本の虫

◆第8回『エロイカより愛をこめて/青池保子』◆

 少佐が帰ってきた! と言っても知らない人には何のことやらでしょうが、先日8年ぶりにこの『エロイカ』の新刊が出たのです。もう終わっちゃったのかなぁ、と思っていただけに、その復活が嬉しくて、今回早速取り上げることとなりました。

 『もう終わっちゃった』と思っていたのには理由があります。このマンガ、NATOだのKGBだのがバンバン出てくるスパイ物で、ベルリンの壁が崩壊してソ連がなくなってしまった今ではもう書きようがないんだろうと思っていたんです。ところがそんな私の素人考えに反して、今度の新シリーズは軍事評論家の協力を得てますますパワーアップ。東西冷戦が終わっても紛争は続く、と言うのか、東西冷戦が終わったが故にかえって紛争が表に出てくると言うのか、現実は厳しいけれどマンガで読むのは面白い。

似てない少佐  元々はこのマンガ、別にスパイ物ではなかったと思うんですよね。タイトルロールのエロイカは泥棒貴族でスパイじゃないし。それが何を間違ったか(いや、もちろんそれが最初からの狙いだったのかもしれないけど)、NATOのエーベルバッハ少佐の登場ですっかりスパイ・アクションになってしまった(今やすっかり少佐が主役という話もある。大抵みんな少佐のファンだし)。各国の情報機関が入り乱れるストーリーを当時中学生だった私や友達は嬉々として読んでたんですから、まったく日本の女の子は侮れない。とにかくこのマンガ、情報量が多いです。あまりのネーム(セリフのこと)の多さに読むのにやたら時間がかかる。アクションと擬音で話が進む少年マンガと違って、少女マンガは言葉が多いですよね。女の子は理屈が好きなのかもしれない、余談ですけど。

 ともあれ、エーベルバッハ少佐のおかげで大学の第2外国語をドイツ語にした私にとっては、シリーズ復活は嬉しい限り。早く続きが出ないかな。

『エロイカより愛をこめて』1巻〜20巻
 以上 青池保子(秋田書店プリンセスコミックス)


●次回予告●

次回は『シンデレラ迷宮/氷室冴子』です。


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