラマでもう知っている前半よりも、「初めて見る物語」である後半、フランス留学編が、特に面白い。ギャグ的には前半の方が激しくて、後半は真面目な部分がけっこう多いけど、とにかくのだめと千秋がどんどんラブラブになっていくのがすごく嬉しい。ドラマを見ている時のみならず、普段でも「のだめしゃべり」になって(←現在も継続中)自分の顔が上野樹里ちゃんになった気がしていた(!)ぐらいだったので、「千秋先輩〜、もっとのだめのこと見てくださ〜い!!」と二人の恋の行方にはらはらドキドキしていたのだ。二人の絡みが多い回は本当に幸せで……はうん(はあと)。

 うん、なんか、すごく久しぶりに「ラブコメ」モードっていうか、「乙女」モードっていうか。恋っていいな、青春っていいな♪という気分に浸ってしまった。のだめの変態ぶりが激しいから、「音楽コメディ」「笑えるクラシック」とは言われても、「笑える恋愛もの」とはあんまり評価されないのかもしれないけど、私はのだめと千秋のカップルって、すごく好きだ。理想的(え!?)。

 千秋の「オレ様」なところ、大好き。ちゃんとそれに見合うだけの努力はしている人だし。粘着質だったり、あんまり人の気持ちがわからないところもあるけど、人に厳しい分自分にはさらに厳しいし、何より料理も掃除も完璧! センパ〜イ、今日のご馳走何ですか〜、ひゅうがにも作ってくださ〜い(ついでに掃除もお願いしま〜す)。

 千秋の飛行機恐怖症、のだめの催眠術で治るわけだけど、あれ、やっぱ術をかけるのがのだめだから効いたんだよね。「ガードが堅くて催眠術にかからない」千秋が、のだめに対しては全然ガードしてないから、だからあっさり眠っちゃったんだと。のだめの方が一方的に千秋に惚れている、という形で話が進んでいくけど、実のところ千秋の方がもっとのだめを必要としているんだと思う。う〜ん、ほんと、いいカップルだ。

 フランス編で、のだめはどんどん千秋に追いついてきて、初リサイタルを見事に成功させる。その素晴らしい演奏を聴きながら、千秋が「オレはたぶん いろいろなことを覚悟しておいたほうがいい」っていう場面が、とても好きだ。いつの間にか、のだめの方が前を歩いていってるかもしれない。ラブラブだけど、音楽のことでは厳しくて、(生活態度のことでも厳しくて)、べったりくっついるんじゃなく、いつも一緒にいるようでそうでもなく、近づいたと思ったら離れてて……。やっぱ理想! 私ももっと変態になった方が千秋様みたいないい人をGetできるのかしらん(それとこれとは……)。

 結婚するのかなぁ、最終的に、二人は。この後、どーゆー展開が待ち受けているんだろう。これだけ人気が出ると、編集部的になかなか終わらせてもらえないとかありそうだけど、ラストシーンはやっぱり二人のコンチェルトかなぁ。晴れて新進気鋭のピアニストになったのだめと、千秋の初共演。いざ!と二人が目を見交わして、千秋がタクトを振り、のだめが最初の音を弾く、ってところで終わる。

 黒木くんとターニャの関係も気になるし(フランス編での黒木くんの「青緑百句」はとても良い)、早く17巻出ないかなぁ。

『のだめカンタービレ』1〜16巻
以上 二ノ宮知子著 講談社コミックスKC


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